ミックは1985年には、ソロアルバム「She's The Boss」を 出したり、独自に動いたりした時期はあるが、本格的にバンドを組んでレコーディングしたのは今回の「SuperHeavy」が初めてである。ブルースベースのストーンズは、勿論今まで他のジャンルのサウンドは積極的に取り入れて来たが、はっきりと、ストーンズから離れて、他ジャンルに挑戦したミックにとっては、今回のこのアルバムは、まさに注目すべき点なのである。一方で相棒のキース・リチャーズが、 皮肉の笑いを浮かべているのが視えては来るのだが。
トラックリストは、タイトル曲「SuperHeavy」からはじまり、3曲目に「Miracle Worker」が入り、「Satyameva Jayathe」はアフリカン・レゲエ風で、「Beautiful People」でボブ・マーリー風レゲエをダミアンが表現。「I Can't Take It No More」でミックがストーンズ節を出し、「Mahiya」では、ラフーマンとダミアンで、東洋イスラム風の匂いの強い曲で、「Hey Captain」では、ミック、ジョス、ダミアン、ラフマーンでパワフルな掛け合いソングだ。日本盤ボーナスとなってる「Never Gonna Change」では、デイヴ・スチュワートのアコースティック・ギターに、ミックの「Wild Horses」的な、ストーンズらしい曲でこのアルバムは締めくくられている。
【1st Stage】Blues & R&B
1.Heart Of Stone
2. Mercy Mercy
3.Everybody Needs Somebody To Love〜Pain In My Heart
4.I Can't Be Satisfied *Open G(Slide)
5.Little Red Rooster *Open G(Slide)
6.What A Shame *(Slide)
7.It's All Over Now
8.I Want To Be Loved *(Harp)
9.One More Try *(Harp)
10.I Wanna Be Your Man(彼氏になりたい)*Open E(Slide)& Chorus
11.I'm Moving On *Open E(Slide)
会場であるホールAに入ると、5000席はあるという場内は既に満員。16時30分の開演時刻になり、場内には聴き覚えのあるジュリーの歌声が流れた・・・「G.S.I LOVE YOU」だ。同名タイトルのアルバムが発売されたのは、80年の暮。ここ有楽町のシンボルでもあった日劇の取り壊しが決定し行なわれた「さよなら日劇ウエスタン・カーニバル」で瞳みのるを除くザ・タイガースのメンバーが一堂に会したのが翌81年1月の事だった。この曲を聴いて、その頃の事を思い出されたファンの方も多かっただろう。そんな思いにふけっている内に、全員色違いのジャケットに身を包んだメンバーがステージに登場。♪ミスタァ〜〜〜ムーンラーイト♪、シャウトを決めるジュリーの周りには、タローが、サリーが、そしてピーがいる。ジュリー、いやザ・タイガースのファンが長年夢にまで見たLIVEが今まさに幕を開けた。この曲はビートルズのカヴァーだが、京都の頃のタイガース、すなわちファニーズ時代のレパートリーでもある。続くデイヴ・クラーク・ファイヴのカヴァー「Do You Love Me」ではピーのドラミングが全開。ブランクをまったく感じさせない叩きっぷりは見事だ。サリーも得意の低音ヴォイスを聞かせる。タイガース時代と同じカール・ヘフナーのベースの音もよく出ている。黒いストラトキャスターを持ったタローも楽しそうだ。ジュリーのアクションもノッている。タイガース時代の18番、ローリング・ストーンズの「Time Is On My Side」ではジュリーのジャンプに場内が沸く。MCではジュリーのギャグも飛び出し絶好調。サリーも今日は俳優・岸部一徳ではなくベーシスト・サリーだ。タローは数年間にわたって毎月LIVEを重ねて来ており演奏に不安は無い。そして40年ぶりにファンの前に姿を見せたピー(得意の中国語で挨拶した)には一際大きな声援が飛ぶ。
約15分の休憩の後、ローリング・ストーンズの「Little Red Rooster」のBGMにのって、胸元と袖口に刺繍をあしらったタキシードに着替えたメンバーがステージ上に現れた。「淋しい雨」からスタートした後半は、「風は知らない」「散りゆく青春」と、タイガース後期のシングルB面に収められていた言わば隠れた名曲が続いた。次に演奏された「花の首飾り」では、ジュリーがヴォーカルを担当。聴き慣れていた歌も新鮮な気持ちで聴く事が出来た。スローな曲が終わると間髪入れずにハードなリフが炸裂。アルバム『ヒューマン・ルネッサンス』に収録されていたロック・ナンバー「割れた地球」だ。さらにハードな「怒りの鐘を鳴らせ」「美しき愛の掟」では、ロック・バンドとしての実力をまざまざと見せ付けた。MCのあとはタロー作詞作曲による「青い鳥」、ステップも飛び出す初期のヒット曲「シーサイド・バウンド」、そしてタイガースの人気を決定付けたとも言える大ヒット曲「君だけに愛を」が登場。もはや伝説となっている♪君だけーにー!♪というジュリーの指差しパフォーマンスに観客の目線は釘付けとなり、場内はこの日一番の盛り上がりを見せた。続いてタイガースのラスト・シングルでもあった「誓いの明日」が演奏されると、この夢のような時間も終わりに近づいて来ている事を実感した。この曲を聴きながらビューティフル・コンサートで泣きながらこの曲を聴いた当時のファンの気持ちがオーバーラップし、心の中にこみ上げてくるものがあった。演奏終了後メンバーは退場。場内にはアンコールの拍手が鳴り響いていた。
青山陽一 ニュー・アルバム『ブルーズ・フォー・トマト』発売記念特別インタビュー
<All-Time My Favorite Albums Top 5>・・・小松崎 健郎
The Grandfathersのメンバーとして1985年より活動、解散後の92年からはソロのシンガー・ソングライター&ギタリストとして2006年までに10枚のアルバムをリリース、多くのファンを魅了し続けてきた青山陽一。
そんな青山の5年ぶり、通算11枚目となる待望のフル・アルバム『ブルーズ・フォー・トマト(Blues For Tomato) 』(P-Vine/PCD-25138)が10月19日にリリースされた。ソウル、ブルース、R&Bといったルーツ・ミュージックを咀嚼した上で、彼本来のもうひとつの持ち味でもあるポップ・ロック・モードが最高のバランスでブレンドされた、近年まれに見る傑作アルバムといえる。
アルバムについては、各種媒体にさまざまな形でレビュー、インタビューなどが掲載されるであろうから、それらをご参照いただくとして、ここではMPC Land読者のため特別に、彼の音楽体験を中心に語っていただくとともに、もっとも彼に影響を及ぼしたであろう<オールタイム・フェイヴァリット・アルバム>を5枚選んでいただいた。