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「マーラー:交響曲「大地の歌」、ブゾーニ:悲歌的子守歌 作品42/デイヴィッド・ジンマン指揮、チューリヒ・トーンハレ管弦楽団、スーザン・グラハム(メッゾ・ソプラノ)、クリスティアン・エルスナー(テノール)」 (ソニー・ミュージックエンターテインメント、RCA SICC-10210)
3年4ヶ月振りのリリースでジンマン/チューリヒ・トーンハレによる11曲のマーラー交響曲全集が完結した。収録年で見ると、ナンバーの付いている交響曲10曲は2006年から2010年の5年余を費やし録音されたが、2012年録音の「大地の歌」は約7年間の総決算として、ジンマン自身がマーラーの代表作として挙げており、このコンビ最後を飾るに相応しい曲と考えていたのだろう。ジンマンによるとマーラーは人が人生を終える時に、哀しみだけではなく喜びも平等に思い出すであろう、そして「大地の歌」に於いてはそれが取り上げられていると言っている。約30分近く続く終楽章「告別」は、暗さに満ちたオーボエのメロディで始まるが、色々な想い出を経て、最後には明るく希望に満ちた「花が咲き新緑が覆う大地の春」という内容の詩をメッゾ・ソプラノに歌わせて曲を終える。ジンマンは確固たる信念をもった彼なりの解釈でマーラー交響曲チクルス録音を完成した。CDを聴くと、いつになくチューリヒ・トーンハレの音が生き生きとしているように聞こえるのはこのコンビにとって最後のマーラー録音だったからかも知れない。
尚、余白にカプリングされているブゾーニの悲歌的子守歌は[母親の棺に寄せる男の子守歌]の副題通り、父親の死後数ヶ月後に亡くなった母親への追悼作品である。深い悲しみを感じさせる静謐な曲であり、「大地の歌」とのカプリングに最適な感じがする。 (廣兼 正明)
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