2014年5月 

  

東宝ミュージカル・「LOVE CHASE!!」を楽しんで・・・・・・本田浩子
 4月10日、シアタークリエで玉野和紀の作・演出・振付・出演の「LOVE CHASE!!(ラブ・チェイス!!)」を見る。

 昨年3月に黒木瞳を迎えての「私のダーリン」http://www.musicpenclub.com/talk-201305.htmlは、遊び心満点の意表をついた玉野演出で大いに楽しませてくれた。

 今回は元宝塚トップ・スターの紫吹淳と水夏希を迎えてのオリジナル・ミュージカルとなると、どんな仕掛けが飛び出すか、タイトルもずばり「LOVE CHASE!!(ラブ・チェイス!!)」、恋の追いかけっこ? に乗り遅れては大変と劇場に向かう。

 ピンク色のプログラムがまず楽しい! 可愛い天使三人が遊び、小さなハートが一杯、そして真ん中の真っ赤な大きなハート・マークに白抜きでLOVE CHASE!! と書いてある。更によーく見ると、小さな黒い悪魔も真っ赤なハートにチョコンと乗っている。

 始まったと思ったら、いきなり舞台上のスクリーンに神の声ならぬ、神の言葉が大きく写し出される。えっ、何? と慌てて目を走らせると、「悪魔の夢魔が、人間界で人間の男女に姿を変えて、人間たちとの恋愛を楽しんでいる。ついては、夢魔を連れ戻すように。」というのだ。そして、神の命令により、魔界の悪魔・堕天使アザゼル(玉野和紀)と、天界の大天使ガブリエル(紫吹淳)が人間界に降り立った。

 玉野作品といえば、「Club Seven」シリーズ、「私のダーリン」、「道化の瞳」、「まさかのChange」など、いずれも意表をついたストーリーと演出で、観客を泣かせ笑わせて舞台に巻き込みこんでく。どの作品も、人を愛する心、誠を尽くす、特に「道化の瞳」は、自己犠牲による利他愛の心をしっかりと伝えている。しかもそんな堅苦しいことを表に出さず、時におもちゃ箱をひっくり返したようなストーリー展開で、観客を引っ張り回す。

 今回の作品は今まで見た玉野作品の中では、中村龍史率いるマッスル・ミュージカル劇団と玉野のコラボ作品の「笑いすぎたハムレット」http://www.musicpenclub.com/talk-201002.html に並んで、観客を振り回し、笑わせ玉野和紀の本領発揮といった感じで、大いに楽しんだ。

 堕天使、夢魔などいるのか、そんな野暮ことを考える暇もなく、実力者揃いの役者たち、原田優一、野島直人、木村花代、綿引さやか、馬場良馬、青柳塁斗、廣瀬大介、小野田龍之介らが、入れ代わり立ち代わり、早変わりで様々な恋愛模様を演じていく。そこに夢魔の水夏希が絡んでくるので、まさにおもちゃ箱をひっくり返したらこうなるといった感じで、演ずる側も大変だろうが、見る側も気が抜けない。

 さて、人間たちは自己を解放する手段として、芝居を通して、色々な恋愛劇をしようとカルチャー・センターのようなものを開く。夢魔(水夏希)はすっかり恋愛ゲームにハマってしまい、この劇団もどきの集団に加わることになる。彼を連れ戻す役目の堕天使・悪魔アザゼル(玉野)とガブリエル(紫吹淳)も仕方なく参加する。アザゼルの役は何と神父!、何で悪魔の俺が神父役かと憤慨する玉野(失礼、アザゼル)だが、混乱を絵に描いたような展開のうち、何故かガブリエルと夢魔が剣を手に真剣勝負で闘う羽目になり、出演者全員の争闘シーンが舞台狭しと展開していく。この殺陣シーンは、もちろん元男役スターならではの華麗で激しい見せ場であるが、演ずる側はかなり命がけではないかと、ハラハラドキドキしてしまう。

 結局、夢魔はガブリエルとアザゼルに連れ戻されていくが、玉野ならではの落ちは、人間たちと思っていたのは、天界から降りてきた天使たちだったとなり、おまけに、どうやらアザゼルはガブリエルに恋をしてしまい、神の赦しを頂くという。なんとまあ!、最後に、そんなことあり?と思いっきり笑わせてくれる。

 玉野自身の作詞と息の合った音楽はNASA、華麗な社交ダンス、モダン・ダンス、勿論ふんだんにタップと、満足度の高い舞台だった。
<写真提供:東宝演劇部>

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