ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
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エッセイ

最新号

東宝ミュージカル「笑う男」に泣く

本田浩子

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ウルシュスとグウィンプレン少年
 日生劇場で上演中のミュージカル「笑う男」を見たいと、4月12日に足を運ぶ。「レ・ミゼラブル」で知られるフランスの文豪、ヴィクトル・ユゴーのイギリスを舞台に描いたこの作品は、日本では余り知られていないが、イギリスの厳しい階級社会の織り成す悲劇を描いて、「レ・ミゼラブル」にも劣らぬ名作と言える。
 舞台は17世紀末のイギリスの冬、人買いグループの船から放り出された幼い少年は、雪の中をさまよい、凍えて死んだ女に抱かれた赤子を拾って、とある小屋に辿り着き助けを求める。小屋の主は、非情な興業師のウルシュス (山口祐一郎) だったが、幼い子供を追い返すわけにもいかない。その上、襟巻を脱がせると、少年はむごたらしく口を裂かれていた。驚いて少年の話を聞いて、悪名高い人さらいのコンプラチコの仕業と悟ったウルシュスは、余りに悲惨な姿の少年グウィンプレンと彼が拾ってきた赤子が盲目と知ると、心を動かされ二人を育てようと決意する。幕開け早々ウルシュスがこの世界理不尽だ、生まれた身分ですべてが決まると怒りと悲しみをこめて歌う♪「残酷な世界」が、メロディが美しい分、胸に響く。
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グウィンプレンとデア
 美しく成長した盲目のデアには醜いグウィンプレンの姿は見えない上に、献身的に世話を焼いてくれる彼を頼り切っていた。いつも醜さ故に蔑まれていた青年グウィンプレン (浦井健治) も又、幼い時から世話をしてきた彼女を大切に想い、いつしか二人は愛し合っていた。見世物小屋で醜い顔をさらして数奇な生い立ちを語り♪「笑う男」、自分をあざ笑うグウィンプレンは、贅沢な暮らしに慣れ切った人々の間ですっかり人気者になっていた。退屈しのぎに見世物小屋にやってきたジョシアナ公爵 (朝夏まなと) は、醜い中にどこか気品も併せ持つグウィンプレンが気に入り、屋敷に囲い誘惑する。突然の愛の告白と贅沢な生活の居心地の良さに心揺れるグウィンプレンだが、誘惑に打ち勝ち、デアの待つウルシュスの元に戻る。
 どんなに貧しい生活だろうと、自分を頼り切っているデアの元を二度と離れまいと誓うグウィンプレン。二人が歌う愛の歌♪「木に宿る天使」が心地よく劇場に響き渡る。しかし、実は彼が幼い時にさらわれたクランチャリー男爵の息子と判明し、亡くなった父男爵の館に迎え入れられ、アン女王(内田智子)によって、貴族議員を任命される。デアと永遠の愛を誓った筈が・・・、晴れて議会に出席したグウィンプレンは、貧しい者を救うのが大事、身分差による不条理を緩和して世界を変えようと演説するが ♪「世界を変える」、アン女王はじめ、貴族が賛同する筈もなく、醜い顔を笑われる♪「封建貴族」。貴族社会に幻滅したグウィンプレンは、デアの元に戻っていく。時既に遅く、グウィンプレンを待ち焦がれたデアは絶望の余り、息絶えていた。♪「目を開けて」、♪「あなたは私のすべて」と歌うグウィンプレンは、デアのなきがらを抱いてウルシュスの元を去って行く。デアを心から愛しているグウィンプレンは、死に場所を求めて遠くに行ってしまうと知りながら、ウルシュスと仲間たちはなすすべもなく、静かに見送る。
 脚本ロバート・ヨハンソン、音楽フランク・ワイルドホーン、そして翻訳・訳詞・演出の上田一豪の三人のピタリと息の合った秀作の副題は「永遠の愛」。舞台はオペラ?と錯覚するほど、全編美しい音楽に彩られ、出演者全員 (石川禅、宮原浩暢、中山昇、他) の熱唱に支えられた作品に、余りにも悲惨なストーリーに涙しながらも、グウィンプレンとデアの一途な純愛に救われた気持ちになった不思議な舞台だった。

舞台写真提供:東宝演劇部

内田裕也ロック舞い

池野 徹

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「今、Rockがヤレルコト!」と
内田裕也は
ロック魂をステージに打っ付けていた。
獅子のごとく髪を振り乱し
魔法使いの如く銀色の杖と
深紅のマフラーで舞う。
そして吠える。
その指の動きの中にロックのリズムの
美しい所作を見せてくれる。

ジェネレーションを超えて
裕也が存在した。

ロック写真師/池野 徹