2016年1月 

  

「シカゴ」アメリカ・カンパニーの来日公演・・・本田悦久(川上博)
☆ジョン・カンダー作曲、フレッド・エブ作詞のブロードウェイ・ミュージカル「シカゴ」が、12月4日から23日まで東急シアターオーブ、26日と27日は、梅田芸術劇場メインホールで上演された。(筆者の観劇日は初日)
 「シカゴ」がブロードウェイで初演されたのは1975年6月3日、46丁目劇場で、今から40年半も前のことだ。脚本はフレッド・エブとボブ・フォッシー、演出・振付はボブ・フォッシー、出演は、グウェン・ヴァードン (ロキシー・ハート)、チタ・リヴェラ (ヴェルマ・ケリー)、ジェリー・オーバック (ビリー・フリン)、バーニー・マーティン (エイモス・ハート)、その他。上演回数は898回だった。
 1996年にオープンした現在続演中のリヴァイヴァル版「シカゴ」は、先月 (11月) 、ブロードウェイ続演20年目を迎えた。
 舞台は1920年代末のイリノイ州シカゴ。禁酒法時代にマフィアが暗躍、街ではジャズが鳴り響く。ある夜、人妻ロキシー・ハート (シャーロット・ケイト・フォックス) が、不倫相手のフレッド・ケイスリー (ブレント・ハウザー)に別れを告げられ、かっとなって銃で撃ち殺し、留置所に送られる。そこにはボードビル・スターのヴェルマ・ケリー (アムラ・フェイ・ライト)がいた。彼女も殺人犯だが、女看守ママ・モートン(ロズ・ライアン)を通じて、腕利き弁護士ビリー・フリン (トム・ヒューイット)を雇い、無罪を勝ち取ろうとしている・・・・。
 ロキシー・ハート役のシャーロット・ケイト・フォックスは、NHKの連続テレビ小説「マッサン」のエリー役で日本でもお茶の間の人気者になった。彼女はブロードウェイで2週間主役を務め、今回の日本ツアーに参加した。もう一方の主演女優、ヴェルマ・ケリー役のアムラ・フェイは、来日直前までブロードウェイのアンバッサダー劇場に出演していた。さすが史上最高の“ヴェルマ女優”と云われているだけに、幕開け早々に彼女が「オール・ザット・ジャズ」を歌いだすと、舞台は一気に20年代のシカゴとなって、観客を引きつける。
 ダンサー志望のロキシーは、フリンと夫エイモス・ハート(トッド・ブオノバーネ)を利用して無罪と共にセーショナルな話題で、スターになろうと画策する。スターの座を奪いあっての、ロッキシーとヴェルマの戦いは凄まじく、華やかな歌とダンスが舞台狭しと繰り広げられる。フリンの活躍?で「無罪」を勝ち取った二人だが、スターの座は新人!殺人犯にさらわれ、場末の舞台で二人組の元殺人犯ダンサ-として仕事にありつく。
 「オール・ザット・ジャズ」「監獄タンゴ」「ロキシー」「ミスター・セロファン」「ラズル・ダズル」等々、カンダー&エブの楽しい曲揃いのミュージカル。
 東京公演の12月17日から27日までのマティネーには、大澄賢也 (フレッド・ケリー)と湖月わたる (ヴェルマ・ケリー)が登場し、舞台に大輪の花を添える。

招聘元: キョードー東京 <Photo by RYOJI FUKUOKA>



宝塚OGによるブロードウェイ・ミュージカル「シカゴ」
http://www.musicpenclub.com/talk-201501.html

韓国ミュージカル「HARU」の来日公演・・・本田悦久(川上 博)
☆韓国ミュージカル「HARU <あの日に戻れるなら> の来日カンパニーの公演が、12月13日から25日まで、東京の明治座で行われた。(筆者の観劇日は12月15日)
 このミュージカル、韓国では2007年にソウルのアート・センターで上演され、好評だった作品。作曲はチャン・ソヨン、脚本:オ・ウニ、演出: キム・ジャンソプ、振付:ソ・ビョング。
<ストーリー> 101年ぶりで地球に接近する彗星 “フォルトゥナ”に、町は沸いていた。正義感の強い刑事カン・ヨンウォン (ユゴン) は、忙しい日々が続く。花屋で働く恋人のミン・ヨンドゥ (SUNDAY) は、恋人に逢えないし、誕生日に来たメールも何だか味気ない、せめて理想のロマンチックなメールを想像してガマンする。脚本家のハン・ミノ(ホ・ヨンセン)は、スランプの真っ最中。彼の妻チョン・ウス (キム・ヨジン)は、視力が失われつつあるが、なかなか夫に告白出来ない。4人はそれぞれの想いを胸に、表面的には平凡な一日 (HARU) になる筈が、ミン・ヨンドゥとチョン・ウスは、列車事故で死んでしまう。カン・ヨンウォンは恋人に、ハン・ミノは妻にもっと優しくしておけば良かったと悔やむ。男たちは時の神に出会い、一日前に戻してもらい、恋人に妻に精一杯優しくするが、時の神のいたずら心で、二人の女性はやはり列車に乗り込み、あえなく死んでしまう。時の神は時を戻すというルール違反の罪で宇宙をさまようことになる。観客の期待に反しての結末は何を訴えたいのか、後悔先に立たずか・・・。観終わってすっきりとしないエンディングではあるが、楽曲の良さと出演者達の演技力と歌唱力の素晴らしさに救われた。



Photo by 阿部章仁

ブロードウェイ・ミュージカル「口笛は誰でも吹ける」日本初演
・・・本田悦久 (川上博)
☆日本版「口笛は誰でも吹ける」が、年の暮れも迫った2015年12月17日から23日までの7日間、東京 恵比寿の小劇場、エコー劇場で上演された。(筆者の観劇日は19日)
 アーサー・ローレンツ脚本、スティーヴン・ソンドハイム作詞・作曲のミュージカル・コメディ。ブロードウェイ初演は1964年。リー・レミック、アンジェラ・ランズベリー、ハリー・ガーディノ等々の出演だった。但しこの作品、たった9回の上演で終わってしまった失敗作。とは言うものの、さすがソンドハイム。1995年にカーネギー・ホールでコンサートが開催されたり、2010年にはニューヨーク・シティ・センターで “アンコール”があった。そして、その5年後、翻訳・訳詞・演出: 勝田安彦の東京版に繋がった。
 舞台は50年程前のアメリカの田舎町。財政破綻の危機を救おうと、市長のコーラ (旺なつき)は、会計監査官や収入役、警察署長じたちと画策して、偽物の奇跡をで っちあげ、町に観光客を呼び込む。精神病院の看護婦のフェイ (宮内理恵) は、インチキの奇跡を見抜いて、市長たちを告発しようと考える。そこに新任の精神科医(実は新しい患者)ハップグッド (柳瀬大輔)が精神病患者たちをグループ分けしたので、患者たちは面白がり、町中が大騒ぎとなる・・・。看護婦のフェイは、ニセ医者とは知らず、堅苦しい生き方を止めて、口笛でも吹くといいと助言され、ハップグッドに恋をしてしまい、混乱は果てしない。
出演者は他に治田敦、石鍋多加史、福沢良一、村國守平、萬谷法英、荒木里佳、天宮菜生、上野哲也、宇部洋之、大嶋奈緒美、奥山寛、等々。
 金儲けに固執する役人達の狂気と、自分に正直な故に、狂人とされたハップグッドの幸せそうな様子・・・。ソンドハイムの真意はどこに? 次々と意表をつく展開に舞台から目が離せない。「僕は青い鳥」「私と私の町」「トランペットは鳴らない」「町にパレードが」「私と遊びましょう」「口笛は誰でも吹ける」「駄目だやめろと誰もが言う」等のミュージカル・ナンバーが楽しい。

<舞台写真提供: タチ・ワールド>

「『ザ・ビートルズ1+』を見て聴いて。聴き馴染んだ名曲に映像が付くと、こうも違って聴こえるのか。」・・・星加ルミ子
 これまで何百回となくザ・ビートルズの楽曲は聴いてきたが、本作の映像付きのトラックを聴いて、新しい発見があったことにちょっと驚いている。
 それにしてもこれだけの映像をよく見つけてきたものだと感心してしまった。もっと鮮明なあるいは良い映像が見つからなかったのかとどうしても思わざるを得ないものもあるが、それも許せる位、良く出来ている。
 ごく初期のものはほとんどがテレビのフィルムやスタジオでプロモーションのために撮られた映像で口パクでモノクロだが、演奏も歌も四人だけでやっていたことがよく分かる。
これが第一期(デビューから1964年位まで)とすると、ビデオ撮影が混じる1968年位までは映像もカラーになり、曲もヴォーカルのバックにキーボードやストリングス時にはオーケストラを入れ華やかな曲調が主体になる。1967年以降ライブステージでは演奏出来ないというジョン・レノンの宣言で公演は一切やらなくなった。ここまでが第二期といえそうだ。
 そしてラストステージでは名曲がずらりと並び、何度も見たことのある映像さえも感動するのが不思議だ。
 漫然と聴いてきた曲さえ映像が付くとこうも違って聴こえるのかと、ザ・ビートルズの曲のすべてに深い敬意を感じずにはいられない。

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