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「ニューイヤー・コンサート2017/グスターボ・ドゥダメル指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」(ソニー・ミュージック・エンターテインメント ソニークラシカル/SICC-2141~2)
ウィーン・フィル2017年初頭を飾る行事、ニューイヤー・コンサートのCDが今年も演奏後20日足らずでリリースされた。今年招聘された指揮者は100年に1人の天才ともいわれているベネヅエラ生まれのグスターボ・ドゥダメルである。ドゥダメルは2007年に初めてウィーンでウィーン・フィルの指揮台に立って以来たった10年でそれもこのような夢の大舞台に呼ばれた幸運児である。そしてウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートといえば極端に言って、ウィンナ・ワルツを始めとする独特な癖のあるウィーン子のための曲を演奏するコンサートであり、ウィーンの血が流れていないドゥダメルが振るウィンナ・ワルツは果たしてどのような結果になるのだろうか、というのがこのコンサートに集まった地元のオーディエンスが危惧したことではないだろうか。確かに幕開けは何となく静けさが漂っていたようだ。
しかし始まって直ぐのレハールの喜歌劇「ウィーンの女たち」よりの”ネヒレディル行進曲”の勇ましい序奏の後の主部、PPで1st Vnが奏く何回かの3拍目のターンを聴いた途端、これこそウィーン・フィルの真骨頂とも言える優しさと絹のような美しい音色に驚いてしまった。それは指揮者の気持ちがオーケストラの面々に乗り移ったとしか言いようのない見事さだった。この1曲目が終わった時の素晴らしい拍手はこの日の聴衆の心からの気持ちだったろう。この日はシュトラウス一家を始めとしてレハール、ワルトトイフェル、ズッペ、ニコライ、ツィラーの全21曲、そして初登場の曲は8曲であった。この日の演奏はどちらかというと強烈ではなく、殆どが優しさに包まれていたように感じられた。そしてすべてが実に素晴らしい演奏であった。
尚、DVDとBDは2月22日リリース予定。 (廣兼正明) |