2010年10月 

CARLOS SANTANA IN LAS VEGAS・・・大友 博
 
 サンタナ5年ぶりの新譜『ギター・ヘヴン?グレイテスト・ロック・クラシックス?』(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル/SICP-2842)は、いってみればギター・ロック名曲集。ヘンドリックスからクリーム、ビートルズ、ストーンズ、ツェッペリン、Tレックス、ヴァン・ヘイレン、AC/DC、デフ・レパードまで、誰もが知っているアーティストの誰もが知っている曲が取り上げられていて、しかも『スーパーナチュラル』3連作同様、クリス・ドートリーら人気シンガーが各曲に迎えられている。はじめてリストを目にした時は「?」と思ってしまったものだ。

 その思いを抱えたまま、8月25日、ラスベガスのハード・ロック・ホテルで行なわれた試聴会に参加し、その後、同ホテル内のイベント会場JOINTでのライヴを観た。視聴会の進行は、御大クライヴ・デイヴィス。もともと新作のアイディアは彼がカルロスに提案したものであり、選曲は「ローリング・ストーン」誌や「Q」誌などのデータをもとに二人が決めたものだという。つまり、よくある「原点回帰」ではなく、客観的なスタンスで、誰もが認めるギター・ロック名曲を選び出したわけだ。新作を「二人の友情と信頼関係が実を結んだもの」と語り、立ったまま1曲ずつ紹介していくデイヴィスの嬉しそうな表情が印象的だった。会場にはオリヴィア・ハリソンの姿も。インディア・アリーとヨー・ヨー・マを迎えて録音したサンタナ版「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」を聴いて感激した彼女を招いたのだという。

 コンサートは、「ブラック・マジック・ウーマン」や「スムーズ」などの定番曲と新作収録曲をバランスよく並べたもの。アリーやドートリーもステージに上がったが、「サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ」など、バンドのメンバーだけで演奏した曲のほうが充実していた。やはり凄いミュージシャン集団だ。だからこそ、こういうプロジェクトに迷いもなく取り組めるのだろう。「ラスベガスでこんなことをいうのはおかしいけれど」と前置きしてから愛と平和を語るカルロスは、やっぱり、いつものカルロスだった。
写真:Lester Cohen/Courtesy Wireimage

 そんなアメリカ滞在中に入手したのが「ROLLING STONE / THE BEATLES 100 GREATEST SONGS」(SPECIAL COLLECTORS EDITION 2010年11月24日まで店頭販売)。米ローリング・ストーン誌100選シリーズ最新版のテーマは、ビートルズ。彼らが残した219曲のなかからいかにもローリング・ストーン誌らしい視点で選び出したベスト100曲を、1位の「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」から100位の「ハロー・グッドバイ」まで、カウントアップのスタイルで紹介している。エルヴィス・コステロの序文も、各曲の意味や背景を紹介した文章も、いずれも読み応えがあり、どの世代のファンも楽しめると思う。「ミッシェル」や「フール・オン・ザ・ヒル」が無視されていたり、「サージェント・ペパーズ?」が60位だったり、「なにこれ?」と思う人もいるかもしれないが、そのあたりも、いかにもローリング・ストーン誌らしい。

Ballet Review(ミラノ発)
"Serata Forsythe" - Teatro alla Scala・・・・・・・・・・・・・・・by Mika Inouchi
スカラ座バレエ「フォーサイスの夕べ」・・・・・・・・・・・・・・・井内 美香
Photos: Brescia-Amisano Teatro alla Scala
 コンテンポラリー・ダンスの第一人者、ウィリアム・フォーサイスの振付作品を集めたバレエ公演「フォーサイスの夕べ」がミラノ・スカラ座で9月6日に初日をあけた。スカラ座バレエ団が初めてフォーサイスの振付作品に取り組んだのは1998年のこと。「イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッドIn the middle, somewhat elevated」などの有名作品に加え、スカラ座委託作品「クワルテットQuartetto」を世界初演し、アレッサンドラ・フェリ、マキシミリアム・グエッラ、マッシモ・ムッル、デズモンド・リチャードソンの4人が主演した。今回の「フォーサイスの夕べ」はスカラ座のエトワール・ダンサー、スヴェトラーナ・ザハロワとロベルト・ボッレの出演が発表されていたが、ザハロワが個人的理由で降板し、その代わりに10回公演のうち7公演に出演する予定だったボッレが全公演に出演した。

「アーティファクト・スイートArtifact Suite」
フォーサイスの一晩もののバレエ「アーティファクトArtifact」を元にしたスイート。バッハの無伴奏ヴァイオリン曲パルティータ2番を使う前半と、フランクフルト・バレエのピアニストだったエヴァ・クロスマン=ヘヒトのピアノ曲を使う後半の2部構成となっている。前半は二組のパ・ド・ドゥが中心となり、後半はどちらかというとマス・ゲーム的な勇壮な展開になる。筆者が観た14日はフランチェスカ・ポディーニとルイジ・サルッジャ、ベアトリーチェ・カルボーネとエリス・ネーザがパ・ド・ドゥで安定した踊りを見せ、また全体を導く役割を果たすシモーナ・キアラも機械仕掛けのような動きが上手かった。

「ヘルマン・シュメルマンHerman Schmerman」
前半のクインテットと後半のパ・ド・ドゥからなる作品。クインテットの部分はニューヨーク・シティ・バレエで、パ・ド・ドゥはフランクフルト・バレエでそれぞれ1992年に作られたものである。フォーサイスとのコラボレーションが多いトム・ウィレムスの音楽で、シンセサイザーにエスニックな曲を混ぜ込んだ音に乗り、黒い衣裳の5人のダンサーが縦横無尽に踊る。特にルアナ・サウッロの鍛えられた肉体と踊りが際立った。後半のパ・ド・ドゥは世界の一流ダンサーがガラなどで好んで踊る部分である。前半の黒い衣裳から後半は鮮やかな黄色のミニ・スカート(ヴェルサーチェのデザイン)に履き替えて出てくるが、女性だけではなく男性も上半身裸でミニ・スカートを履いてユーモラスな雰囲気がある。踊りだけではなく演技力も要求される作品だ。15日に観た公演では、この作品にデビューしたマルタ・ロマーニャとロベルト・ボッレが息のあった演技を見せ、二人とも踊りの型をくっきり見せながらもチャーミングな表情も加味し自由自在の表現であった。

「イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッドIn the middle, somewhat elevated」
フォーサイスの一番有名な作品である。ガラで部分的に目にすることが多いが、完全版は女性6名、男性3名によって踊られる。ザハロワが出演するはずだった演目で、ボッレが「ヘルマン・シュメルマン」を踊らない3公演に出演した。初日キャストはマルタ・ロマーニャ、フランチェスカ・ポディーニ、ミック・ゼーニの三人が中心パートを踊った。ポディーニは古典やロマンティック・バレエに比べるとコンテンポラリーはリズム感などで未熟な点が見えたが、ベテランのロマーニャとゼーニは正確な踊り。また14日に観たボッレはこの作品が1998年にスカラ座で初めて上演された時から主演しガラ公演でも良く取り上げるだけあって、切れの良い踊りで貫録も十分、エトワールの存在感を見せつけた。

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