2015年9月 

  

Popular ALBUM Review


「Diana Panton / アイ・ビリーヴ・イン・リトル・シングス〜私の小さな願い」(Muzak MZCF 1320)
 ダイアナ・パントンは、カナダのシンガー。清楚な容姿で綺麗の声の持ち主だ。既に7枚のアルバムを発表していて、前の「PINK」は、仄かな恋心を歌うという歌、後の「RED」は、成熟した恋を歌う歌、とテーマを持ったものが多いが、今回は、「あなたのCDは、子供を寝かせる時に掛けている。」というファンの声からヒントを得て想像力を掻き立て夢の世界へ誘うような歌、「不思議な国のアリス」からの2曲、ミュージカル・ファンタジー、「夢のチョコレート工場」からの「Pure Imagination」、マペットの映画で蛙のカーミットが歌う「Rainbow Connection」、セサミ・ストリートからのタイトル曲と「Everybody Sleeps」、そしてカーペンターズで有名な「Sing」、ピノキオからの「星に願いを」等の14曲をいつものドン・トンプソン(p,b,vib)レッグ・シュワガー(g)に曲によりコンラート・プロエメンタールのチェロも入る伴奏で子供に優しく語り聞かせるが如く歌う大変心地良いアルバムだ。彼女は、10月に初来日で、5日と6日に丸の内の「コットン・クラブ」に出演が決まっている。(高田敬三)


Popular ALBUM Review


「Four Freshmen and Friends / Newport Beach Jazz Party」(www.4Freshmen.com)
 ザ・フォー・フレッシュメンは、結成後67周年を迎える。その間にメンバーの顔触れは、何度も変わり、所謂Group#22は、10年以上も続き歴代の中でも一・ニを争う素晴らしいグループだった。そこから、ヴィンス・ジョーンズが抜け、続いてトップ・テナーで多くのアレンジを手掛けていたブライアン・エイケンバーガーが抜け、スティン・マルヴェイとトミー・ボイントンが参加した新たなグループによる初アルバム。今年の2月15日にニューポート・ビーチで行われたジャズ・フェスティバルでのライヴ録音だ。バリトン・ヴォイスを受け持ちトランペットとフリューゲル・ホーンを吹くカーティス・カルデロンが全曲のアレンジを担当。「Avalon」、「Moonglow」、「Don't Be That Way」、「Stompin' At The Savoy」等ベニー・グッドマン楽団の当たり曲を中心にケン・ぺプロウスキ_(cl,ts)チャック・レッド(vib)ロン・エスチューテ(g)ケティ・シロー(b)ブッチ・マイルス(ds)のグループと共演で歌うジャズ色の濃い異色な作品だ。カーティス以外は、歌に専念、器楽陣其々のソロもフィーチャーされる。新グループの今後の動きが興味あるところだ。(高田敬三)


Popular ALBUM Review


「ニーナ・リビジテッドノア・トリビュート・トゥ・ニーナ・シモン」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル:SICP-4519)
 優れたシンガー・ソング・ライター&ピアニストというだけではなく、合わせて社会的なメッセージを発信していたことでも多くの支持者を持ち'ソウル界の高僧'とも呼ばれる故ニーナ・シモン(2003年4月21日に70歳で逝去)を改めて再評価しようというムーブメントが巻き起こっている。Ms.ローリン・ヒル(9月来日公演予定)を中心に、メアリー・J・ブライジやニーナの愛娘リサ・シモンも参加してニーナの十八番のレパートリーと共にリスペクト。「行かないで」(ジャック・ブレル作品)や「悲しき願い」(アニマルズで有名に)といった著名曲に加えてラストにはニーナ本人の歌唱による「自由になりたい」を収録(このアルバムの趣旨を明確に物語る楽曲)。ニーナのドキュメンタリー映画「What Happened、Miss Simone」も今秋ネット配信で公開。またレーベルを超えて29曲収録の2枚組ベスト盤「エッセンシャル・ニーナ・シモン」(ソニー)も出される。昔から彼女が歌うカヴァー曲が好きだっただけに、その本家をも寄せ付けないような圧倒的な歌唱の魅力がこれを機に新たに再発見されることも個人的には願うところ。(上柴とおる)


Popular ALBUM Review


「Mr. Magic Man-The Complete RCA Studio Recordings/ウィルソン・ピケット」(BSMF RECORDS:BSMF-7518)
 シャウト型サザン・ソウル・シンガー、ウィルソン・ピケット(2006年1月19日に64歳で逝去)が1970年代にRCAレコードからリリースしたアルバム4枚「Mr. Magic Man」(1973年)「Miz Lena's Boy」(1973年)「Pickett In The Pocket」(1974年)「Join Me And Let's Be Free」(1975年)をCD2枚にそっくり収めた完璧盤(ボーナスも4曲収録)。ピケットといえば1960年代〜1970年代初期のアトランティック・レコード時代が全盛期として語られてお終いというのが定番だが、それ以降のRCA時代はこれといったヒット曲は出なくなったものの最前線からは'退いて'肩ひじ張らずな感じでリラックス?して歌うピケットが存分に楽しめる(とはいえあの'喚く'ような歌唱は健在だが)。フィラデルフィア、マッスルショールズ、L.A.と録音の地を渡り歩き、バックのサウンド(これがどれもかっこいい♪)がどう変わろうとどこまでも'オレ様スタイル'で時代を歩んで行く。RCA時代を'聴き忘れた'ままにしておくのはもったいない!(上柴とおる)


Popular ALBUM Review


「イントロデューシング・ダーレン・ラヴ/ダーレン・ラヴ」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル:SICP-4569)
 フィル・スペクター・ファミリーとしても知られるキャリア50数年の'バック・コーラスの歌姫'ダーレン・ラヴ(74歳)17年ぶりの新作には彼女を慕うミュージシャンたちが多数協力。ブルース・スプリングスティーン&E.ストリート・バンドのスティーヴ・ヴァン・ザント(プロデュース&アレンジ)の肝入りでスプリングスティーンは言うまでもなく、エルヴィス・コステロ、マイケル・デ・バレス(シルヴァーヘッド、パワー・ステーション)、ジミー・ウェッブ、バリー・マン&シンシア・ワイルらが曲を贈り、スペクター傘下でアイク&ティナ・ターナーが放った「リヴァー・ディープ・マウンテン・ハイ」などのカヴァーも。とはいえ、スペクター風のオールディーズ・テイストで懐かしがるというのではなく、大ベテランの実力やポップな魅力を引き出そう、生かそうという意気込みで制作されているところが素晴らしい♪それを代表するのが6分あまりに及ぶラスト曲でスティーヴ作のゴスペル「ジーザス・イズ・ザ・ロック」。(上柴とおる)


Popular CONCERT Review


「m.s.t. 持山翔子トリオ」8月13日 渋谷・JZ Brat
 m.s.t.を率いる若手ピアニスト持山翔子が、毎回ゲストを迎える同店のイベント。その第6回は共同名義作『ユー・アー・ラブド』が発売されたばかりのサラ・レクター(vo)、前回も参加した女性弦楽四重奏団(SQ)との共演。Jポップ畑の作・編曲提供やライブ助演でも活躍する持山は、それら大舞台での経験がジャズのステージでも確実に活きていることを感じさせた。場面の変化に富む新曲「アライブ」、SQが加わって豪華かつドラマティックに展開した代表曲「プリドーン」と、インスト曲で魅力を発揮。日米ハーフのレクターはナチュラルな英語発音の安定感ある歌唱で、カバーとオリジナルを選曲。幼少期から親しんだカントリー・ミュージックの自然な発露が好ましい「ジョリーン」(ドリー・パートン)、生まれて間もない息子を思う「ソー・ファー・アウェイ」(キャロル・キング)、レクター作詞・持山作曲の心に染み入る「ユー・アー・ラブド」。もっと広く知られていい実力派ボーカリストである。(杉田宏樹)
写真:Hiroki Sugita


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