ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
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Popular Review

- 最新号 -

ALBUM Review

「ザ・クエスチョンズ/カート・エリング』

ソニーミュージック:SICP-31140

 現代最高峰の男性シンガー、カート・エリングの最新作。カートは、1967年シカゴ生まれ(50歳)。幼いころから音楽に親しみ、大学時代から本格的な活動を開始した。2009年の『Dedicated To You: Kurt Elling Sings The Music Of Coltrane And Hartman』にて、グラミー賞の最優秀ジャズ・ヴォーカル・アルバム賞を受賞した。本作は、共同プロデューサーにブランフォード・マルサリスを迎えた力作で、圧倒的歌唱力を誇るカートのシンガーとしての魅力が全開。カートの声質、幅広い音域、味わい深い表現力、楽曲の解釈など文句なしの内容。選曲がとても良い。特にボブ・ディランの「はげしい雨が降る」、レナード・バーンスタインの「ロンリー・タウン」、ポール・サイモンの「アメリカの歌」とジャコ・パストリアスの「Three Views of a Secret」(カートが歌詞を付けている)が素晴らしい出来栄え。またスチュー・ミンデマン(p)、ジョーイ・カルデラッツォ(p)、ブランフォード(sax)たちも最高の演奏でカートを支えている。(高木信哉)

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「オールド・ファッションド・ギャル/キャット・エドモンソン」

ソニーミュージック:SICX-30056

アーティスト写真

 米国の人気シンガー、キャット・エドモンソン(1983年ヒューストン生まれ)の最新作(通算4作目)。彼女は、昨年日本公開されたウディ・アレン監督の映画『カフェ・ソサエティ』にシンガー役で出演し、ファン層が広がった。本作の全11曲が、キャットの作詞作曲というのだから、その才能に驚く。シンガーソングライターでもあるのだ。アルバムは、全編にどこかノスタルジックな映画のような雰囲気が漂い、フランク・シナトラやナット・キング・コールが思い出される。ニューヨークタイムズが「春の花束のようにフレッシュ」と称した歌声は、とても心地好く賞讃に値する。「スパークル・アンド・シャイン」は、ストリングスに乗って、美しい歌声を披露する。「アンド・ビー・アー・フール」と「ア・ヴォイス」の優しい歌声には、心が癒される。一日の終わりに聴くと、仕事の疲れが抜けるだろう。
 「カヌー」は、正統派ジャズ。ウォーキング・ベースに導かれながら、可憐にスイングして格好いい。ちょっと甘い歌声で丁寧に歌い、4ビートにもよく合っている。(高木信哉)

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「Jamie Shew/EYES WIDE OPEN」

Jamieshewmusic

アーティスト写真

 ロスアンジェルス近郊で活躍する歌手、ピアニスト、作編曲家のジェイミー・シユウの2012年の「A Place For Me」に続く2作目。その間に息子の誕生、旦那でベーシストだったロジャーの死といろいろ大きな出来事があったという。彼女は、高校生時代は、ジャズ・ピアノを勉強していたがカレッジ時代に歌に目覚め歌の道へ入り、ウエスターン・ミシガン大学ではヴォーカルで学位を取っている。本アルバムは、旦那をガンで亡くした後、自分の気持ちを音楽で表したいという衝動にかられ、それまでの彼女の人生の節目節目で記憶に残る歌を集め、それに自作の曲も加えて歌った作品だ。タイトル曲は、旦那を想い、これからの自分の人生を想って書いた自作の歌で、ピアノとベースをバックに心のこもった歌を聞かせる。スラム・スチュアートの「The Flat Foot Floogie」は、意表を突く選曲だが、ユーモアのあるベーシストだった旦那が好きだったナンバーだという。山のキャンプでプロポーズされたことを思い出す「Mountain Greenery」や「Easy To Love」、「Detour Ahead」等スタンダードに加えて旦那がファンだったチャーリー・へーデン、パット・メセニーの曲、彼女のことを歌うようなジョン・ヘンドリックスの歌詞によるモンクなどの曲も歌っている。そうした裏話を知らなくても、全体的に確かな歌唱力で人間的暖か味を感じさせる彼女の歌だ。伴奏は、彼女の良き理解者だというギターのラリー・クーンス、ピアノとオルガンのジョー・バッグ、ベースのデレック・オレス、ドラムスのジェーソン・ハーネルが受け持っている。(高田敬三)