最新号
氷川きよし 「型」の獲得から「型」の超越へ
久道りょう
氷川きよしの歩みで注目すべきは、外見や衣装の変化そのものではない。
演歌によって身につけた高度な歌唱技術を土台に、ジャンルの境界を越え、自らの声の可能性を広げてきた点にある。
2000年、「箱根八里の半次郎」でデビューした氷川の声には明確な芯があり、高音域でも響きの密度が失われにくい。
長いフレーズを支える呼吸、母音の響きを保ちながら音量や音色を変化させる技術、言葉の意味に応じて感情の濃淡を描く力にも優れている。
「白雲の城」における、静けさから次第に感情を立ち上げていく歌唱は、その好例だ。
その技術が演歌の枠を越えて開花したのが「限界突破×サバイバー」である。激しいビートと厚いサウンドの中でも声は埋もれず、高音域を力強く貫きながら、言葉の輪郭を失わない。
これは演歌からの断絶ではなく、演歌で培った呼吸、声の持続力、言葉を遠くへ届ける力が、ロックという異なる様式の中で新たな機能を獲得したものだ。
同曲は2019年度、第32回ミュージック・ペンクラブ音楽賞のポピュラー部門最優秀作品賞を受賞した。
この評価は、一時的な話題性ではなく、日本のポピュラー音楽におけるジャンル横断の成果として認められたことを示している。
氷川はその後、衣装や身体表現においても、自らが望む表現を前面に打ち出すようになった。
しかし、演歌を歌う氷川きよしと、ポップスやロックを歌うKIINA.は、対立する存在ではない。
いずれも同じ声から生まれた、多面的な表現である。
氷川きよしは、演歌という「型」を徹底して身につけたからこそ、その型を越えることができた。
伝統を捨てるのではなく、伝統によって鍛えた声で新しい領域へ踏み出した。その歩みは、演歌という歌唱文化が現代のポピュラー音楽の中で、なお豊かに展開し得ることを示している。
◆物故者(音楽関連)敬称略
まとめ:上柴とおる
【2026年8月25日~9月24日までの判明分】
・7/26:メル・マック・マッカーサー・ハーデン(R&Bデュオ、メル&ティムのメル)84歳
・8/22:シェリー・フェブレー(米俳優。歌手。プレスリー主演「フロリダ万才」「カリフォルニア万才」「ブルー・マイアミ」に連続出演。TVドラマ「うちのママは世界一」の劇中歌「ジョニー・エンジェル」が1962年に米No.1)82歳
・8/24:ジェイ・P・モーガン(米ポップ・シンガー。俳優。1950年代後期にヒット曲多数)94歳
・8/25:ドリー・パートン(米シンガー・ソング・ライター。俳優。劇作家。慈善家)80歳
・8/25:ケネス(ANDROGENUSのドラマー)60歳
・8/25:ティム・カリー(米俳優。「ロッキー・ホラー・ショー」「ホーム・アローン2」など)80歳
・8/28:水谷八重子(2代目。劇団新派の俳優。ジャズ・シンガー)87歳
・8/31:デヴィッド・フェア(米オルタナティヴ&パンク&アバンギャルドなロック・バンド、ハーフ・ジャパニーズの創設者)74歳<日付は公表日>
・9/01:ジャンポール・ラプノー(フランスの映画監督。カトリーヌ・ドヌーブ主演「城の生活」が監督デビュー作。「シラノ・ド・ベルジュラック」「コニャックの男」「うず潮」「炎のごとく」など)94歳
・9/02:カサンドラ・ウィルソン(米ジャズ・ヴォーカリスト。グラミー賞を2度受賞)70歳
・9/04:森本レオ(森本治行:俳優、ナレーター。名古屋市生まれ。日本大学芸術学部卒後、NHK名古屋の「高校生時代」で俳優デビュー。東海ラジオ「ミッドナイト東海」で人気DJとなり1970年7月に出したシングル「親父にさよなら」がオリコン誌で83位のヒットを記録。その後、活動拠点を東京へ移し「青春の蹉跌」「オレンジロード急行」や「祭りの準備」「もう頰づえはつかない」「ヒポクラテスたち」「遠雷」といったATG作品など多数の映画に出演。テレビも「ロングバケーション」「ショムニ」など数多く出演)83歳
・9/05:アンディ・ウィリアムズ(プロ・レスラー=リング・ネーム‘ザ・ブッチャー’。米メタルコア・バンド、エヴリ・タイム・アイ・ダイの元ギタリスト)48歳
・9/07:ジョン・スモール(音楽ビデオ監督。ビリー・ジョエルの元バンド仲間でザ・ハッスルズやアッティラで活動)79歳<日付はビリー自身による公表日>
・9/07:鷲巣功(わしず・いさお:音楽プロデューサー、音楽ライター、ラジオDJ、河内音頭研究家)72歳
・9/08:北川暁子(ピアニスト。東京芸術大学名誉教授。日本ピアノ教育連盟副会長などを歴任。武蔵野音楽大学卒)81歳
・9/11:ジェレミー・トーマス(イギリスの映画プロデューサー。「戦場のメリークリスマス」「ラストエンペラー」など)77歳
・9/11:三原綱木(「ジャッキー吉川とブルーコメッツ」のギタリスト。デュオ「綱木&みどり」でも活躍)80歳
・9/13:重実徹(キーボード奏者。アレンジャー。山下達郎、CHAGE and ASKA、MISIAらと活動)67歳<日付は公表日>
・9/13:チーター・クローム(デッド・ボーイズのギタリスト)71歳
・9/13:松原のぶえ(演歌歌手)65歳
・9/14:カトリーヌ・ランジェ(フランスのニュー・ウェイヴ/ポップ・ロック・デュオ、レ・リタ・ミツコ<Les Rita Mitsouko>のシンガー)68歳
・9/14:ピーター・マックス(サイケデリック・ポップアートの巨匠。イエス「Talk」、アレサ・フランクリン「Through the Storm」、バッドフィンガー「Say No More」などのジャケットも担当)88歳
・9/14:ピーター・バーン(英男性デュオ、ネイキッド・アイズの元メンバー)74歳
・9/17:ダンカン・シーク(米シンガー・ソング・ライター:1996年「Barely Breathing」が米16位。ミュージカル「春のめざめ」の作曲でトニー賞受賞)56歳
・9/17:スウェイ・ダサフォ(英ラッパー。俳優)44歳)<日付は公表日>
・9/18:ベクター・ラヴァーズ(マーティン・ウィーラー:英エレクトロニック・ミュージック・プロデューサー、作曲家)57歳
・9/20:チャド・ギルバート(米ポップ・パンク・バンド、ニュー・ファウンド・グローリーのリード・ギタリスト)45歳
・9/21:ゲイリー・“アングリー”・アンダーソン(オーストラリアのハード・ロック・バンド、ローズ・タトゥーのフロントマン)77歳