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声は翻訳されるのか ― 日本語と振動の行方
久道りょう
近年、日本のアーティストが海外で支持を広げている。
かつて「言語は壁になる」と言われた時代は、確実に変わりつつある。
では、日本語の歌はどのようにして国境を越えているのだろうか。
その背景の一つに、日本語の音韻構造があると私は考えている。
日本語は母音中心の言語で、音節は拍単位で比較的均等に並ぶ。
子音の強い連続が少なく、開いた母音が旋律に自然に溶け込む。この特徴は、メロディーラインを滑らかに保ち、歌唱におけるレガート性を際立たせる。結果として、日本語の歌は旋律との親和性が高く、音楽的な流動性を生みやすい。
もっとも、言語構造の説明だけでは十分とは言えない。
海外の聴き手が心を動かされる瞬間を目の当たりにするとき、そこには別の要素が働いているように感じられる。
それが「声そのものの振動」である。
声は意味を運ぶ媒体であると同時に、空気を震わせる物理的な現象でもある。
声帯の振動は倍音を生み、息の流れや発声の重心は音色に微細な差異をもたらす。
聴き手は言葉を理解する前に、声の質感や身体性をすでに受け取っている。
翻訳されるのは語彙ではない。
翻訳されるのは振動なのかもしれない。
ライブ会場で、歌詞の意味を完全には理解していないはずの観客が涙する場面がある。
そのとき共鳴しているのは、言葉そのものというより、声に宿る経験や感情のエネルギーであるように思える。
日本語は旋律と親和性の高い言語だ。
しかし最終的に国境を越えるのは、発声という身体行為が生むエネルギーである。
音楽がいかにデジタル化されても、声は常に生身の身体から生まれる。
その原初性こそが、現在のJ-POP現象を読み解く鍵なのではないだろうか。
◆物故者(音楽関連)敬称略
まとめ:上柴とおる
【2026年1月下旬~2月下旬までの判明分】
・1/20:ヴォルフガング・ハイヒェル(ドイツのグループ、ジンギスカンのリード・ヴォーカル)75歳
・1/24:山下和仁(クラシック・ギタリスト)64歳
・1/25:モ・スジン(韓国の男女混成バンドAcoustic Collaboのボーカリスト)27歳
・1/26:スライ・ダンバー(レゲエの伝説的なリズム・セクション「スライ&ロビー」のドラマー。プロデューサー)73歳
・1/29:モーリー・ロバートソン(ラジオ・パーソナリティー、ミュージシャン、国際ジャーナリスト、コメンテーター、俳優。1991年-1998年、J-WAVEの深夜番組「Across The View」担当)63歳
・1/30:パルテノン・ハクスリー(エレクトリック・ライト・オーケストラ・パート2やジ・オーケストラのギタ-&ヴォーカル。イールズのプロデュースなど)70歳
・1/31:ビリー・ネルソン(パーラメント~ファンカデリックのベース&ギター)75歳
・2/02:チャック・ネグロン(スリー・ドッグ・ナイト)83歳
・2/03:ラモンテ・マクレモア(フィフス・ディメンション)90歳
・2/04:藤舎名生(長唄鳴物の人間国宝。横笛奏者)84歳
・2/04:杵屋響泉(長唄三味線奏者。104歳でデビュー・アルバムをリリースしてギネスの世界記録に最高齢として認定)111歳
・2/05:フレッド・スミス(米テレヴィジョンのベーシスト)77歳
・2/07:ブラッド・アーノルド(米ロックバンド「3ドアーズ・ダウン」の創設メンバー、ボーカル)47歳
・2/07:グレッグ・ブラウン(米ロックバンド、ケイクの創設メンバーでギタリスト)55歳or56歳
・2/10:アンドリュー・ランケン(ポーグスのドラマー)72歳
・2/11:ヘルムート・リリング(ドイツの合唱指揮者。バッハ作品の指揮に定評)92歳
・2/12:ミシェル・ポルタル(フランスの多楽器奏者。作曲家。数多くの映画音楽を担当。モダン・ジャズや欧州ジャズ・シーンの記念碑的存在)90歳
・2/14:ティム・ベリー(米オルタナティヴ・ロックバンド、マンチェスター・オーケストラのドラマー)42歳
・2/15:沢井一恵(箏曲家。8歳で宮城道雄に入門。東京芸術大卒業。坂本龍一、指揮者・佐渡裕、バイオリニスト・五嶋みどりなどクラシック、ポップス、ジャズと多彩なジャンルと協業。海外公演も数多く開催)85歳
・2/15:ロバート・デュヴァル(米俳優。「ゴッドファーザー」「地獄の黙示録」「M★A★S★H マッシュ」「フォーリング・ダウン」「クレイジー・ハート」「ロスト・マネー 偽りの報酬」「HUSTLE/ハッスル」など。「テンダー・マーシー」でアカデミー主演男優賞。監督やプロデューサーとしても活動)95歳
・2/16:ビリー・スタインバーグ(米ソング・ライター。マドンナ「ライク・ア・ヴァージン」、シンディ・ローパー「トゥルー・カラーズ」、バングルス「胸いっぱいの愛」など)74歳
・2/17:椎名和夫(はちみつぱいの2代目ギタリスト&ヴァイオリニスト~ムーンライダーズの初代ギタリストを経て編曲家、作曲家。山下達郎バンド等でも活躍。日本芸能実演家団体協議会および実演家著作隣接権センターの常任理事。一般社団法人MPN会長)73歳
・2/17:ホセ・ファン・ダム(ベルギーのバス・バリトン歌手。映画「仮面の中のアリア」にも出演)85歳
・2/17:山田真矢(ロックバンド「LUNA SEA」のドラマー)56歳
・2/21:ウィリー・コロン(米サルサ・ミュージック界のレジェンド。2000年「国際ラテン音楽の殿堂」、2019年「ラテン・ソングライターの殿堂」入り。2007年の映画「エル・カンタンテ 熱情のサルサ」に出演)75歳