2013年10月 

  

Popular ALBUM Review


「レヴェレーション/ロス・ロンリー・ボーイズ」(ソニー・ミュージックジャパン インターナショナル:SICP-3889)
 来年がメジャー・デビュー10周年となる'テックス・メックス'(昨今はテキシカンとも)ロックン・ロール'の3兄弟が2年ぶりに放つ新作。ブルース、レゲエ、ソウル(6曲目「ソー・セクシャル」は1960年代後期ブルー・アイド・ソウル風味♪)、カントリー。。。レニー・クラヴィッツあたりを思わせるような作品も。「特定のジャンルやイメージには拘らず、いい曲を最高の形で表現」するというのが今回の趣旨のようでこれほどまでにヴァラエティーに富みながらも彼らならではのメキシカンとしての心意気がしっかりと息づいているのはさすが。'師匠'サンタナの名曲カヴァー「僕のリズムを聞いとくれ」や昨年2月の渋谷クアトロ公演のライヴ音源「ヘヴン」のボーナス収録も嬉しい♪(上柴とおる)


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「シークエル・トゥ・ザ・プリクエル/ベイビーシャンブルズ」(ワーナーミュージックジャパン:WPCR-15233)
 中心人物ピーター・ドハーティがザ・リバティーンズでデビューしてはや10年余り。1970年代のセックス・ピストルズと1960年代のザ・シーズを合わせたような(あくまで個人的な感覚〜)1分41秒のオープニング曲「ファイアーマン」でツカミはOK♪英国の'ベビシャン'約6年ぶり久々の新作は手応え十分、筆者のような高齢者(!)にも響くアルバムだ。わかりやすいメロディーを持つサウンドには甘酸っぱさも感じさせ、ガレージ系のみならず5曲目「フォール・フロム・グレイス」のようなフォーク&カントリー・ロック系も愛しい♪ こんなバンドばっかりなら'若手'の新作にもう少し触手が伸びるのになぁ。(上柴とおる)


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「ある恋の物語〜想いは遠く/ジャネット・サイデル」(MUZAK:MZCF-1280)
 10月に来日が予定されるジャネット・サイデルの6年振りの新作。相変わらず優しく心休まる彼女の歌だ。中でも注目は、彼女が書いた英語の歌詞で歌う鈴木章治で有名な「鈴懸の径」だろう。ポール・ファー二スのクラリネツトが入って古い親友と並木路を歩いた想い出をしっとりと歌う。その他にも「リカード・ボサノヴァ」や「ある恋の物語」等のラテン調の曲は、彼女にぴったりの選曲だ。ジャズ曲の、この夏を思い出す「トゥ・ダーン・ホット」やビートルズの「ゴールデン・スランバー」での彼女の歌も素晴らしい。チャク・モーガンのギター、ウクレレの他、曲によりテナーやクラリネットも入りリラックシングな歌を聞かせる。(高田敬三)


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「アローン〜カレイドスコープ・バイ・ソロ・ピアノ/ボブ・ジェームス」(Eighty Eight's: EECD-8801)
 昨年秋にオーディオ・マニア向けにガラスCD盤で一足先に発表されたボブ・ジェームスの最新作品。そのノーマルCDが登場した。昨年4月に東京で録音されたもので、全曲ソロ・ピアノ。“初のソロ・ピアノ作品”と聞くと意外な感じを受けるのだが、クインシー・ジョーンズに才能を見出されデビュー・アルバムを発表したのが1962年。50年のキャリアにして初めてソロに臨んだということだ。それだけに随所に渾身のアイデアが注ぎ込まれていて、「捧ぐるは愛のみ」「恋人よ我に帰れ」「スカボロウ・フェア」といった耳なじみの曲にも、独自の解釈を加えてまさに万華鏡のように自由奔放に展開させて聴かせてくれる。東日本大震災に捧げた「心をひとつに」などオリジナルを含む12曲で構成されている。(三塚 博)


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「A Wish/ウィリアムス浩子」(バークリースクエアミュージック:BSW-005)
 ウィリアムス浩子は、今最も旬なジャズ・シンガーといっていい。昨年グラミー賞受賞のピアニスト、アラン・ブロードベンドとの共演盤『ア・タイム・フォー・バラッズ』で一躍注目の的となり、AmazonのJ.ジャズベストセラー第1位となったほか、世界から引き合いがあるなど、活躍が大いに期待されている。彼女はアニタ・オデイ、ジュリー・ロンドンに触発されてジャズ歌手を志し、イギリス留学もしている。その成果があって、ソフトで暖か味のある歌声と、米語とは違うクリアな英語が美しく、ライヴで鍛えたうまさが光る。新作『A Wish』は一流ヴォーカリストとの共演で人気の高いピアニスト、ジョン・ディ・マルティーノをサウンド・プロデュース/編曲に、シェイマス・ブレイクはじめニューヨークの逸材を集めての録音。魅力的な表現力と味わいのあるジャズを展開。バックの好演に快く乗っていく「アイ・ヒア・ミュージック」、美しいバラード「ア・ウィッシュ」ほか好唱・好演揃いだ。(鈴木道子)


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「ゴールデン・サークル/西藤ヒロノブ」(ヤマハ・ミュージック&ビジュアルス: YMCJ-10020)
 バークレイ音楽院時代にスペインの名門レーベルと日本人として初めて契約を結び、ニューヨークをベースに世界で活躍しているジャズ・ギタリスト西藤ヒロノブが、本邦3枚目となる新作をヤマハから発売。前作『アルフィー』はリチャード・ボナはじめ実力派とのニューヨーク・セッションで、名曲を中心にファンキーなジャズを打ち出した好盤だった。それをよき糧とし、今回は従来のアイランド・ジャズ路線に戻りながらも内容が濃い。より自由で広々とした雰囲気の中にもシャープさがある。波の音に始まる「ゴールデン・サークル」の濃やかな展開ぶりとまとめのうまさ。都会的で躍動感あふれる「23」。ジョン・デンバーの「カントリー・ロード」やマイケル・ジャクソンの「ヒール・ザ・ワールド」なども本質を生かしながら新鮮。よく出来た快作に仕上がっている。(鈴木道子)


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「True Love Songs/種ともこ」(たまご舎/配給=BounDEE by SSNW:DDCZ-1902)
 デビュー(1985年暮れ)からすでに四半世紀余りになるが活動の場を自主レーベルに移して今も現役で歌い続けている。2児の母になっているがキュートな歌声は変わらず魅力的。2年前の「Uh Baby Baby」に続く今作は'恋愛三部作'の第2弾ということでキャッチ・コピーは「ラブ・ソング、足りてる?」。ピアノを主軸に置いたバンド・サウンドでちょっぴり切なさを込めながら1970年代ポップスを聴き育った彼女らしい作風でラブ・ソングを綴っていく。震災復興のチャリティー・ライブを続けて来た経緯からか'決別の勇気'をテーマにした「さよなら原発」は今回のハイライト曲かも。(上柴とおる)


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「第45回サマージャズ」 8月24日 日比谷公会堂
 日本で最も長い歴史を持つ夏のジャズ・フェスティヴァルが今年も盛大に行なわれた。かつては日比谷野外音楽堂で行なわれていたが、近年は日比谷公会堂でジャズ・ファンを喜ばせている。ビッグ・バンド、ヴォーカル、モダン・ジャズ、ラテン、スイングと今年も多彩なプログラムでステージは進行し、纐纈雅代、中島あきは、加納奈実という3人の若手女性アルト・サックス奏者によるチャーリー・パーカー・トリビュート、北村英治を中心とする7人のクラリネット・アンサンブルなどフェスティヴァルならではの豪華ラインナップが注目をひいた。第1回から連続出場し、いまなお記録更新中の今田勝はソロ・ピアノで「ラウンド・ミッドナイト」と「自由への讃歌」を開演。この夏も名場面を提供してくれた。(原田和典)
撮影:Koji Ota


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「ROLLY生誕 50周年前夜祭 スーパープレミアム!五重人格R指定」 9月1日 青山円形劇場
 この9月に50歳を迎えたエンターティナー、ROLLY。近年も、ももいろクローバーZへの楽曲提供や谷山浩子とのコラボレーション等で話題を集める彼が「50歳50本ライヴ」を青山円形劇場で行なった。演目は年齢にちなんで計50曲。これを2回のステージにわけて歌う。内容はロック、シャンソン、クラシック、ジャズ、ブルーグラスなど多種多彩。間に爆笑もののMCが入り、総パフォーマンス時間は5時間を超える。360度の舞台をフルに使いながら歌い、ギターを弾くROLLYのスタミナには本当に感服させられる。音楽監督を務めるヴァイオリン奏者、中西俊博を中心とするバック・バンドのサポートも実に柔軟性に富んでいたし、ラウンドガール(今、何曲目を歌っているかをプラカードで示す)を務めたアルフォンヌも妖艶だった。(原田和典)
撮影:土屋茂樹


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「マーカス・ミラー」 9月1日 ビルボードライヴ東京
 6人編成のバンドで来日。前半は昨年リリース作『ルネッサンス』収録曲が中心のプログラムだった。冒頭から重量感溢れるエレクトリック・ベースでバンドを牽引し、「デトロイト」ではファンキーなチョッパー奏法が全開。アルトサックスをフィーチャーした「ジキルとハイド」は、ホットとクールなパートが共存し、1曲の中で二面性を表現する楽想が面白い。最初のハイライトになったのが、ジョージ・デューク・トリビュートとして選曲した「スイート・ベイビー」。8月に67歳でこの世を去ったフュージョン・キーボードの大御所を演奏で弔った後、「ジョージの魂を受け継ぎ、これからも笑顔でプレイしたい」とのコメントに共感。アンコールの名曲「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ」をマーカスのバスクラリネットとピアノのデュオで演じたのは、ジャズ・ファンも納得だった。観客のリクエストに応えて、「デヴィッド・サンボーンの依頼で19歳の時に書いた」という「ラン・フォー・カヴァー」は、長年のファンには感涙もののシーンとなった。(杉田宏樹)


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「パヴロ」 9月1日 コットン・クラブ
 ギリシアの血を引くカナダ人ギター・エンターテイナー、パヴロを中心とする4人組“パヴロ”。昨年、カナダ大使館のショウケース・ライヴで大好評を得た彼らが、日本で初めての一般公演を行なった。パヴロが弾くのはエレクトリック・アコースティック・ギター。そこにジョルジュ・バシラコスのブズーキ(ギリシャ風マンドリン)とバグラマ、ポルトガル系カナダ人ランディ・ロドリゲスのベース、イタリア系カナダ人ジーノ・ミリツィオの打楽器が加わる。弦楽器はすべて、アンプを使わずPAシステムに直結。パヴロはワイアレス・システムを用いて場内を動きまわり、観客と握手し、片足になって弾いたり背中で弾いたりもした。ジプシー・キングスにも通じる熱く親しみやすいメロディを、卓越したテクニックとユーモアで表現する彼らのステージに接して、笑顔にならないリスナーはいないはずだ。僕は最終日に足を運んだが、パヴロは「日本の観客は最高だ。明日にでも戻ってきたいぐらいだよ」と語っていた。再来日も近いのではなかろうか。(原田和典)
写真提供:COTTON CLUB
撮影:米田泰久


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「エンリコ・ピエラヌンツィ」 9月2日 コットン・クラブ
 イタリア・ジャズの超大物であることはもちろん、現代ジャズ・ピアノ屈指のカリスマといっていいだろう。エンリコ・ピエラヌンツィが9年ぶりに来日した。今回の共演メンバーはラリー・グレナディア(ベース)、ジェフ・バラード(ドラムス)というアメリカの名手たち。演目は「サマー・ナイト」、「ソーラー」など長年の愛奏曲が並ぶ。エンリコの音色は美しく、指さばきは流麗、それでいてリズム感はあくまでも力強い。クラシックを含むいろんな音楽からインスピレーションを受けているのだろうが、ジャズのスイング感がしっかり感じられるから僕は彼のプレイが好きだ。中盤では、まったくの即興によるパフォーマンスも披露。エンリコが弾く数音をたよりにラリーとジェフがインプロヴィゼーションを始め、最後に3者一体となってクライマックスにもつれこむ瞬間が圧巻だった。(原田和典)
写真提供:COTTON CLUB
撮影:米田泰久


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「前田朋子」
 ウィーンを拠点に、全世界で活躍を続けているヴァイオリニスト前田朋子の地元鎌倉でのコンサートが決定した。「バッハ 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ 全曲演奏会」と題し、前半を建長寺そして後半を円覚寺という鎌倉を代表するお寺で開催する。古都鎌倉とバッハの融合は、聴く者にどんな感覚をもたらすのか。(UK)

* 10月20日 鎌倉 建長寺 法堂
* 10月26日 鎌倉 円覚寺 方丈
お問い合せ:前田朋子後援会事務局 (0467)22-8143


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「ウィリアムス浩子」
 昨年9月にリリースされたファースト・アルバム『a time for Ballads』が大好評のジャズ・ヴォーカリスト ウィリアムス浩子が、待望のセカンド・アルバム『A Wish』をリリースする。そこで、アルバム『A Wish』のレコーディングに携わったサウンド・プロデューサー兼アレンジャーでニューヨークを代表するピアニストのジョン・ディ・マルティーノが参加するアルバム・リリース記念ツアーが決定した。この秋は、最高のジャズ・ヴォーカルが日本中を魅了する。(UK)

* 11月19日 広島 Speak Low
* 11月20日 横浜 Motion Blue Yokohama
* 11月21日 南青山 Body & Soul
* 11月22日 静岡 Life Time
* 11月23日 福岡 バックステージ
* 11月24日 熊本 CIB
* 11月25日 北九州 西日本工業倶楽部
* 11月26日 水戸 Girl Talk
* 11月27日 豊橋 アークリッシュホテル
お問い合せ:バークリー・スクエア・ミュージック
http://hirokowilliams.com
info@hirokowilliams.com


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「テデスキ・トラックス・バンド」
 デビュー・アルバム『預言者(Revelator)』が、グラミー最優秀ブルーズ・アルバム賞を受賞した、現在世界最強のブルース・カップル デレク・トラックスとスーザン・テデスキを中心とする大人気ブルース・ロック・バンド/テデスキ・トラックス・バンド(TTB)の来年2月の来日公演が決定した。最新アルバム『メイド・アップ・マインド』も好調なTTBによる通好みの熱いブルースが聴けるのが楽しみだ。(UK)

* 2月6日 渋谷公会堂
* 2月7日 ダイアモンドホール
* 2月9日 あましんアルカイックホール
* 2月10日 SHIBUYA-AX
お問い合せ:ウドー音楽事務所 (03)3402-5999
http://udo.jp/


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