ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
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Classic Review

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CONCERT Review

東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
第366回定期演奏会

 

シューマン(ラヴェル編曲):謝肉祭より
シューマン:ピアノ協奏曲
ラヴェル:バレエ「ダフニスとクロエ」第1組曲、第2組曲

指揮:沖澤のどか
ピアノ:黒木雪音
コンサートマスター:戸澤哲夫

2024年1月13日 東京オペラシティ コンサートホール

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昨年、京都市交響楽団の常任指揮者に就任した今注目の指揮者、沖澤のどかが東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団定期演奏会に初登場。まずはシューマンのピアノ曲「謝肉祭」を舞踏家ニジンスキーのためにラヴェルが編曲した4曲(「前口上」「ドイツ風ワルツ」「パガニーニ」「ペリシテ人と闘うダヴィッド同盟の行進」)。ラヴェル編曲版は初めて聴いたが、バレエのための音楽ということだからか、原曲の重厚なイメージとやや異なり、全体的に軽快な編曲になっているように感じた。沖澤はていねいに大きな表情を示しながらオーケストラから色彩感あふれる演奏を引き出していた。「ペリシテ人と闘うダヴィッド同盟の行進」ではリズムと緩急にメリハリをつけ、クライマックスを見事に作り上げていた。

シューマンのピアノ協奏曲では、こちらも気鋭のピアニスト黒木雪音との共演。黒木は明晰かつ美しい音色で作品のスケール感、重厚感を引き出していた。独奏とオーケストラとのバランスということでは、彼女の音量は豊かとはいえずオーケストラに埋もれる箇所がいくつかあったが、これからの活躍が楽しみな逸材だ。会場の割れんばかりの喝采に応えて、カプースチンの「8つの演奏会用エチュード」から第1曲「プレリュード」が演奏された。ジャズの即興演奏を思わせる難曲だが、黒木の魅力を存分に伝えた快演であった。

後半はラヴェルの「ダフニスとクロエ」第1組曲、第2組曲。沖澤と東京シティ・フィルのコンビは、このバレエ音楽の官能的で色彩豊かな響きを存分に引き出していた。冒頭の「夜想曲」の弦楽器のトレモロからていねいに繊細に描き、「間奏曲」では木管、金管楽器群が美しい旋律を歌い上げていた。「戦いの踊り」はダイナミックで活気ある音楽だが必要以上に粗野になっていないのには感心した。続く第2組曲「夜明け」が出色。オーケストラからラヴェルの音楽の極上の響きを引き出していた。「無言劇」では古代ギリシャへの憧れに満ちた旋律をフルートが見事に演奏していた。「全員の踊り」の熱狂的なフィナーレを情熱的だが気品に満ちた演奏で盛り上げた。沖澤の指揮は的確でリズムのキレの良さはあるが、全てをコントロールしようとする意識が強いのか、やや忙しい指揮になっているように感じた。もう少し奏者に音楽を委ねても良いようにも思う。(玉川友則)