2017年4月 

  

Popular ALBUM Review


「AMINATA MOSEKA 〜In Tribute to Abbey Lincoln / Virginia Schenck」 (Airborne Ecstasy 888295522632)
 VAという呼び名で知られるアトランタを中心に活躍するシンガー、ヴァージニア・シェンクの3枚目のアルバム。彼女は、アビー・リンカーンに私淑していて、前2作でも「Music Is the Magic」や「Throw It Away」等を取り上げていたが、ライヴでアビーの歌を歌っている中で、全編アビーの歌を歌うアルバムを思い付いたという。タイトルの「アニナタ・モーセカ」は、アビーがアフリカ・ツアー中に名乗っていたアフリカ名だ。VAは、アビーの歌に深く影響されながらもメッセージ性のある歌を彼女独自のものとして実にうまく表現して安定性のある歌を聞かせる。有名な「Caged Bird」の前にマヤ・アンジェロウの詩を付けたり、アビーの詩「River」をケビ・ウイリアムスのアヴァンギャルドなアルトとフリーなインプロヴィゼーションで歌ったりする大胆な試みもある。伴奏陣のケヴィン・ベールス(p)ロドニー・ジョーダン(b)マーロン・パットン(ds)のトリオも好サポートを見せる。(高田敬三)


Popular CONCERT Review

「スティーヴン・ビショップ」(3月4日 ビルボードライヴ東京)
 スティーヴン・ビショップが8年振りに来日公演を行った。彼は'70〜80年代にかけ「オン・アンド・オン」等のヒットを放っているが、同時に数多くのアーティストに曲を提供したり、映画主題歌を手がけたりしているソングライターでもある。サポート役のキーボード・プレイヤーによるインストゥルメンタル・ナンバーに続いて登場したスティーヴンは、お馴染の「雨の日の恋」からスタート。途中、定番のビリー・ホリデイの真似をしたり、特殊な楽器を使っての「New York In The Fifties」ではジャジーでノスタルジックなサウンドを聞かせたりと、相変わらずの器用さを見せる。歌からこぼれるロマンティシズム、ひょうひょうとしたいでたちとサービス満点のおしゃべり。そこから漂うインティマシーが何よりの持ち味で、まるでリヴィング・ルームで聞いているようなくつろぎ感を与えてくれる。ただ飛行機内で風邪をうつされたとかで、そのせいか、喉の調子はいまひとつ。でも自作の強みもあり、彼はそれを補うようにギターを弾きながらメロディーやリズムをくずして自由にしなやかに歌い上げる。近い内に万全な状態でまたステージを見たいものだ。(滝上よう子)


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