2016年1月 

  

Audio Blu-Ray Disc Review

「COBAIN モンタージュ・オブ・ヘック」(NBCユニバーサル GNXF-1908)
 商業ロック全盛の時代に風穴を空け、日本のロックにも大きな影響を与えたニルヴァーナのリーダー、カート・コバーンの誕生から27歳の死までを追ったドキュメント。離婚した父母双方との不和、鉄道自殺を試みた孤独な少年時代。ライフルの代わりにギターを手にしバンドを結成した後はギグに明け暮れる日々。そしてメジャーデビューと目の眩むような成功。
 生前のコバーンについて語る父母、かつての恋人達、バンドのメンバー。誰もがまだ老人でなく元気でリッチ。本人だけが「いない」のが痛ましい。記録映像とインタビュー中心なので画質はそれなりだが、少年時代の出来事をアニメで描いたりコアなファンならずとも引き込まれる映像作品の工夫がある。
 ニルヴァーナの音源やインタビュー音声が中心だが、コバーンが駆け抜けた時代(ドラッグ文化)を再現するためにSEをサラウンドでパンさせたり、音響の工夫が映像に奥行きを生む。(大橋伸太郎

Audio Blu-Ray Disc Review

「エリック・クラプトン スローハンド・アット70ライヴ・アット・ザ・ロイヤル・アルバート・ホール」(ワードレコーズ GQXS-90082)
 E.C.古希記念コンサートのステージ収録。縦横無尽に動き回るロボットカメラが観客に埋め尽くされたロイヤル・アルバート・ホールの偉容をダイナミックに俯瞰。レーザー光やプロジェクションの演出と相俟って大画面負けしない臨場感豊かな映像だ。
 ここでのE.C.はスティーブ・ガッド(ds)やノーザン・イースト(bs)等ヴェテランをバックに従えギターのサポートは一人だけのストレートな演奏。
肝心の音質。リニアPCMステレオとDTS-HDマスターオーディオ5.1chの二種類が選べ、両者共に96kHz/24bitのハイレゾ音声。どちらも良好だが前者がアコギの倍音やタムの打撃の解像感により優れる。16分の最も長い演奏(「リトル・クィーン・オブ・スペード」)が特典映像に回っていてこちらもハイレゾなのが嬉しい。
 二種類のハイレゾ音声は音質良好だが、筆者のシステムの場合(oppoBDP-105DJAPAN LIMITED+TA-DA5800ES)サラウンドのデコードが不安定だった。ハードとの相性だったらよいのだが。(大橋伸太郎

Audio Blu-Ray Disc Review

「ザ・ローリング・ストーンズ ライブ・イン・リーズ1982」(ワーズレコーズ GQXS-90093)
 前号でハル・アシュビーの「レッツ・スペンド・ナイト・トゥゲザー」を礼賛したら、同時期(1982年)英リーズのステージ映像が偶然にもリリースされた。ツアー最終地で母国なのでメンバー全員どこかほっとした表情。イアン・スチュアートのピアノ、キーボードにサックスが二本、お定まりの黒人女声コーラスなしの簡素な編成。映画版の派手にショーアップしたステージに対し、ここでは舞台演出を排したストレートなロックンロールだ。
 SD映像のアップコンバートで4:3スタンダード。黒の重厚な沈み方、赤系のしっとりした発色がいかにもPALからの方式変換。音声はDTS-HDマスターオーディオ5.1chとリニアPCMステレオでどちらも96kHz/24bitハイレゾ音声。サラウンドは残響が過剰で飽和感がある。
 サラウンドはミックのボーカルがLCR 均等に出音、LRは演奏とボーカル。ステレオの方がクリアで鮮鋭感があるがややボーカルが薄く、ボーカルの迫力はサラウンドが勝る。(大橋伸太郎