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「最後のマイウェイ」(カルチュア・パブリッシャーズTCBD-0290)
原題は『CLOCLO』。1960~70年代のフランスの人気歌手クロード・フランソワ(CLOCLOが愛称)が主人公の映画。フランク・シナトラの名曲『マイ・ウェイ』でポール・アンカは英語詞を付けただけで、原曲はシャンソンであることを私が知ったのは、不明にも1990年代のことだった。その作者がフランソワ。あれだけの超有名曲の作者に相応しい扱いを受けていないのは不当と思えるが、フランソワ自身が英米のポップスのフランスへのよき紹介者だったことを考えれば(フランソワを世に出した「ベル!ベル!ベル!」はエヴァリー・ブラザースのヒット曲を換骨奪胎した曲)<おあいこ>といえるだろう。
ハングリーでバイタリティに富みアイデアマンでスタッフに対しては独裁者だったフランソワの短い人生が本作に鮮明に描かれている。フランソワが活躍した時代は英米ロックが全盛で、フレンチポップスの現況は日本にあまり伝えられなかった。前世代のジョニー・アリディや逆に後の世代のミシェル・ポルナレフやジュリアン・クレールやらに比べ、フランソワの日本での知名度が低いのもそのため。本作の見所は「仏映画の新記録」という230セットを撮影所に組みフレンチポップスの‘70年代クロニクルをカラフルなビジュアルで再現、<空白の時代>の再現映像として価値がある。
クールでスキニーなロカビリー歌手のジョニー・アリディに対し小柄で愛嬌のある顔立ちで陽性の魅力のフランソワは大衆のアイドルだった。主演のジェレミー・ルニエはどちらかというと知的な演技の俳優だが、ダンスの特訓を自らに課して役作りに臨み大衆が愛したフランソワになりきっている。
画質は標準的というか解像度がいま一つでディテールの追い込みが甘い。イエロー系にエネルギーの重点を置いてカラーコレクトしているが色彩感豊かで1970年代のショービズ風俗の再現が楽しめる。DTS-HDマスターオーディオ5.1chの音質は優れており楽曲はもちろんサラウンドもきめ細かく音の断片へのこだわりが隅々に聞き取れる。(大橋伸太郎)
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