2014年6月 

  

Audio Blu-Ray Disc & DVD Review

「愛しのフリーダ ザ・ビートルズと過ごした11年間」(角川書店DAXA-4586)
 ザ・ビートルズのデビューLP『プリーズ・プリーズ・ミー』はポールがカウントする「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」で始まるが、歌詞中17歳の“her”は誰を指していたのか。

 最も有力なのは、キャバーンクラブでメンバーの目に留まりブライアン・エプスタインの会社NEMSの個人秘書を振り出しに、1972年のビートルズ裁判で正式な解散が認められるまでバンドの広報を務めた英人女性フリーダ・ケリーという説である。彼女はアップルコープスを去った後は平凡な主婦としてマスコミに登場せず沈黙を守り通した。本作は彼女が初めて過去を述懐したドキュメントである。何故彼女は沈黙したのか。

 彼女にとってビートルズは青春そのもので何より4人の若者を愛した。ビートルズの音楽が神格化された現代、見落とされがちな真実がここにある。彼らは評論家でも音楽業界人でもなく平凡な女の子達を夢中にさせたのである。

 映像の殆どは撮影時69歳のフリーダ・ケリーやリヴァプール時代からビートルズを支えたスタッフの証言でDVDでも十分なレベル。最後にリンゴ・スターが登場、フリーダへのオマージュを語る。使用許可が厳しいビートルズ自身の音源が4曲使用されている。(大橋伸太郎)