ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
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Audio Review

- 最新号 -

AUDIO REVIEW

ポール自身による選曲。
「あなたのウイングス」と答え合わせしてみては

ポール・マッカートニー&ウイングス「ウイングス2CDエディション」
ユニバーサルUICY-16340/1 ¥4,400

 ザ・ビートルズ脱退後の暗中模索を描いたドキュメント『マン・オン・ザ・ラン』が公開されたポール・マッカートニー。かれの二つ目のバンド、ウイングスのかれ自身の選曲による最新のアンソロジーである。二枚のソロ初期作からのナンバーやウイングスが解散した1980年以降の曲は収録されていない。 ウイングス結成の狙いはシンプルでストレートなロックンロールに立ち帰り、若い世代のファンをつかみ、1970年代をサヴァイヴァルすることだった。それから54年が経ったが、ポールがその時の初心を忘れていないことが選曲から伝わってくる。

 SHM-CD二枚組仕様には全32曲が収録されているが、ロックナンバーに重点を置いた選曲である。ビートルズ解散にうちひしがれたファン、あるいはポール個人の熱心なフォロワーの心を癒したバラード曲、「トゥモロウ」や「ホエン・ザ・ナイト」「やさしい気持」は収録されていない。バンドの記念すべき第一弾シングルで発表当時おおいに物議をかもしたプロテストソング「アイルランドに平和を」や一転してホンワカ調の第二弾シングル「メアリーの子羊」も外された。いまのポールからすれば試行錯誤の時期だったということか。発表から40年以上経ち定番クリスマスソングに成長した「ワンダフル・クリスマスタイム」は「ウイングスの裏街道曲」として収録されなかったのだろう。

 ウイングスが再結成されない数少ない大物バンドである理由は、メンバーが安定せずつねに入れ替わる中、ただふたりの固定メンバーだった妻リンダ・マッカートニーと最後まで忠実にかれにつき従ったデニー・レインが故人であることによる。ふたりへの敬意は選曲に反映されているいっぽう、バンドのピークだった1976年北米ツアー時の中心メンバーだったジミー・マカロックが歌いステージのハイライト曲だった「メディシン・ジャー」が収録されていない。マカロックが若くして非業の死を遂げたこともあるのだろうが、ウイングスは「三人家族」だったのである。このあたりにポールのウイングスという存在についての本音がみてとれる。

 ウイングスのデビュー昨『ワイルド・ライフ』のベーストラックは4トラックという1971年にしてもいささか旧弊な機材で録音された。1979年の最終作は16トラックと推察され、本来は音質上のむらがあるはずだが、本作は96KHz24bitでリマスタ、違和感のない流れを生み出している。ザ・ビートルズのアルバムのアーカイブ同様に低音楽器ことにポールのべースラインの明瞭化に留意していることもうかがわれる。
 自分にとってのウイングス、とポール本人にとってのウイングス。選曲面での微妙なずれを流行り言葉でいえば「答え合わせ」してみるのも、このアンソロジーの楽しみ方だろう。(大橋伸太郎)