2014年4月 

  

Popular ALBUM Review


「トゥエルヴ・テイルズ/A.J.クロウチ」(BSMFレコード:BSMF-6046)
 あのジム・クロウチの息子、Adrian James Croce(今年43歳)。1993年のデビューからはや20年。久々の新作。まず曲作りのセンスがよろしい。一発で入り込んで来るメロディーの素晴らしさ。そして味のあるソウルフルでハスキーっぽい歌声。ニューオリンズ、カントリー、ソウル、ジャズ。。。アメリカン・ミュージックのルーツ的な要素をベースにしながらも決して泥臭い仕上がりにはならず、ポップなソング・ライターでもあった父親の血を受け継いでいるかのようで。タイトル通り全12曲。特にお薦めは①②③④⑤⑥⑦⑧。。。あっ全部かも♪アラン・トゥーサンやミッチェル・フルームなどその道の俊英プロデューサー6人がしっかり支えている。いや〜こんなに良かったとはなぁ♪改めて遡ってチェックしてみないと。(上柴とおる)


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「“50/50”/Achi」(passiowa:PASAO-011)
 元人気バンドSoulitのヴォーカルAchi(アチ)待望のセカンド・アルバム『“50/50”』が届いた。前作『Daydream』から進めて来たソロ・ヴォーカリスト&シンガー・ソングライターとしてのステップを数段ステップ・アップした出来栄えの作品である。日本語・英語共に歌詞が大人になり、加えて曲の幅も広がり、バック・ミュージシャンの演奏とアレンジが良い意味で落ち着いたAchiの世界観を上手く表現している。王道ポップスの「Bad day but day」に始まり、ファンキーな「Sweet soul & U & me」「Everything gonna be all right」、「ビューティフルレイン」「Destiny」でのルーズな歌声、アコースティックな「真夜中列車」「故郷の夕べ」等、聴き応え充分なAchiワールドを堪能して欲しい。(上田和秀)


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「無伴奏ヴァイオリン・デュオ/漆原啓子&漆原朝子」(日本アコースティックレコーズ:NARD-5046)
 出だしの数小節に、この天才ヴァイオリニスト姉妹漆原啓子&朝子の全てが詰まっている。一瞬にして聴き手を引きつける響きとハーモニーは、唯一無二の調べだ。全く異なる楽曲(音楽と言う名のストーリー)・作曲者の時代背景が見える作品にまとめ上げ、何度聴いても飽きることのない無伴奏ヴァイオリン・デュオの傑作である。シュボアの「二つのヴァイオリンのための二重奏曲」は、アルバムの幕開けに相応しい可憐な響きを聴かせ、ルクレールの「二つのヴァイオリンのためのソナタ」は、現代では味わう事の出来ない優雅さを表現している。特に、武満徹の「揺れる鏡の夜明け」は、この演奏だけでオカルト・サスペンス映画の音楽を作れるのではないかと思わせる程に恐怖を感じさせる。スピードと言う意味でないテクニカルな演奏として、ヴィエニャフスキの「エチュード・カプロース」は、二人の絶妙な間を感じさせる名演奏だ。(上田和秀)


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「ロイ・ハーグローヴ・ビッグ・バンド」 2月19日 ブルーノート東京
 自己のクインテットやR&BプロジェクトのRHファクターで活躍するロイ・ハーグローヴ(tp,flh,vo)が、5年半ぶりに18人編成のビッグ・バンドを率いて来日。この編成の作品は2009年発表の『エマージェンス』が唯一であり、その後の新しい要素が加わったかどうか、が興味のポイントだった。果たして冒頭を同作未収録の三連発で固め打ちにし、バンドの進化ぶりを実証。トランペット・ソロとアンサンブルの指揮でリーダーシップをアピールすることも忘れない。17名のフル・サイズ+ロイは基本的にモダン・ビッグ・バンドのスタイルを継承したサウンドであり、サックス・ソリやメンバーのソロからは、敢えてこのジャンルの王道を追求していきたいとのハーグローヴの企図が伝わってきた。スタンダード新曲「ネヴァー・レット・ミー・ゴー」の歌唱も、それとリンクする。「九月の雨」では自身のスキャットと管楽器群がコール&レスポンスで、ジャズの楽しさを表現。ロバータ・ガンバリーニ(vo)の登場でステージは一気に華やいだ雰囲気に。(杉田宏樹)
撮影:Takuo Sato


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「女極道一代記」 2月22日 六本木・音楽実験室新世界
 「男は何をやっているんだ。男、情けないぞ」とゲキを飛ばされているような気分になった。最前線で何かと戦っている女性アーティスト4組が集まった超豪華なショウが、この「女極道一代記」だ。オープニングではニューヨーク在住の“三味線創作ジャズシンガー”、金子純恵(写真)が登場。ミシェル・ライス(ピアノ)、パブロ・エルチャンス(カホン)と共に、ジャズと謡が正面衝突したかのような鮮烈なサウンドを響かせた。つづいて踊り子のSafiが隠微なダンスを繰り広げ、“音楽芸者”ことエミ・エレオノーラのピアノ弾き語りへ。iPhoneのSiri機能を生かしたナンバーで笑いをとるいっぽう、小泉今日子が出演した演劇「シダの群れ」に提供したナンバー等をじっくりと聴かせるなどレンジの広さは尋常ではない。そしてラストは“唄う空間造形屋”こと、あやちクローデルが登場。ジャック・ブレル、クルト・ヴァイル、武満徹などの曲を豊かな声量、輝かしい歌声で歌いきった。アンコールの「マイ・フェイヴァリット・シングス」には金子やパブロも乱入、約4時間にわたるイベントはクライマックス続きのまま幕を閉じた。(原田和典)


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「スプラッシュガール」 2月23日 中目黒・楽屋
 ノルウェーを拠点に活動する男性3人組、スプラッシュガールが来日した。メンバーはアンドレアス・ステーンスラン・ローヴェ(ピアノ、エレクトロニクス)、ヨー・バルゲル・ミューレ(コントラバス)、アンドレアス・ロンモー・クヌーツルー(ドラムス、パーカッション)。結成は2003年だという。ピアノの音色は時にエフェクターで加工され、ベースは駒の下を弓弾きしたり、曲によってチューニングを変えることなど当たり前。1弦と2弦をX字状にクロスさせて、その箇所を弓で弾いた音にエフェクターをかけるアイデアには驚いた。ドラム・セットの中にあるシンバルはたった一枚。そのかわり小型のドラが2台ぶらさがっていて、それが他のグループにない音響効果を生んでいる。ジャズの伝統的なビートこそ感じ取れなかったが、互いの音に反応して高揚していくあたり、十二分に興奮させられた。“ポスト・エスヴョルン・スヴェンソン・トリオ”という言葉も一瞬おもいうかんだが、もうスヴェンソンが亡くなって6年が経つのだ。スプラッシュガールのサウンドは、未来に虹をかけている。(原田和典)


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「エリック・クラプトン」 2月23日 横浜アリーナ
 今回のツアーが最後と言った噂が入ってくるが、この日のライヴはギタリストとして“GOD”の貫禄は揺るぎないものであった。しかし、最近のファンの間でギターの巧いヴォーカリストという評価が定着している様に、クラプトンが歌に比重を掛けているのであれば、自分の思う様に歌が歌えなくなっているのではないかと思わせる内容であった。セットリストも集大成とは言えない選曲であり、自身が歌う曲・パートはエレクトリック、アコースティック全てミドル・テンポで淡々と演奏し歌っているようにしか感じられない。加えて、キーボード二人によるヴォーカル・パートが多すぎだ。横浜アリーナが彼の好きでないコンサート・ホールだから仕方が無いのであれば、別のライヴ会場では熱い歌声を聴かせてくれることを願う。リズム隊のスティーブ・ガット(ds)とネーザン・イースト(b)に、全くスポット・ライトが当たっていなかったのも気になった。ファンとしては、まだまだ現役を続けて欲しいと願うばかりだ。(上田和秀)
撮影:Masanori Doi


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「シックスペンス・ノン・ザ・リッチャー」 2月26日 コットン・クラブ
 女性ヴォーカルをフィーチャーしたアメリカ南部出身の2人組ユニットがシックスペンス・ノン・ザ・リッチャー。大ヒットしたポップ・ソング「キス・ミー」のほのぼのとしたアコースティック・サウンドと彼等に色濃く染み付いているはずのカントリーのイメージから、のどかなフォーキッシュ・グループだと思っていた。でもステージから発せられるサウンドはもっとシャープでたたみかけるようなパワーを持っていてなかなかの硬派ぶり。聞いている内にヨーロッパ北部の凍てついた海が脳裏をよぎった程だ。少しも変わっていなかったのは伸びやかなリー・ナッシュの歌声。可愛らしさを漂わせた声は太陽光のように暖かさと親しみをばらまき、このグループに独特の色彩を施している。ミッド・テンポのオリジナル曲を中心に、合間には懐かしのヒット曲、スキータ・デイビスの「この世の果てまで」をはさんだりとルーツも覗かせたが、欲を言えばプログラム構成にもっとメリハリがあるとよかったと思う。(滝上よう子)
写真提供:COTTON CLUB
撮影:米田泰久


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「2CELLOS」 3月7日 渋谷公会堂
 そのルックスと華麗なるテクニックで世界中のファンを魅了する2CELLOSのライヴは、イケメン二人がボディなしのエレクトロ・チェロを持ち込むところから始まり、エフェクターを効かせパートを交換しながら、「Where The Streets Have No Name」をシンプルな演奏で聴かせる。セットリストは、彼らの人気を決定付けたマイケル・ジャクソンの「Smooth Criminal」等いつもながらの選曲を斬新なアレンジで新鮮に聴かせる所と同時期に来日公演を開催していたローリング・ストーンズに敬意をこめて「Satisfaction」を演奏した事などが、ファンを喜ばせた。静かな曲はチェロ2本、ハードな曲はドラムを加えるといったパターンだけでなく、オーケストラの中の、弦楽四重奏の中の、ロック・バンドの中の2CELLOSといったバリエーションのライヴも今後は期待したい。(上田和秀)
撮影:Yuki Kuroyanagi


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「イル・ディーヴォ」 3月10日 日本武道館
 昨年11月にリリースされた6枚目のアルバム・タイトルと同様の“A Musical Affair”と題された世界中の女性(最近は、男性も増えて来た)を魅了して止まないヴォーカル・グループ イル・ディーヴォのライヴは、「Tonight」を始めとする文字通りアルバム『A Musical Affair』から、ミュージカル「オペラ座の怪人」「レ・ミゼラブル」「ウエスト・サイド・ストーリー」などの名曲に加え、NHK東日本大震災復興支援ソング「花は咲く〜Flowers Will Bloom」や「故郷」などのセットリストで、会場全体を感動の渦に巻き込んだ。また、ゲストのレア・サロンガも「MEMORY」等でのデュエットでその実力を証明し、ライヴに清々しいアクセントを加えてくれた。イル・ディーヴォは、今後何処まで自分達の世界を広げて行くのか、ファンの期待は無限に膨らむ。(上田和秀)


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「ニッキー・ヤノフスキー」 3月12日 ブルーノート東京
 カナダの若い女性ジャズ/ポップ歌手が来日した。モントリオール出身のニッキー・ヤノフスキーは、すでに札幌・銀座ジャズ祭などで来日しているが、12歳の時モントリオール国際ジャズ祭に出演して天才少女と称賛され、バンクーバー・オリンピックの開会式で国歌を歌うなど、早くから注目を浴びてきた。現在21歳。当夜は「魅惑のリズム」「ジーパーズ・クリーパーズ」などジャズのスタンダード曲と新曲をとり混ぜてのプログラム。何度か大舞台に立っているスケールの大きさは、こじんまりとしたライヴハウスでは発揮されたとは言えないが、小賢しくないおおらかな表現で楽しんで歌っていた。「ユーヴ・チェンジド」ほかハートブレイク・ソングによき情感が聞かれて好唱。リズミックな曲では、やや凡庸なバックのピアノ・カルテットとノリが今一つだったが、目下クインシー・ジョーンズのプロデュースによるアルバムを制作中とか。まだまだこれからが楽しみだ。(鈴木道子)
撮影:Takuo Sato


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「エクストリーム」
 ハード・ロック/ヘビー・メタルと言うよりもファンク・メタルと言った方が、ストレートに彼らを表現するスーパー・ギタリスト ヌーノ・ベッテンコート率いるエクストリームのデビュー25周年を記念したジャパン・ツアーが決定した。ヌーノのファンキーなバッキングとテクニカルなリードに、パワフルなゲイリー・シェロンのヴォーカルが加わるとこのバンド独特のグルーヴが生まれる。「キッド・イーゴ」「デカダンス・ダンス」「モア・ザン・ワーズ」「レスト・イン・ピース」 「ヒップ・トゥデイ」「テイク・アス・ライヴ」などヒット曲の数々で、バンドの集大成となるライヴは、ロック・ファン必見!!!(UK)

* 6月8日 昭和女子大学 人見記念講堂
* 6月9日 渋谷公会堂
* 6月10日 TOKYO DOME CITY HALL
* 6月12日 なんばHatch
お問い合せ:ウドー音楽事務所 03-3402-5999
http://udo.jp/


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「エイジア」
 最新アルバム『グラヴィタス〜荘厳なる刻(とき)』を携え、ジョン・ウェットン(vo, b)、ジェフ・ダウンズ(key)、カール・パーマー(ds)のオリジナル・メンバーに加え、従来のバンド・マスターとしてライブ演奏では多大な貢献を果たしたスティーブ・ハウに代わり、若きギタリストのサム・コールソンがどんなパフォーマンスを聴かせてくれるのか楽しみな新生エイジアの2年振りとなるジャパン・ツアーが決定した。80年代初めに彗星の如く現れた古きプログレの戦士達は、ファンの期待応えるべく21世紀も輝き続けると信じたい。(UK)

* 6月17日 Zepp Nagoya
* 6月18日 サンケイホールブリーゼ
* 6月19,20日 渋谷公会堂
お問い合せ:ウドー音楽事務所 03-3402-5999
http://udo.jp/


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