2016年10月 

  

Audio CD Review
アナログマスターを「生まれ故郷」ビクタースタジオでリミックス、リマスタ。
ビクター「和フュージョン」第一期全13作品個別紹介

 現在世界レベルで第一級の日本のジャズ。そのジャンピングボードが1970年代後半から1980年代前半のジャズルネッサンスとフュージョンムーブメントだ。レコード制作の立場からそれを担った存在がビクターだ。
 Invitation / Flying Dog / Flying Disk / JVC / Victorの5レーベルを擁し、新しいアイデアと創造性、音楽美に富む意欲的な傑作アルバムを続々と送り出す。日本のCTIといっていい。1977年から1985年までビクターが5レーベルを通じて送り出した日本のフュージョンを代表する名盤40選が今夏から秋にかけて、ビクターエンターテインメントから三期に分けて発売される。
 単なるリマスタ再発シリーズ企画ではない。注目すべきは、40タイトルのほとんどが東京都渋谷区千駄ヶ谷のビクタースタジオで録音されていて、アナログマスターにまで遡り「生まれ故郷」同スタジオの21世紀のハイレゾテクノロジーで収録現場の音の復活を狙ったリミックスあるいは「リボーン」であることだ。
 今回まず紹介するのは第一期(7/20)発売分。日本ジャズレコード史上空前絶後の大ベストセラーを記録した渡辺貞夫のアメリカ録音三部作を含む13タイトルだ。音質がどう変わったか詳しくは各タイトル毎の紹介をご覧頂きたい。
(大橋伸太郎)



「渡辺貞夫 マイ・ディア・ライフ」(VICJ-77001)

1977年L.A.録音。L.A.ユナイテッド・ウェスタン・スタジオ、東京・音響ハウスで録音。24CHアナログテープ録音。ミキシング1/4テープ、30ips、ドルビー使用。
アルト、ソプラノサックスからフルートまでナベサダが持ち替える楽器の音色ニュアンスが全曲実に豊か。TR01のデイブ・グルーシンのアコースティックピアノのアタックの鮮鋭感、きらめいて散乱するような透明感豊かな響きに唸らされる。TR02ハービー・メイスン(ds)の打撃のタイトな量感、パーカッションの音の断片が空間に刻印される立体感も見事だ。ノリノリのエイトビートTR03のナベサダのソプラノサックスの響きの解像力に溜飲を下げる。アコースティックデュオTR04の余韻の汚れのなさも素敵。同時録音のグルーブ感を重視したオーソドックスなジャズ録音だが、リマスタで音の鮮度と音場の見通しが飛躍的に向上、からりとした西海岸の空気と強い陽射しが生む深い陰影を連想させる奥行き感が漸く姿を現した。40年前の録音と思えぬ自然で生々しい音楽の佇まいだ。

「渡辺貞夫 カリフォルニア・シャワー」(VICJ-77002)

1978年L.A.レコードプラントで録音。ミキシング、アナログ24CH.1/4テープ、15ips、ドルビー使用。
アルバムタイトルTR01の輝く日差しを浴びて躍動的に歌うサックスが印象的。TR02はストリングスも加わり全楽器の音色が明るさと色彩を増し低音楽器の量感が充実。ずっしりした量感と開放感をかねそなえたまがうことなき名録音。リマスタ効果でユニゾンで楽音が重なっても一つ一つの楽器が明瞭な存在感を失わないのに感嘆。TR03のギターの量感、シンバルの鮮鋭感にのけぞる。TR04 のチャック・レイニーの明瞭かつ深々と沈むエレキベースと憂愁を湛えつつからりと澄んだ質感を失わぬソプラニーノの対比、TR04のリー・リトナーのギターソロはクリアトーンの美しさに聞き惚れる。TR05の弦が加わったバラードはリッチで華麗な音色が吹き零れ試聴室の空気を艶やかに染め上げる。演奏の密度と楽曲のバラエティに名盤を再認識。それもアナログマスターまで遡った徹底した今回のリマスタあればこそ。

「渡辺貞夫 モーニング・アイランド」(VICJ-77003)

1979年N.Y.録音。A&Rレコーディングスタジオ。アナログ24CHテープ。ミキシング1/4テープ、15ipsドルビー使用。N.Y.録音に変わり前二作ののびやかさを残しつつ端正でスマート、洗練された音楽を聴かせる。リマスタの恩恵は帯域の拡大と解像力。エリック・ゲイルの褐色の指使いが見えるよう克明な描写力のTR02、低域方向へ帯域の拡張も目覚ましくTR03のスティーブ・ガッドのバスドラが深々と沈み嬉し涙がちょちょ切れる。ストリングスに加えホーンが加わりほぼオーケストラサウンドのTR04で混濁と飽和が生まれず視界のいいダイナミックな音空間が現れアナログLP時代から隔世の感。シャッフルリズムが楽しいTR05はバック金管の楽器の音色バラエティを描き分けるノイズ低減ぶりに感嘆。三部作を続けて聴くと一年毎の変化のスピードに気付かされる。LA、NYという立地によるミュージシャンシップの違いもあるが、三作目の本作は従来の伝統的ジャズ録音のコンセプト「演奏の記録」から、現代録音のパラダイム「音空間の創造」へぐっと近づいていることが分かる。

「森園勝敏 4:17pm」(VICJ-77004)

1985年録音。ビクタースタジオのPCM-3324レコーダーで録音、JVC DAS-900 デジタルレコーダーで4/3インチUマチックテープにミックス。第一期13作品唯一のデジタル録音。
四人囃子、プリズムを経てソロに転じたギタリスト森園の唯一のコンセプチュアルなAORアルバム。ボーカル(日本語詞)も森園が担当、高音へのポジションチェンジで音程が少々不安定なのが逆にリラックスムードを醸して素敵。MALTA(sax)、佐山雅弘(key)とサポートも名手揃い。冒頭からPCM録音は音の立ち上がりのスピードが違うと痛感。'70年代から楽器も奏法も変わったこともあるが、タイトで緻密な音の質量はまさに現代録音のそれ。インストナンバーTR04のアコギのシャープな音の輪郭、メランコリックなワルツTR07の倍音を無制限に放射してきらめく佐山のピアノ、TR08のスネアドラムのタイトで滲みない打撃、ヤン・アッカーマン風クリアトーンを森園が聞かせるTR09でのエレキベースのずっしりした量感、メロウなボサノヴァ調バラードTR05のストリングス(シンセではない)のブリリアントな艶とナチュラルサラウンドする広がり感、浮遊感はデジタルマスター→ハイレゾリマスタの効験あらたか。アナログとデジタルは音質面に関して一概に優劣は言えないが、コンセプチュアルな音空間の創造という面でデジタル録音の出現の意義を知らしめる好盤。

「高中正義 オン・ギター」(VICJ-77005)

1978年スタジオA、サウンドシティ、メディアスタジオで録音。アナログ16CH録音、ミキシング1/4テープ、15ips、ドルビー使用。
「ブリージン」(ジョージ・ベンソン)「君に捧げるサンバ」(サンタナ)のエレキギター名曲を含む有名曲で構成した高中正義によるギター模範演奏集。シリーズは他につのだひろのオンドラムス、後藤次利のオンベースがあるが今回本作のみがリマスタ発売された。一種の教則本なので編曲と編成がシンプル、高中のギターテクニックと音色表現にフォーカス、拡大表現した演奏。バックの演奏もバランスよく明瞭に収録されている。
アナログ録音のマッシブな量感を残しつつ、デジタルリマスタで解像感が飛躍的に向上、ピッキングに加えディストーションやダイナコンプといったエフェクターの使用法が明瞭に伝わり(ギター小僧へ愛情を込めた高中自筆のライナーが泣かせる!)、模範演奏の価値が高まったといえよう。
楽器をやらない「聴くだけ」の音楽ファンにとっても、オリジナルより数段上手い高中の演奏(TR05)、バックを務める、細野晴臣、高橋ゲタ夫の堅実にビートを刻むベースの野太い量感(TR03、05)や高橋幸宏、ロバート・ブリルの切れ味鋭いドラムスの打撃(TR03)等々、デジタルリマスタならではの聴き応え。

「野呂一生 スウィート・スフィア」(VICJ-77006)

1985年L.A.スタジオサウンドレコーダーズにてアナログ録音。ミキシングもアナログ1/2テープ、30ips。カシオペアのギタリストにしてリーダー野呂一生の初リーダー作。ネイザン・イースト(bs)、パトーリース・ラッシェン(key)からホーンセクションにシーウィンドまで野呂指名の米西海岸の錚々たるセッションミュージシャンを率いてL.A.で現地エンジニアのサポートでレコーディングした。
ギターをばりばり弾いているかと思うと豈図らんや、作曲家、アレンジャー、プロデューサーとしてやりたいようにやったビューティフルなアルバム。カシオペアのイメージで聴くといい意味で裏切られる。ディスコビートの曲が多くボーカリスト(フィリップ・イングラム)が加わった曲はAOR風だ。アナログ多重を駆使しホーンや新世代シンセ、野呂のギターをダビング、重層的な音空間を作り上げているがマスタリングで音が解れ、2000年代の録音と言われて納得してしまう見事なマスタリング。ドラムスの滲みなくタイトな打撃、TR06のシンセソロ、TR07のギターソロの宙空に漂い空気に刻印するような表現は必聴。

「松原正樹 流宇夢サンド」(VICJ-77007)

1978年、ビクタースタジオでアナログ16CH録音。ミキシングはアナログ1/4テープ、15ips。今年二月に惜しまれつつ世を去った松原正樹は、キャンディーズ始めとする歌謡曲のセッションギタリスト、ハイファイセット等和製ポップスのバックで1970年代に若くして名声を確立した名手。初リーダー作の本作は村上ポンタ始め手練を集めたビューティフルなアルバム。多彩な奏法とエフェクターを駆使しセッションプロらしい表現幅を聴かせるが決してギターアルバムではなく、多彩な楽器群のカラフルなアンサンブルミュージック。作編曲に旧友上田正樹が加わりブルージーなかくし味。
ブラス(テナーサックス、トランペット、トロンボーン)、ストリングスからハモンドオルガン、アナログシンセまで含む多彩な楽器群による編成をアナログ多重で収録、この時代らしくやや籠もった音質だが、リマスタで曇りが減り楽器の輪郭が鮮明に。いい意味でスペース(空間性)が感じられる。帯域がやや控えめだが、低音楽器(ベース、ドラムス)にぞくっとする量感。松原の豊かな歌心のギターが前面でのびのびと躍動する。オープニング曲TR01は、リマスタで歪みが消え後半松原の艶のある美しい音色が聴けるいわば名刺代わり。メロウなスローナンバーTR03は、クリアトーンのギターが左右に響きをゆったり広げ奥床しく定位、参加ミュージシャンのコーラス(男声、女声)がメロディを歌うTR04の音場の深い遠近感と広がりにセッションの良好なコミュニケーションが伝わり、ハモニカのフレーズを鋭く虚空に刻み付ける鮮鋭感はデジタルリマスタの威力。サックス、トランペットを含む金管、ストリングスと最も編成の大きいTR05も歪みが最少に止められている。全曲を締めくくるTR09の波音のSEが音場にナチュラルサラウンドする豊かな広がり感は秀逸。

「松原正樹 テイク・ア・ソング」(VICJ-77008)

1979年ビクタースタジオでアナログ24CH録音。ミキシングは1/4テープ、15ips、ドルビー使用。前作に比較し坂本龍一、松任谷正隆、深町純、難波弘之(key)、女声ボーカルに矢野顕子と、メジャー処も加わりスケールアップ、リッチなシティポップ寄りになった印象。松原のギターもTR03サンタナ調からアコギまで多彩。音色のバラエティを最大限活かし艶のある松原のギターの豊かな音色を味わえるリマスタだ。LP発売時のライナーによれば驚くことにベーストラック一発録りらしい。コーラスや弦はダビングだろうが、奥行きのある重層的な音空間という点で1980年代のデジタル録音に近づいていることが今回のリマスタから分かる。
豊富な楽器アンサンブルのトータルな音空間主体のアルバムだが、TR04の松原のクリアトーンの透明感を湛えた響き、タイトル曲TR05の前半アコギのピッキングの鈍らない切れ味、ピアノの煌めくオブリガードの鮮鋭感にデジタルリマスタの威力。坂本龍一作曲のTR06のディストーションから生まれるいい意味での「濁り」の分解能がリマスタで増し松原ならではのギターの色艶に引き込まれる。

「秋山一将 ディグ・マイ・スタイル」(VICJ-77009)

1978年ビクタースタジオ、スタジオA、サウンドシティ、フリーダムスタジオでアナログ16CH録音。ミキシングは1/4テープ、15ips、ドルビー使用。秋山一将は、渡辺貞夫に見いだされ鈴木勲グループに参加を経て渡辺香津実らのギターワークショップに参加した本格派ジャズギタリスト。本作は初リーダー作だがメインストリームジャズでなく、ボサノヴァまで含む多彩なフィールドの音楽性が発揮されボーカルまで担当、当時全世界を覆ったフュージョンミュージックの主流感のほどがわかろうというものだ。
CTI、A&M等アメリカのクロスオーバー(イージーリスニングジャズ)に近い都会的に洗練されたメロウな音世界。女声ボーカル、テナーサックス、ホーン隊(スペクトラム)まで楽器が多いが、1978年のアナログ16ch録音とは思えない鮮度の高く高解像度の音質に感嘆。音質の改善効果とアナログからの躍進という点で今回のリマスタの白眉。
バート・バカラックの「アルフィ」に似たフレーズが酔わせるTR02は、秋山のスパニッシュ風味のアコギの力強い量感が素晴しい。秋山本人がボーカルを担当するボッサナンバーTR03は、R.T.Fを彷彿する益田幹夫のエレピの虚空を煌めいて転がる粒立ちと鮮鋭感が印象的。女声トリオの漂うようなコーラスがリバーブを従えて甘美にナチュラルサラウンドするTR04はアコースティックピアノの鮮鋭感とのコントラストが見事。
ホーンスペクトラムを従えたTR07は、リマスタで解像度が向上、タイトル通り「ジャズギタリスト秋山」のマインドとバックグラウンドをしかと聴いた。

「山岸潤史 オール・ザ・セイム」(VICJ-77010)

1978年ビクタースタジオで24CHアナログ録音、ミキシングは1/4インチテープ、15ips。ドルビー使用。関西出身のブルース畑出身ギタリストのリーダー作。レゲエビートのTR02、ボブ・ジェームス風TR03、STUFF調のファンキーなTR06と多彩な音楽性と表現の幅を見せつけるフュージョンアルバムだが、山岸が体の中に持っているのはブルースのフレーズなので、ボーカルも担当するTR04 のようなブルージーな曲調で真価を発揮。現在はニューオリンズ在住だそうだ。TR01のパーカッションの音の鮮度とキレ味に驚愕。TR05のギターの熱いエネルギー感とディストーションの奥の音の芯をキャッチする解像感も舌を巻く。本当にこれが1980年のアナログ録音か!? KORGの新世代シンセから(ホーン)スペクトラムの金管まで使用楽器が幅広くアナログ多重で音が厚いが、デジタルリマスタの威力で混濁感や鈍りがないクリアで奥行き深い音空間に生まれ変わった。

「阿川泰子 スウィートメニュー」(VICJ-77011)

1979年ビクタースタジオ、サウンドシティ、サウンドインスタジオ他で録音。24CHアナログ。ミキシング1/4インチテープ、15ips。
「ネクタイ族のアイドル」として人気沸騰真っ最中のリリースだけに、阿川の声の甘美な質感の魅力をいかに伝えるか、ビクタースタジオのエンジニアが気を使って録音したことがリマスタから伝わる。ブルーアイドソウルTR05は原曲が男の色気と惑いを滲ませるのに対し揺れる女心を表現し秀逸な出来。TR06の語りかけるような歌い口も素晴しい。TR07はミキシングバランスが秀逸でボーカル定位とバックとの遠近感に優れ適度なリバーブを纏ってスレンダーな阿川が目の前にすっくと立って歌っている。TR08は低音楽器の量感からリマスタによる帯域の拡張が伺える。全編の掉尾を飾るTR10はペギー・リーのオリジナルよりいい出来。作曲者ポール・マッカートニーには申し訳ないのだが、ペギー・リーの仄暗い声で歌うとこの曲はメランコリックに過ぎる。ポールのギブアウェイソングの中で比較的地味な曲だが、阿川のシュガーボイスがメランコリーを美しいファンタジーに変え曲の真価を教えてくれる。

「秋本奈緒美 Rolling 80's」(VICJ-77012)

1982年、ビクタースタジオ、スタジオバードマンで録音。アナログ24CH録音、ミキシングは1/4インチテープ、15ips。
長野県生まれのスポーツ少女を「時空を超越した架空のジャズの歌姫」に変身させたら、というアイデアから生まれたコンセプトアルバム。「サージェント・ペパーズ」を源点とするメタミュージック音楽劇。発売当時「偶然ラジオで聞いたサラ・ヴォーンの『ミスティ』のとりこになった」という秋本のエピソードが紹介されたが、宣伝用に創案されたエピソードでいわばアルバムコンセプトの一部。全曲ジャズスタンダードで亜蘭知子の日本語詞で歌う。(清水靖晃が編曲担当)ショー仕立てメドレー形式で切れ目なく進行。そのため収録時間33分41秒と短い。こりに凝った構成とコストを掛けた制作はさすが金が唸っていた'80年代日本。アナログ多重録音でここまでやったのは驚異的。
構成上無音部分が多いがリミックスでS/Nが向上、虚構のステージのリアリティを生む「静寂」が表現出来たのは大きい。アナログ多重の音のもやつきが消えクリーンな音場が生まれ一夜の宴というアルバムコンセプトが鮮明に。TR04の「サージェント…」の「グッドモーニング、グッドモーニング」を模したSEも音のキレが出て効果を上げ、「アビー・ロード」の「サンキング」のイントロに似たSEも広がり感。楽器群はアコースティックが多くジャズステージらしい帯域と量感の向上も目覚ましい。日本のメタミュージックアルバム先駆作の一つとして再評価のきっかけになるリマスタ。

「仲村裕美 グルーブ」(VICJ-77013)

1982年ビクタースタジオ、サウンドインスタジオ、一口坂スタジオ、フリーダムスタジオで録音。24CHアナログ録音、ミキシング1/4アナログテープ、15ips、ドルビー使用。
仲村裕美の残した三枚のアルバムの最初のもの。テレビ番組「ナイトスクエア」のレギュラーを務めた仲村の立ち位置はジャズというよりポップス歌手。収録曲は欧米新旧ポップスのカバーでジャズスタンダードこそ一曲もないが、バック演奏はフルアコースティックのピアノトリオとホーンセクションで終曲のみセミアコのギターを使用。仲村のボーカルを引き立たせるアレンジのオーソドックスな女声ボーカルアルバムでフュージョンではない。「和フュージョン」中異色の一枚。録音は演出を避けリバーブも最小限に止め、仲村の明るく伸びやかで素直なクリアボイスと英語のディクションの美しさにフォーカスした印象。フランクに話しかけるような歌い口を活かした一人二重唱が面白い効果。TR03や05のウッドベースの量感と音の芯、指使いの輪郭描写、TR08のピアノのアタックの鮮鋭感と倍音の伸び、TR09のクラリネットのからりとした質感描写にリマスタの効果が現れている。