|
"GISELLE" _ American Ballet Theatre - by Mika Inouchi
(photos: MIRA, Gene Schiavone)
アメリカン・バレエ・シアター(ABT)「ジゼル」・・・・・・・・・・・・井 内 美 香
|

アメリカを代表するバレエ・カンパニーの一つであるアメリカン・バレエ・シアター(ABT)の春夏のシーズンは、毎年ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で約2カ月に亘って行われる。週ごとに演目が代わり、カンパニーのスター・ダンサー達が日替わりで同じ作品を踊る。今年はオープニング・ガラ公演のレセプションにミシェル・オバマ大統領夫人が出席し、また、カンパニーの常任振付家となったアレクセイ・ラトマンスキーの新作「On the Dnieper」が発表されるなど話題が多かった。また今シーズンを最後に、1993年から同バレエ団のプリンシパルとして活躍してきたニーナ・アナニアシヴィリが引退する。
アナニアシヴィリのABT引退公演「白鳥の湖」に関しては来月お伝えする予定であるが、今月は「ジゼル」公演のレポートである。ミラノ・スカラ座のエトワールで国際的なスター・ダンサーであるロベルト・ボッレが今年からABTのプリンシパルとなり、6月11日の「ジゼル」がボッレのデビュー公演となった。ジゼル役はアルゼンチン出身のプリンシパル、パロマ・ヘレーラ。ボッレは2年前、アレッサンドラ・フェリのABT引退公演の機会にカンパニーに招かれて客演し、「マノン」「ロミオとジュリエット」をフェリと踊った。その時の人気と実力が認められて今回のプリンシパルとしての入団となった。
ABTのジゼルは1987年にミハイル・バリシニコフが映画「ダンサー」に主演した時に制作された。ジャンニ・クワランタ装置、アンナ・アンニ衣裳の舞台である。華やかで雰囲気のあるセットがメトロポリタン歌劇場の大きな舞台に映え、素晴らしい額縁となっている。11日の指揮はチャールズ・ベイカー。第一幕はゆったりとしたテンポで少々陽気さに欠けるうらみはあったものの、第二幕では深い情緒的な雰囲気を醸し出し、この演目にふさわしい演奏となった。
第一幕のヘレーラは素朴で愛らしいジゼル。華麗なテクニックを持ち味とするロシア系のダンサー達と比べるとヘレーラは一見地味なようだが、細かいところまで完成度は高い。ポワントが安定しているのでジゼルのソロでは自在な表現を見せ、またアルブレヒトの裏切りを知った後の狂乱の場における自然な演技は、この物語を信憑性のある身近なものに感じさせた。ボッレとのパートナー・リンクは非常に良く、はじめて一緒に踊ったとはとても思えない。ボッレも第一幕は比較的抑えた演技、踊りはヘレーラに完璧に合わせて、細かいところまで神経の通ったものであった。
「ジゼル」の真骨頂はやはり第二幕にある。深い森の情景の中、ウィリたちの群舞はABTのコールドが健闘した。ミルタ役のミッシェル・ワイズは、腕や上半身の使い方などに丸みが足りないのが残念だが、跳躍などは鮮やかであった。
ヘレーラのジゼルはロマン派の様式と型をきちっと示す伝統を尊重した役作り。技術も安定し、アダージョにおけるデヴェロッペなどもゆっくりと自信を持って美しいラインを描く。それに加えて強い感情表現があり、何よりも詩情あふれるジゼルであった。
ボッレが「ジゼル」を最大の当たり役にしているのは、第二幕における踊りの表現にある。今回は特に重要なデビュー公演である上、コンディションも非常に良かったようで、技術とパトスの両面で頂点に達した最高の踊りを見せた。百合の花束を抱えた登場シーンでの深い悲しみの表現、そしてジゼルとのパ・ド・ドゥではこれ以上ないほどの丁重なサポート。ジャンプも非常な高さがあり、着地も足首が柔らかく、素晴らしい踊りであった。ミルタに死ぬまで踊るよう命じられての場面は、30回を超えるアントルシャ・シスを披露、客席からは感嘆のため息が聞かれた。
終演後のカーテンコールでは二人とも公演の出来に満足した様子の満面の笑みを浮かべ、常連ファンから大きな拍手を受けるヘレーラとともに、ボッレが登場すると劇場を揺るがす拍手喝采となった。
|
|
|
ミュンヘン・ハイエンド・オーディオ・ショー 上田 和秀
|
5月21日から24日まで、ドイツ南部の都市ミュンヘンで、ヨーロッパ最大の≪ハイエンド・オーディオ・ショー≫が開催された。
ここ数年オーディオ業界におけるハイエンドの中心は、アナログ・レコードの再生である。CDの技術が頂点を極めた今、あえてアナログ・レコードがトレンドだと言うことが面白い。そこで、普段見ることの出来ない様なアナログ・プレーヤーを中心に紹介させていただく。
今流行のスワロスキーを贅沢にちりばめた豪華なプレーヤーは、スワロスキーそのものが音に良い影響を与えるわけもなく、その煌びやかで華やかなルックスはオーディオ機器と言うよりも新鋭作家の芸術品の様だ。スペイシーなデザインのプレーヤーは、究極に無駄を省いた物からUFOの様なデザインまで、従来のアナログ・プレーヤーのイメージを覆すような迫力で迫ってくる。ここまでくると、SF映画に出て来るロボットか宇宙船の一部だ。
そして今回最も気になったのは、イタリア人エンジニアが製作しているボディはピアノをモチーフにし、アームに本物のヴァイオリンの弓を使ったアナログ・プレーヤーだ。使い方も非常に難しいらしいが、1台の製作に1ヶ月を要するらしく、オーダーしても相当待たなければならないそうだ。懲りに懲ったこのエンジニアは、ピアノの調律と同様の調整を必要とするラックまで作っている。ヴァイオリンの弓を使っている時点で、季節の移り変わりの多い日本での使用は難しいようだ。
今回のハイエンド・オーディオ・ショーは、主要な大企業の出展こそ少なかったが、近年にない大盛況であった為、あるメーカーの社長は、出展しなかったことを悔やんでいたほどだ。ヨーロッパにおけるオーディオ文化に触れ、日本との楽しむという意味でのオーディオの違いを実感・再確認し、良い勉強となった。

|
|