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LIVE Review
アバ・トリオ
6月26日 代官山・晴れたら空に豆まいて
アンドレアス・ガブリエル(ヴァイオリン)、ビョルン・マイヤー(バス・マンドーラ)、アンディ・プパート(パーカッション)からなるアバ・トリオが来日を果たした。スイス中部に伝わる自然ヨーデル(ユーッツリ)、北東部に伝わる自然ヨーデル(ツォイェルリ)等もモチーフにした独自のインストゥルメンタルを創造している、とのことだが、確かにこの音は気持ちよくて刺激的だった。アンドレアスは弓弾きと指弾きを同等に扱い、時に、まるでギターのようにコードをかき鳴らす。アンディは「音の出るものなら何でも俺の楽器」といわんばかりに、鍋のような大きなものから小物までさまざまなものを叩く。その姿は、音の彫刻家、いや、音のろくろまわしか。ECMレーベルに数々のリーダー作・参加作を残すエレクトリック・ベースの達人マイヤー(スウェーデン出身だが、96年にスイス移住)が、マンドリンを大型にしたような楽器からふくよかな響きを出していたのも印象的だった。「何のジャンルか?」と考えて音楽に接することを私はできるだけしないように生きているつもりだが、それでも油断しているとその考えが出てしまうことがある。職業柄、残念ながら仕方がないのかもしれぬが、そういう意味では彼らのパフォーマンスは「音楽だけがそこにある」という感じであった。演目は制作中のアルバムからのものが中心だったようで、ディスクでのリリースを楽しみにしたい。(原田和典)
MOVIE Review
映画『CBGB ニューヨーク、PUNKが生まれた場所』
(監督:ランドール・ミラー 10月23日よりシネマート新宿ほか全国にて公開)
新宿のパンクの一断面を描いた劇映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』と同じ2026年に、ニューヨーク・パンクの一断面を描いた劇映画である本作(2013年制作)が日本上映されるのはなんとも素敵なタイミングだ。店主のヒリー・クリスタルは「カントリー、ブルーグラス、ブルース」の店を始めようと思ったのに(だからCBGBという名前なのだ)、やってくるのは血気盛んな、道から外れたような若者ばかり。ヒリーはやがて彼らの“今までになかったような歌と演奏”に感銘を受けて、いつしか店は音楽シーンの先端を発信する場所として絶大な吸引力を持ち始める。登場するミュージシャンはルー・リード、イギー・ポップ、デボラ・ハリー、パティ・スミス、ラモーンズ、ウェイン・カウンティ(途中でジェイン・カウンティ名に)等。皆、役者が演じているとはいえ、もう嬉しい笑い声をあげずにはいられないほど特徴を掴んでいる(といっても私は彼らに面識がないので、レコードジャケット等の姿と照らし合わせているだけだが)。ヒリーがデッド・ボーイズに寄せる、愛情というか執念を描くシーンも印象に残った。私も20世紀の終わりに一度だけCBGBを訪れたことがあるが、あの小汚い壁や天井にパンクスの鮮血やツバが沁み込んでいるのかと一人興奮させられたものだ。この映画を通じてニューヨーク・パンクへの視点がさらに熱くなることを願ってやまない。(原田和典)
監督:ランドール・ミラー(共同脚本も)
脚本:ジョディ・サヴィン
出演:アラン・リックマン、アシュリー・グリーン、ドナル・ローグ、マリン・アッカーマン、ジャスティン・バーサ、ルパート・グリント、テイラー・ホーキンス ほか
原題:CBGB / 2013年 / アメリカ / 英語 / 102分 / カラー / 字幕:新田美紀
配給:スターキャットアルバトロス・フィルム
写真クレジット:© 2013 Film CBGB, LLC. All Rights Reserved.
MOVIE Review
映画『ジュディ・シル 贖罪のシンガーソングライター』
(監督:ブライアン・リンドストローム、アンディ・ブラウン アップリンク吉祥寺で10月23日から、YEBISU GARDEN CINEMAで10月30日から公開)
ジュディ・シルときいて、とっさに自分は歌声や姿を思い浮かべることができなかった。が、この作品を見終えて、「wonderという言葉がぴったりの、驚嘆すべき才能の持ち主」を知った喜びを得た。そしてこのシンガーソングライターについて丁寧に教えてくれた映画に感謝を述べたくなった。生前に残したアルバムはわずか2枚。音楽的素養の深さを感じさせるサウンドスケイプは「よほど幼いころから音楽に溢れた環境にいて、両親からの豊かな愛を受けて、安定した精神を保ちながら育てられたのだろう」と思わせるに十分のものだと私は感じてしまったが、実際は強盗などで逮捕され、売春をし、ドラッグにおぼれ・・・といった青年期を送り、塀の中で音楽に心打たれて、そこからシンガーソングライターへの道を歩み出したらしい。ゆえに『贖罪のシンガーソングライター』という邦題がついたのであろう。その人生については「短すぎた」というしかない。自分が興味をひかれたのは、無名時代のジュディが力量のあるモダン・ジャズ・ベーシスト(もちろんコントラバス)であったということ、そしてインタビュイーのなかに、ローランド・カークとの共演録音もあるギタリスト兼コルネット奏者のトミー・ペルティエが含まれていることだ。ジュディ自身のフッテージは少ないが、描き遺された、イマジネーションに富むイラストや日記がそれをカヴァーする。(原田和典)
監督:ブライアン・リンドストローム、アンディ・ブラウン
出演:リンダ・ロンシュタット、グラハム・ナッシュ、ジャクソン・ブラウン、デヴィッド・クロスビー、J.D.サウザー、ラス・ギグアー(アソシエイション)、ショーン・コルヴィン、フリート・フォクシーズ、ナタリー・メーリング(ワイズ・ブラッド)、ビッグ・シーフ、デヴィッド・ゲフィン ほか
原題:Lost Angel : The Genius of Judee Sill / 2022年 / アメリカ / 英語 / 91分 / カラー / 字幕:山口三平
配給:ディスクユニオン/ 劇場営業:トリプルアップ
写真クレジット:© 2023 Onwards & Upwards LLC Exclusively licensed to TAMT Co., Ltd. In Japan