2012年8月 

 
Popular ALBUM Review

「Private View+2/スウィング・アウト・シスター」(ヤマハ・ミュージック&ビジュアルス:YMCP-10031)
 CMソングヤTVドラマの主題歌など、日本とは縁の深いイギリスのポップ/ジャズ・グループ、スウィング・アウト・シスターが、アルバム・デビュー25周年記念として新作を発表した。相変わらずお洒落ですっきりとした作りで、ヴェテランらしい味を出している。今回は過去のアルバムから新たに歌いなおした曲が中心で、「ユー・オン・マイ・マインド」はバカラック調をそのまま生かしながら、新たな味付けを加え、「ブレイクアウト」などは、明るいポップ調から、しっとりとしたスロー・バラードにしている。「ノット・ゴナ・チェンジ」も力のこもった佳作。(鈴木道子

Popular ALBUM Review

「ファン・マシーン/レイク・ストリート・ダイヴ」(BSMF:BSMF-6014)
 2011年6月号のこの欄でご紹介済みの全米メジャー・デビュー作(通算3作目)に続く新作は6曲入りのミニ・アルバムながらうち5曲が1960年代〜1980年代楽曲のカヴァー曲♪何でも彼らがライヴでよく演奏しているレパートリーとか。ボストン出身男女二人ずつの4人組でまだ20代と若いのにこの選曲のこなし方の小粋さ。ジャズ、フォーク、カントリーなど多彩な技を合わせ持つ彼らが奏でるホール&オーツの「リッチ・ガール」(レイチェル・プライスの歌唱が黒っぽい♪)やドリフターズの「ディス・マジック・モーメント」、そしてジャクソン・ファイヴ、ポール・マッカートニー&ウィングス、ジョージ・マイケルの楽曲。蛇足ながらふっと20数年前のフェア−グラウンド・アトラクションを思い起こしたけど。是非今度はフルでカヴァー集を♪(上柴とおる)


Popular ALBUM Review


「グッド・トゥ・ビー・ライヴ/パブロ・クルーズ」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル:SICP-3567)
 8月下旬の33年ぶりの来日公演(ブルーノート東京)を前に再結成後2010年のライヴを収録したアルバムが日本でも登場。オリジナル・メンバー3人が在籍するだけに(新編成は新人を加えて4人組)安定感があり安心して没頭出来る仕上がり♪ しかも往年のパワーを彷彿させるように躍動的。ハーモニーも健在だし「アイ・ゴー・トゥ・リオ」(1979:No.46)でのドラム・ソロも元気。「ワッチャ・ゴナ・ドゥ」(1977:No.6)「ラヴ・ウィル・ファインド・ア・ウェイ」(1978:No.6)「クール・ラヴ」(1981:No.13)などなどおなじみのヒット・ナンバーもたっぷりで全14曲。同郷出身のヒューイ・ルイスも無名時代に聴いて刺激を受けたというパブロ〜の第二の青春の幕開けともいえるようでバンド名のロゴ・マークも色褪せていない♪(上柴とおる)


Popular ALBUM Review



「テスト・パターンズ/トミー・ボイス&ボビー・ハート」(ユニバーサル ミュージック:UICY-75201)
「自由になりたい/トミー・ボイス&ボビー・ハート」(ユニバーサル ミュージック:UICY-75202)
「イッツ・オール・ハプニング・オン・ジ・インサイド/トミー・ボイス&ボビー・ハート」(ユニバーサル ミュージック:UICY-75203)
 アメリカの有能なソング・ライター・コンビでもある'ボイス&ハート'のオリジナル・アルバム3枚が紙ジャケット&SHM-CD仕様で新たに登場。世が世ならあのモンキーズのメンバーになっていたかも知れない二人は(オーディションにも参加)結局、曲作りやサポート・ミュージシャン、プロデューサーとして採用され裏方としてモンキーズの立ち上げに大きく貢献した。「モンキーズのテーマ」「恋の終列車」「自由になりたい」「ステッピン・ストーン」「すてきなバレリ」などは彼らの作品だ。モンキーズ関わる以前からそれぞれにシンガー・ソング・ライターとしても活動をしていた二人は1967年に男性ポップ・デュオとしてA&Mからデビューを飾り、1stの「テスト・パターンズ」(1967年)からは「アウト・アンド・アバウト」(No.39)、2ndの「自由になりたい」(1968年)からは「あの娘は今夜。。。」(No.8)、そして3rdの「イッツ・オール・ハプニング・オン・ジ・インサイド」(1968年)からは「アリス・ロング」(No.27)といったヒット曲が飛び出しそれなりの人気と知名度を獲得している。モンキーズのヒントになったビートルズのエッセンスを取り入れたりアメリカン・ポップスの極みを満載しているが、3rdでは時代背景もあってかコンセプト・アルバム風のスタイルをとりサイケデリックなアプローチでローリング・ストーンズの「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」やフォー・トップスの「シャドウズ・オブ・ラヴ」の大胆なカヴァーを聴かせるなど時流を意識した制作者としての気概をも感じさせてくれる。アルバム未収録のシングル曲も多数ボーナスで追加収録♪(上柴とおる)

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「ALFIE/西藤ヒロノブ 」(日本コロムビア:QACK-35030)
 ニューヨークを拠点に活躍する自作自演ジャズ・ギタリスト、西藤ヒロノブは、近年ハワイにはまっていてアイランド・ジャズと称してきたが、この最新作は伊藤八十八をプロデューサーに迎え、リチャード・ボナはじめ実力派ジャズ・プレイヤーを集めてニューヨークでレコーディングされた。有名曲を中心に、ファンク・ジャズのグラント・グリーンのライヴ感覚をヒントにしている。マイルスの「マイルストーン」の引き締まった演奏で快適なスタート。続く「アルフィー」も従来とは違う闊達で生き生きとした音楽を展開している。大震災を意識した曲も多く、「ふるさと」「上を向いて歩こう」は定番すぎ? 彼の音楽の広がりを示しながら、後半が今一つ。アップテンポのファンキーなナンバーが欲しかった。(鈴木道子)

 世界中で活動を続けるジャズ・ギタリスト西藤ヒロノブの2年振り通算5枚目となるアルバム『ALFIE(アルフィー)』が届いた。西藤が提唱していたアイランド・ジャズ色は影を潜め、「マイルストーンズ」、「アルフィー」等スタンダード・ナンバーを中心に、ビートルズの「イン・マイ・ライフ」や「ふるさと」、「上を向いて歩こう」といった日本の名曲にまで挑戦した意欲作だ。西藤の曲にリチャード・ボナが歌詞を付けヴォーカルも披露した「メモリーズ・オブ・ラヴ」等、オリジナル曲も健在である。しかし、何処か中途半端なイメージである。何故ならスタンダードをアレンジ・演奏しギタリストとしての実力を問いたいのか、東日本大震災に対する気持ちが強いのか分からない。徹底してスタンダードにこだわるか、それとも自分のアイランド・ジャズにこだわり、その中に東日本大震災に込めた鎮魂作品を入れるといった内容にするべきではなかっただろうか。演奏も録音も良いだけに、選曲に疑問を感じる作品となった。(上田 和秀)

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初回盤


通常盤

「 PS4U /Tomato n' Pine」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル/初回盤(DVD付):SRCL-8035〜36、通常盤(CD only):SRCL-8037)
 ブライアン・ウィルソンはかつて、ロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」に震え上がるほど大感激し、レコードが擦り切れるまで聴き続けたという。天才ブライアンになぞらえるつもりはないけれど、僕にとってそれに匹敵する作品は、トマトゥンパイン(通称トマパイ)のシングル「なないろ☆ナミダ」であり、それが再録されている当アルバムだ(アルバム・タイトルにある「PS」とは、ポップ・ソングの略)。2010年から発表してきたトラック+新曲で構成された半ベスト・アルバム的なつくりとはいえ、音作りがエヴァーグリーンなので、すべてのナンバーが普遍的かつ新鮮。リズム、コード、メロディ、テンポがこれ以上ないほど絶妙に調和し、躍動している。と書くと「つまり作曲家やスタッフが有能なんだろう」という結論になりそうなものだが、ヴォーカルがまた極上の感触を与えてくれる。こんなに異なる味わいを持ち、しかも魅力的で表情豊かな声の持ち主が、よく3人も集まったものだと驚き、感動するのみ。このところ、クインシー・ジョーンズが少女時代に凝っているという。しかし彼が聴くべきは断然トマパイである。(原田和典)

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「Round Amen Corner: Complete Deram Recordings / Amen Corner」(輸入盤 : RPM / Retro 910)
 90年代にエリック・クラプトンのバンドでギタリストとして活躍した事でも知られているアンディ・フェアウェザー・ロウは、60年代には“エーメン・コーナー”というバンドでリード・ヴォーカルを担当し、そのルックスと歌声でティーンから絶大な人気を誇っていた。このCDはエーメン・コーナーがデラム・レーベルに残した音源が全て収められており、デビュー曲「ジン・ハウス・ブルース」や「傷だらけの世界(The World Of Broken Hearts)」では、20才そこそことは思えない程に成熟したフィーリングを備えていたアンディのハイトーン・ヴォイスが堪能できる。また、当時“アメリカン・ブリード”との競作となったヒット曲「ベンド・ミー・シェイプ・ミー」は、リアルタイマーのファンには懐かしいところだろう。(町井ハジメ)

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「The Complete Warner Bros. & Valiant Singles Collection / The Association」(輸入盤 : NOW SOUND / CRNOW 35D)
 “アソシエイション”は、60年後半に「チェリッシュ」「ウィンディ」をビルボードのトップに送り込み、日本では“ソフトロックのチャンピオン”と称されたバンド。本作はヴァリアントでのデビューシングル(A面はディランの「ワン・トゥー・メニー・モーニングス」のカヴァー)と、黄金時代を築き上げたワーナー時代の全シングルをCD2枚に収録した文句なしの内容。代表曲で聴かれるようなコーラスワークが彼らの最大の持ち味である事に異論の余地は無いが、初ヒット「アロング・カムズ・メアリー」や「シックス・マン・バンド」では時代を色濃く反映したサイケ風なアレンジも楽しめる。(町井ハジメ)

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「SOMEDAY/SUSANNA HOFFS」(輸入盤:BAROQUE FOLK-78253-2)
 マシュー・スウィートとのコラボ盤を2枚出した後、去年秋には8年ぶりにバングルスとしての新作(2011年11月号の当欄でご紹介)をリリースしたと思ったら今度はこの16年ぶりのソロ・アルバム!とは近年何とも精力的なスザンナ。もう53歳なれどキュートな容貌と若々しい歌声は変わらず(もう感動的♪)。バングルス(マニック・マンデー)にレフト・バンクのようなバロック風味を加えたオープニング曲「NOVEMBER SUN」からして期待が高まる全10曲はプロデュースがミッチェル・フルーム。すべてが2分〜3分台のコンパクトな楽曲で彼女が愛する1960年代(後期)の楽曲のニュアンスを湛えてどれもがさわやかな印象で涼しげ。(上柴とおる)

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「Ha'a / Na Palapalai」(輸入盤:Mountain Apple/KTK222)
 フラの世界では定番となったナ・パラパライの最新作。1995年にハワイ島ヒロで結成され、以来ハワイの伝統音楽に新しいエネルギーを注ぎ込んでファンの支持を世界的に広げてきた。ファルセット・ハーモニーが持ち味のグループで、これまで高い評価を受けてきている。そのことはナ・ホク・ハノハノ賞を数多く受賞していることからもうかがい知ることが出来る。本作品では創立メンバーのカプラナケハウ・タムレが抜け、クアナ・トレス・カヘレとイオネア・バーンズのデュオ形式だが、ゲスト・ミュージシャンたちの見事なサポートもあって、ナ・パラパライのエッセンスに、むしろ磨きがかかって魅力的なハワイ・アイランド・サウンドを聞かせてくれる。(三塚 博)

Popular ALBUM Review


「ローリング・ストーンズを聴け!/中山康樹」(集英社インターナショナル)
 マイルス・デイヴィス、ビートルズ、ビーチ・ボーイズ、ボブ・ディラン等の権威として知られる著者が、今年レコード・デビュー50年を迎えるロック界の怪物グループに取り組んだ。まな板に乗せられたのは計50作品。オリジナル・アルバムだけではなく、コンピレーション・アルバムも相当数、含まれている。またロンドン時代の米英で編集が異なるアイテムに関しては英国盤を優先、さらにEP「ファイヴ・バイ・ファイヴ」もしっかり取りあげる等、「そのあたりのストーンズ本とは一線を画す」的ディープなこだわりも感じられる。「転がり続けるロックンロール野郎」とか「キース・リチャーズの不良美学」とか、そういう角度からのストーンズ観にいいかげん飽き飽きしているファンであればあるほど、本著に触れる喜びは大きいことだろう。“ストーンズは「サティスファクション」だけではない。ものすごく奥行きのあるバンドであることを知ってほしかった”という著者の狙いは見事にハマった、と断言したい。『山羊の頭のスープ』の「ウィンター」や、『ア・ビガー・バン』の「ビゲスト・ミステイク」について、ここまで熱く書いたライターがかつていただろうか?(原田和典)

Popular CONCERT Review

「ロバート・グラスパー・エクスペリメント」 6月13日 ビルボードライブ東京
 2月に発表した新作『ブラック・レディオ』が話題を呼ぶグラスパー(p,key)が、レギュラー・バンドを率いて来日。同作はエリカ・バドゥ、レイラ・ハザウェイ等々、全編でブラック/ヒップホップ系歌手を迎えた内容のため、4人編成のエクスペリメントで今回どのようにその世界観を表現するのか、が興味の焦点となった。1曲目はケイシー・ベンジャミン(as)がヴォコーダーで、ジョン・コルトレーンの「ア・ラヴ・シュプリーム」を呪文のように唱えながら、空間をたちまちエレクトリック・スピリチュアル・ジャズの雰囲気に染め上げる。その後もベンジャミンはウェイン・ショーターを想起させるソプラノサックスやショルダー・キーボードで大活躍。リーダーのグラスパーは敢えて目立たず、音楽監督のような佇まい。前回の来日公演に比べて、その役割が飛躍的に増したベンジャミンに、形を変えた新作のエッセンスを聴いた。(杉田宏樹)
撮影:Masanori Naruse


Popular CONCERT Review

「MASAKI and MODEA /STB139スペシャル・コラボ〜シンクロニシティ」 6月21日六本木スイート・ベイジルSTB139
 日本とオーストラリアで活躍するMASAKIは、ナイーヴで清々しいヴァイアリニスト/コンポーザーだが、今回はいつもと様子を変えて登場した。当夜は第1部がMASAKI、第2部がクラシックの女性3人組MODEAというステージ。MASAKIの変貌は、ミュージシャンの組み合わせによるところが大きい。ジャズ、ワールドミュージックはじめ幅広いユニークな音楽性のピアニスト塩入俊哉と、多くの打楽器や笛をそろえた楯直己に支えられ、こじんまりと愛らしくさえある音楽性から踏み出し、多彩でスケールの大きな演奏を繰り広げて魅了した。オープニングの「プレリュード」は土俗的な匂いがただよう。曲目も「7000万年の岩」「カウラ」など含蓄のある曲が中心で、新曲「スパークリング・ウェンズデー」「おしばなとカブトムシ」もダイナミックな表現だった。従来の殻を破った飛躍が印象的で、第1部だけでも十分堪能できた。(鈴木道子)


Popular CONCERT Review

「exist trace /Just Like a Virgin」 6月23日 渋谷O-WEST
 イグジスト・トレイスと呼ぶ。2003年結成の5人組ロック・バンドで、コンセプトは「存在の痕跡」。いわゆるヴィジュアル系ということになるのかもしれないが、曲調は実に多彩で、繊細さと豪快さを豊かに兼ね備えている。2010年にはヨーロッパ7都市で公演し、今年3月にはアメリカ東海岸でも演奏。この日は、ファースト・フル・アルバム『VIRGIN』を携えてのワンマン・ライヴだ。2時間半という長丁場ではあったものの、ステージ構成にメリハリがあり、長いキャリアが反映されたアンサンブルは実に見事(とくにベースとドラムスのコンビネーションが抜群)。「一瞬も飽きさせないぞ。絶対に目を離すなよ」という声が聞こえてきそうなほど、気迫を感じさせる内容だった。もちろん「GINGER」、「VANGUARD」、サッカー“なでしこリーグ”オフィシャルガイドブック2012DVDにも入っている「I feel you」といった代表曲もたっぷり披露された。アンコールのラストは、ヴァイオリン奏者miscをゲストに迎えた「SORA」。深い余韻を残しながら、ライヴは終わりをつげた。(原田和典)


Popular CONCERT Review

「サラ・ガザレク」 7月4日 コットン・クラブ
 2年ぶりとなる来日公演はブロッサム・ディアリーに捧げた新作「花とミツバチ」をひっさげてのもの。1曲目のスタンダード・ナンバー「モア」では軽快な歌声を披露したかと思うと、「ティー・フォー・トゥー」ではしっとりと歌い上げるといった具合に、相変わらず器用に、彼女流に噛み砕いたヴォーカルを聞かせてくれる。そしてそこに漂うのはインティマシー。それも私達を引き寄せるというより、気付くと彼女の歌声が間近にあって親しげに語りかけてくれるといった感じで、歌う楽しさが直に伝わってくる。声は滑らかだし、歌い方もとても素直で自然体だから、一見さらりと歌っているようにみえるかもしれない。だが心地良さだけではなく、そこからは微妙なニュアンスも感じ取れるはずで、確実に詞を読み取り、歌を把握し、自分のものにした上で歌っているからこその味わいがある。来日の度にジャズ・シンガーとして成長した姿を見せてくれるサラ。今回もその期待を裏切らないステージで終始、観客を魅了し続けてくれた。 (滝上よう子)
写真提供:COTTON CLUB
撮影:山路ゆか

Popular CONCERT Review

「アストル・ピアソラ没後20年記念《ブエノスアイレスの四季》」 7月4日 東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル
 タンゴの象徴のように扱われることもあるアストル・ピアソラだが、彼ほどカテゴリーを超えて活躍した人物も少ないだろう。ゲイリー・バートン、ジェリー・マリガン等、ジャズ・ミュージシャンとの交流も盛んだった。この日、編曲・指揮・ピアノで大活躍したパブロ・シーグレルも“ビヨンド・カテゴリー”を実践するひとり。ピアソラ五重奏団には1978年から88年にかけて在籍し、日本のジャズ・フェスティバルに出たこともある。この日は自作「ブエノスアイレス組曲よりアスファルト」のほか、ピアソラ・クラシックスである「リベルタンゴ」、「忘却(オブリヴィオン)」などを第1部で、日本では初演となる「ブエノスアイレスの四季」のシーグレル版を第2部で披露。フランコ・ヒナの、これ以上繊細になりようがないと思えるほど巧みにコントロールされたドラム・プレイにも惚れ惚れさせられた。日本人ミュージシャンとの相性もよく、シーグレルは曲によってアドリブ部分も挿入しながら、彼ならではのピアソラ像を大いにアピールした。(原田和典)

Popular CONCERT Review

「デイヴ・サミュエルズ&ザ・カリビアン・ジャズ・プロジェクト」 7月14日 コットン・クラブ
 ヴィブラフォン奏者、デイヴ・サミュエルズ率いるラテン・ジャズ・バンドが来日した。70年代から本格的な活動を始めた彼が当プロジェクトを始めたのは、スパイロ・ジャイラを脱退した90年代半ばのこと。当初はスティール・ドラムのアンディ・ナレルや、サックスのパキート・デリヴェラもメンバーだった。2003年にはアルバム『ザ・ギャザリング』でグラミー賞にも輝いている。この日はオスカー・フェルドマンのアルト&ソプラノ・サックスをフィーチャーした5人編成でのステージ。ギターやキーボードを省いた編成のためか、4本マレットを駆使したサミュエルズの美しいコード・ワークが冴え渡った。曲目はサミュエルズやフェルドマンの書き下ろしのほか、ディジー・ガレスピーの「チュニジアの夜」等。ときたま使用するマレット・シンセサイザー(木琴の音を出していた)も清涼感を運んだ。(原田和典)
写真提供:COTTON CLUB
撮影:米田泰久

Popular INFORMATION

ザ・デュークス・オブ・セプテンバー・リズム・レヴュー
(ドナルド・フェイゲン/マイケル・マクドナルド/ボズ・スキャッグス)」

 これぞ「AORの奇跡」と呼ぶべきライヴだろう。あのグラミー受賞者ドナルド・フェイゲン(スティーリー・ダン)、マイケル・マクドナルド(元ドゥービー・ブラザーズ)、ボズ・スキャッグスによる夢の共演が決定した。音楽史に燦然と輝くキラ星の如き名盤・名曲の数々を輩出してきた3人が同じステージに立ち、何を演奏し何を歌うのか、想像しただけでも鳥肌ものではないか。時代を超えて多くの人々の心に残る名曲を日本で聴く事が出来るなんて、なんと贅沢なことだろう。この3人をサポートするスティーリー・ダン・バンドも名手を揃え、120%万全の態勢で臨む。このライヴを体感せずに、AORは語れない。 (UK)

* 10月29日 Zepp Nagoya
* 11月 1日 日本武道館
* 11月30日 グランキューブ大阪
お問い合せ:ウドー音楽事務所 (03)3402-5999
http://udo.jp/

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