「JERSEY BOYS The Story of Frankie Valli & The Four Seasons」は、10年前 (2005年11月6日) にブロードウェイのオーガスト・ウィルソン・シアターでオープン、今も続演中の大ヒット作。2006年のトニー賞では、8部門でノミネートされ、最優秀ミュージカル作品賞、主演男優賞 (ジョン・ロイド・ヤング)、助演男優賞 (クリスチャン・ホフ)、照明装置賞 (ハウェル・ビンクリー) の4部門で受賞した。
そのツアー・カンパニーがキョードー東京の企画・制作・招聘により:来日、東急シアターオーブで6月25日から7月5日まで上演した (筆者の観劇日は初日の6月25日) 。
ニュージャージー州出身の4人組ヴォーカル・グループ「ザ・フォー・シーズンズ」の物語。演出のデス・マカナフは、10才の頃、初めて買ったLPレコードが「シェリー」他11曲入ったザ・フォー・シーズンズの10インチ盤だったという。何というご縁だろう。グループ名に因み、第1幕が「春」「夏」、第2幕が「秋」「冬」となっているのが洒落ている。 ニュージャージーの貧しい地区に生まれたフランキー・ヴァリは、その美しいファルセットの歌声に才能を見た兄貴分のトミー・デヴィートとニック・マーシに誘われて、バンド活動を開始するが、リーダー格のトミーの思惑は外れ、下積みが続いている。やがて、フランキーの歌声に魅了されたシンガー・ソングライターのボブ・ゴーディオが加わり、彼の作曲による“BIG GIRLS DON'T CRY” “SHERRY”“CAN'T TAKE MY EYES OFF YOU”など数々のヒット曲を出して、この4人のグループはスター街道を駆け上る。
しかし、栄光の座についたものの、トミーがバンドのギャラを着服する不祥事からメンバー間の確執が生まれ、ニックはバンドを辞め、兄貴分のトミーとも大きく距離が出来たフランキーは、作曲に専念し始めたボブの助言で、ソロ活動を始めるが、昔からの地元の仲間との別れの寂しさは、癒されることはなかった。 トラブル続きから現実にはグループ活動は続いていなかったが、圧倒的なヒット曲が人々に長く愛され続け、1990年に「ロックの殿堂」入りが決まり、4人は久々に “ザ・フォー・シーズンズ”として、華やかに数々のヒット曲を披露する。文字通りグループの再来のような舞台に、客席は大きく盛り上がり、拍手が鳴りやまなかった。
筆者がその昔、日本ビクターに入社した頃、レコードは78回転のシェラック盤から、45回転ドーナツ盤、33 1/3 回転のLP盤に変わる過渡期だった。築地スタジオの文芸部編集課に配属され、洋楽に携わっていた。洋楽といっても、アメリカのRCAビクターから入ってくる音源だけだった。 間もなく、アメリカではマイナー・レーベルの全盛期を迎える。日本ビクターでもドット、アトランティック、インペリアル、リプリーズ、トップ・ランク、ヴィー・ジェイ、シーコ等々のマイナー・レーベルを次々に契約し、ワールド・グループ・レコード部を立ち上げ、筆者が担当した。
フォー・シーズンスの「SHERRY」、「BIG GIRLS DON'T CRY」(恋はヤセがまん)、「WALK LIKE A MAN」(恋のハリキリ・ボーイ)、「CAN'T TAKE MY EYES OFF YOU」(君の瞳に恋してる)・・・そんな邦題をつけたな・・・と、懐かしい昔を思い出し、感無量の想いで会場を後にした。