1月6日、シアタークリエで「花より男子 The Musical」を観る。
既に国内でテレビ・ドラマ化、映画化もされ、韓国、台湾でもテレビ・ドラマ化されている超人気の少女漫画が、初めてミュージカルになった。
漫画が原作とは知っていたが、私自身はこの舞台が「花より男子」の初体験、マンガチックでファンタジーな舞台は、いずれのシーンも、ページをめくるように、良く工夫されていて、予備知識なくても充分楽しめる、新年観劇こと始めとなった。
原作: 神尾葉子、脚本&作詞: 青木豪、作曲: 本間昭光、演出: 鈴木裕美による、この新作ミュージカル、1月5日から24日まで、東京のシアタークリエで上演され、以後、福岡・名古屋・大阪公演が予定されている。
舞台は小中高一貫校の英徳学園高等部、金持ちの子女が通う名門校。学園は財閥の息子の道明寺司 (松下優也)、花沢物産の御曹司・花沢類 (白洲迅)、茶道家元の跡取り西門総二郎 (真剣佑)、美作商事の後継者・美作あきら (上山竜治)の、「花の4人組」に支配されていた。牧野つくし (加藤梨里香)は、普通の庶民の娘だが、パパ (吉野圭吾) とママ (生田智子) の願いで、英徳学園に入学した。
つくしは、この花の四人組だけが、私服で通学、他の生徒は全てこの4人の意のままという不自然な学園生活に違和感を持つが、彼らに反発すれば、赤紙を張られ、いたたまれなくなると知り、目立たないように3年間を過ごそうとする。しかし、同じように高校から入学してきた友人が道明寺司に絡まれているのを見かねて抗議、言い争いの末に司を殴ってしまう。
舞台に倒れたまま、司はことある毎に殴ってきた大好きな姉を思い出して、笑っている。こんな意外な舞台のスタートが、まずは観客を釘づけにする。とはいえ、司はF4のリーダー格のメンツ丸つぶれと、赤紙を張ろうとする一方、つくしの勢いある庶民感覚にしびれて恋心を抱くので、話は大混乱、学園は大騒ぎになる。木村了、古畑奈和、玉置成美を始め、出演者全員若々しく、高校生の群像劇としての活気があり、F4を中心とした、躍動感あふれるダンス・シーンの数々が舞台を盛り上げる。唯一の大人、吉野パパと生田ママのおかしな歌と踊りも、スパイスが効いている。
当のつくしは、玉の輿と狂気する両親を横目に、一途な司に惹かれながらも、何とか冷静さを保とうとする。プレゼント作戦、豪華パーティへの招待も効果なく、お金で人の心は動かないと気づいた司は、学園を休学して両親のいるニューヨークに行く決意をする。出発前に思い切ってI Love You と迫る司、他のF4の面々も良い返事を期待して、つくしを取り囲むが、つくしの答えは・・・思い切りきついゲンコ!!! 司は舞台に大の字にひっくり返り、しかも嬉しそうに笑っているという、意表をついた愉快なエンディング。
俺になびけ、そうすりゃ世の中自由自在と司がつくしに歌う「俺様」はじめ「つくしを刈れ」「花の季節に」「I LOVE YOU」「恋は止まらない」等のミュージカル・ナンバーが、ストーリーをしっかりと物語る。---------------------------------------------------------------
写真提供: 東宝演劇部
撮影: 斎藤清貴
(c)神尾葉子・リーフプロダクション/集英社
(c)「花より男子 The Musical」製作委員会2015
「花より男子」(原作: 神尾葉子/集英社マーガレットコミックス刊)
ブロードウェイ・ミュージカル「アニーよ銃をとれ」日本初演
・・・本田悦久 (川上博)
☆1946年ブロードウェイ初演の「アニーよ銃をとれ」(Annie Get Your Gun) の日本初演の舞台に、新宿コマ劇場で出会った。制作・演出: 菊田一夫、翻訳: 倉橋健、訳詞: 中村メイコ。ブロードウェイ・ミュージカルの日本版は、昨年から「マイ・フェア・レディ」(江利チエミと高島忠夫)、「ノー・ストリング」(雪村いづみと高島忠夫)、「努力しないで出世する方法」(草笛光子と坂本九) と続いて、4作品目ということになる。 アーヴィング・バーリン (作詞・作曲) の最高傑作「アニーよ銃をとれ」は、高校生の頃からベティ・ハットンとハワード・キール主演の映画を映画館で繰り返し観て、その記録8年間に実に24回と最も思い入れの深い作品だが、舞台版を観るのは初めてなので、開幕前から心が躍る。 射撃の名手フランク・バトラー (宝田明) を中心とするバッファロー・ビル (市村俊幸) のワイルド・ウエスト・ショウ一座がオハイオ州の田舎町にやってきて、土地の代表と射撃の試合を行う。選ばれたのは田舎娘のアニー (江利チエミ)、彼女は凄い腕前でフランクに勝ち、アニーはフランクの助手として一座に迎えられる。 やがてフランクとアニーは恋仲になるが、アニーの人気がフランクを上回った為、プライドを傷つけられたフランクは、商売敵のポーニー・ビル (久松保夫) のファ一・イースト・ショーの一座に鞍替えしてしまう。 第1幕でチエミが歌う「気ままな暮らし」(Doing What Comes Naturally)、「銃で男は得られない」(You Can Not Get A Man With A Gun) は、パンチが効いている。一座のマネージャー、チャーリー (柳沢真一) やバッファロー・ビルが、アニーを一座に加えようと誘う歌「ショウほど素敵な商売はない」(There Is No Business Like Show Business) は、ずばりショウ讃歌で楽しさ満点。アニーとフランクが歌う「愛は素敵」(They Say It Is Wonderful) のロマンティックなメロディーを二人で美しく聴かせてくれる。一方、宝田フランクに一目惚れしたアニーに、フランクが歌う「俺が結婚する娘」(The Girl That I Marry)、後日、アニーが好きになって恋心を歌う「俺の負けだ」(My Defenses Are Down) も聴き応え充分。一幕の終わりで、アニーがシティング・ブル酋長 (森川信) の養女になって歌う「私もインディアンよ」(I Am An Indian, Too) も、陽気で楽しい。映画で見慣れた作品とはいえ、生演奏で熱唱する舞台には、格別の良さがある。 第2幕でバッファロー・ビルの一座はヨーロッパ巡業に出る。この旅でアニーはヨーロッパ諸国の国王や皇帝から沢山の勲章を授けられたが、現金収入に繋がらず、興行的には失敗だった。ニューヨークへ帰るのも家畜輸送船で牛たちと同居になる。アニーは甲板でフランクへの想いを「あの人に抱かれて」(I Got Lost In His Arms)に託す。ニューヨークのホテルでは、経営不振のポーニー・ビルが、大成功したらしきバッファロー・ビルを抱き込もうと、一座の歓迎パーティーを開く。赤いドレスの上に勲章を胸一杯に付けたアニーが歌う「朝に太陽」(I Got The Sun In The Morning) は圧巻。アニーはフランクに再会するが、どちらが世界一の射撃手かで口論になってしまう。ここで歌われるフランクとアニーの掛け合い「あなたには負けない」(Anything You Can Do) は、実に愉快。結局、改めて射撃の試合となり、アニーは故意に負けて、恋を勝ちとり、ハッピー・エンディング。 出演者は他に山茶花究 (ウィルソン館の主フォスター・ウィルソン)、浦島千歌子 (フランクの付き人ドリー・テイト)、森山加代子 (ドリーの娘ウィーニー)、等々。金子光信 (アニーの弟ジェイク)、岡崎友紀子 (アニーの妹ジェシー) 等、子役の活躍も印象的だった。アーヴィング・バーリンの名曲揃いのこの舞台、見終わってもバーリンの珠玉のメロディーが耳から離れない。 (1964.11.11.)
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それは「アニーよ銃をとれ」で始まった http://www.musicpenclub.com/talk-200811.html