2016年1月 

  

Popular ALBUM Review


「The Complete Singles:50th Anniversary Collection/ママス&パパス」(BSMF RECORDS:BSMF-7520)
 今から50年前の1966年6月21日(火)。近鉄大阪線「長瀬」駅前の「フタバ書店」(レコード売り場併設)まで自転車を走らせ初めて自分の小遣いで買ったレコード(シングル盤)が同年全米4位の「夢のカリフォルニア」だった。ママス&パパスにとっても今年(2016年)は世に出るきっかけとなった'夢カリ'から「50周年♪」。これを記念して企画されたこの2枚組はママ・パパのシングル16枚のAB面(31曲分:B面曲のダブリが1曲あり)に加えてキャス・エリオット、ジョン・フィリップス、デニー・ドハーティの各メンバーがママ・パパと同じダンヒル・レコードから出したソロ・シングルのAB面(22曲)も収録。当時のシングルゆえほとんどがモノラル音源で大半が世界初CD化♪しかも「アイ・ソー・ハー・アゲイン」(1966年:米5位)のようにアルバムとは違ったシングル・ヴァージョンになっている楽曲もあり、まさに待望のコレクション。誰よりも一番喜んでいるのはこの私♪(上柴とおる)


Popular ALBUM Review


「One Night In Chicago / Paul Marinaro」(122 Mytle Records)
 シカゴを地盤にして人気を盛り上げてきたシナトラの伝統を引き継ぐ若手シンガー、ポール・マリナロの2作目は、ライブ・アルバムだ。(アナウンスでは、マロナロに近い発音)。彼は、2013年にデビュー作「ウイズアウト・ア・ソング」を発表している。プロ歌手になりたかったが、家族の爲に諦めたという父親に捧げるもので、父の古いアセテート盤とデュエットしたり親孝行ぶりが話題になった。その時、喜んだ父も最近亡くなった。今回、そのアルバムも本アルバムと同時に限定販売の2枚組のLPで発売になっている。今回の作品は、2015年6月にシカゴのハイ・ハット・クラブでライヴ録音されたもの。ベン・パターソン(p)アンディ・ブラウン(g)のカルテットをバックに「デヴィル・メイ・ケア」、「キャラヴァン」等のスタンダード・ナンバー9曲を豊なバリトン・ヴォイスでエネルギッシュに歌いまくる。バラードも良いが、ボビー・ダーリンを思い出させる格好良さのアップ・テンポの曲が特に魅力的だ。ハンサム・ガイで見かけも良く、これからの活躍がますます期待されるシンガーだ。(高田敬三)


Popular CONCERT Review


ジョー・ポーカロ・カルテット フィーチャリング・エミル・リチャーズ(11月14日 丸の内・コットンクラブ)
 息子のジェフ・ポーカロは若くして亡くなったが、父親のジョー・ポーカロは今も現役だ。しかも今回はモダン・ジャズばかりのプログラムなのだから興味が高まる。共にフィーチャーされたのはヴィブラフォン奏者のエミル・リチャーズ。昭和20年代の日本に駐留して秋吉敏子らと共演、その後1962年にフランク・シナトラのバック・バンドの一員として再来にした筋金入りの老練だ。ジョーとエミルの年齢を合わせると168歳になる。演目は「リトル・サンフラワー」「ストレート・ノー・チェイサー」「ブルーゼット」等。しかし展開はほぼ9割がたヴィブラフォンのテーマ提示とソロ→ピアノ・ソロ→ベース・ソロ→メロディ楽器とドラムスの4・8・12小節単位のソロ交換→ヴィブラフォンの後テーマ、という感じなので先が読めてしまい、そういった点でのスリルはゼロに近かった。しかしエミルのフレーズは機知に富み、ジョーのプレイは特に左利きのドラマーに大きな示唆を与えたはずだ。(原田和典)
写真提供/COTTON CLUB
撮影/米田泰久 


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BLOODEST SAXOPHONE feat. BIG JAY McNEELY(11月16日 渋谷・クラブクアトロ)
 日本を代表するホンカー、甲田ヤングコーン伸太郎を中心とする熱く男臭い気鋭ジャズ集団“ブラッデスト・サキソフォン”が、3年ぶりにビッグ・ジェイ・マクニーリ—を招いて一夜限りのライヴを行なった。ビッグ・ジェイは1940年代から活動する“ホンカーの王者”。ハンス・ダルファーを始め、多くのサックス奏者から敬愛されている。88歳ということもあり、以前のような会場練り歩きや寝転がってのプレイはなかったが、ブロウの圧力は「さすが」のひとこと。同じ曲のエンディングを7回も8回も繰り返し、オーディエンスをトランス状態に持っていくあたりのくどさ、しつこさも鳥肌ものだった。3年前はやや“バック・バンド”という感じがしないでもなかったブラサキもこの巨匠と見事に渡り合い、聴きごたえのあるプレイを次々と披露。エンターテイナー、ビッグ・ジェイのさらなる長寿とブラサキの発展を心から祈りたい。※画像は前回来日時のもの
(原田和典)


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鈴木良雄 Generation Gap meets 和太鼓『Generation Gap』リリース記念ライブ(11月20日 渋谷・JZ Brat)
 重鎮ベーシスト、鈴木良雄が2008年に若手ミュージシャンと結成したユニット“ジェネレーション・ギャップ”。3月にリリースされた同名アルバムも好評の彼らが、ツアーの実質的最終公演を渋谷で行なった。グループ名は一種のジョークだろう。世代など超越して一丸となって“良いサウンドを創造すること”に取り組んでいるのがいい。ハクエイ・キムのイマジネーション溢れるピアノ、急きょ代役を務めることになった大槻KALTA英宣のシャープなドラム・プレイにも聴きほれるばかりであった。鈴木の音色は相変わらず暖かできめ細やか、弓弾きも含めて“ウッド・ベースを堪能した”という気持ちにさせてくれるのが嬉しい。曲によっては友野龍士(和太鼓)と坂本富美佳(鳴り物)が参加したが、これもしっかり鈴木たちが奏でるモダン・ジャズに溶け込んでいた。このグループは、世代だけではなく、カテゴリーのギャップも埋めているのだ。(原田和典)


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「イダン・ライヒェル・プロジェクト」12月14日 神奈川県民ホール
 普段聴き慣れないイスラエルの音楽だと言う事で、どんな音楽が飛び出すのか何の予習もせずに席に着いた。徐にイダン・ライヒェルが登場し、日本語と英語を交えた挨拶の後、クラシカルなピアノ・ソロを聴かせ、イスラエル伝統の舞踏をモチーフとした「サークル」の弾語りでライヴの幕が上がる。美しい旋律に、イダンの柔らかい中域の声が重なり、何とも言えぬ心地良さが漂う上質のフレンチ・ポップとクラシックをミックスした様な音楽だ。この日のセットリストは、間違いなくベスト選曲なのだろうが、どの曲も全く飽きさせることない佳曲ばかりだ。特にエチオピア民謡をベースとした「なんじ、美しき」は、文化や国を超えたクロスオーバーな名曲で、心の中から熱くさせるものがある。また、エチオピアのアムハラ語民謡をアレンジした「ハンサム・ヒーロー」は、人間・生き物の原点に帰れと歌っている様に元気をくれる。この日最も美しいメロディを聴かせてくれたのは、女性ヴォーカルが丁寧に歌い上げるアラビア語曲「君去りし日から」だ。どの曲もその曲が生まれた土地のイメージを残しながら、中東の妖艶さが漂い、内容の濃いメッセージが語られている。確かにイダンは、その才能溢れる楽曲と弾き過ぎないセンスの良いシンプルな演奏から、21世紀を代表するコンポーザー&アレンジャーだと感じられる。彼らの音楽は、ワールド・ミュージックと呼ばれると言っていたが、70を超える国や文化を融合したワールド・ワイド・ミュージックなのだ。古のユダヤの民に安住の地があったのなら、音楽の世界は変わっていたのではと思わせる、そんな感動と驚きに満ちたライヴだった。(上田和秀)


Popular INFORMATION


「バンダ・マグダ」
 バンダ・マグダとは聞きなれない名前かもしれないが、ギリシャ出身の女性シンガー、マグダ・ヤニクゥを中心とした6人グループ。といってもギリシャのバンドではない。メンバーには日本人2人の他、南米やアメリカ出身者もいる多国籍バンドで、そのサウンドもフレンチ・ポップ、ジャズ、サンバ、ジプシー・スウィング等、世界各地の様々な音を土台にしたマルチ・カルチュラル・ミュージック。マグダの透明感のあるハイ・トーン・ヴォイスも特徴のひとつで、時には軽快だったり、抒情的だったり、浮遊感を漂わせたりと、ジャンルではくくれない不思議な魅力を醸し出す。結成は2011年。ニューヨークのブルックリンを拠点に活動をスタートさせ、iTunesのワールド・チャートで首位を獲得して注目を浴びたという、まさに今の時代を象徴するグループの初来日公演だ。(YT)

* 1月18〜20日 コットンクラブ
お問い合わせ:コットンクラブ (03)3215-1555


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