2014年10月 

  

Popular ALBUM Review


「ガッタ・ゲット・バック・トゥ・シスコ&ゴーゴニ・マーティン&テイラー/ゴーゴニ・マーティン&テイラー」(BSMF RECORDS:BSMF-7512)
 かつて2000年にこちらで世界初CD化が実現したGM&T(アル・ゴーゴニ、トレイド・マーティン、チップ・テイラー)の1971年と1972年のアルバム(全22曲)が1枚のCDにパックされて再登場♪それぞれがシンガー、ソング・ライター、プロデューサー、ミュージシャンとして活躍する彼ら3人がスクラムを組んだいわゆる'スーパー・グループ'で、音楽的な持ち味はカントリー、フォーク、ポップス。。。と三人三様ではあるがそれらが見事に融合して素晴らしいハーモニーを描き出しており、オリジナル盤の発売当時に時流を行く存在だったCS&Nを意識したような(特に4曲目「スティック・ア・リー」は聴きもの♪)。当時は大きな話題にならなかったアルバムではあるが今一度、認識を改めたくなること間違いなしの仕上がり。'セルフ・カヴァー'の16曲目「アイ・キャント・レット・ゴー」(ホリーズで大ヒット:ゴーゴニ&テイラーの作品)も要注目♪(上柴とおる)


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「Yasuko meets Lewis At Mr. Kelly's / 中谷泰子」(DoLuck Jazz DLC 3)
 中谷泰子は、大阪出身のジャズ・シンガー。東京と大阪を中心に活躍している。このアルバムは、彼女の通算8作目で初のライヴ作品。現代の代表的ドラマ_のルイス・ナッシュとの共演だ。二人の出会いは、昨年ルイスが大阪のクラブ「ミスター・ケリ_ズ」で行った3日間のメンバーを変えてのライヴでヴォーカルの日に彼女が抜擢された時だった。多田恵美子(p)荒玉哲郎(b)のトリオで歌ったが相性も良く大変評判ガ良かったので今年6月に再演ライヴが行われ録音された。ルイスのドラムとのデュオで歌う所も有る「S'Wonderful」、彼とデュエットで歌う「Georgia On My Mind」なども有る和気あいあいの楽しいライヴだ。一発勝負のライヴ録音では、良く見られるが、緊張感のせいか多少歌が雑になった場面もあるが、彼女の代表作に一枚には違いない。(高田敬三)


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「ウィリアムス浩子 マイ・ルーム」(Berkley Square Music BSM006)
  ウィリアムス浩子は世界に通用する数少ない日本人ジャズ・シンガーの一人だと思う。構えず自然体で美しいジャズが歌えるのは、声も含めて持って生まれた資質にもよるが、十分鍛錬したお陰だろう。今回は馬場孝喜のギターとのデュオで、極めてシンプル。デリカシーに富んだインティメイトで暖かい雰囲気が素晴らしい。ブラジリアン、スタンダード、ビートルズ・ナンバーなど選曲もよく、それぞれの曲との出会いなどを本人が書いていて、曲を愛しむように歌っている。特別な録音環境で、ギターのまろやかな音質もよく出ているし、ゆったりと歌っていく浩子の歌声の、曲を熟知した深い味わいも美しい。「クワイエット・ナイト」の日本語もよく他と溶け合っている。ミニ・アルバムなので、もっと聞きたいきがするが、充実して楽しめる。(鈴木道子)


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「アン・バートン シングス・フォー・ラヴァーズ・アンド・アザー・ストレンジャーズ」 (ソニー・ミュージックSICP 4223)
 アン・バートンの有名な「ブルー・バートン」と「バラーズ・アンド・バートン」の後1971年に発表された3枚目の本アルバムは、当初、日本盤も発売になったが、どうした訳か、前の2作は、その後、何度も再発が繰り返され、CD化も行われたが、このアルバムは、そのままで、CD化もされていなかったので、待望のCD化だ。前2作ではスタンダード・ナンバーを中心にルイス・ヴァン・ダイクの伴奏で歌ったが、このアルバムでは、ビートルズ、カーペンターズ、ジェームス・テイラー等、1971年頃のコンテンポラリーな作品を多く取り上げている。彼女の歌に対する感覚は、素晴らしいものだった。彼女にとっては歌詞が非常に大切で歌詞に感銘をうけるとそれをアン・バートンの歌にしてしまうというのが彼女のスタイルだった。本アルバムでも彼女の選曲の良さが光っている。伴奏をオルガンも入るウィル・オーヴァーハウのカルテットにしたのも曲想からいって正解だ。(高田敬三)


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「バーブラ・ストライサンド パートナーズ」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル SICP-30729)
 バーブラがまた快挙だ。スティーヴィー・ワンダー、ビリー・ジョエルはじめ豪華な男性歌手たちをパートナーに、円熟した魅力を発揮。ビルボードのアルバムNo.1となった。マイケル・ブーブレとのオープニングがいい。特にビッグ・バンドに乗った歌唱は両者とも中身が濃い。ビリーも「ニューヨークの想い」を熱く歌い、バーブラはすんなり曲のよさを表現して絶妙。現代のテクノロジーを駆使したエルヴィス・プレスリーとの「ラヴ・ミー・テンダー」は、格別の味わいだ。カントリーのブレイク・シェルトンとの土くさい暖かさもいい。プロデュースはソウル系の大物ベビーフェイスとアファナシェフ。ベビーフェイスは歌でも登場するが、歌手としては今一つ。ボーナス5曲付きで、既発売物が殆どだが、バリー・ギブとのデュオは聴き応えがある。(鈴木道子)


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「シル・ジョンソン」7月28日 六本木・ビルボードライブ東京
 約20年前、シカゴ・ブルース・フェスティヴァルで見て以来のシル・ジョンソンである。登場するやいなや、数えきれないほどの黒人の女性(おばさん)が舞台に押し寄せ、キャーキャーいいながら踊っていた光景を覚えている。彼のパフォーマンスをまさか日本で聴けるとは思わなかった。1950年代後半にデビューしたというから、もう60年近いキャリアを持つ。しかしその歌声の力強さ、バンド全体を率先して引っ張っていくようなノリには圧倒されるしかない。「カモン・サケツミ」は歌われなかったが、「イズ・イット・ビコーズ・アイム・ブラック」をはじめとする代表曲はほぼ網羅されていたように思う。真の意味でアメリカで通用している希少な日本人ミュージシャンである山岸潤史のエモーショナルなギター、椅子からジャンプしながらドラムスを叩くデリック・マーティン(最後にはドラム・セットを飛び越え、客席に飛び込んで、ワイングラス等を叩いてすさまじいリズムを生み出した)のプレイにも胸が熱くなった。アリサ・フランクリン、ドニー・ハサウェイ、キング・カーティスらとの共演で知られる伝説的ベース奏者ジェリー・ジェモットの指さばきも極上の味わい。ブラック・ミュージックのエッセンスを丸呑みしたかのような、実に濃いひとときであった。(原田和典)【カメラマン:jun2】


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「東京JAZZ」9月6、7日:東京国際フォーラム ホールA
 今年で13回目を迎えた本邦最大級のジャズ・フェスティバル。2日間の昼夜合わせて4つのステージは、過去に劣らぬ見どころが現出した。欧州公演を経て、日本では初めてとなるミシェル・カミロと上原ひろみのピアノ・デュオは、超絶的なテクニシャンどうしの激しい応酬が予想されたが、カミロの懐の深さが光る形に。ジャズ・ピアニストの最長老であるアーマッド・ジャマルのステージ終盤で、上原が恩師に花束を贈呈する粋な演出も。本祭初期の音楽監督を務め、今回久々の復帰を果たしたハービー・ハンコックは、「アクチャル・プルーフ」「ウォーターメロン・マン」の定番曲に加え、ショルダー・キーボードで「ロック・イット」「カメレオン」を演奏。大御所になっても変わらない音楽に対する若々しいセンスを見せつけた。全12組のステージで最も印象的だったのが、小曽根真 featuring No Name Horsesとクリスチャン・マクブライド・ビッグバンドの対バン。最初から両者がスタンバイし、お互いの演奏を聴きながらの進行は、まさに日米頂上対決の趣だ。この日のために小曽根が書き下ろしたダブル・ビッグバンド用の新曲は、両者の腕比べと協調関係により、感動的な場面が続出。大きな収穫と共に幕を閉じた。(杉田宏樹)
写真:(c) Akira Muto


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「アヴィシャイ・コーエン トリヴェニ」9月7日 新宿ピットイン
 同名のベーシストもいるが、こちらはトランペット奏者のアヴィシャイ・コーエン。21世紀初頭に驚天動地のリーダー・アルバム『ザ・トランペット・プレイヤー』を発表した彼がそれから約10年、ついに自身のバンドを率いてやってきた。これまでゴンサロ・ルバルカバのグループやミンガス・ビッグ・バンドで来たことがあるとはいえ、はっきりいって存分にフィーチャーされたわけではなかった。しかしこの日のアヴィシャイはタル・マシアハ(ベース)、ジェフ・バラード(ドラムス)とのトリオで、トランペットを演奏する喜びをぶちまけるかのように吹きまくる。ミュートやフリューゲルホーンの使用は皆無。オープン・トランペットで、休憩を除いて2時間以上もブロウし、しかもフレーズは尽きることなく、唇が死ぬこともなく、曲が進めば進むほどスタミナが増しているようにすら感じられるのだから本当にアヴィシャイは怪物だ。しかもギターやピアノなど、一切のコード楽器がないのである。なのに彼のトランペットからは豊かなハーモニーが聴こえてくる。客席は立ち見が出るほどの超満員。数多くの若いオーディエンスが集まる様子は、五十年一日の演奏しかしない有名人や飽きもせずフュージョンをやっているような奏者のコンサートでは見られないものだ。今を生きるひとは、今に生きるジャズが聴きたいのだ。アヴィシャイ、100点満点だ。ただひとつ気になったのは、彼の自作曲がときにオーネット・コールマンやチャールズ・ミンガスなど先人の書いた有名ナンバーに似すぎていること。プレイと同じぐらいの独自性が、曲作りにも反映されたら鬼に金棒だ。(原田和典)


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大人音楽Nights <Jazzy Premium Night> 「三木敏悟&インナーギャラクシー・オーケストラ」9月8日 新宿ReNY
 1970年代後半から80年代にかけて『海の誘い(いざない)』、『出航前夜』、『ミスティック・ソーラー・ダンス』など数々の話題作を放った日本屈指のオーケストラがインナーギャラクシーだ。ぼくは昨年おこなわれた活動再開ライヴを聴いて大感激、この日も嬉しい気分で新宿にかけつけたが、前回よりもさらに“こなれた”サウンドで、2時間余りが文字通りの一瞬に感じられた。リーダー、作編曲、指揮はもちろん三木敏悟。鬼才という言葉がふさわしい存在だと思うが、MCではダジャレを織り交ぜてとにかくよくしゃべり、客席を笑いの渦に巻き込む。レパートリーは往年の人気曲「マーマンズ・ダンス」等に加え、近作の「ピンク・サンタ」、東北地方に思いをはせた大作「風の巡礼」(宮沢賢治の「雨ニモマケズ」も出てくる)等。リズム・セクションとコーラス(女性3人)はすべて若手で固めていたが、内田日富(トロンボーン)、安孫子浩(トランペット、フリューゲルホーン)、菊地康正(サックス)など大ベテランも健在。それぞれが充実したプレイを聴かせた。尺八の中村明一もサックス・セクションの中に違和感なく混じり、すさまじいアドリブで圧倒した。サックスの中に尺八が混じった響きは、どこかクラリネットにリード・メロディをとらせたグレン・ミラー楽団のサックス・セクションのそれを思い出させる。(原田和典)


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「RICK ASTLEY “Together Forever” JAPAN TOUR 2014」
 1980年代後期にイギリスからデビュー、当時、大きなうねりとなっていたユーロビート・ナンバーを次々にチャートに送り込み、ユーロビートの貴公子とも言われたリック・アストリー。だが彼の魅力はそれだけではない。その後、持ち前のソウルフルな歌唱力で 「クライ・フォー・ヘルプ」のような自作のバラードでもヒットを放ち、ソングライター、そして実力派シンガーとして更なる飛躍を遂げた。今回は8年ぶりの来日公演。ダンサブルな曲からバラードまで、耳に馴染むキャッチーなメロディーの数々をフィーチャーしたステージは彼の歌に初めて触れる人たちにも十分楽しめるはずだ。(YT)

* 11月12、13日 渋谷オーチャードホール
* 11月15日 神戸国際会館こくさいホール
お問い合せ:キョードー東京 0570-550-799
http://www.kyodotokyo.com


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