2017年8月 

  

Popular ALBUM Review


エリン・ボーディー「ヒア・アンド・ナウ」コアポートRPOZ-10033
 2001年にデビュー・アルバムを発表して以来、コンスタントに作品を発表してきたエレン・ボーディーの通算8枚目のアルバム。牧師の父と音楽好きの母親を持ち、自らをジャズ・フォーク・ポップ・シンガーだといっているという彼女だが、本CDは、ジャックソン・ブラウンの「青春の日々」、ポール・サイモンの「思い焦がれて」、リッキー・リー・ジョーンズの「1963年土曜日の午後」などコンテンポラリーなナンバーに今回は、2004年の2作目以来久しぶりにガーシュイン、アービング・バーリン、フランク・レッサー等のスタンダード・ナンバーも交えてヴィクター・クラウスのベース、マット・ムニステリのギター、タラ・サンティアゴのチェロを主体とした弦楽器のアンサンブルをバックに優しい女性らしい語り口でフォーク調の歌を聞かせる。ジャジーにスイングする「アイ・ヒア・ミュージック」等聞くとジャネット・サイデルを思ひ出す。ギター一本の伴奏でスイートに歌うボブ・ドローの「バット・フォー・ナウ」が大変魅力的だ。(高田敬三)


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Kellye Gray RENDERING Grr8 Records Grr80010
 ケリー・グレイは、テキサス州ダラス出身のシンガー。今はサンフランシスコを中心に活躍している。1990年にデビュー・アルバム「Standards In Gray」を発表、トップ20に入るヒットで一躍話題になった。その後も2枚目の「Tomato Kiss」を始めコンスタントにアルバムを発表してきている。本作品は、歌手生活25周年を記念する作品で、Justice レコーズに録音したデビュー作の「Standards In Gray」のレコード会社との契約が満了して権利が自分の所へ戻ってきたので、それと2枚組になるCD。 四半世紀の間の彼女の進化具合がわかるという作品だ。彼女の特質は、その圧倒的なパワフルな声の素晴らしさだろう。デビュー作では、それに頼り過ぎていて歌の味わいが薄くなっているが、新録音は、スタジオに聴衆を集めて、オープン・マイクで録り直しなしの一発勝負で録音されたというもの、「A Time For Love」等歌に深みが増している。パメラ・ヨーク(p)のトリオに曲によりサックスとトロンボーンが参加する。(高田敬三)


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Laura Campisi DOUBLE MIRROR
 ローラ・カムピシは、イタリアのシシリー出身のシンガー、ソングライター。多くのアメリカ以外の国の出身のジャズ・シンガーが、自分の育った国の文化の伝統を如何に自分の歌に反映させるかに腐心しているが、今は、ニューヨークで活躍している彼女も例外ではないようだ。本アルバムは、彼女が永い事温めてきた企画を実現させた彼女のデビュー作品。全13曲の中7曲は、自身のオリジナルで異文化の中で活躍する自分、アーティストとしての自分と実生活での自分を描く私小説風の作品をイタリアとアメリカの二組のベースとドラムスを主体に曲によりトランペット、サックスも参加するグループで歌う。ファンクなビートに乗って歌う「ラブ・フォー・セール」や彼女独自の解釈で歌詞を付けて歌うマイルスの「ナルディス」など意表を突く面白さがある。ルートは、ジャズだが、少女のような若々しい声でジャンルの垣根を超えたユニークな音楽を聞かせる注目したい歌手だ。(高田敬三)


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リンジー・バッキンガム/クリスティン・マクヴィー」(ワーナーミュージック・ジャパン:WPCR-17838)
 フリートウッド・マックからまさか(?)の二人がデュエットを組んでアルバムを出した。ソロでも「トラブル」(1982年:米9位)のヒットを持つリンジー・バッキンガム(現在67歳)と同じく「恋のハート・ビート」(1984年:米10位)のクリスティン・マクヴィー(同74歳)。全10曲で39分半と昔のアルバムのようにコンパクトな作り。収められている楽曲もシンプルで1970年代後期?1980年代にかけて慣れ親しんだ全盛期のポップな‘マック風’が散りばめられており、リンジーが醸し出す特有の‘浮遊感’も。ミック・フリートウッドやジョン・マクヴィーも参加。スティーヴィー・ニックスの姿がないとはいえ、フリートウッド・マックのニュー・アルバムとしてカウントしても良さそう。(上柴とおる)


Popular ALBUM Review


「ゴスペルビーチ/アナザー・サマー・オブ・ラヴ」(BSMF RECORDS:BSMF-6113)
 ゴスペルビーチと名乗ってはいるが、ゴスペルとは何ら関わりのない音楽を奏でるカリフォルニアの5人組ロック・バンドで2012年にデビュー、今回の新作は2枚目だ。中心人物のブレント・ラドメイカーは1980年代からシャドウランド(ゲフィンから1989年&1990年にアルバム発売)やビーチウッド・スパークスといったバンドで活動して来たが、かつてのオルタナ系フォーク&カントリー・ロックな音楽性をさらに極めたような印象で1曲ごとに心を奪われるほどに楽曲のクォリティーも高く、何よりもメロディー、そしてギターの音色が美しい♪個人的に大好きな1960年代のこの系統のグループにも引けをとらないような魅力さえ感じてしまったほど。(上柴とおる)


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「SABIDURIA /Eddie Palmieri」(AGIPI-3591)
 ラテン・ピアニスト、エディ・パルミエリ80歳。ニューヨーク・ラテンとジャズを融合させたいわゆるサルサの生みの親の一人でもある。その健在ぶりを示す一作と言っていいだろう。今の時代を牽引するパーカッショニストやホーン・プレイヤーに加えて往年のバーナード・パーディ、ロニー・キューバ、トップ・ミュージシャンのマーカス・ミラー、デヴィッド・スピノザと言った豪華な顔ぶれも見える。ニューヨークの香り満載のラテン・アルバムだ。収録曲へ目を移すと、Samba do Suenhoは今や伝説的とも言えるヴィブラフォン奏者カル・ジェイダーの作品。エディより一回り先輩のアーティストへのオマージュとも取れる選曲だ。後の11曲は全て彼のオリジナル作品。60年代から今日まで半世紀以上を歩み続けてきたパルミエリの世界を垣間見ることができる。(三塚 博)


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