最新号
東京二期会オペラ劇場
アルバン・ベルク オペラ「ルル」
2026年4月15日(水)17:00新国立劇場オペラパレス
玉川友則
東京二期会オペラ劇場《ルル》の新国立劇場での上演(4/17~4/19)に先立ち行なわれたゲネラル・プローベを取材した。(写真提供:公益財団法人東京二期会 撮影:寺司正彦)
今回の公演は2021年にカロリーネ・グルーバーの演出で話題となった舞台の再演だ。関わった男たちが破滅していく魔性の女としてのルルの内面を見せることで新しいルル像を描き出している。それはルルの分身であるダンサー(中村蓉)とマネキン人形群を舞台上におくことで表現される。ダンサーはルルの魂であり、不幸な生い立ちで心を閉ざしてしまったルルを表すようにほどんど動かない。マネキン人形たちはルルに魅せられた人々が欲望を満たすための道具として扱われる。第2幕のシェーン博士邸内に設けられた小部屋で登場人物たちが欲望のままにマネキン人形を着飾らせ、愛撫したり眺めたりしている場面で象徴的に描かれている。映像作家、上田大樹によるプロジェクションも毒々しいまでにマネキンの裸を大写しにして人々の欲望を映像でさらけ出し、ルルが欲望に消費されていることを強調していた。
3幕版ではルルは切り裂きジャックに殺害されてしまう。これはまさに男の欲望の犠牲者になる結末だ。しかしグルーバーは2幕版を選んだ。2幕版は殺人をおかしたルルが脱獄してパリに逃亡するところで終わる。その後に作曲者による「ルル組曲」から「変奏曲」と「アダージョ」が演奏されるのが恒例だ。今回も演奏された。ここでルルの魂であるダンサーが突然大きく身体を動かし踊り始める。そしてルル本人と抱き合い一体化する。これはルルが本来の自分を取り戻し、人々の欲望に打ち勝ち、一人の人間として立ち上がった瞬間と解釈できるし、ルルの救済と捉えることもできる。これによって新しいルル像が完成してといえるのではないだろうか?
歌手陣ではルル役の冨平安希子の演技と歌唱が一体となった熱演が際立っていたが、シューン博士役の大沼徹と画家役の大川信之のドイツ語の確かなディクションも印象に残った。指揮者のオスカー・ヨッケルは、キビキビしたテンポ運びで東京フィルハーモニー交響楽団から抑制された音の中にもベルクの音楽の抒情性を豊かに引き出していた。
なお、今回の「ルル」は2021年度ミュージック・ペンクラブ音楽賞を受賞した公演の再演。
〈公演案内〉
2026年4月17日(金)18:00、4月18日(土)14:00、4月19日(日)14:00
新国立劇場オペラパレス
指揮:オスカー・ヨッケル
演出:カロリーネ・グルーバー
装置:ロイ・スパーン
衣裳:メヒトヒルト・ザイペル
照明:喜多村貴
映像:上田大樹
振付:中村 蓉
演出助手:太田麻衣子
舞台監督:村田健輔
公演監督:高田正人
公演監督補:佐々木典子
〈出演〉
ルル:冨平安希子(4月17日・19日) 宮地江奈(4月18日)
ゲシュヴィッツ伯爵令嬢:川合ひとみ(4月17日・19日) 豊島ゆき(4月18日)
劇場の衣裳係、ギムナジウムの学生:郷家暁子(4月17日・19日) 持田温子(4月18日)
医事顧問:峰 茂樹(全日)
画家:大川信之(4月17日・19日) 岸浪愛学(4月18日)
シェーン博士:大沼 徹(4月17日・19日) 黒田祐貴(4月18日)
アルヴァ:山本耕平(4月17日・19日) 澤原行正(4月18日)
シゴルヒ:狩野賢一(4月17日・19日) 山下浩司(4月18日)
猛獣使い、力業師:北川辰彦(4月17日・19日) 菅原洋平(4月18日)
公爵、従僕:高柳 圭(4月17日・19日) 市川浩平(4月18日)
劇場支配人:金子 宏(4月17日・19日) 倉本晋児(4月18日)
ソロダンサー:中村 蓉(全日)
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
吉田美和の“言葉の強度”と声の支配力
久道りょう
NHKで放送された『SONGS』700回スペシャル、DREAMS COME TRUEを拝見した。
「うれしい!たのしい!大好き!」「決戦は金曜日」「あなたとトゥラッタッタ♪」などの代表曲に加え、「東京magic hour」が披露されたそのステージを通して、あらためて強く感じたのは、吉田美和というアーティストの“強さ”である。
この強さは、声量や表現力の高さだけでは説明できない。
むしろ、歌い出す以前、言葉の段階ですでに勝負が決まっている点にこそ本質がある。
彼女のタイトルは象徴的だ。
「決戦は金曜日」「何度でも」「バイバイ」「泣きたい」「晴れたらいいね」――
どれも一言で感情の核を射抜き、瞬時に物語を立ち上げる力を持っている。
それらは意味を伝えるための言葉ではない。
聴き手の内側にある記憶や感情を呼び起こし、物語を起動させる“スイッチ”として機能している。
そして、この言葉の強度を決定的なものにしているのが、吉田美和の声である。
彼女の歌声は、単に美しいのではない。
言葉の芯を崩さず、そのまま空間へと放つ力を持っている。
年齢を重ねてもなお透明感を保ち、むしろ深みと重心を増したその響きは、言葉と声が完全に一致している状態を示している。
だから彼女の歌では、言葉が空中に消えることはない。
一語一語が質量を持ったまま響き、聴き手の内側に確かに着地していく。
吉田美和の強さとは、言葉を選ぶ力でも、声で響かせる力でもない。
その両者を分離させず、言葉そのものを“声”として成立させてしまう点にある。
タイトルの一言から、歌声の一音に至るまで、すべてが同じ強度で貫かれている。
その一貫性こそが、時代を越えて人の心を動かし続ける理由なのである。
◆物故者(音楽関連)敬称略
まとめ:上柴とおる
【2026年2月上旬~3月下旬までの判明分】
・2/08:吉田耕一(筆名:杜こなて。音楽評論家。「ミュージック・ペンクラブ・ジャパン」元理事)79歳
・2/09:小杉真貴子(民謡歌手。2017年に日本民謡協会から最高位の「民謡名人位」を授与)77歳
・2/13:潮晴男(オーディオ評論家。「ミュージック・ペンクラブ・ジャパン」前会長)74歳
・2/14:隣雅夫(京都のバンド「だててんりゅう」のオルガン、ヴォーカル)74歳
・2/20:青木望(作・編曲家。TVアニメ「銀河鉄道999」の音楽も担当)94歳
・2/23:オリヴァー・“パワー”・グラント(米ヒップ・ホップ・グループ、ウータン・クランの共同創設者。プロデューサー。起業家)52歳
・2/23:サー・モンティ・ロック3世(元ディスコ・テックス&ヒズ・セックス・オーレッツ)86歳
・2/23:エリアーヌ・ラディーグ(フランスの電子音楽作曲家)94歳
・2/26:田隅靖子(ピアニスト。京都市立芸術大学、京都女子大学で教授。2005年「京都市文化功労者」、2020年「第38回京都府文化賞特別功労賞」。2009年~2019年「京都コンサートホール」館長)87歳
・2/26:ひのきしんじ(音楽プロデューサー。元俳優「怪人二十面相」の小林少年役。元歌手。元ラジオ・パーソナリティ。妻は本間千代子)81歳
・2/26:ロスコー・ロビンソン(米サザン・ソウル・シンガー)97歳
・2/27:ニール・セダカ(米シンガー・ソング・ライター)86歳
★「私の知ってるニール・セダカ」
https://merurido.jp/magazine.php?magid=00012&msgid=00012-1772455581
・2/27:小島美子(日本音楽史研究の第一人者。国立歴史民俗博物館名誉教授)96歳
・2/28:伊藤ヨタロウ(元メトロファルスのリーダー、ヴォーカル。音楽プロデューサー。俳優)70歳
・2/28:ジョン・ポール・ハモンド(米ブルース・シンガー、ギタリスト。父ジョン・ハモンドはレコード・プロデューサー)83歳
・3/01:ゲイリー・ウォーカー(ウォーカー・ブラザーズ~ゲイリー・ウォーカー&ザ・レイン)83歳
★「ゲイリー・ウォーカー『夜明けに恋はない』にまつわるややこしい案件。1994年に英米でヒットさせたドーン・ペンは『私が書いた曲よ』と主張するし」
https://merurido.jp/magazine.php?magid=00012&msgid=00012-1770793134
・3/02:レン・ギャリー(ビートルズの前身バンド、クォリーメンのメンバー)84歳
・3/03:木下あきら(秋庭豊とアローナイツ)77歳
・3/03:悠木圭子(作詞家。八代亜紀「なみだ恋」「しのび恋」など。元俳優。作曲家の故・鈴木淳と再婚)90歳
・3/07:カントリー・ジョー・マクドナルド(カントリー・ジョー&ザ・フィッシュ)84歳
・3/07:ジェームス・ウォーカー(東京生まれ、横浜育ちのクォーターで元俳優。「大川修」名義で1959年~1972年まで「少年ジェット」「ザ・ガードマン」など人気TVドラマや大映を中心に多くの映画に出演。勝プロダクションにも所属。その後、カントリー歌手に。父・大川修一も俳優)86歳
・3/08:神足裕司(コラムニスト、フリーライター、TV番組コメンテーター。共著「金魂巻」で使った‘マル金(金持ち)’‘マルビ(貧乏)’が第1回新語・流行語大賞の流行語部門で金賞。グルメ・ガイド本「恨ミシュラン」も共著)68歳
・3/08:青空キュート(タレント。劇団あざみ座を経て青空球児・好児に弟子入りして1989年~1992年、漫才コンビ「CCP」でも活動。小林幸子公演の司会を7年間担当。2021年1月「日本司会芸能協会」理事長に就任。日大芸術学部演劇学科卒)68歳
・3/09:トミー・デカーロ(元ボストンのリード・ヴォーカル。2013年のアルバムに参加)60歳
・3/12:渡辺達生(カメラマン。グラビア写真家。雑誌「GORO」で1980年代のアイドル・グラビアを席捲。武田久美子の‘貝殻ビキニ姿’が話題。JAL沖縄キャンペーンなども)77歳
・3/13:フィル・キャンベル(モーターヘッドのギタリスト)64歳
・3/15:日高六男(元大関「若嶋津」。元松ヶ根親方、二所ノ関親方。妻は歌手の高田みづえ)69歳
・3/16:ドロレス・ケーン(アイルランドのフォーク・シンガー)72歳
・3/16:ウェイン・パーキンス(米セッション・ギタリスト。元レーナード・スキナードやストーンズへの加入候補。1972年、スミス・パーキンス・スミスを結成してアイランド・レコードからアルバムをリリース)74歳
・3/16:ベッティーナ・コスター(独ニュー・ウェイヴ・バンド「マラリア!」)66歳
・3/17:二村成夢(高校生のラッパー「Klaus」)18歳
・3/23:チップ・テイラー(米シンガー・ソング・ライター。「ワイルド・シング」「エンジェル・オブ・ザ・モーニング」など多数)86歳
★「‘公私’共にお世話になった大ソング・ライター、チップ・テイラー(86歳)」
https://merurido.jp/magazine.php?magid=00012&msgid=00012-1774526448
・3/23:田邊稔(コントラバス奏者。日本フィルハーモニー交響楽団元理事長)91歳