2015年1月 

  

Audio Blu-Ray Disc Review

「黄金のメロディ マッスル・ショールズ」(ポニー・キャニオンPCXE-50379)
 マッスル・ショールズの名を、ポール・サイモンのソロ第二作『ひとりごと』で初めて知った。ソロ第一作はS&Gの残像が色濃かった。サイモンのソロキャリアが本当に始まったのは『ひとりごと』から。それ位音楽が変貌を遂げていた。サイモンの再出発の大きな力となったのが、バックバンドを務めたスワンパーズだったのである。
 本作はフェームスタジオを創設しアラバマの田舎町をポピュラー音楽のメッカに変えた男リック・ホールの物語。妻と死別し失意の時期を放浪して過ごし故郷に帰った男に残されたものは音楽しかなかった。崖っぷちで始めたスタジオで録った音には人間臭いリズムと吹っ切れて明るい音色があった。評判を聞きつけ全米から(日本からも!)アーティストが集まってくる。しかし、仲間の離反などホールの苦闘はその後も続くがそれが音楽に反映される。マッスル・ショールズの音楽には人生の味がある。現代のデジタル打ち込み音楽の対極がここに…。
 本作は2012年製作のドキュメンタリー。故人を含む当地を訪れ録音した有名ミュ−ジシャンとリック・ホールのインタビューが中心。画質はそれ相応。その分音質に期待がかかる。ドルビートゥルーHDアドバンスド96kアップサンプリング(5.1CH)で良好だが、既存の音源を超えるものではない。
(大橋伸太郎)