ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
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エッセイ

最新号

二つの声が対等に響き合う「音銀河」
—— ASKA、大阪フェスティバルホール公演

久道りょう

 声が重なることで、それぞれの存在がいっそう鮮明になる。ASKAの大阪フェスティバルホール公演で披露された、玉置浩二との「音銀河」は、そんな共演の醍醐味を感じさせた。

 全国44都市52公演を巡る『ASKA CONCERT TOUR 2026-2027 “Lock-on”』。今回のステージは「SAY YES」「YAH YAH YAH」などの代表曲を随所に配し、初めての聴き手にも長年のファンにも開かれた構成だった。

 序盤の「SAY YES」では、声が徐々に立ち上がっていく過程が聴き取れた。曲を重ねるにつれて高音の伸びと声の推進力が増し、公演全体が加速していく。ASKAの声は透明感を備えながら、中心に明瞭な芯がある。響きが密度高く集まり、重厚なバンドサウンドの中でも輪郭を失わない。その声が伴奏を貫き、言葉と旋律を客席へ届けていた。

 この歌声の強さを、他者との関係から浮かび上がらせたのが、後半の「音銀河」である。玉置は映像での出演だったが、二人の呼吸は自然に重なり、舞台と映像の隔たりを感じさせなかった。

 とりわけ印象的なのは、双方が十分な存在感を保つ声の均衡だ。ハーモニーには、一方が響きを抑えて主旋律を支える美しさがある。ここでは二人がそれぞれの旋律を明確に歌い、その重なりによって音楽の空間を押し広げていた。

 ともに力強く声を響かせながら、相手を覆い隠さない。それぞれの旋律を耳で追うことができ、同時に楽曲としての一体感も揺らがない。二つの声が並び立つ緊張感と、響きが合わさる充実感。その両方が、この共演にはあった。

 映像との共演でありながら、聴き手の意識は次第にその形式を離れ、声そのものへ向かう。長いキャリアを持つ二人の歌唱から届いたのは、いま響いている声の説得力だった。

 終演後、楽屋で著書を手渡すと、ASKAから文章の書き方について尋ねられた。少しずつ書くのが苦手で、一気に書くのだという。私も同じだと答えると、気さくに言葉を返してくれた。印象に残ったのは、初対面の相手の仕事に関心を向け、自ら会話を開いてくれたことだ。そのさりげない心遣いに、ASKAの温かな人間味を感じた。

 そして耳によみがえるのは、「音銀河」の二つの声である。互いの個性を鮮明にしながら、一つの音楽を大きく育てていく。声が重なることの豊かさを、あらためて実感させられた公演だった。

◆物故者(音楽関連)敬称略

まとめ:上柴とおる

【2026年9月25日~10月24日までの判明分】

・8/06:服部公一(作曲家。エッセイスト。NHK「みんなのうた」で知られた童謡「アイスクリームのうた」や日本レコード大賞童謡賞「マーチング・マーチ」など。東京家政大大学院教授、ユネスコ音楽評議会日本代表などを歴任)93歳
・9/20:信田かずお(作・編曲家。ジャズピアニスト。東邦音楽大学で長らく講師。松田聖子「裸足の季節」、狩人「日本海」などの編曲を担当。映画「釣りバカ日誌」シリーズの音楽も担当)76歳
・9/21:佐藤眞(作曲家。合唱曲「大地讃頌」など。東京藝術大学音楽学部名誉教授。日本現代音楽協会名誉会員)88歳
・9/23:鈴木良雄(ジャズ・ベーシスト。渡辺貞夫グループ、菊地雅章グループ、スタン・ゲッツ・グループ、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ、ビル・ハードマン&ジュニア・クック・グループに参加。ソニー・ロリンズ、リー・コニッツ、チェット・ベイカーらとも共演)80歳
・9/27:マイティ・スパロウ(トリニダード・トバゴのスーパースター。カリプソ界のカリスマ)91歳
・9/29:コンラッド・ラント(英ヘヴィー・メタル・バンド「ヴェノム」のヴォーカル&ベース)63歳
・9/29:レイ・キャヴィアーノ(米ディスコ・プロモーター、プロデューサー。TKやワーナーなどで采配を振るった)75歳
・10/02:サス・ジョーダン(カナダの女性ポップ・ロック・アーティスト。1990年代前期に米メインストリーム・ロック部門で4曲チャート・イン)63歳
・10/05:ジョージ・リチャード・イアン・ハウ・フェントン(英作曲家。映画音楽を多数担当。アカデミー賞でのノミネートは作曲賞4回、主題歌賞は1回。2002年と2007年にエミー賞を受賞)76歳
・10/05:フレディ・ジャクソン(米R&Bシンガー。1980年代後期に7曲がHOT100内に)70歳
・10/05:キム・チョンジャ(‘韓国第1世代のプリマ・ドンナ’と呼称されたメゾソプラノ歌手。元韓国芸術総合学校教授)81歳
・10/07:須藤晃(音楽プロデューサー。元CBSソニー。浜田省吾、尾崎豊、村下孝蔵、玉置浩二、橘いずみ、馬場俊英、石崎ひゅーいなどを担当。富山市政策参与~公益財団法人富山市民文化事業団の芸術監督を歴任)74歳
・10/13:デイヴィッド・サーカンプ(パヴロフス・ドッグのヴォーカル)73歳
・10/17:佐藤征一郎(声楽家。ドイツ・フライブルク市立歌劇場でバス歌手。帰国後は二期会に所属。洗足学園音楽大名誉教授)86歳
・10/17:村上龍(芥川賞作家。「限りなく透明に近いブルー」「コインロッカー・ベイビーズ」「イン ザ・ミソスープ」「共生虫」「半島を出よ」「歌うクジラ」「愛と幻想のファシズム」「五分後の世界」「13歳のハローワーク」など。2026年3月までテレビ東京「カンブリア宮殿」のMCを20年担当)74歳
・10/18:ベニート・ジ・パウラ(ブラジルを代表するシンガー・ソングライター。ピアニスト。長谷川きよし「愛の終わりのサンバ」の作者)84歳
・10/18:坂東裕香(神奈川フィルハーモニー管弦楽団の首席ホルン奏者)37歳
・10/19:小林信彦(作家。「オヨヨ大統領」「唐獅子株式会社」「紳士同盟」「ぼくたちの好きな戦争」「日本の喜劇人」「世界の喜劇人」「うらなり」など)93歳
・10/21:備瀬善勝(在沖縄の作詞家、音楽プロデューサー。「キャンパスレコード」創業者。ネーネーズ「あめりか通り」の作詞者。2018年「JASRAC音楽文化賞」)87歳
・10/21:ジョン・アンダーソン(米カントリー・シンガー。ソング・ライター。ギタリスト。1977年~1997年にかけてカントリー・チャートに50曲以上。2024年「カントリー・ミュージック・ホール・オブ・フェイム」殿堂入り)71歳