2014年10月 

  

Audio Blu-Ray Disc Review

「エルヴィス・オン・ステージ スペシャル エディション」(ワーナー・ホーム・ビデオ1000513677)
 1960年代後半、ニューロックに押されマンネリ映画主演でお茶を濁していたエルヴィスは1969年、社会派歌詞のバラード「イン・ザ・ゲットー」で新境地を開くと勢いを取り戻し、その後もヒットを連発し元来人気の根強い北米でトップスターに返り咲く。しかし日本では〈忘れられた歌手〉のままだった。1971年本作がロードショー公開(製作は1970年)されると予想外の大ヒットになりエルヴィスは日本で新世代のファンを獲得、1977年に没するまでずっと存在感に翳りはなかった。
 劇場公開バージョンにリハーサルシーンを加えた特別バージョンのハイビジョンディスク化。ダスティ・スプリングフィールドのカバー曲「この胸のときめきを」を自分の代表曲にしていく手際に七転八起のスーパースターのしたたかさが伺える。
 16mmフィルム撮影が主力だがショーのシーンは重厚なコントラストの良好な映像。5.1CH音声は通常の48kに止まる。しかし定評あるバックバンドのよく歌うベース、ドラマーの達者なタム使いが鮮明に収録され楽しませる。(大橋伸太郎)