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「ブラームス:交響曲全集、悲劇的序曲、大学祝典序曲、ピアノ協奏曲第1番&第2番、ヴァイオリン協奏曲/クリスティアン・ティーレマン指揮、マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)、リサ・バティアシュヴィリ(ヴァイオリン)、シュターツカペレ・ドレスデン」(ユニバーサル ミュージック、ドイツ・グラモフォン/UCCG-1674〈3CD+1DVD〉)
ブラームスの〈てんこ盛り〉とも言えるCD3枚とDVD1の4枚セットである。CDには交響曲第1番と悲劇的序曲、交響曲第2番と大学祝典序曲、交響曲第3番と第4番のカプリングによる3枚、そしてDVDのピアノとヴァイオリンの協奏曲3曲はCDではすべて発売済みだが、今回はそのビデオ版であり、ファンにとっては嬉しい1枚ではなかろうか。
ブラームスの4つの交響曲、2つの序曲の演奏はティーレマンがシュターツカペレ・ドレスデンとの相性が未曾有の良さであり、今をときめく世界でも有数の指揮者で、尚且つ巨匠と言われるに相応しい証拠であろう。先ずはこの悠揚迫らぬどっしりとした演奏は正にティーレマンとシュターツカペレ・ドレスデンのたった2年の蜜月としては早すぎるかも知れないが、完全に金字塔と呼ぶに相応しいものであろう。ティーレマンは2008年から2010年にかけて録音されたウィーン・フィルとのベートーヴェンの交響曲全集でも評判を呼んだが、今回のブラームスの交響曲全集はそれを凌駕する出来であると筆者は考える。
そして4枚目のDVDに収録されているポリーニのピアノ協奏曲第1番(2011年6月収録)と第2番(2013年1月収録)の演奏は円熟の極みであると同時に、両曲とも歳相応とは思えない完璧な技術を見せている。第1番、第2番とも指揮のティーレマンが大先輩のポリーニに手を貸しているシーンが微笑ましい。またヴァイオリン協奏曲のバティアシュヴィリは、現在グルジア出身の代表的若手女性ヴァイオリニストとして完璧なテクニックと持って生まれた豊かな音楽性でブラームスの奥深い音楽を好演している。この協奏曲3曲に関しても、ティーレマンとシュターツカペレ・ドレスデンの好サポートが特に光っている。(廣兼 正明)
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