2017年1月 

  

Audio New CD Review

「120歳のLove song/原 順子&叶央介」(FUJIPACIFIC MUSIC CVOV-10036)
 叶央介氏と原順子氏は「Mr.サマータイム」のヒットで知られるコーラスグループ「サーカス」の中心メンバーだ。サーカスはメンバーが兄弟姉妹に従姉という「同族ファミリー」編成であることが特徴で、フルバンドをバックにした歌唱から声質の親和性を活かしたアカペラまでハーモニーの美しさに定評があった。
 従姉だった卯月節子が結婚してグループを離れ、代わって加入した原順子と叶央介が1991年に結婚、2013年にサーカスを離れてJ&Oを結成、現在、湘南を拠点に旺盛にライブ活動を行っている。夫妻の結婚25周年つまり銀婚式を記念して発売されたのが本作。同い年1956年生まれのカップルであることにちなんでタイトルが命名された。
 実をいうと叶夫妻は鎌倉市に住む筆者の隣人である。叶氏は気さくな方で音楽界の珍しいエピソードのあれこれを話してくださる。姉の叶正子氏と庄野真代が親友で、庄野の発声と音感が良く声質も溶合いサーカスの四人に混じって歌うときれいにハモるのでサーカスに加入しないか、という話があったそうだ。
 鎌倉の名刹・長谷寺(坂東三十三カ所四番霊場)でイベントが催され、地元の中学校のブラスバンドの他に目玉が必要となり、主催者が「サーカスの叶さんにトリで出演をお願いできないか。」と恐る恐る打診したら、「いいですよ。」と快諾してくれた美談がある。音楽が心底好きなのだ。
 「120歳のLove song/原 順子&叶央介」は、二人の自作曲(多くは作詞叶央介、作曲原順子)を中心にサーカス時代の大ヒット曲「Mr.サマータイム」「アメリカン・フィーリング」を新アレンジで入れ直した全10曲構成のビューティフルなオリジナルアルバム。
 サーカス時代も女声二人が前面に出ていたが、本作も原 順子氏が歌唱の中心で叶氏がそっと背中に手を添えるようにハーモニーを付ける曲が多い。そのインティメートさ、温かさが何ともカッコよく、アルバムの音楽上のコンセプトになっている。古くはソニーとシェール、ジェフ&マリア・マルダー等夫婦デュオは多い(失礼! この二組はその後離婚した。)が、J&Oのこのアルバムはさりげない「寄り添い方」という点で夫婦デュオの新しいアプローチといえるだろう。ベストトラックは二人が交代でソロを取るTR07「そばにいて」。もちろん叶 央介作詞、原 順子作曲の自作自演曲。(大橋伸太郎