2014年3月 

  

Classic CD Review【交響曲、管弦楽曲】

「モーツァルト:行進曲 ニ長調K.335-1(K.320a-1)、セレナード第9番 ニ長調K.320 「ポストホルン」、交響曲第35 番 ニ長調 K.385 「ハフナー」 / ニコラウス・アーノンクール指揮、ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス」 (ソニー・ミュージックエンターテインメント、ソニー・クラシカル SICC-30127)
 昨年7月リリースのヘンデル〜モーツァルト/モーゼル編「アレクザンダーの饗宴」に続く 「ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス創立60周年記念リリース」の第2弾。2010年に東京オペラシティで行われた、アーノンクール最後の日本公演最終日に演奏され、彼自身が(日本との)「惜別の曲」と銘打った3曲、2012年6月収録の「ハフナー交響曲」と12月収録の「行進曲」と「ポストホルン・セレナーデ」のウィーン・ムジークフェラインザールでの公演ライヴからまとめて作られたCDである。3曲ともが「ニ長調」という明るく輝かしい調性に統一されている。最初の行進曲は、次の「ポストホルン」の先導役として演奏される。
 アーノンクールの演奏は聴くたびにアーティキュレーション、フレージングを始め、細かいところまで考えられており、それを一つの束にまとめ上げた時にその見事さに感心させられることが多い。その反面何故だろう、というところもある。例としては、「ハフナー交響曲」第1楽章の3小節目と5小節目の3拍目に入るときの一拍分の間などである。
 昨年は手兵ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスが創立60年を迎えたが、この古楽器オーケストラはアーノンクールの思い通りの音楽を忠実に再現できる術を身につけているのである。アーノンクールの演奏は実にドラマティックであり、聴衆はいつの間にか彼の音楽表現の虜となってしまう。彼の演奏を聴いた後には必ずと言って良いほど、ティンパニの乾いた音と張りのあるトランペットの音が耳に残る。それにしても今後日本でアーノンクールの生演奏が聴かれなくなるのは本当に残念である。 (廣兼 正明)

Classic CD Review【交響曲、管弦楽曲】

「ラフマニノフ:交響曲第2番、歌劇《アレコ》からの舞曲集/ワシリー・ペトレンコ指揮、ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団」(ワーナーミュージック・ジャパン、ワーナー・クラシックス WPCS-12630)
 このCDには、このところ評価が高まっているロシア出身のワシリー・ペトレンコが手兵ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団を振った叙情性に富んだラフマニノフが詰まっている。
 最初に入っている歌劇「アレコ」はラフマニノフがモスクワ音楽院時代、卒業制作として一気に書き上げた13番(曲)からなる1時間もののオペラから、第5番「女たちの踊り」、第11番「間奏曲」、第6番「男たちの踊り」の3曲を抜粋、そのどれもが豊かなラフマニノフの美しい音を十分に楽しめる。後半の交響曲第2番で、ペトレンコは第1楽章からラフマニノフ特有の色彩溢れる情緒的な美しいメロディを丁寧に歌わせる。 そして第2楽章の元気と憂いの両面を持つスケルツォを見事に表現し、有名な第3楽章の美しいアダージョではラフマニノフならではの憂いの気持ちを感情豊かに歌い、最終楽章の華やかさにつないで立派に締括る。このCDではショスタコヴィチがメインであるとは言えないペトレンコの幅広い芸域を感じることが出来る。 (廣兼 正明)

Classic CD Review【協奏曲(ピアノ)】

「モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K.466、第25番 ハ長調 K.503/マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)、クラウディオ・アバド指揮、モーツァルト管弦楽団」(ユニバーサル ミュージック、デッカUCCD-1649)
 去る1月20日に現在最高のマエストロであるクラウディオ・アバドが80歳で惜しまれつつ世を去った。このCDは2013年3月に行われたルツェルン音楽祭でのライヴであるが、アバドの追悼盤としてはこれ以上のものはないと思う。それはアバドと丁度8歳年下のアルゲリッチとの約50年もの間続いた指揮者とピアニストの関係と、2004年にアバド自身がイタリアのボローニャ市に設立した、彼の手兵と呼べるモーツァルト管弦楽団が伴奏しているからだ。共にその道を究めた指揮者とピアニストは、ここでまさに天上の音楽と呼ぶに相応しいモーツァルトを聴かせてくれる。この演奏は彼の死の10ヶ月前に収録されたものだが、アバドはアルゲリッチの作り出す音を如何に大切に扱っているかを十分に感じさせてくれる。追悼盤として考えると第20番のd-mollが雰囲気的にはぴったりと合う。全曲を通して少し速めのテンポだが、不気味ささえ感じる第1楽章の序奏が始まり、ピアノが入って暫くしたあとのオケとの絡みが素晴らしい。有名な第2楽章は優しく奏でるピアノをオケが優しく包み込む様は何となく悲しげなムードを醸し出す。
 そして最後に特筆したいのはモーツァルト管の上手さだ。アルゲリッチのみならず、アバドをも逆にサポートされているような感じさえする。アバドがここまで育てたこの若いオーケストラの今後はどんなマエストロと組むのだろうか。(廣兼 正明)

Classic CD Review【協奏曲、他(チェロ)】

「ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 作品104、私にかまわないで 作品82の1、ロンド ト短調 作品94、家路、母の教え給いし歌 作品55の4、森の静けさ 作品68の5、スラヴ舞曲 第8番 ト短調 作品46の8/アリサ・ワイラースタイン(チェロ)、イルジー・ピエロフラーヴェク指揮、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、アンナ・ポロンスキー(ピアノ)」 (ユニバーサル ミュージック、デッカUCCD-1393)
 アリサ・ワイラースタインはバレンボイムが世に送り出した大器と言われているアメリカ出身の若手女性チェリスト。完璧なテクニック、大らかで自由奔放、そして情熱的な演奏が彼女の持ち味となっている。今回のドヴォルザークがデッカ・レーベルでの2枚目のCDとなるが、最初に収録されているチェロ協奏曲では自由奔放で情熱的、第2楽章では優雅な表現で女性の優しさを垣間見せる。第3楽章は活気の中にも若干のペーソスを感じる演奏である。伴奏のピエロフラーヴェク指揮のチェコ・フィルも手慣れた曲ながら自由奔放なソロをしっかりとサポートし、新しい形のドヴォルザークを作り上げた。後半に入っている小品も音楽性に富んでおり、そのどれもが楽しめる。そして今後彼女が大きく育っていくことを祈りたい。(廣兼 正明)

Classic CD Review【器楽曲(ヴァイオリン)】

「ツィゴイネルワイゼン~ユリア・プレイズ・サラサーテ/ユリア・フィッシャー(ヴァイオリン)、ミラナ・チェルニャフスカ(ピアノ)」 (ユニバーサル ミュージック、デッカUCCD-1392)
 このところ生誕何年記念録音というCDが多いようだ。このユリア・フィッシャーが弾くサラサーテも生誕170年記念である。このCDはユリアが友人のリサイタルでサラサーテの「マラゲーニャ」を聴いたことが出発点となったという。そう言えば近頃新譜で「ツィゴイネルワイゼン」が新しく録音されることは先ずないようだ。ユリアは友人の「マラゲーニャ」の音に触発され、デッカにサラサーテだけのアルバム制作をOKさせたという。ユリアがそれ程惚れ込んだサラサーテで彼女はどのような出来映えを見せたのだろうか。他の曲はさておいて、日本版でタイトルになっている「ツィゴイネルワイゼン」は凄い。今回のユリアの演奏は、技術的に非常に正確であり、例えば最後のC-Durになってアルコとピッツィカートが入り交じる箇所など、これだけ見事に弾いたヴァイオリニストにお目に掛かったことは殆ど記憶にないくらいだ。ユリアではないが、上手いサラサーテをたまに聴くと爽快になることも事実だ。(廣兼 正明)

Classic CD Review【器楽曲(ヴィオラ)】

「ヒンデミット:1:ヴィオラ・ソナタ へ調 Op.11-4、2:無伴奏ヴィオラ・ソナタ Op.25-1、3:白鳥を焼く男、4:葬送音楽/アントワーヌ・タメスティ(ヴィオラ)、1:マルクス・ハドゥラ(ピアノ)、3&4:パーヴォ・ヤルヴィ指揮、hr交響楽団(旧・フランクフルト放送交響楽団)」(キングインターナショナル、naïve V-5329)
 昨年はヒンデミット没後50年に当たり、このCDはそれを記念して録音されたものである。ヴィオラの名手としても名を馳せたヒンデミットの代表的ヴィオラ曲4曲をフランスの若手を代表する名手アントワーヌ・タメスティのヴィオラで聴いてみる。最初のヴィオラ・ソナタOp.11-4はヒンデミットのヴィオラ曲の中でも最高の傑作であろう。タメスティのヴィオラは良く歌う。例えば第1楽章のテーマを聴いただけで彼の曲に対する考えが分かる。低音弦を幅のある遅めのヴイブラートで朗々と歌い、中音から高音にかけては抜けの良い音で楽器全体を歌わせる。そしてこの難しい第1楽章をいとも簡単に征服する。ピアノのハドゥラもタメスティをしっかりとサポートしている。タメスティの弾いているヴィオラは2008年以降ハービスロイティンガー財団から貸与されている1672年製のストラディヴァリウスのヴィオラ、”マーラー”である。第2曲は無伴奏のソナタで無伴奏だけに重音奏法が多い。そして重音と歌が重複しており難度が高いのでタメスティの見せ場が多い。第3曲「白鳥を焼く男」(3楽章の協奏曲形式)と第4曲「葬送音楽」はパーヴォ・ヤルヴィ指揮hr交響楽団(旧・フランクフルト放送交響楽団)と共演。この第3曲の諧謔的な曲と第4曲の葬送曲(伴奏は弦楽合奏)でのタメスティのソリストとしての感情移入の上手さが特に光っている。 (廣兼 正明)

Classic CD Review【声楽曲(テノール)】

「シューベルト:連作歌曲集《冬の旅》D.911(作品89)/ヨナス・カウフマン(テノール)、ヘルムート・ドイチュ(ピアノ)」(ソニー・ミュージックエンターテインメント ソニー・クラシカル SICC-30151)
 カウフマンは2009年7月に「美しき水車小屋の娘」をデッカに録音しており、ソニー移籍後にレコーディングした「冬の旅」はカウフマンにとって、シューベルト3大歌曲集の第二弾(2013年10月録音)となる。二つの歌曲集は共に名手ヘルムート・ドイチュの伴奏であり、今回も数少ないテノールによる「冬の旅」としての存在価値は大きい。そして先ず感じることはカウフマンの母国語であるドイツ語がとても美しい事である。歌曲の場合これはとても大切な条件である。さて待望のカウフマンによる「冬の旅」、24曲それぞれに詩の内容に沿って、歌いながら彼はその詩とメロディーに命を与えて行く。そしてその与え方は見事と言うほかない。詩、メロディという固定化されている要素にカウフマンが与えた命に対して、もう一つ伴奏の名手ヘルムート・ドイチュが最後の色づけを忘れていない。第1曲の「おやすみ」から最後の第24曲「辻音楽師」まで聴き終わって、久し振りに充実した満足感を味わうことが出来た。近い将来発売されるであろう「白鳥の歌」が待たれる。(廣兼 正明

Classic DVD・BD Review【器楽曲(オーボエ)】

BD


DVD

「ニューイヤー・コンサート2014/ダニエル・バレンボイム指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」
(ソニー・ミュージックエンターテインメント ソニー・クラシカル SIXC-4〈BD〉、SIBC-192〈DVD〉)
 先月のCDに続いて今月はBDとDVDがリリースされた。
 今年の棒はバレンボイム、今年2014年は第1次世界大戦勃発以来100年目にあたり、コンサート今年のテーマは「世界平和」である。世界が戦争に巻き込まれる発端となった第1次世界大戦を決して忘れないで欲しい、というバレンボイムの願いがこのテーマに繋がっている。今年はR.シュトラウスの生誕150年に因んで彼の曲2曲も選ばれている。1939年(12月)のクレメンス・クラウスが振った第1回以来、今年で74回を数えるニューイヤー・コンサートはウィーン・フィルの最も由緒あるコンサートと言えるだろう。多くのクラシック・ファンはテレビで元旦にご覧いただいたと思うのだが、今回のビデオではバレエ部分が本編にはなく、エクストラとしての特典映像で視ることが出来る。今年もBDで視る機会があったが、昨年迄と比較して画像の解像度は格段に良く、音の良さも素晴らしい。この手のものは出来ればBDで楽しみたい。(廣兼 正明)

Classic CONCERT Review【オーケストラ】

「日本フィルハーモニー交響楽団 第208回サンデーコンサート」 1月12日 東京芸術劇場コンサートホール
  成人式の前日、東京池袋・芸術劇場で開演を待つロビーでは、年始めの挨拶を交わす大勢の人々で華やいだ雰囲気であった。
 オープニングはモーツァルトの「フィガロの結婚」序曲で幕を開けた。続いてシベリウスの「ヴァイオリン協奏曲」は日本フィルのソロ・コンサートマスターである木野雅之が気心の知れた仲間の熱演を得てのびのびと演奏した。休憩後はヨハン・シュトラウスⅡ世の喜歌劇「こうもり序曲」で始まり二曲目のヨゼフ・シュトラウス「鍛冶屋のポルカ」では鍛冶屋に扮した打楽器奏者がステージ中央で鉄床を打ったり、花火のような音響を使ったりのパフォーマンスで観客を沸かせた。続いてヨハン・シュトラウスⅡ世のワルツ「芸術家の生涯」「トリッチ・トラッチ・ポルカ」「美しく青きドナウ」とお馴染みの曲が演奏され、会場は一気にウィーンでニューイヤーコンサートを聴いているような空気に包まれた。指揮者・阪哲朗はウィーン・フォルクス・オーパーで「こうもり」を指揮した経験を持ち、若々しいタクトで躍動感溢れる演奏であった。ただ、まだお屠蘇気分の抜けきらない聴衆としては、ワイン片手にほろ酔い気分で聴けるシュトラウスも良かったのではないかと思えるコンサートであった。(齋藤 好司)

Classic CONCERT Review【オーケストラ】

「日本フィルハーモニー交響楽団 ミュージックパートナーシリーズ Vol.2 《白鳥の湖》」  1月18日 サントリーホール
  ミュージックパートナー西本智実指揮によるチャイコフスキー作曲バレエ「白鳥の湖」という企画で、このサントリーホールはいつもより女性客が多く、また田村吾郎アートディレクターによる映像とのコラボレーションが楽しみで、開演前から会場は期待感に溢れていた。客席が暗くなりステージ上はオーケストラの譜面台に小さなライトが輝いている。そこに颯爽と黒いフロックコートを身に着けた西本が登場。導入曲第一幕が演奏される。すると広い会場の壁面と天井にオーロラのような映像が映しだされ、ホールの内は神秘的な深い森のような空間となる。映像は音楽に合わせて少しずつ様子が変化する。誰もが一度は見たことのあるバレエ「白鳥湖」の情景が彷彿とされる。休憩の後はホールはゴシック建築の大理石でできた宮殿の中で舞踏会が繰り広げられる。西本の指揮は女性らしい細やかなタクトと全身を使ったダイナミックな表現を使い分け指揮台の上でソロのバレエを踊っているようだ。時おり左手で長い髪をかきあげる仕草さえバレエの振り付けのように優雅だ。バレエ音楽ではあるが後半になるほど、オーケストラメンバー自身、全身でチャイコフスキーの濃厚な音楽を表現していてゲスト・コンサートマスター高木和弘、ソロ・チェロ菊地知也の演奏は圧巻であった。次回のパートナーシリーズVol.3の「眠れる森の美女」が楽しみである。(齋藤 好司)
〈リハーサル写真:浦野 俊之〉

Classic INFORMATION【オペラ】





沼尻竜典
Photo:
RYOICHI ARATANI

「コルンゴルトの伝説の名作、東京とびわ湖で競演!オペラ『死の都』」
 20世紀初頭のウィーンで「神童」の名をほしいままにし、華々しく活躍したコルンゴルト。その青年時代の傑作であり、彼自身の代表作となった作品が、1920年に初演されたオペラ『死の都』だ。運河で有名なベルギーのブルージュを舞台にしたローデンバックの幻想的な小説を、コルンゴルト自身と彼の父の台本によりオペラ化。耽美的なアリアと巻き込まれるようなオーケストレーションに彩られた名作が生まれた。
 その『死の都』が、来月上旬、関西のびわ湖ホールと新国立劇場で相前後して上演される。舞台上演では日本初演となるびわ湖の公演が、同ホールの音楽監督沼尻竜典氏の指揮、ベテラン栗山昌良の演出に、砂川涼子ら日本人のスターを揃え、日本オペラ界の総力戦ともいえる布陣になっているのに対し、新国立劇場の公演は、チェコの名匠ヤロスラフ・キズリングの棒に、カスパー・ホルテンの演出(フィンランド歌劇場のプロダクション)、トルステン・ケール、ミーガン・ミラーら世界の実力派が結集と、それぞれ個性を打ち出した。同じ作品が異なる解釈でどう色を変えるか、見比べてみるのも面白そうだ。(K)
〈舞台写真〉:フィンランド国立歌劇場公演より  photo: Stefan Bremer  提供:新国立劇場

【びわ湖公演】
日時 3月8、9日 各14時
会場 びわ湖ホール 大ホール
お問い合わせ びわ湖ホールチケットセンター 077-523-7136
びわ湖ホールウェブサイト http://www.biwako-hall.or.jp/

【新国立劇場公演】
日時 3月12、15、21、24 各14時
3月18日 19時
会場 新国立劇場オペラパレス
お問い合わせ 新国立劇場ボックスオフィス 03-5352-9999
新国立劇場ウェブサイト http://www.nntt.jac.go.jp/

Classic INFORMATION【オーケストラ】

「東京フィルハーモニー交響楽団 創立100周年記念ワールドツアー」
  1911年創立と、日本のオーケストラではもっとも古い歴史を誇る東京フィルハーモニー交響楽団。その東京フィルが、2011年に迎えた創立100周年を記念し、楽団史上初のワールドツアーを行う(3月9日〜24日)。本来は創立100周年当年の2011年に予定されていたツアーだが、東日本大震災の影響により中止となった経緯があり、3年を経てようやく実現の運びとなった。
 ワールドツアーのテーマは「21世紀のジャポニスム」。世紀末にヨーロッパでブームとなった「ジャポニスム」を、21世紀の今、日本で定着し、独自の文化となった「日本のクラシック音楽」を代表するオーケストラとして、積極的に発信して行こうという趣旨だ。その一環として、ニューヨーク、マドリッド、パリ、ロンドン、シンガポール、バンコクをめぐるツアーの全公演は、すべてインターネットで同時中継される。
 同行する指揮者は大植英次、ソリストはヴァイオリンの竹澤恭子。プログラムにはチャイコフスキーやストラヴィンスキーなどに加え、黛敏郎や小山清茂の代表作が組まれている。(K)
〈Photo:K.Miura〉