2013年11月 

  

Popular ALBUM Review


「スタンド・ストロング/ジョン・オーツ」(ビクターエンタテインメント:VICP-75119)
 「第12回東京ジャズ・フェスティバル」出演のため9月に来日したジョン・オーツのソロ新作は2年半ぶりの4作目(日本先行発売)。ここんとこ動きが活発だがそれが新作にも反映されているという印象だ。過去2作では自らのルーツを検証する意味合いが強かったが今回は若手アーティストとのコラボレーション(1曲目)なども含めてそういったものにコンテンポラリーな要素を加味。ほど良い甘さとポップさも醸し出されており心地好い。渋いかなと思うもふっとホール&オーツが入るような3曲目やブルース&ソウル風の仕上がりなのにゲスト参加したのはカントリー畑のヴィンス・ギルという4曲目など気になる(気に入る)曲がいくつもあり、かなりの充実ぶりを見せる。蛇足ながら裏ジャケに写っているジョンがあのプリンスみたいに見えるのは筆者だけかしらん?(上柴とおる)


Popular ALBUM Review


「グッド・デイ/シリル・エイメー」(ビクターエンタテインメント:VICJ-65693)
 シリル・エイメーはロマかと思うほど、生き生きとしたマヌーシュ・スィングを聞かせる。フランス人の父とドミニカ人の母を持ち、世界各地を転々としたというが、ジャンゴ・ラインハルト一家と親しく交わったことが、今日の基礎となっている。ニューヨークの音楽大学でも学び、現在はNYを中心に活躍しているが、通常のジャズ・シンガーとは違った個性と自由さがある。これが初アルバム。スタンダード曲と自作がほぼ半々。なかなか面白い。達者で軽快なギターにぐいぐい乗っていく「グッド・デイ」「ラヴ・ミー・オア・リーヴ・ミー」。フランス語で歌われる自作「それなのに」「ワン・ウェイ・チケット」など、自在に個性を発揮している。そこへオーソドックスな表現で「ヤング・アット・ハート」などが入ってくると、アルバムの流れが乱れるのが残念。構成に一考を要する。(鈴木道子)


Popular ALBUM Review


「レッド〜ルージュのため息/ダイアナ・パントン」(MUZAK:MZCF-1281)
 ダイアナ・パントンは、カナダのシンガー。既に5枚のアルバムを発表していて、香港や台湾では、昨年のジャズ・ヴォーカル・チャートでノラ・ジョーンズやダイアナ・クラルを抑えて第一位に輝いた人気者だ。前に恋の予感や、始まりを歌った歌を集めた「ピンク」と云うアルバムを発表しているが、今回の「レッド」は、もっと進んだ形の愛を歌うアルバムだ。ジョージ・シアリングとの共演の長かったマルチ楽器奏者のドン・トンプソンのピアノとヴァイブを中心にサックス、ギターやストリングスも入って、コルトレーンとジョニー・ハートマンで有名な「Say It」から始まりブロッサム・ディアリーの隠れた名曲「Isn't That A Thing To Do」、ペギー・リーが好んで歌った「Amazing」等の珍しい歌も合わせて13曲を可憐なムードで歌う親しみ易くロマンチックなアルバムだ。(高田敬三)


Popular ALBUM Review


Sweet Breeze


Sweet Breeze Ⅱ

「Sweet Breeze」(ビクターエンタテインメント:VICP-65153)
「Sweet Breeze Ⅱ」(ビクターエンタテインメント:VICP-65186)
 坂本裕介プロデュースの'70〜80年代のスタンダードをカヴァーしたSweet Breezeで、ジョー山中の愛娘、マイ山中が遂にアルバムに登場した。マイ山中はファーストで"Like A Virgin"や"No Woman, No Cry"を歌っている。また、「Ⅱ」では、ジョー山中の「人間の証明」をボサノバで歌っている。そのヴォイスには、ジョーの片鱗が垣間見えるのが印象的だ。他に、Yumiko Payneや、KOKIA等と共演している。その曲といい、リラクゼーションした歌は、今、必要なサウンドの様な気がする。マイ山中のウオームヴォイスに今後の期待をしたい。(池野 徹)


Popular ALBUM Review


「OKONOMIYAKI/エル・コンボ・デ・ラ・パス」(アオラ・コーポレーション:ECDP-002)
 広島に活動拠点を置くサルサ・バンド、エル・コンポ・デ・ラ・パスの2作目。「OKONOMIYAKI」というタイトルが気にいった。「“タコス”ではない、日本製のラテン・ミュージックだから“お好み焼き”」なのだそうだ。随所に日本語の歌詞が登場する。ラテン・リズムと日本語詞の相性の良さは、過去の数々のヒット曲が証明済みだが、本作品では「広島じゃけん」とか「もちチャ・チャ・チャ」といった印象的なフレーズの繰り返しがサルサとよく絡み合って独特の旨味を引き出す。「日本風ラテン音楽」」は「広島風お好み焼き」同様に、多くの人たちの舌を、いや耳を楽しませてくれるにちがいない。(三塚 博)


Popular ALBUM Review


「マイ・フェイバリット・シングス/SAI」(STEEP HIGH MOUNTAIN RECORDS: R-1380666)
 期待のジャズ・ヴォーカリストSAI(サイ)の待望のファースト・アルバム『マイ・フェイバリット・シングス』が届いた。SAI本人によるプロディースと言う事が、如何にこの作品に懸けているかを伺わせる。明るいニューヨークを表現したかの様な楽しさに満ちたアレンジと録音から、ニューヨークの人気ミュージシャン達との現地レコーディングが充分に満足のいく物に仕上がった事を物語っている。タイトル曲を始め「春の小川~ステラ・バイ・スターライト」「ニカズ・ドリーム」と言ったレパートリーはSAIの魅力満載で、美しく伸びやかな歌声は聴く者に安らぎを与える。ジャズのみならず、新旧あらゆるジャンル(ブラジリアン、ポップス、R&B etc)の楽曲に挑戦し、コンポーザーとしても「ラヴズ・エクスピレイション」で光る物を感じさせ、ジャズ入門としても持って来いの聴き易さだ。これからのSAIの活躍に、是非とも注目して欲しい。(上田 和秀)


Popular CONCERT Review


「櫻倉レオン」 10月8日 JZ Brat
 セカンド・アルバム『LOVE SCORE』リリース記念ライヴと題したジャズ・ヴォーカリスト櫻倉レオンのライヴは、タイトル通りに『LOVE SCORE』の楽曲を中心に大人のラブソングを堪能させてくれた。バックを務めたミュージシャンは、バンドマスター梅原新(g)、ゲストの太田剣(sax)を中心に、腕利き揃いだったが、ヴォーカルとのバンランスと言う意味では、考えさせられる演奏となった。また、櫻倉レオンも最大の魅力である中域のハスキー・ヴォイスが影を潜め、バンドとのピッチが合わなかったのか、緊張のせいなのか普段の声による歌声に聴こえてならなかった。ヴォーカリストとしてもコンポーザーとしても他にはない魅力を持っている櫻倉レオンの今後の活躍に期待したい。(上田 和秀)
撮影:常見登志夫


Popular CONCERT Review


「ヴィセンテ・アミーゴ」 10月17日 オーチャードホール
 21世紀を代表するフラメンコ・ギタリスト ヴィセンテ・アミーゴのライヴは、彼のテクニックの全てを見せつけたソロ演奏からスタートした。ギターという楽器の限界を超えんとするかの様な情熱的ではあるが冷静な演奏に、彼の本当の凄さを感じた。ソロ以降は、超人的で多彩なテクニックを織り交ぜながらも、バンドとのアンサンブルを重視する演奏が続いた。また、「Bolero A Los Padres」等メロディ・ラインがポップスな曲も多く、多くのファンにとってポピュラー的な聴き易さを感じさせた。加えて、「Campos De San Gregorio」は、イントロにヴァイオリンをフューチャーし、キング・クリムゾンの「スターレス」フラメンコ・バージョンを思わせる楽曲とアレンジで、音楽の幅の広さを印象付けた。個人的には、ヴィセンテが憧れたパコ・デ・ルシアが、アル・ディ・メオラと世紀の一戦交えた様なギターバトルが聴きたかった。(上田 和秀)
撮影:土居政則


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「エリック・クラプトン Japan Tour 2014」
 1974年の初来日公演から40年目で20回目の節目となるロック・レジェンド、永遠のギターの神様エリック・クラプトン待望のジャパン・ツアーが決定した。「70歳になったらツアーをやめるというのが今の考えだ。演奏自体や単発のライヴは続けるつもりだが、ツアーからは引退しようと思っている」と今年意味深な発言をしたクラプトンなだけに、このツアーに懸ける意気込みは並大抵のものではないだろう。円熟のブルースをと言いたいところだが、誰もが忘れる事が出来ない程の全世代ベストヒットと呼べるようなセットリストで、ギターを弾きまくる姿を多くのファンは期待する。(UK)

* 2月18、20、21、28日 日本武道館
* 2月23日 横浜アリーナ
* 2月25日 愛知県体育館
* 2月26日 大阪城ホール
お問い合せ:ウドー音楽事務所 03-3402-5999
http://udo.jp/


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「2CELLOS」
 今や全世界的な人気者となったクロアチア出身の実力派イケメン・チェリスト、ルカ・スーリッチとステファン・ハウザーによる2CELLOSの来日公演が決定した。また、日本国内に於いてもカーボン製の白黒のチェロによる話題のTVCM曲「影武者」のワイルドな演奏により、全国区的な人気となった。今年2月のライヴは、マイケル・ジャクソンの「スムーズ・クリミナル」を中心に、HR/HMの名曲を彼ら独自のアレンジでファンを魅了した事は記憶に新しい。今回のライヴもどんなレパートリーを最高のパフォーマンスで聴かせてくれるか楽しみだ。加えて、3月11日は東日本大震災 復興支援コンサートとなっている事にも注目して欲しい。(UK)

* 3月9日 札幌市民ホール
* 3月11日 東北大学百周年記念会館 川内萩ホール
* 3月13、14日 Bunkamuraオーチャードホール
* 3月17日 名古屋市公会堂
* 3月18日 フェスティバルホール
* 3月19日 福岡国際会議場メインホール
* 3月20日 広島アステールプラザ 中ホール
お問い合せ:ウドー音楽事務所 03-3402-5999
http://udo.jp/


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「ヘイリー」
 今や世界の歌姫へと成長したニュージーランド出身のヴォーカリスト ヘイリーの日本公演が決定した。2000年にその類稀な才能を認められ、地元デビューを果たしたデビュー・アルバムが4周連続ポップ・チャートNo.1に輝きトリプル・プラチナを獲得後、2004年にはご存知ビートルズの伝説のプロデューサー ジョージ・マーティンによる「Best Of Your Heart」を含むアルバム『ピュア』で世界デビューを果たし、日本ゴールドディスク大賞を始め数々の賞を受賞した。また、彼女の歌声は、CM、ドラマ・映画の主題歌等に採用されるなど多くのファンを魅了している。そんなヘイリーが、彼女のライヴを待ち望んでいるファンに、どれ程の感動を届けてくれるのか楽しみだ。(UK)

* 4月14、15日 東京国際フォーラム ホールC
* 4月17日 サンケイホールブリーゼ
お問い合せ:ウドー音楽事務所 03-3402-5999
http://udo.jp/


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