ロンドン・リポート
LIVEエリック・クラプトン&スティーヴ・ウィンウッド・・・大友 博
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5月27日と29日、ロンドン/ロイヤル・アルバート・ホールで、年末に来日が予定されているエリック・クラプトンとスティーヴ・ウィンウッドのライヴを観た(恒例となっている同ホールでの連続公演の一部で、今年は前半がクラプトンのソロ、後半がウィンウッドとの共演という構成になっていた)。
あらためて振り返っておくと、1960年代の半ば、ともに若き天才的アーティストとしてロック界に登場した彼らは、クリームとトラフィックがほぼ同時に分裂したあと、69年、ブライド・フェイスを結成している。しかし、理想的な創作活動を追求する場だったはずのこのバンドは呆気なく消滅してしまう。原因は、主にクラプトンの側にあった。
以来、本格的な共演はなかったが、2007年、二人の距離が急速に縮まっていく。5月にバークシャーで開催されたフェスティバルで、彼らはひさびさに並んでステージに立ち、そこで予想以上にいい感触を得たクラプトンは第2回クロスロード・ギター・フェスで自身のセットにウィンウッドを招いた。ウィンウッドのソロ作『ナイン・ライヴス』へのクラプトンの参加もあり、そして、ファンからの熱い要望に応える形で、翌年2月、二人はニューヨーク/マディソン・スクエア・ガーデンのステージに立ったのだ。
09年の全米ツアー、10年の欧州ツアーにつづいて実現したロイヤル・アルバート・ホールでの共演、27日は、ブラインド・フェイスの「泣きたい気持ち」でスタート。このプロジェクトではウィンウッドがギターを弾く曲がプログラムの半分近くを占めているのだが、ここでも二人は強烈なギター・バトルを聞かせている。ブラインド・フェイス時代の曲は他に「プレゼンス・オブ・ザ・ロード」、「マイ・ウェイ・ホーム」、「ウェル・オールライト」。
マディソン公演の前、彼らは、それぞれ相手の作品のなかから「これをやりたい」とか「これをやるべきだ」などと提案しプログラムを固めていったという。その成果のひとつと思われるのが「ホワイル・ユー・シー・ア・チャンス」。近年ウィンウッドは80年代の作品をほぼ封印してきたが、ここではクラプトンのギターを大きくフィーチュアする形であの時代の音を甦らせている。彼の作品としては他に「ミッドランド・マニアック」、トラフィックの「グラッド」、「ミスター・ファンタジー」、またその原点となったスペンサー・デイヴィス・グループ時代の「ギミ・サム・ラヴィン」も取り上げられている。
単独のアーティストのカヴァーで目立ったのはJ.J.ケイル。「アフター・ミッドナイト」、「コカイン」、そして「ロウ・ダウン」と、3曲もピックアップされている。ケイルに向けた敬意の深さをあらためて教えてくれる選曲でもあった。また、ジミ・ヘンドリックスの作品からは「ヴードゥー・チャイル」が、15分近くの長いヴァージョンで演奏された。
ひときわ大きな拍手を集めていたのが「我が心のジョージア」。マディソンではスティーヴのハモンド弾き語りだったが、ここではバンドでの演奏となり、椅子に腰を下ろしたエリックが渋いオブリガードを聴かせている。
アコースティック・セットではスティーヴもマーティンを弾く編成で、「ドリフティン」、「ザッツ・ノー・ウェイ・トゥ・ゲット・アロング」、「レイラ」、「マイ・ウェイ・ホーム」。「レイラ」は『アンプラグド』のアレンジを踏襲したものだったが、よりブルージィな仕上がりとなっていた。
なお、29日は「ミッドランド・マニアック」がトラフィックの「パーリー・クイーン」、「ドリフティン」が2月に急逝したゲイリー・ムーアの「スティル・ガット・ザ・ブルース」にかわっている。
27日の公演直前にインタビューすることもできた。来日公演をテーマにしたものだったため、深い話は聞けなかったが、とにかく二人が楽しんでこのプロジェクトに取り組んでいる様子が印象に残った。なるほどと思ったのは、クラプトンがずっと昔からウィンウッドを本物のブルース・ギタリストとしてとらえてきたということ。一方のスティーヴは「あのころエリックはリーダーになろうとしなかったけど、今は素晴らしいバンド・リーダー」と皮肉る。インタビューの途中、突然、前日のライヴについて触れ、「クリスがピアノを弾くはずだったのに、オルガンを弾いた」、「でもよかったよ」などと話しあう二人。まるで『モンディ・パイソン』を観ているような気分だった。
【セットリスト】
*5月27日
1. Had to Cry Today
2. Low Down
3. After Midnight
4. Presence Of The Lord
5. Glad
6. Well Alright
7. Hoochie Coochie Man
8. While You See A Chance
9. Key To The Highway
10. Midland Maniac
11. Crossroads
12. Georgia
13. Driftin' (acoustic)
14. That's No Way To Get Along (acoustic)
15. Layla (acoustic)
16. Can't Find My Way Home (acoustic)
17. Gimme Some Lovin'
18. Voodoo Chile
19. Cocaine
20. Dear Mr. Fantasy(encore)
*5月29日
1. Had to Cry Today
2. Low Down
3. After Midnight
4. Presence Of The Lord
5. Glad
6. Well Alright
7. Hoochie Coochie Man
8. While You See A Chance
9. Key To The Highway
10. Pearly Queen
11. Crossroads
12. Georgia
13. Still Got The Blues (acoustic)
14. That's No Way To Get Along (acoustic)
15. Layla (acoustic)
16. Can't Find My Way Home (acoustic)
17. Gimme Some Lovin'
18. Voodoo Chile
19. Cocaine
20. Dear Mr. Fantasy(encore)
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