2015年4月 

  

"Live Love Rock"シーナ。・・・・・池野 徹
 
<Photo by Tohru IKENO>

 いつだってビューティフル。いつだってハートフル。いつだってワンダフル。そしていつだって元気フル。と「You May Dream」の自著の中で冒頭にシーナは言っていた。そんなモットーと言うか、そのとおりそれをロックの世界で生きていた。シーナはマコトとめぐり逢いロックのあるべき道を35年にも渡り突っ走ってきた希有な女性歌手だ。
 ロックミュージッシャンはカッコヨイということが一番だ。そのシャウトするヴォーカル、そのムーヴィングする動き、そのベースのブルースロックのストレートさ、そのヴィジュアルもハートも人々にあたえるパワー、それがロックンローラーと思っている。もちろん、スキニーであるとか、ハングリーであることを含めて、そんな条件にサティスファクションできるのは、ザ・ローリング・ストーンズとシーナ&ロケッツだ。そのライヴを年を経て何度もリフレインして見て来たものには、その眼と耳とボディに感じる事で、記憶させられている。
 シーナとの出会いは、1980/7/21号のマガジン「平凡パンチ」だ。この号に私の最初のグラビア写真ハワイで撮影した「キャティ」が載っている。そして、ニュースグラビアに、いま、熱い轟音とともに発射!「シーナ&ロケット」の記事があったのだ。「You May Dream」がヒットチャートに入り、異常な人気で盛上がってきた事。カモシカの脚をもったセクシーロックアイドルそれがリードヴォーカルのシーナ。彼女の挑発的な姿態はオレたちを熱く燃えさせるとオトコ目線のキャプションがついていた。
 その後内田裕也と出会い、ニュー・イヤー・ロック・フェスティヴァルに登場していたシーナ&ロケッツのライヴに接する事になる。マコトのブルージイなギターにのってオンステージするシーナは、すでに熱狂的なファンに囲まれていた。その上気したステージを降りたバックステージでシーナとマコトに出会うと、九州弁まるだしの朴訥な若者だった。ステージのツッパリからいえば、ロックやる者としては、まるで正反対のナイーヴなシーナ&マコトだった。話しをするとローリング・ストーンズ好きなことがわかり、意気投合できたのだ。
 シーナは若い頃、陸上の選手だった。その美しく強靭な脚でこれまでの人生を走り抜けてきた。良きパートナーのマコトと出会い、3人の娘にも恵まれ、イギリスやニューヨークでもパフォーマンスして、その走り続けるシーナは素直に皆と共にロックミュージックを共有して来た。「ロックはリズムとビートと脚腰よ」と言って来たシーナ。その愛するロックに殉じたのかもしれないが、こんなにもロックを愛した女性は、まさに、「クイーン・オヴ・ロック」そのものだろう。
 軽薄なメディアに煽られて仕掛けられたミュージックの氾濫しているニッポンのマーケット。そんな中でロックミュージックの本来あるべき姿を、まさに自分自身のペースで走り続けたシーナ&マコトに敬意を表したい。シーナはそのしなやかな脚とともに永久に走り続けるだろう。シーナは「ロックは愛よ」と言った。シーナはその愛に生き続けるだろう。

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