ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
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Popular Review

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ALBUM Review

MIRACLE NIGHT LIVE/CASIOPEA(カシオペア)

Blu-ray:HATS UNLIMITED HUXD-10960

 昨年9月11日、川崎クラブ・チッタで行われたカシオペアのライブのBlu-ray盤。この日は、午後から夜にかけて豪雨となり、東海道新幹線や東海道線が止まってしまい、大変だった。危うく中止になりかけたが、なんとか敢行された。それがタイトルの由来だ。
 キーボード奏者が、安部潤に代わって初のホール・ライブである。全20曲を休憩なしのノン・ストップによる圧倒的な演奏で、聴衆を魅了した。新生カシオペアは、世代を超えた実力派が勢揃いしている。オープニングから最後まで、全員が絶妙に絡み合う。緻密に練り上げたアンサンブルと共に、さらなるバンドの高みを目指す野呂一生のリーダーとしての心意気が、歌心溢れる渾身のギター・プレイからも伝わってきた。また、このBlu-ray盤は、全編美しい映像で、演奏者たちの手元もよく見え、どのように演奏しているのかがよくわかる貴重な映像となっている。これだけ良く出来た映像作品を、初めて見た。
 この日のSET LISTは、4つの章で組み立てられており、カシオペアの魅力が様々な観点から味わえるようになっていた。第1章は、「HISTORY」と称し、カシオペアの第1期、第2期、3rd、P4から選ばれた4曲。1曲目は、「LOOKIG UP」(1983年)からスタート。初めから、全員が全力で飛ばしていくのだからモノすごい。第2章は、「NEW」と称し、安部潤が加入して録った最新作『TRUE BLUE』(本年度MUSIC AWARDS JAPAN 最優秀ジャズ・アルバム賞ノミネート作品)から、6曲も披露した。野呂のオリジナル3曲。鳴瀬1曲。今井1曲。安部1曲が、それぞれのMC付きで、披露された。「SKY SO HIGH」は、いかにも野呂らしいキャッチ―な曲。「THE LIGHT FROM FUTURE」(野呂)は、6/8拍子のシャッフル・ビートの曲。跳ね具合が心地好い。「TIME FLIES BY」(鳴瀬)は、鳴瀬自身がメロディを奏でるシックな曲。「CARAVEL」(今井)は、海や船がイメージされる名曲。「EAGLE FLY ARIUND」は、一番カシオペアらしい曲だが、実は安部潤の作曲だ。彼は、カシオペアをよく理解しているのだ。スリリングなリズムのキメがあり、リズム隊が光る。野呂のソロもカッコ良い。キーボード奏者が大髙清美から安部潤に代わり、バンドのサウンドが、元々のカシオペアに原点回帰したような感じがする。今回最も注目を集めた安部潤だが、おそらく彼の頭の中には膨大な音楽の引き出しがあり、カシオペアの楽曲ごとに、一番ふさわしいサウンドを瞬時に選び取り、構築していく技術の素晴らしさを感じる。
 第3章は、「SMOOTHLY」と称し、アコースティックなサウンドを3曲演奏する。野呂と鳴瀬が楽器をチェンジする。ギターもベースも歪んだ音は、決して出さない。安部潤は、キーボードを巧みに用いて、まるでアコースティック・ピアノとしか思えない美しい音を奏でる。「TAKE ME」など往年の名曲が、丁寧にメロディアスに演奏される。聴衆は、静まりかえってうっとりと楽しんでいる。こういうコンサートの流れも、良く考えられている。最終章は、一転して「NON STOP」と称し、大人気のノリの良いナンバー「ASAYAKE」や「DOMINO LINE」など5曲を正にノン・ストップで演奏し疾走する。野呂一生は、超絶技巧でギターを弾きまくる。鳴瀬、今井のリズムセクションは、パワフルで完成度の高いパフォーマンスで、聴衆は大興奮である。会場は、総立ちである。日本だけでなく海外でも人気の楽曲「ASAYAKE」で大団円を迎えたが、更にアンコールで2曲演奏した。
 最後に本作の2枚組CDが、5/27にリリースされたことをお伝えしたい。(高木信哉)

ALBUM Review

モンキーズ「ザ・エーズ、ザ・ビーズ・アンド・ザ・モンキーズ」

(ワーナーミュージック)WPCR18826-27

 2026年はデビュー曲「恋の終列車」から60周年ということで新たに編集された2枚組。モンキーズのベスト盤はこれまでにも数え切れないほど世に出ているが、ふと振り返ってみるとこういう企画盤はありそうでなかったかも?
 カタカナの邦盤タイトルではいまいちピンと来ないが英語では「The A’s, The B’s & The Monkees」。要するにシングル盤12枚分のA面曲とB面曲を収録したもので、こういったシングルのAB面集の類は古くからの定番としておなじみだが、今回はA面曲をDisk-1に、そしてB面曲をDisk-2という風にAB面をそれぞれ‘独立’させたところがミソかと。
 有能な若手のソング・ライターたちが関わっていたこともあり、楽曲のクォリティーの高さもモンキーズの魅力で、実はB面曲からも目が離せなかった。 ‘両面ヒット’になったシングルも少なくない。「ステッピン・ストーン」(20位)「どこかで知った娘」(39位)「恋の合言葉」(11位)「ゴーイン・ダウン」(104位)「タピオカ・ツンドラ」(34位)「君と一緒に(It’s Nice to Be With You)」(51位)「アズ・ウィ・ゴー・アロング」(106位)「サムデイ・マン」(81位)「マミー・アンド・ダディ」(109位)と今回収録のB面12曲中、9曲がチャートに入っているのである。
 当時(1960年代後期)彼らのニュー・シングルが出るとそのB面曲も気になったものだが、今回の企画盤はそういったB面曲を‘独立’させておなじみのA面曲の添え物ではなく対等に扱っているところに意義を感じる。(上柴とおる)

ALBUM Review

「スーパー・スターの無名時代:アメリカン・ロックへの道」

(オールデイズ レコード) ODR7471

 このアルバム・タイトルの英語表記は「Superstars Before They Were Famous:The Road To American Rock」。後に大ブレイクを果たしてアメリカン・ロックの歴史にその名を刻み込むことになるアーティストたちの無名時代のバンド音源を24曲収集したもの。メジャー会社もあるにはあるがローカルでマイナーなレーベルから出された盤も少なくない。
 各楽曲のリリース時期は1960年代中期~後期。チャートとはほとんど縁が無かったもののその数年後というか10年も経たないうちにシーンの最前線に躍り出ることになる各メンバーたちの初々しさを湛えた楽曲の数々に「アメリカン・ロックの未来を見た!」とまでは言わないが、後の彼らの才能の萌芽を感じ取ることは出来るかも知れない。
 ボブ・シーガー、スティーヴ・ミラー、マーク・ファーナー(のちGFR)、ビリー・ギボンズ(のちZZトップ)、そして後のイーグルスを形成することになるグレン・フライ、ドン・ヘンリー、ジョー・ウォルシュ、ランディ・マイズナー、バーニー・レドン、ドン・フェルダー、ティモシー・B.シュミット、さらにオールマン・ブラザーズ・バンドやリトル・フィート、バッファロー・スプリングフィールド、ザ・バーズなどで活躍する後のお歴々たちの無名時代を覗いて(聴いて)みるのは何とも興味深い。(上柴とおる)

BOOK Review

相馬世世歌著「YOYOKA 15歳日本人少女ドラマーのルーツとアメリカ挑戦の真実」

ISBN 978-4-408-65207-8(実業之日本社)

 著者の相馬世世歌(そうまよよか)は2009年10月12日生まれ。本の表題に‘15歳’とあるのは初のソロ・アルバム「For Teen」を出した2024年10月時点での年齢で、この本が刊行された2026年5月21日には16歳になっている(10月には17歳)。
 実は以前からまだ幼い頃(7歳~8歳)の演奏動画をYouTubeで視聴してその天性の能力に驚愕していた。https://www.youtube.com/channel/UCWQAiVlpjivfvB4Cbtm_17g
 世界各国の超有名なトップ・ミュージシャンたちからも賛辞を贈られツアーを敢行していることなども把握して関心を持っていたこともあり、初の著書が出ると知るや即、注文したのだが読んでみると高まる注目度に合わせて企画されたようなよくある‘サクセス・ストーリー’ものなどではなく、その内容には正直驚いた。YouTubeを視ているだけでは全くわからなかったファミリー(両親+YOYOKA+3歳下の弟の4人)の苦悩と葛藤。
 8年前の2018年6月12日。「グッド・タイムス、バッド・タイムス」(レッド・ツェッペリン)を8歳(小学3年生)のYOYOKAが演奏する動画を視た当のロバート・プラントが目を見開いて称賛するシーンがYouTubeを通じて世界中に拡散されたことを機に一変したYOYOKAの人生。日本だけではなくアメリカのテレビ番組などからも取材のオファーが殺到し、度々渡米。そんな経緯から本格的なプロを目指してチャレンジのため4年前(2022年9月)、居住地の北海道(石狩市)から一家そろってアメリカへ移住。
 とはいえ、あちらの受け入れ態勢が整っていたわけでもマネジャーが居るわけでもなく、全く自力での試行錯誤。しかも家族4人とも英語が出来ない。ビザ、資金、クルマ、悪辣な不動産業者のせいで苦労した住居、学校。。。しかも思わぬ豪雨に見舞われたり。「そんな状況なのによくもまぁ」とある意味‘無謀’とも言われかねないが、正規雇用の安定した職業を辞めてまで子供の未来に賭けた両親(若い頃から一緒にアマチュアで音楽活動)の決断はまだ40代の若い二人が夢を娘に託したとも言える。本には著名なミュージシャンたちとの交流も描かれてはいるものの随所に両親それぞれの視点からの記述も挟み込まれており、子供の類まれな才能をいかに生かして行くかといった子育て論に一石を投じた教育書のようでもあり、そしてまた「将来は、今の私のように若くして海外に挑戦する人たちを支援する側にもなりたい」(P.230)というYOYOKAによる指南書のようにも思えて来る。(上柴とおる)

LIVE Review

アイザイア・コリアー

4月3日 東京・コットンクラブ

 NY「ヴィジョン・フェスティヴァル」の動画配信を見てから、最も生で聴きたかった奏者が日本にやってきた。アルバムの出来も素晴らしいので、いつだったかの「ジャズイン」誌で年間ベストに選んだことがある。つまり楽しみに胸を膨らませてライヴに接したのだ。1曲目は「イッツ・イージー・トゥ・リメンバー」。同曲を吹くジョン・コルトレーンをファラオ・サンダースがトレースしたものをまたトレースするような演奏には「なんでまた?」と思ったが(ファラオの技のひとつである、サックスのベルの奥までマイクを入れてキーをカチャカチャいわせる技も入れていた)、それを終えてから一気に自分の、アイザイア・コリアー&ザ・チョーズン・フューの濃厚な世界へ突入していく。アイザイアはコルトレーンやファラオはもちろん、故郷シカゴの大先輩、たとえばジーン・アモンズやアリ・ブラウンなど、骨太なブロウアーへの大きな敬意も持っている。そこに「現代」というファクターが加われば、とびきり肉厚の、2026年に息づくモダン・ジャズが生まれるのだ。メンバーではドラムスのティム・リージスが圧倒的なすさまじさ。ツイン・ペダルを使いながら、どこのテクニカル・フュージョン・バンドかと思えるような音数で、しかも粘っこさを忘れず、音圧たっぷりにソリストを煽るのである。(原田和典)

写真提供/COTTON CLUB  Photo by Makoto Ebi

LIVE Review

ULTRA-VYBE 40th Anniversary Event “FORTH FROM FORTY” DAY1

5月10日・恵比寿リキッドルーム

 インディペンデント系レコード会社のウルトラ・ヴァイヴが設立40周年を迎えた。私がこの会社を知ったのは上京間もない平成初期、住み込みで新聞配達をしていた頃だ。なけなしのカネをはたいて、錦糸町のデパートの中にある新星堂で、ジャックスの『JACKS CD BOX』を予約購入した。自分の中で早川義夫がますますヒーローになった。以来、ここは私にとってかけがえのない音楽を供給してくれる会社という印象がある。その40周年ライヴイベント、ガッツリ4時間はあったのではないか。登場したのはLIBRO、漢 a.k.a. GAMI & D.O、DJ KRUSH、田我流の4組。男くさく骨太な空気が満員のリキッドルームに充満する。この日唯一のDJセットと言っていいであろうDJ KRUSH(初めて聴いたのは自分が10代の頃、ジャジーアッパーカットのライヴにて)の華麗で、あれよあれよという間に観客を引き込んでいく妙技には聴き惚れるしかなかったし、PAが絶妙なのだろう、他の3組のリリックもとてもよく聞こえてきた。声、リズム、トラックがどれも立っていれば、明確に耳に飛び込んでくれば、気持ちもいいし、体も揺れる。その点、この日の音響は「日本語っていいなあ、力強いなあ」と改めて思わせてくれるものがあった。6月20日に同じ場所で開催のDAY 2にはTHA BLUE HERB、SHINGO★西成、TOKYO世界、GADOROが登場する。道産子の自分としてはアイヌの英雄・シャクシャインにもテーマを求めるTHA BLUE HERBのステージが待ち遠しくてしようがない。(原田和典)

Photo by cherry chill will.

MOVIE Review

映画『Michael/マイケル』

監督:アントワーン・フークア  6月12日より全国公開

 最も劇映画化が望まれていたアーティストのひとりであろうが、最もそれが困難そうに思われてきたであろうアーティストのひとりでもある・・・・それがマイケル・ジャクソンではないかと思う。だから彼の軌跡が映画化されると聞いたときには驚嘆したし、成人期のマイケルを演じるのが甥のジャファー・ジャクソン(ジャーメイン・ジャクソンの息子)であるという点にも驚かされた。結果はまさに“最高”、“よくぞここまで精巧に”、関係者たちの“マイケル愛”のみならず、“ブラック・ミュージックの尊厳”、“ポップスの偉大性”もひしひしと伝わってくる。描かれている物語が1988年までなのもすっきりしていていい。が、それ以降の彼をとりまくさまざまな疑問(ここではあえて触れない)にも回答がなされているような筋書きでもあり、それも含めてとにかく見るしかないのだ。あの『ボヘミアン・ラプソディ』を手掛けたグレアム・キングが製作しているだけあって、ライヴ・パフォーマンスの描き方は、まさに迫真。ジャファーも、よくぞここまでダンスを磨きあげたものだ。あと、父親ジョセフ・ジャクソンの存在が非常に重要なポイントとなっている。映画には兄弟たちも協力しているので、このえげつないキャラクターがオヤジに対する息子たちの共通見解なのだろう。(原田和典)

【コピーライト】 ®, TM & © 2026 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
監督:アントワーン・フークア(『イコライザー』シリーズ、『トレーニング デイ』)
脚本:ジョン・ローガン(『アビエイター』『グラディエーター』)
製作:グレアム・キング(『ボヘミアン・ラプソディ』)、ジョン・ブランカ、ジョン・マクレイン
出演:ジャファー・ジャクソン、ジュリアーノ・ヴァルディ、コールマン・ドミンゴ、ニア・ロング、ケンドリック・サンプソン、マイルズ・テラー、ローラ・ハリアー他
配給:キノフィルムズ 提供:木下グループ
公式HP:https://www.michael-movie.jp  公式X:https://x.com/michaelmoviejp