ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
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エッセイ

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東京二期会オペラ劇場 ヴェルディ《運命の力》ゲネプロ

那須田務

写真
 「東京二期会オペラ劇場『運命の力』🄫平舘平」

二期会のヴェルディの《運命の力》ゲネプロの初日を観た。
指揮の八嶋恵利奈はドイツ生まれ、フライブルク、ベルリン、ウィーンの音楽大学で指揮を学んで、2015年にドイツのカイザースラウテン歌劇場の指揮者兼コレペティトゥーアを務め、ムーティが指導するイタリア・オペラ・アカデミーの4人の受講生に抜擢。シカゴ交響楽団やバイエルン放送交響楽団でそれぞれムーティやメータのアシスタントを務めて、ベルリン・コーミッシェ・オーパーの第1カペルマイスタ―を歴任(2022年~24年)。最近では昨年12月にメトロポリタン歌劇場に《魔笛》でデビューして話題を呼んだ。オペラに強みを発揮する期待の新星。演出はイギリスの名匠デイヴィッド・バウントニー。レオノーラに大村博美、ドン・カルロに今井俊輔、ドン・アルヴァ―ロに樋口達哉ら二期会の実力者たち(以上3・5日のキャスト)。オーケストラは東京フィル、合唱団は二期会合唱団他。
演出が面白い。オペラの舞台設定は18世紀中葉のスペインかイタリアだが、前半2幕を平和、後半2幕を戦争として時代と場所は特に特定はしていないものの、群衆の衣装と動きがどこか20世紀前半の全体主義の時代を思わせる。建物など具象的な背景や装置は置かず、演出家自身が「ヴェルディ・マシーン」と呼ぶ巨大な2面の壁を自在に動かす、象徴性の高い舞台だ。偶発的かつ運命的出来事に登場人物が翻弄され、舞台が次々と変わる複雑な物語を、無駄がなく有機的に関連づけたスピーディーな演出を通してとても分かりやすく見せる。白と黒を基調に色彩を抑えた美術も美しい。イタリアのコメディア・デラルテを思わせる舞台を導入した劇中劇が面白く、1920年代の欧州のキャバレー文化を彷彿させるところもあって、ヴェルディの音楽までがモダンに響く。バウントニー自身この演出をとても気に入っているというのも頷ける。
八嶋の指揮はムーティの薫陶を受けているだけあって、余計なことをしない。音楽の流れは自然で力強く、同時に肌理細やかで、叙情的で柔らかな情感の表現が魅力だ。配役では、侯爵と神父が同じ歌手が演じる趣向が興味深く、ソリストたちも役柄にしっかり馴染み、ソロ、二重唱ともに好調。9月3~6日まで。新国立劇場オペラパレスにて上演。ボン歌劇場、ウェールズ・ナショナル・オペラとの提携公演。

(2026年9月1日 新国立劇場オペラパレス)
公演データ)八嶋恵利奈(指揮)、デヴィッド・バウントニー(演出)、二期会合唱団、新国立劇場合唱団、藤原歌劇団合唱部(合唱)、東京フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)

9月3日・5日:山下浩司(カラトラーヴァ侯爵・クアルディアーノ神父)、大村博美(レオノーラ)、今井俊輔(ドン・カルロ)、樋口達哉(ドン・アルヴァ―ロ)他

9月4日・6日:後藤春馬(カラトラーヴァ侯爵・クアルディアーノ神父)、イ・スンジェ(レオノーラ)、小林啓倫(ドン・カルロ)、小原啓楼(ドン・アルヴァ―ロ)他

ジェジュン『OASIS』に見る、日本語歌唱の進化

久道りょう

ジェジュンのデジタルシングル『OASIS』がリリースされた。
近年、ロック歌手としてのイメージを強く打ち出してきた彼が、今回は壮大なスケールを持つポップスという、これまでとは異なる引き出しを提示している。
今回の曲で特に注目したいのは、日本語歌唱の明瞭さである。
日本語は、基本的に「子音+母音」で一つの音がつくられ、母音の響きが連続する言語だ。
日本人は、日常会話では一つ一つの子音をそれほど強く発音していない。それでも言葉が通じるのは、5つの母音の流れから、無意識のうちに単語を類推して聞いているからである。
一方、子音で終わる単語や多様な母音を持つ言語を母語とする人が日本語を歌う場合、子音を明確に発音しようとする傾向がある。
そのため、一見すると日本語がはっきり聞こえるようでいて、子音が強く立ちすぎることで母音の流れが途切れ、かえって歌詞が聞き取りにくくなることがある。
日本語を流暢に話せることと、日本語で自然に歌えることは、必ずしも同じではないのだ。
ジェジュンは、韓国人歌手の中でも日本語の発音が美しく、話し言葉においては、ほぼネイティブに近い明瞭さを持っている。
歌唱においても、特に明確な手本のあるカバー曲では、原曲の発音や言葉の運びを的確に捉え、そこに自身の豊かな表現力を加えることで、独自の世界を築いてきた。「Love Covers」シリーズが高い評価を得ているのも、その力によるところが大きい。
その一方で、オリジナル曲には、カバー曲のような明確な発音の手本がない。さらにロック曲では、力強さを表すための子音の処理が加わることで、言葉がやや不明瞭に感じられることもあった。これは歌唱力の問題ではなく、外国人歌手が日本語の特性を捉えて歌うことの難しさを示している。
しかし今回の『OASIS』では、従来の曲にはみられないほど冒頭から歌詞の一語一語が自然に耳へ入ってくる。歌詞カードを見なくても、何かをしながら流して聴いていても、言葉が明確に立ち上がってくるのである。
その理由の一つは、子音を必要以上に強調せず、母音を滑らかにつないでいることにある。母音の流れを保ちながら、必要な箇所にだけ子音の輪郭を与えることで、かえって日本語が鮮明になった。
また、ジェジュンが長年のトレーニングで身につけた、喉の奥を開いて歌う発声も、「あ」や「え」といった日本語の母音を豊かに響かせている。
とりわけ、韓国語を母語とする歌手にとって難しい日本語の「え」が自然に響く点は、彼の大きな強みだろう。
さらに、『OASIS』で聴かれる伸びやかな歌声、明るい色彩、そして芯のある濃厚な響きからは、独立後、自らの目標へ迷いなく進もうとする意志が伝わってくる。以前の歌声に感じられた迷いや揺らぎではなく、自分の音楽を自信を持って提示していく力が、その声に現れている。
『OASIS』は、ジェジュンの日本語歌唱が新たな段階へ進んだことを示す作品である。日本語を正しく発音するだけでなく、その母音の流れを音楽の中で生かすことによって、彼はJ-POP歌手として、さらに大きな可能性を切り開こうとしている。

◆物故者(音楽関連)敬称略

まとめ:上柴とおる

【2026年7月25日~8月24日までの判明分】

・3/16:ジョーン・ブラックマン(米俳優。映画「ブルー・ハワイ」や「恋のKOパンチ」でプレスリーの相手役など)87歳
・7/12:鷺巣政安(アニメ・プロデューサー。「鉄人28号」「エイトマン」「スーパージェッター」「宇宙少年ソラン」「カムイ外伝」「サザエさん」「ガラスの仮面」「キャプテン」など。漫画家のうしおそうじ<鷺巣富雄>は実兄、作曲家の鷺巣詩郎は甥)93歳
・7/23:ウィリアム・オービット(英プロデューサー、ミュージシャン。マドンナ、U2、ノー・ダウト、リッキー・マーティン、P!NK、メラニー・C<スパイス・ガールズ>、オール・セインツなど多数担当)69歳
・7/24:ルー・コラー(結成40周年のハード・コア・バンド「シック・オブ・イット・オール」のフロント・マン)<日付は公表日>
・7/25:JHA JHA(ジャジャ岩城:ハード・コア・バンド「Lip Cream」のヴォーカル)63歳
・7/26:猫月めい(MEI:ガールズ・バンド「終末のダイヤモンド」のギタリスト)<日付は公表日>
・7/28:カビンスキー(バンサン・ベロルジェ:フランスの人気DJ。2024年のパリ五輪「閉会式」でパフォーマンス)50歳
・7/29:グレン・ハンサード(ダブリン出身の俳優、ミュージシャン、シンガー・ソング・ライター。1991年の映画「ザ・コミットメンツ」で俳優としてブレイク。2007年の主演作「ONCE ダブリンの街角で」の主題歌「フォーリング・スローリー」でアカデミー賞「歌曲賞」を受賞)56歳
・7/29:レイ・ゴメス(モロッコ出身のセッション・ギタリスト。スペインのポップ・トップスを経てN.Y.へ。スタンリー・クラーク、ハービー・ハンコック、ジョージ・デューク、ナラダ・マイケル・ウォルデン、チャカ・カーン、アレサ・フランクリン、ホール&オーツ、スティーヴ・ペリーらと共演)73歳
・7/29:アーリーン・スミス(女性R&Bグループ、シャンテルズ)84歳
・7/29:高田慶二(ギタリスト。三山ひろしのツアーに同行)71歳
・7/31:三原重夫(ロック・ドラマー。ローザ・ルクセンブルグ~メトロファルス~ザ・ルースターズ~ザ・スターリンなど)66歳
・8/01:ヴィンセント・パストーレ(米俳優。TVドラマ「ザ・ソプラノズ/哀愁のマフィア」、映画「グッドフェローズ」「カリートの道」など)80歳
・8/01:田中拓人(作・編曲家、ピアニスト、音楽プロデューサー。筑波大人間学類心理学専攻卒業。三枝成彰事務所を経てフリー。橋本愛の2025年主演映画「早乙女カナコの場合は」など)51歳
・8/02:デヴィッド・Z(デヴィッド・リヴキン:ミネアポリス出身のプロデューサー、エンジニア、ソングライター、ギタリスト。プリンスの制作を担当。実弟のボビー・Zはプリンス&ザ・レヴォリューションのドラマー)78歳
・8/03:ジョン・ダグラス(トラッシュキャン・シナトラズのギター)63歳
・8/03:寿美花代(俳優。元宝塚歌劇団星組トップスター。夫の故・高嶋忠夫とTV「ごちそうさま」を長く担当)94歳
・8/04:小泉清人(ギタリスト。ジャズ~ボサヴァを中心に活動。教則本もあり)75歳
・8/10:本田拓夫(元「吉祥寺バウスシアター」館主。映画「BAUS 映画から船出した映画館」を製作)82歳
・8/11:加藤吉治郎(元中部日本放送<CBC>ディレクター。作曲家、音楽プロデューサー、著作家、メディアコーディネーター、実業家。関西学院大学出身。中日ドラゴンズの応援歌「燃えよドラゴンズ!」<歌・板東英二>の仕掛人。担当したCBCテレビ「ぱろぱろエブリデイ」が1980年代前期の‘なめ猫ブーム’の発信源にも。上岡龍太郎に師事して‘弟子吉治郎’としても活動)79歳<日付は公表日>
・8/12:ゲイリー・ジョンソン(英チャイナ・クライシスのベーシスト)61歳
・8/13:デリー・ブラウンソン(英EMFのキーボード奏者)55歳
・8/16:末松康生(作詞家。初期「四人囃子」などを担当)84歳
・8/17:フランク・ビアード(ZZトップのドラマー)77歳
・8/21:ジェイニー・ブラッドフォード(モータウン・レコードの受付係を経てソング・ライターに。「マネー」など多数)87歳
・8/21:バニー・レヴィン(米俳優。「ラ・ラ・ランド」「テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ」など)97歳
・8/22:バリー・ミッチェル(クイーンの初期ベーシスト=1970年8月~1971年1月在籍)<日付は公表日>
・8/22:ラティモア(米R&Bシンガー。マイアミのGladesレーベルでヒット多数)86歳