2013年1月 

 
Popular ALBUM Review

「ライヴ・イン・ニューヨーク・シティ/ポール・サイモン」(ユニバーサル・ミュージック:UCCO-3045)(DVD付)
 非常に充実したベスト・アルバムに近いライヴだ。2011年6月6日、NYCのウェブスター・ホールで収録された。リズムが躍動する「ジ・オヴィアス・チャイルド」で始まり、引き締まった中にもリラックス感も感じられる余裕はさすが。『ソー・ビューティフル・オア・ソー・ホワット』のツアーなのでそこから4曲、中心ミュージシャンも同様。また『グレイスランド』発売25周年も念頭に入って5曲。ギター1本の「サウンド・オブ・サイレンス」も大喝采。「恋人と別れる50の方法」ほかも嬉しいところ。流れるような進行も快く、充実した演奏が続くCD2枚は音質もよい。DVDは単純なアングルでステージの様子を撮っているのでやや単調で、CDのほうが聴きごたえがある。(鈴木道子

Popular ALBUM Review


「フォーエバー・エンデバー/ロン・セクスミス」(インペリアル:TECI-24674)
 ディランやエルトン、そしてマイケル・ブーブレなど業界内でも多くのファンを持つ'ミュージシャンズ・ミュージシャン'でもあるカナダ出身のシンガー・ソング・ライター。1995年のデビューから通算13作目になるという新作(日本発売:2/20)は盟友ミッチェル・フルームの制作でアコースティックな感覚でストリングスを配すなどしてやわらかく優しい仕上がり。11曲目「シー・ダズ・マイ・ハート・グッド」は60年代〜70年代に想いを馳せながら書いたというが8曲目「バック・オブ・マイ・ハンド」はイントロからもろ'60年代の'マージー・ビートぶり'を見せるがその後の曲展開はいなたい味を出していた頃のキンクスかと思わせるようなあれで♪ ミッチェルとの共同作業は確信犯的!?
(上柴とおる)


Popular ALBUM Review

「イン・スペース/BMX・バンディッツ」(プロダクション・デシネ:VSCD-9429)
 結成後すでに四半世紀というキャリアを持つグラスゴーのギター・ポップ・バンドの新作。Creationレーベル所属時代の1990年代には日本でもEPIC(ソニー・ミュージック)からあれこれとCDが出ていたがこの5年ぶりという新作は日本ではもっと久しぶりの登場になるのかも!? 初期のメンバーであるジム・マッカロク(元スープ・ドラゴンズ等)や昔仲間のティーンエイジ・ファン・クラブのノーマン・ブレイクなど多くの参加で持ち味のソフトなビート・ロックの魅力が満タン♪ どこか脱力感のある歌唱は昔ながらだが1960年代後期の多彩なポップ・ミュージックのエッセンスを散りばめたキャッチーな楽曲のグレードはグッとアップ。クセになりそう♪(上柴とおる)

Popular ALBUM Review

「プレジャー・アンド・ペイン+サムタイムス・ユー・ウィン/ドクター・フック」(クリンク:CRCD3505)
 1990年の「この素晴らしき世界」(18曲:ベスト盤)の他には日本でCDが出されたという記憶がないアメリカン・ロック・グループだが、今回ようやく帯付きの国内仕様盤として彼らのキャリアを代表する1978年と1979年のヒット・アルバムの2in1がお目見えした。「すてきな娘(むすめ)に出会ったら」「めぐり逢う夜」「愛がいっぱい」「セクシー・アイズ」など当時日本のラジオでも結構かかっていた全米ヒットを含む全21曲。元々カントリーやR&Bなどをベースにする彼らが時流を鑑みてかAOR的な色合いを強めた時期の作品集でスウィートな味付けとぬくもりのあるヴォーカルでコーティングされた楽曲は後々スタンダードになるほどに好評を博した。(上柴とおる)

Popular ALBUM Review

「SHOW GIRLの時間旅行/木の実ナナ」(TOKUMA:TKCA-73838)
 木の実ナナといえば、1970年代の細川俊之とのコンビによる「ショーガール」シリーズをきっかけに、舞台、映画、テレビ等に出演、歌とダンスと演技と三拍子揃った女優として活躍し続けている。いつの間にか時が流れて、今回デビュー50周年記念アルバムがリリースされた。昭和の歌謡ポップスが11曲、どの曲も懐かしく、岩本正樹のアレンジもナナによく合っていて、心地良い。「いいじゃないの幸せならば」「粋な別れ」「アカシアの雨がやむとき」「おまえさん」「お祭りマンボ」「雨に濡れた慕情」「ジェラシー」「ウナ・セラ・ディ東京」「うぬぼれワルツ」「愛燦燦」「居酒屋」、そして外国曲が1曲、ベン・E・キングとザ・ドリフターズでヒットした「ラスト・ダンスは私に」(“SAVE THE LAST DANCE FOR ME”、日本では越路吹雪でヒット)。ナナと五木ひろしのデュエット曲だった「居酒屋」は、ここでは梅沢富美男がつき合って、大人のムード一杯になっている。「お祭りマンボ」は、ショーガール時代を思い起こさせるパンチが利いて、とびきり楽しい。ノスタルジア・ムードに溢れた全12曲で、聴き応え充分の記念アルバムだ。(川上博)

Popular ALBUM Review

「RoseLove ローズラブ」(Light Link Music:LLCL 1010)
 ミュージカル「アニー」(1988) で子役スターとして活躍した柳志乃が、芸能生活30周年を迎えた昨年、RoseLove ローズラブの芸名で大人の魅力たっぷりのアーティストに変身した。そして、ローズラブ・プロジェクトを開始、ここにファースト・アルバムがリリースされた。全11曲の中に、1曲だけ外国曲が入っている。想い出の「アニー」の中の “TOMORROW” (チャールス・ストラウス作曲、マーティ・チャーニン作詞、片桐和子訳詞)、神尾憲一の編曲、RoseLove の歌とタップダンスで聴かせる2012年版はとびきり楽しい。
「TOMORROW」以外の10曲は、作編曲、ピアノ: 神尾憲一。作詞はスミダガワミドリ。ローズラブの歌とタップが入った曲は「Love Bon」「時の鐘が」「hug hug doll」、歌だけの曲が「恋の仕方」、タップだけの曲は「red shoes lesson」「iSoft」「TAP DANCE HERO」「Tonic」。他に「Planetarium」「RoseLove」の演奏曲が入っている。お酒とダンスが大好きなローズラブが、大人ムードを盛り上げる。(川上博)
http://www.lightlink.co.jp/beginners/

Popular BOOK Review

「従軍歌謡慰問団/馬場マコト」(白水社)
 この「従軍歌謡慰問団」は、戦前戦後を通して歌謡曲の作詞家、作曲家、歌手たちが戦争を背景に、どんな歌を歌って来たか、それは日本人にどんな影響を与えたか、馬場マコトが当時の歌謡慰問団の現地を旅しながら綿密な調査から検証したドキュメントである。第一章1932年大ヒットした、藤山一郎と古賀政男の「影を慕いて」から始まる。そして、東海林太郎の「国境の町」「麦と兵隊」や、西条八十の「支那の夜」や、藤山一郎の「英国東洋艦隊壊滅」「豪州進撃の歌」など、玉音放送を聞くまで中国満州東南アジア等を慰問団を組んで歌っていた、歌手や、芸人たち、中には前座歌手の森光子もいた。戦後藤山一郎は「青い山脈」や「長崎の鐘」でヒットし国民栄誉賞まで受けた。しかし軍部に命じられた歌手たちがその時代に反射し、傾斜した様は、戦争の恐ろしさを何処まで意識していたのだろうか。馬場マコトは、現代を見つめそれを検証する。(池野 徹)

Popular CONCERT Review

「ヴァンガード-ジャズ・オーケストラ」 11月16日 ビルボードライブ東京
 秋の来日公演がすっかり定着したニューヨークのトップ・オーケストラが、今年もやってきた。昨年の東日本大震災の直後には現地でベネフィット・コンサートを主催し、1年前の東京公演では楽団と所縁の深いボブ・ブルックマイヤーの訃報を受けて、急遽追悼曲を演奏したことも記憶に新しい。今回の話題は楽団の編曲家で、ヨーロッパを含めて斯界の最重要人物であるジム・マクニーリー(p)が、本楽団で初来日したこと。ブルックマイヤー作曲のバラード「ザ・ファースト・ラヴ・ソング」では、美しいピアノ・ソロを聴かせてくれた。本楽団の前身であるサド・ジョーンズ=メル・ルイス楽団の創立メンバーで最古参のジェリー・ダジオン(as,ss,fl)は、今年80歳とは思えないほどの力強い演奏で収穫。本編最後は代表曲「ザ・グルーヴ・マーチャント」のサックス・ソリで、楽団の伝統を輝かせたのだった。(杉田宏樹)
撮影:Masanori Naruse


Popular CONCERT Review

「ニルス・ラン・ドーキー」 11月21日 ブルーノート東京
 ニルスがトリオを率いて、5年ぶりに東京のステージへ帰ってきた。この間、新録トリオ作を2枚リリースし、生地コペンハーゲンの名店の復活に尽力。80年代に“デンマークの貴公子”と呼ばれたピアニストも、来年には50歳の大台に乗るが、その風貌は頭髪が少し白くなっただけで、ほとんどあの頃のままだ。今回は最新作『Human Behaviour』と同じ、母国の若手ベース&ドラムスのお披露目でもあった。意表を突いてオリジナル・バラードで幕を開けると、「リターン・トゥ・デンマーク」「デュ−ク・ジョーダン・メドレー」で母国への愛情を表明。ギターのトレモロで有名なクラシックの名曲「アルハンブラの思い出」を、そのイメージを失わずに自然体で演奏した場面が収穫。躍動的なメロディの新曲「ラフ・エッジズ」に、不変のメロディ・センスを聴いて嬉しくなった。(杉田宏樹)
撮影:Takuo Sato


Popular CONCERT Review

「ジンジャー・ベイカー・ジャズ・コンフュージョン」 11月22日 コットン・クラブ
 元クリームの伝説的ドラマー、という紹介は永遠に続くことだろうが、たった2年間の活動ばかり大きく語られることが多すぎるのではないか。ジンジャー・ベイカーはまた、ジーン・クルーパの流れを汲み、エルヴィン・ジョーンズを敬愛するジャズ・ピープルでもあり、アフリカン・リズムの探求者である。この日のライヴは、そんな彼の志向が強く現れたものであった。他のメンバーはソニー・ロリンズの弟子で、ジェームズ・ブラウンの音楽監督を務めたこともあるピー・ウィー・エリス(テナー・サックス)、英国ジャズ界の重鎮ジョン・ダンクワースの息子であるアレック・ダンクワース(べース)、現在のジンジャーの右腕といっても過言ではないガーナ出身のAbass Dodoo(パーカッション)。演奏時間は約60分と短めだったが、ジンジャーのオリジナルに加え、セロニアス・モンクの「べムシャ・スイング」等もプレイされた。リーダーの直線的なドラムスとAbassの打楽器がポリリズムを生み出し、それに乗ってエリスが自由奔放にブロウする。ジャズ・ファンにもロック・ファンにもお勧めしたい、風通しの良い音を感じることができた。(原田和典)
写真提供:COTTON CLUB
撮影:米田泰久


Popular CONCERT Review

「℃-uteコンサートツアー2012冬〜神聖なるペンタグラム」 11月24日 渋谷公会堂
 「キュート」と読む(アクセントは平坦に)。2005年に7人組グループとしてデビュー、翌年ひとり増員するが、2009年からは5人で活動している。アイドル・グループ花ざかりの昨今だが、彼女たちの魅力はどんな急造ユニットが束になってもかなわない“同じ釜のメシを喰ってる感”。一糸乱れぬダンスは、まるで10本の手足を持ったひとつの人格がアクションを起こしているかのようであり、各人のソロ・パートはもちろん、メンバー全員によるユニゾンやハーモニーも“磨き抜かれた”という言葉がぴったり。この日のコンサートは、往年のナンバーを新アレンジで吹き込んだCD『②℃-ute神聖なるベストアルバム』からの曲を中心に構成されていたが、「再演につきものの焼き直し的雰囲気」は皆無。完璧さとスリルを兼ね備えたパフォーマンスとチームワークで彼女たちは、見事に過去の自分を乗り越えた。同業アイドルからも羨望の的になっている℃-uteのステージ。ライヴの醍醐味が、ここにある。(原田和典)


Popular CONCERT Review

「水谷川優子」 11月29日 東京文化会館小ホール
 男装の麗人が如き男前な女性チェリスト水谷川優子は、着物をモチーフとした優雅な白いドレスを身にまとっていても、情熱的な赤いドレスに着替えても、凛とした演奏中の姿は、見る者・聴く者全ての心をとらえて離さない。フィンガーボードを縦横無尽にしかも完璧に動き回るフィンガリングは、彼女の音楽に対する考え「ベートーヴェンという作曲家の作品は、遺書よりも重い五線譜に託された物語であり、だから弾き手はそれをきちんと汲み取って形にしなければならない」の現れであり、女性的とも言える余分な響きを一切不要とした演奏は、見事の一言に尽きる。男性的で寡黙な水谷川と対比したピアニスト山本貴志の柔らかなタッチで表現豊かな演奏は、聴覚だけでなく視覚的にも相乗効果を発揮する。この二人により表現されるベートーヴェンは、時に静かに、時に幻想的に、時に荒々しく、時に勇猛果敢にと変幻自在に思うがままに繰り広げられる。目の前の演奏でありながら、音楽の壁を越え、誰も近寄れない世界から聴こえて来る異次元の音楽の様だ。チェロとピアノだけでこれ程の世界を築くとは、やはりこの二人只者ではない。この日は、会場に余り若者を見かけなかったが、クラシックというジャンルに捕われることなく、音楽・演奏そのものを楽しむつもりで、コンサートに足を運んで欲しい。特に、私も含めプログレ・ファンには、違和感なく溶け込める音楽空間である事は間違いない。(上田 和秀)

Popular CONCERT Review

「ザ・チーフタンズ」 11月30日 すみだトリフォニーホール
 ケルト音楽のトップ・スター、ザ・チーフタンズの5年ぶりの来日公演は結成50周年記念ツアーとなるもので、特にこの日は“シンフォニック・ナイトwith新日本フィル”と銘打ち、前半がチーフタンズのステージ、後半が新日本フィルハーモニー交響楽団との本邦初共演という構成。もはやオリジナル・メンバーは3人になってしまったが、リーダー格のパディ・モローニを核とした彼等の音楽はゆるぎないもので、どんなサウンドもチーフタンズのものとして取り込んでしまう。トリーナ・マーシャルの巧みなアイリッシュ・ハープ、カントリー・テイスト満載のギターのジェフ・ホワイト、アリス・マコーマックの美しく澄んだ歌声、タップのような激しいダンスで魅せるピラツキ兄弟。こうしたサポート・メンバー達もそれぞれが達者なパフォーマンスで見せ場を披露。そして何よりもステージ上の誰もが心から楽しんでいる様子が聴衆にも伝わって会場に熱い一体感をもたらす。後半は彼等が担当したテレビ・ドキュメンタリーのサウンドトラックを中心にスケールの大きい詩情豊かなアイリッシュ音楽を演奏。哀愁と素朴、躍動感をたたえたケルト音楽の美しさ、楽しさを存分に味わえた一夜だった。(滝上よう子)
撮影:三浦興一

Popular CONCERT Review

「Daryl Sherman」 12月3日 代官山Tableaux Lounge
 ダリル・シャーマンは、若い頃アーティ・ショウ楽団の最後のバンド・シンガーとして歌っていて、その後14年あまりニューヨークのウォルドーフ・アストリア・ホテルのカクテル・テラスで昔そこに住んでいたコール・ポーターが愛用していたピアノを弾きながら歌っていたニューヨークのナイト・ライフの名物だったジャズ・キャバレー・シンガーだ。ホテルの経営が変わり、自由な時間が出来たので今回、初来日となった。12月から来年2月末まで日曜日を除き毎日、当ラウンジに出演する。初日の3日は、シナトラの「Nice'n Easy」「Witchcraft」から始め、「Getting To Know You」そしてピアノによる「Between The Devil And Deep Blue Sea」等々と各セット約12曲、ブロッサム・ディアリ—を思い出させるような弾き語りの妙技を披露した。彼女は、数えきれない程、多くのレパートリーを持ちスタンダード・ナンバーならリクエストに何でも応えられるという人だ。こんなアーティストを東京で毎晩、気軽に聴けるなんて何と贅沢なことだろうと思った。(高田敬三)

Popular CONCERT Review

「メイシー・グレイ」 12月4日 ビルボードライブ東京
 ソウルからゴスペル、ジャズ、ブルースと圧倒的な歌唱力で聞かせるメイシー・グレイ。最近もスティーヴィー・ワンダーのカヴァー集を出したり、デューク・エリントン楽団との共演でジャズを歌ったりと幅広い活動を続けているが、この日のステージは完全なソウルフル・ナイト。それもメンバーの電飾付きのコスチュームから振り付け、コール&レスポンス・スタイルを伴っての乗せ方まで、完全に作り込まれた伝統的スタイルのライヴだった。メイシーは二人のバック・ヴォーカリストの女性を伴って登場、もはや貫録さえ漂わせて自在な歌声を次々に披露していく。ただ、ややもすると彼女のせっかくのハスキー・ヴォイスがバックの演奏や二人の迫力満点のヴォーカルにとりこまれて立たなくなってしまうことがあったのは残念だった。パッケージ化されたショウだけにメンバーのソロもフィーチャー、それぞれがMCも務めたりと全員が大活躍で、メイシー・グレイ・バンドとしてのまとまりはさすがのもの。会場も大盛り上がりで最後までソウル・エンターテイメントに徹底したショウを繰り広げて楽しませてくれた。(滝上よう子)

Popular CONCERT Review
「Vince Jones」 12月8日 コットン・クラブ(ファースト・ステージ)
 オーストラリアのシンガー、ソングライターでトランペッターのヴィンス・ジョーンズは、1981年に初アルバム「Watch What Happens」を発表して以来コンスタントに作品を発表してきたが、日本での発売は、初期の一枚だけだった。そんな彼の日本での公演が実現したのは嬉しい。静かに登場してマット・マクマホン(p)ベン・ウェイプルス(b)サイモン・バーカー(ds)ジェームス・ミュラー(g)とメンバーを先ず紹介する。ピアノが向かって右、ドラムスが左と通常とは違うセッティングだ。「Just In Time」を腕を後にまわして背筋を伸ばした姿勢でトランペットのように音を伸ばす独特のフレージングで歌う。静かにハミングしながら一曲ごとに説明をいれて進める端正な舞台進行だ。彼はトランぺッター、フリューゲル・ホーン・プレイヤーだが、フリューゲルホーンの演奏も交えて歌うのはこのステージでは「Jettison」、「Nature Of Power」とアンコールで歌った「Hindered On His Way To Heaven」だけだった。彼は、よくオーストラリアのチェット・ベイカーとか云われるが、歌もホーンのプレイもチェット・ベイカー的なものはあまり感じられない。8ビートで歌うブルージーな色合いの「Can't Afford To Live」などは、むしろカート・エリングあたりの歌を思い出させた。自作曲やギル・スコット・へロンの「Winter In America」のような社会的メッセージ性のある歌を含めR&Bと彼の出身地であるスコットランドのケルト系フォーク・ソングの色合いのミックスしたオリジナルリティのある歌唱で全11曲歌う。時間を忘れさせるような密度の高いステージだった。(高田敬三)
写真提供:COTTON CLUB
撮影:米田泰久

Popular CONCERT Review

「島田歌穂&島健 Duo Xmas Special vol.4」 12月15日 青山スパイラルホール
 日頃はミュージカルの舞台で見慣れている島田歌穂と、おしどり夫婦として知られる島健(ピアノ)との恒例のクリスマス・デュオ・コンサートだが、今回は、サブ・タイトルに「あれ? ジャズっぽくなっちゃった!?」とあったので、どんな違った面を聞かせてくれるのか、楽しみにでかけた。エメラルド色のロングドレスで登場した歌穂さんは、華麗なピアノ伴奏に合わせた明るいトークに続いて、「Grown Up Xmas List」を歌い、一気に、二人の楽しい世界を繰り広げた。ウッドベースのコモブチキイチロウも加わってのコール・ポーターのメドレー(I've Got You Under My Skin~Every Time We Say Goodbye~I Get A Kick Out Of You)で会場は盛り上がり、「白い恋人たち」「ヘビーローテーション」「プレイバックパートⅡ」など懐かしい曲も加わり、カジュアルでアット・ホームな雰囲気に満ちていた。観客も終始大いにリラックスして手拍子をとり、アンコールでは勿論「The Christmas Song」(Merry Christmas to You!) が歌われて、一足早いクリスマス気分満載のひと時となった。(本田浩子)

Popular MUSICAL Review

「Chanson de 越路吹雪 ラストダンス」 12月12日 シアタークリエ
 個性的な大女優・歌手として今も日本芸能史に燦然と輝く越路吹雪を主人公にしたミュージカル『ラストダンス』は、楽しく見ごたえのある舞台だった。1950年代から60年代を中心に、隆盛期に入ってくる日本の演劇界の実在の人物像を、出演者6人で演じ分けていく企画は、演出の山田和也のもの。越路役の瀬名じゅん、岩谷時子役の斎藤由貴、石井好子ほかの宇野まり絵、菊田一夫・黛敏郎ほかの柳家花録、越路の夫内藤法美ほかの大澄賢也、越路の恋人で舞台美術家真木小太郎ほかの別所哲也。いずれも芸達者な人たちで、存分に役柄を演じ分けながら歌も上手く、それぞれの持ち味も出して全員が好演。流れるような好きテンポで当時の演劇界をクローズアップしながら、越路と彼女を巡る人間像を描き出して面白かった。(鈴木道子)

Popular INFORMATION

「ベン・フォールズ・ファイヴ」 
 1994年に結成されたピアノ・ロック・トリオ/ベン・フォールズ・ファイヴのオリジナル・メンバーによる来日公演が決定した。勿論メンバーは、ベン・フォールズ(p)、ロバート・スレッジ(b)、ダレン・ジェシー(dr)の3人だ。2000年に、人気のある中惜しまれながら解散しただけに、今回のライヴは当時のファンにとって、嬉しさ一入の物となるだろう。また、これを機会に、新しいファンの獲得と長期の活動を再開して欲しい。(UK)

* 2月16日 昭和女子大学 人見記念講堂
* 2月18日 渋谷公会堂
* 2月20日 広島クラブクアトロ
* 2月21日 名古屋クラブクアトロ
* 2月22日 メルパルクホール大阪
お問い合せ:ウドー音楽事務所 (03)3402-5999
http://udo.jp/

Popular INFORMATION

「JETHRO TULL'S イアン・アンダーソン」
 ロック史上に於ける名作アルバムを何枚も輩出した英国のハード・ロック、プログレッシヴ・ロックの雄ジェスロ・タルのリーダーでありヴォーカリスト兼フルート奏者のイアン・アンダーソンの来日公演が決まった。今回のライヴは、1972年当時世界中が騙された名盤中の名盤『ジェラルドの汚れなき世界』を二部構成で完全再現すると言う。メンバーは、イアン・アンダーソン(vo, flute)、フローリアン・オパーレ(g)、デヴィッド・グッディアー(b)、スコット・ハモンド(ds)、ジョン・オハラ(key)、ライアン・オドネル(vo, stage antics)という強力な布陣だ。これを体験せずに、2013年のロックは語れない。(UK)

* 4月 5日 サンケイホールブリーゼ
* 4月16日 TOKYO DOME CITY HALL
お問い合せ:ウドー音楽事務所 (03)3402-5999
http://udo.jp/

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