2013年12月 

  

Popular ALBUM Review


「ミュージカル・アフェア/イル・ディーヴォ」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル:SICP-30339)
 イル・ディーヴォの最新作はミュージカル・ナンバー12作品を取り上げた、オリジナル・アルバムとしては通算6作目。「メモリー〜キャッツ」「トゥナイト〜ウェストサイド物語」「魅惑の宵〜南太平洋」「リヴ・フォーエヴァー〜ウィー・ウィル・ロック・ユー」「ユール・ネヴァー・ウォーク・アローン〜回転木馬」と年代やスタイルにこだわることなく幅広いレパートリーから選曲されている。また例えば「メモリー」ではイタリア語と英語のデュエットで歌われたり、「愛を感じて〜ライオン・キング」ではスペイン語が取り入れられたりと必ずしも英語ではないところに、ミュージカル・ナンバーの新たな魅力を感じさせる。二コール・シャージンガー、ヘザー・ヘッドリー、クリスティン・チェノウェスといった実力派女性シンガーの起用もオペラ的アプローチに一役買っている。「ミュージック・オブ・ザ・ナイト〜オペラ座の怪人」(2006年のライブ)はバーブラ・ストライサンドとイル・ディーヴォのコラボ。壮大なスケールを感じさせる名作だ。日本盤にはボーナス・トラックとして「花は咲く」が収録されている。(三塚 博)


Popular ALBUM Review


「トーキング・ドリームス/エコスミス」(ワーナーミュージック・ジャパン:WPCR-15369)
 私にとっては子供というよりも孫みたいな世代のカリフォルニア出身4人組のお目見え盤。何と平均年齢17 歳♪しかもファミリー(兄弟)となれば私なんぞはカウシルズを思い浮かべてしまう(古いっ)。全員楽器を持つロック・グループで紅一点の長女シドニー(16歳)がリードを取ってしっかりと歌う。それにしてもこのアルバム、とてもこんな14歳〜20歳の若い子たちが仕上げたアルバムとは思えない。かっちりとしたまとまりの良いサウンドを聴かせ、あどけなさや頼りなさなども感じさせないのは音楽一家に育ち、すでに結成6年というキャリアが背景にあるからか。1980年代のオルタナ系バンドの匂いを放ち、どの曲も実に手応えがある。(上柴とおる)


Popular ALBUM Review


「アンソロジー 1968-1974〜マン・オブ・ワーズ、マン・オブ・ミュージック/リチャード・ハリス」(クリンク:CRCD-3594)
 もう45年も前の曲なのに今も聴くたびに胸が高鳴る感動作「マッカーサー・パーク」(1968年:米No.2)。若き日のジミー・ウェッブが書いた7分20秒に及ぶこの大傑作で'歌う俳優'としても一気に世に躍り出たハリスが1968年〜1972年にかけてDunhillで吹き込んだ20 曲+1974年のAtlantic音源1曲をほぼ年代順にわかりやすく収録したアンソロジー(うち13曲がウェッブの作品)。'ハリー・ポッター'(1〜2作目)で魔法学校の校長先生を演じたのを最後に72歳で亡くなったが(2002年10月25日)、'歌手時代'を知る人も少なくなった昨今、スケールの大きい曲想と一般のポピュラー・シンガーとは持ち味の異なる歌唱の魅力が再認識されるきっかけになれば。サウンドもまた素晴らしい♪(上柴とおる)


Popular ALBUM Review


「ソウル・シェイカー/ググン・パワー・トリオ」(BSMF RECORDS:BSMF-2364)
 世界は広い。インドネシアにこんなロック・バンドがいてすでにこのアルバムが6作目になるとは。しかも欧州やアメリカにも進出しているとか。ギタリスト、ググン率いるトリオが奏でる全11曲にはかつて耳にしたことがあるような曲調、フレーズ、歌唱法がふんだんに取り込まれており、それが何とも小気味よくハジけている。ジミ・ヘンドリックスを主役にレニー・クラヴィッツやロバート・プラント(レッド・ツェッペリン)がサポートしてるといったような印象もあり、わかる人にはかなりおもしろく興味を持って聴けるはず。「アシッド・レイン」や「ファンク#2」といった曲名の付け方からも彼らの発する'サイン'が読み取れるような気がする。(上柴とおる)


Popular ALBUM Review


「ライヴ・イン・ニューヨーク・シティ/グレッチェン・パーラト」(ヤマハ・ミュージック&ビジュアルズ:YMCJ-10021)(CD+DVD)
 スタンダード・ナンバーを得意とする女性ジャズ・シンガーは少なくないが、グレッチェン・パーラトは今を創造するジャズメンの名曲を中心に、高い評価を受けている。代代ジャズ・プレイヤーの家系でロサンジェルス生れ。カリフォルニア大学でジャズと民族音楽を学び、10年前からニューヨークで活躍している。セロニアス・モンク・コンペティションで優勝。一気に最先端に躍り出た。これは彼女の初ライヴ・アリバム。昨年12月、ニューヨークの下町にあるロックウッド・ミュージック・ホールで録音・録画された。テイラー・アウグスティ(p)はじめ、NYの先端をゆくミュージシャンと共に、潤いをたたえた魅惑的な歌声は酔わせる。シャウトしない囁くような歌唱は、ヨガで鍛えられ(?)制御された息使い。ハービー・ハンコックの「バタフライ」、ウェイン・ショーターの「ジュジュ」、現代ブラジル物など、自作も含め、演奏ともどもニューヨークの今が楽しめる。(鈴木道子)


Popular ALBUM Review


ビューティフル・ラヴ


マイ・ファニー・ヴァレンタイン

「ビューティフル・ラヴ/ケニー・バロン・ソロ・ピアノ」(Eighty Eight's:EECD-8804)
「マイ・ファニー・ヴァレンタイン/ケニー・バロン・ソロ・ピアノ」(Eighty Eight's:EECD-8805)
 ケニー・バロンのソロ・ピアノの新作が2枚同時に登場した。「珠玉のジャズ・スタンダード集Vol.1、Vol.2」の副題どおり、各作品10曲ずつの選曲構成で、9曲のスタンダード曲にオリジナル作品が一曲ずつ収録されている。ケニー・バロンは、その八面六臂の活躍ぶりからも伺えるように、主流派ジャズ・ピアニストとして近年最も重要な存在であることは間違いない。職人的な技から流れ出てくる響きは、流麗でリリカルそして時に知的、ピアノ・ジャズの持つ普遍性そのものだ。「枯葉」「メモリーズ・オブ・ユー」「ボディ・アンド・ソウル」「黒いオルフェ」「マック・ザ・ナイフ」「ドント・エクスプレイン」「スカイラーク」などスタンダード中のスタンダードを丁寧に弾きこんで楽しませてくれる。 (三塚 博)


Popular ALBUM Review


「DREAMY/Aoi Yamaguchi」(Bandwagon :AY-0004)
 福岡を拠点に活躍する山口葵のビル・メイズとの前2作に次ぐ新作。今回は、大石学(p, org)山村隆一(b)をバックに歌う。3度渡米してマラノ&モンテイロのデュオで知られ、最近「Musicianship for the Jazz Vocalist」という教則本を出してマンハッタン・スクール・オブ・ミュージックの教師もしている歌手のナンシー・マラノに師事、国内の幾つものジャズ・ヴォーカル・コンテストでグランプリに輝いている。さすがに彼女の歌唱力は確実なもので素晴らしい。あまり歌われないエロール・ガーナー作のタイトル曲や日本語の「ゴンドラの歌」以外は、スタンダードを9曲、大石のピアノ、曲によりフェンダーローズやハモンド・オルガンも交える壺を得た素晴らしいサポートで歌う。山村とのデュオもありアルバムの構成も良い。彼女は、もっと広く多くの人に聞いて欲しいシンガーだ。(高田敬三)


Popular ALBUM Review


「トゥアヒネ/ハパ」(ALOHA SOUND:ALOC-024)
 コンテンポラリー・ハワイアン・ミュージックを牽引してきたデュオ・グループ、ハパの3年ぶりのアルバム。バリー・フラナガンの相手役であったネイサン・アウェアウが脱退し、かわってロン・クアラアウが参加。第三期ハパの誕生である。ハワイの伝統や文化、自然の美しさに畏敬の念をもって接しながら、ポップスのエッセンスをほどよくブレンドしてハパ独特の音世界を作り上げる。タイトル・チューンの「トゥアヒネ」は名曲である。オアフ島に伝わる悲劇の美人伝説をモチーフにしたバリー・フラナガンのオリジナル作品。そして「ヒイラヴェ」「プアリリ・レフア」「ワヒネ・イリケア」など、日本のフラ愛好家やハワイアン・ファンにもなじみの曲を美しいハーモニーで飾りながら心に響くハワイアン・メレ集に仕上げている。(三塚 博)


Popular CONCERT Review


「ダイアン・シューア」 10月23日 コットン・クラブ(セカンド・ステージ)
 ここのところ毎年にようにコットン・クラブに出演のダイアン・シューア、今回は、先日、急逝したシダー・ウォルトンの公演の穴埋めで急遽来日が決まったようだ。毎回、共演陣は、変わっているが、今回は、人気のテナーのハリー・アレン、とベン・ウルフ(b)ロイ・マッカーディ(ds)との共演。ステージは、ガーシュインの「スワンダフル」から始まり、ジョビンのボサ・ノヴァ「ハウ・インセンシティブ」、そして、アップ・テンポでハリー・アレンのテナーとスキャットで掛け合う「アイ・リメンバー・ユー」とスタンダ—ド中心に進められる。声は、相変わらず伸びやかで自由奔放といった弾き語りだ。ハリー・アレンが共演ということで、ハリーのソロ、ロイ・マッカ—ディのドラム・ソロも交えてスキャットで歌ったコルトレーンの「モーメンツ・ノーティス」や、クリフォード・ブラウンの「ジョイ・スプリング」が素晴らしかった。スロー・テンポでしっとりと歌ったジム・ウェッブの「ディドント・ウィー」など全10曲を全身全霊を込めた感じの彼女自身のスタイルで歌う。聴衆を楽しませるという面では、エラ・サラ・カーメンを継ぐ御三家といわれた後の二人、ダイアン・リーブス、カサンドラ・ウイルソンとは、一味違うステージだ。コーヒーの良い香りが場内に漂うと「コーヒー飲みたい」と云ってマネジャーに持って来させたり天衣無縫といった彼女だったが、何故かアンコールは、無かった。(高田敬三)
写真提供:COTTON CLUB
撮影:米田泰久


Popular CONCERT Review


「石田新太郎とシティライツ」 11月1日 銀座ナッシュビル
 カントリー&ウェスタンの魅力を送り届ける“石田新太郎とシティライツ”のライヴを思いっきり楽しんだ。結成は1960年代後半。グループ活動のほかにも尾崎紀世彦や土居まさるのレコーディングに参加するなど、その行動範囲は多岐にわたる。一度惜しまれつつ解散したものの、のちに再結成。愛娘・石田美也のヴォーカルを加え、親しみやすい選曲と楽しいパフォーマンスでファンを増やし続けている。僕はどちらかというと黒人音楽のフリークなので正直言ってカントリー&ウェスタンに対する知識はさほどない。しかし「ローズ・ガーデン」や「ワイド・オープン」、イーグルスの「テイク・イット・イージー」等を織り交ぜたプログラムは文句なしに親しみやすく、「音楽を楽しむときにカテゴリーも肌の色も無用」であることを改めて教えられた。石田新太郎はペダル・スティールのほかエレクトリック・ギターやリゾネイター・ギター、ヴォーカルでも熟練の技を発揮した。1996年から「ティアラこうとう」で行なっている定期公演も大好評のシティライツ(今年のスペシャル・ゲストはウィリー沖山)、実にいいバンドだ。(原田和典)


Popular CONCERT Review


「クラレンス・カーター」 11月14日 ビルボードライヴ東京
 遂に見ることができた。なんと27年ぶりの来日だという。あと2ヶ月で78歳になる。背が高くてかっこよく、スーツの襟には宝石が仕込んであるのか、やけにキラキラしていた。ギターは指弾きとピック弾きを使い分けていたが、個人的には指を伸ばして、ベースを弾くようにして弦を引っかく時のパキパキした音に魅了された。歌声は年齢相応であり、60年代のような覇気は望めない。しかし“あのクラレンス・カーターが今、ライヴで歌っている”という喜びが、すべてを吹っ飛ばす。演目は「パッチズ」、「スリップ・アウェイ」、「ルッキング・フォー・ア・フォックス」、「ドクターCC」等。レイ・チャールズの「ホワッド・アイ・セイ」のカヴァーもイカしていた。さすがだ。今度は27年も待たせないで、すぐさま再来日してほしい。そう思いながら僕はライヴ会場を後にした。(原田和典)
撮影:Masanori Naruse


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「イル・ディーヴォ」
 世界中の女性ファンを虜にして止まない4人組スーパー・ヴォーカル・グループ、イル・ディーヴォ待望の来日公演が決定した。親日家でも知られる彼らのライヴは、常にパーフェクトであり、観客を飽きさせないどころか、会場全体をその魅力でノックアウトしてしまう不思議な力を秘めている。最新アルバム『ミュージカル・アフェア』も好調であり、どんなセットリストと演出で我々を感動に導いてくれるのか、ファンの夢は広がる。(UK)

* 2月26、27日 日本武道館
* 2月28日 愛知県体育館
* 3月 3 日 大阪城ホール
* 3月 5 日 フェスティバルホール
* 3月 6 日 広島サンプラザホール
* 3月 8 日 いしかわ総合スポーツセンター
* 3月10日 日本武道館
お問い合せ:ウドー音楽事務所 03-3402-5999
http://udo.jp/


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「ディープ・パープル」
 ハード・ロックの王者ディープ・パープル待望のジャパン・ツアーが決定した。メンバーは、イアン・ギラン(vo)、イアン・ペイス(ds)、ロジャー・グローヴァー(b)、スティーヴ・モーズ(g)、ドン・エイリー(key)と黄金期の3人が残っている以上、名盤『ライヴ・イン・ジャパン』の再演を望むファンの期待は大きいだろう。往年のギター小僧達が一度はコピーした「ハイウェイ・スター」、「チャイルド・イン・タイム」、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」等名曲の数々が頭を過り、今から興奮して眠れないファンも多い筈だ。唯一の不安材料であるイアン・ギランが元気でさえあれば、必ずや日本中を熱くさせてくれるだろう。(UK)

* 4月9日 愛知県芸術劇場
* 4月 10日 オリックス劇場
* 4月12日 日本武道館
お問い合せ:ウドー音楽事務所 03-3402-5999
http://udo.jp/
撮影:Jim Rakete


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「ジョン・メイヤー」
 三世代目の3大ギタリストの一角をなすジョン・メイヤー(他2名は、デレク・トラックス、ジョン・フルシアンテ)の4年振りとなる待望のジャパン・ツアーが決定した。ギタリストである前に、シンガー・ソングライター特に、シンガー(ヴォーカリスト)であることを強く意識しているニュー・タイプの3大ギタリストであり、これ程バランスの取れたと言うか全てに才能のあるミュージシャンも珍しい。昨年2度目の喉の手術により1年を棒に振っただけに、今年リリースされた最新アルバム『パラダイス・バレー』を携えてのライヴは、今まで以上に力が入るはずだ。ロック・ファン必見のライヴになること間違いなしだ。(UK)

* 4月30日 大阪城ホール
* 5月 2日 日本武道館
お問い合せ:ウドー音楽事務所 03-3402-5999
http://udo.jp/


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