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「ドヴォルザーク:交響曲全集(第1番〜第9番) / イルジー・ビエロフラーヴェク指揮、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団」(キングインターナショナル、EUROARTS/20 72828〈DVD 5枚組〉)
このところ大幅なメンバーの入れ替えを果たした新生チェコ・フィルの首席指揮者として2012年に10年振りの復帰を果たしたビエロアラーヴェクが早速手を付けたのが2012年から2013年にかけてのドヴォルザーク交響曲全集のDECCAに於けるレコーディングだった。これはグラモフォン・アワードのオーケストラ部門賞を獲得するなど大きな話題を呼び、日本でも第8番と第9番のカプリング盤が発売された。そしてその音は、ターリッヒ時代からの土の匂いがするようなスラヴの伝統的な音ではなく、実に鮮やかで今の時代向きの響きを持ったドヴォルザークの新しい印象を聴く人に与えた。普通であれば収録もここまでだったのだろうが、ビエロアラーヴェクは直ぐにこの全集の初めての映像化を考えたに違いない。そして驚きのスピードで実現してしまった。世界中のドヴォルザーク・ファンとしては、彼のすべての交響曲が生粋のチェコ生まれのビエロフラーヴェク指揮チェコ・フィルによって彼等の伝統あるホーム・グラウンド、ドヴォルザーク・ホールでの最新の演奏が、映像付きのライヴで楽しめることは何にも増して嬉しいことではなかろうか。そして5枚目のDVD後半には“Sketches of Dvořák”というドヴォルザーク生涯のドキュメンタリーが入っており、貴重なドヴォルザークの写真と、現在のマエストロと進歩したチェコ・フィルの今が楽しめる。(廣兼正明) |