クリストフ・
コワン
マリア=テクラ・アンドレオッティ
金子陽子
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「クリストフ・コワンと仲間たち」(8月3日、武蔵野市民文化会館小ホール)
モザイク・クァルテットの結成者であり、チェリスト、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者、指揮者、教育者として活躍するクリストフ・コワンのチェロと、その夫人マリア=テクラ・アンドレオッティのフラウト・トラヴェルソ、パリを中心に活躍する金子陽子のフォルテ・ピアノによるベートーヴェン、ハイドン、そして同時代の忘れられた作曲家ヨーゼフ・ヴェルフル、イグナツ・プレイエルの三重奏曲のプログラム。
古楽器を聴くのはひさしぶりで、最初のプレイエルのトリオホ短調とベートーヴェンのチェロ・ソナタ第2番は、フォルテ・ピアノの音量が小さいこともあり音楽になじむことができず惜しいことをした。
3曲目のヴェルフルのフルート・トリオヘ長調を聴く前に、「これは豪華なサロン・コンサートとして聴けば良いのでは」と考えを改めたところ、スムーズに音楽が心の中に染み入って来た。このヴェルフルのトリオは最近コワンがウィーンの図書館から取り寄せた数曲の中から3人で選んだということだが、素朴で何とも言えない鄙びた味わいと哀愁があり、いっぺんで心を奪われてしまった。
後半は聴き方もわかったため、本当に楽しめた、ベートーヴェンの魔笛の主題による7つの変奏曲のコワンと金子の温かな会話、ハイドンのフルート・トリオニ長調Hob.XV16でのアンドレオッティのフラウト・トラヴェルソ(オリジナル、ロレンツォ・チェリーノ、1750年頃)の柔らかく優しい響きは最良の癒しを与えてくれた。
金子のフォルテ・ピアノ(クリストファー・クラーク1995年製、アントン・ワルター・モデル、1794年。故小島芳子氏蔵)は終始、音楽の土台をつくり推進し、素晴らしく音楽性に満ちたものだった。
コワンの弾くバロック・チェロ(オリジナル、グランチーノ、1710年頃)はガット弦ならではの柔らかく底深い響きがあり、ピリオド楽器の良さを再認識させるものがあった。(長谷川 京介)
金子陽子写真: (c)T.Yoshida |