|
「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」(KADOKAWA DAXA-4932)
今月東京(4月12、13日@東京国際フォーラム)で「ペット・サウンズ」全曲再現ライブを行うブライアン・ウィルソンの人生の最も困難な時期を描いた伝記映画。「スマイル」制作に挫折するまでをポール・ダノ、精神科医の支配下で復帰にもがく1980年代のブライアンをジョン・キューザックというタイプを異にした俳優のダブルキャストで演じる。
1960年代前半の屈託ないサーフィンサウンドの時代は8mmあるいは16mmフィルムを模した質感の映像を挿入、ジェリービーンズのようなカラフルで甘美な色彩がノスタルジックだ。「ペット・サウンズ」制作期のカリフォルニアの風土と時代を感じさせる明美なトーンを引き継ぎながら次第にシリアスな人間ドラマの質感へ。クロマ濃度を高く設定した厚手の発色の映像だがその奥の解像感は豊か。
映像よりサラウンドに注目したい。音声仕様はDTS-HDマスターオーディオ5.1ch/2.0ch(英)にコメンタリー(英)が加わる。
プレッシャーとドラッグで精神を蝕まれて行くブライアンの内圧とドラッギーな幻聴をSEとサラウンドで巧みに表現する。音声スペックは通常の48kHzだがクリアでS/Nに優れる。劇中の楽曲の大半はビーチ・ボーイズのオリジナルではなく主演のポール・ダノが歌っている。(大橋伸太郎) |