2012年2月 

 
Popular ALBUM Review

「NOSSO SAMBA TA NA RUA/BETH CARVALHO」(EMI/7307382)輸入盤
 ブラジルの代表的なサンバ歌手、ベッチ・カルヴァーリョの新作は、普段着感覚で気軽にサンバの魅力を味わってほしい、そんなメッセージが伝わってきそうな音作りの好作品だ。40年を超える音楽活動の中で彼女はMPBに多大な貢献し多くの足跡を残してきた。通りの一角であろうか、着飾ることもなく、60人ほどのサンバの担い手たちがベッチを取り囲むようにして興じる様子を捉えた写真が、象徴的だ。タイトル曲「Nosso Samba Ta Na Rua」からシコ・ブアルキの「Minha Historia」まで15曲、のびやかな歌声と安定感のある演奏が魅力だ。ベッチにとっては大先輩の歌手で作曲家のイヴォーニ・ララに捧げた作品でもある。(三塚 博)

Popular ALBUM Review


「I Wish You Love/MAYUMI」(IMPEX RECORDS JAPAN/IMP-J2114)
 福岡を拠点に活動するジャズ歌手MAYUMIのデビュー・アルバム。女性アーティストの進出、活躍は目覚しいものがある。近年とりわけ歌手の分野で、層の厚さを感じさせる作品が充実している。その中に颯爽と登場した逸材が彼女だといってもよいだろう。くせのないハートウォームな歌唱は耳にすっとなじんでくるし、いつまでも印象に残る。とくにバラードに彼女の持ち味を感じさせてくれる。「アイ・ウィッシュ・ユー・ラヴ」「縁は異なもの」「スマイル」などスタンダート・ナンバー10曲を収録。青木弘武(p)、ヤス岡山(b)、井島正雄(ds)からなるピアノ・トリオとの息も実によくあっている。DSD方式による録音はその息づかいを見事に捕らえた。従来のCD音質を超えた迫真性を持っていることは、拙宅の低価格再生機でも聞き取れる。(三塚 博)


Popular ALBUM Review

「レット・イット・ビー・ロバータ/ロバータ・フラック」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル/SICP-3386)
 今年はビートルズ、デビュー50周年に当たり、またロバータ・フラックは「愛は面影の中に」がNo.1ヒットとなって40年になる。その記念すべき年に、ロバータがビートルズを取り上げた。それも大胆なアレンジと斬新なイメージで、ビートルズを浮かび上がらせ、堂々たるものにしている。冒頭「イン・マイ・ライフ」から意表を突く。ちょっとインド風のリフ、サウンド。ギタリストのシャーロット・バーンズのProd./Arr.だ。エレキ・ギターを配し悠々と歌われるジョージ・ハリスン作品「イズント・イット・ア・ピティ」が心に響く。原曲に近い「イエスタデイ」などもいい。いずれも深みと温かみのあるロバータの滑らかな歌唱が素晴らしく、彼女の心豊かな代表作にしている。(鈴木 道子)

 今までビートルズのカヴァー曲は数え切れないほど聴いて来たけど今回はホントにもう驚きまくり! ロバータ8年ぶりの新盤は全15曲(日本盤)ビートルズ楽曲♪(ジョージのソロ作も1曲含む)。「イン・マイ・ライフ」「恋する二人」「恋を抱きしめよう」等のあまりにも大胆なアレンジが施された仕上がりに驚愕するばかりかやビートルズでは地味?な曲だった「オー・ダーリン」で展開されるソウルフルな歌唱とブルージーな作風(とりわけ間奏のギター)には思わず胸が熱くなり(今回この曲が最高♪)「ロバータってこんなにも凄い歌手やったんか!」と認識を新たに。2月10日で75歳というのにこの若々しい歌声、そして愛らしさにも新鮮な感動が。(上柴 とおる)


Popular ALBUM Review

「いのり/冨田晃」(オーマガトキ/OMCA-1148)
 ここには鎮魂と静寂に満ちた「いのり」があふれている。冨田晃は国際的に活動するスティールパン、グラスハープ、津軽三味線、サックスなどのマルチ・プレーヤー。今迄に自身では5枚のアルバムを出しているが、青森県弘前市を活動拠点にしており、今回の大震災被災地をボランティアとして幾度となく訪問する中で、追悼作品の制作を決意した。全編スティールパン、グラスハープの波形をコンピュータ処理したサウンドで構成し、ソフトで暖かく静けさに富んだ音楽が展開される。「不屈の民」(セルヒオ・オルテガ〜ジェフスキー作)が冒頭はじめ3か所の要所要所をしめているが、サミュエル・バーバー、マーラーなどの作品は清楚で心を静め、ボーナスのジョージ・ウィンストンの「あこがれ/愛」で明るさを加えている。(鈴木 道子)

Popular ALBUM Review


「マイ・ハート/ドリス・デイ」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル/SICP-3418)
 トニー・ベネット(85歳)よりも先輩の87歳ドリス・デイが発表した17年ぶりの新盤はビーチ・ボーイズのファン必聴! 息子である名プロデューサーのテリー・メルチャー(2004年逝去)がドリスのTV番組「Doris Day's Best Friends」(1985年)のサントラ用にレコーディングをしていた音源(未発表)を基に(テリーの古くからの良き相方でもあるビーチ・ボーイズのブルース・ジョンストンも曲作りや制作に参加)、ドリスの過去の作品もまじえたもので昨年9月には全英ベスト10入り。何はともあれブルースが書いた名作「ディズニー・ガール」(ビーチ・ボーイズ1971年)や同じくブルース作の「ヘヴン・トゥナイト」の2曲を聴くだけでも価値あり(いづれもブルース&テリーの制作)。が、テリー自身が歌う「ハッピー・エンディング」まで収録とは。。。泣かせるつもり!?(上柴 とおる)

Popular ALBUM Review


「ステージ・ウィスパー/シャルロット・ゲンズブール」(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-14316)
 同世代のベックとの緊密なコラボレーションで作られた2年前のアルバム「IRM」(2010年2月号のレビューで紹介♪)のパート2のようなアルバムかも。「IRM」レコーディング時に未発表に終わった8曲+ボーナス1曲に欧州ツアーでのライヴ音源11曲を加えて全20曲たっぷり。独特の浮遊感を伴うシャルロットの甘く危険?な香りがする“ウィスパー”な歌唱に耳を奪われていると彼女と共に宇宙空間を漂っているような気分になる。一見トンがった風に聴こえる面もあるが実はかなりポップな感覚をベースに音作りが為されており、聴き進むうちに当方は何か温かいものを肌に感じて「これは何とも美しく魅力的なアルバムである」と。ボブ・ディランの「女の如く」もライヴ音源で♪(上柴 とおる)

Popular ALBUM Review


「リンカーン・ブライニー・パーティー/リンカーン・ブライニー」(Muzak Fab/MZCF-1242)
 リンカーン・ブライニーは、数年前に「Foreign Affair(コートに菫を)」というアルバムを発表して、一部のファンの間で評判になった。本作は、彼の久々の第2作目、前半7曲は、ブラジルのマルコ・デ・カルヴァーリョ(g)他を招いての自宅でのパーティーのライヴ、後半6曲は、シアトルのクラブでの彼のアイドルの一人、チェット・ベイカーに捧げるライヴの模様を収めている。両方とも大変リラックスしたセッションの中、彼の控え目でクールな色気も感じさせる歌の魅力が際立っている。(高田 敬三)

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「アナ・マリア・ヨペック」 2011年12月26日 ブルーノート東京
 パット・メセニーとの共演作で一躍その名を世界へ広め、近年は小曽根真とのコラボレーションで日本のファンを拡大中のアナ・マリア・ヨペック(vo)を観た。秋にコンセプトの異なる新作3枚を同時にリリースし、創造性が高まっているタイミングでの来日。「今夜演奏するのは愛の音楽です。愛で包まれますように」と日本語で観客に語りかけながら、メンバーを紹介。母国ポーランドのトリオをバックに全編母国語で歌った。ギターとのデュオで60年代の母国曲を取り上げたり、通常用とエフェクターを加えた2本のマイク使いで個性を発揮。言葉の響きから滲むエキゾチックさや、容姿が醸し出す妖艶さで、独特なアナ・マリアの世界へと誘った。縦笛、パーカッション、スキャットと、マルチな才能を発揮したピアニスト、クシシュトフ・ヘルヂンの助演も特筆したい。(杉田 宏樹)


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「外道vs山口冨士夫」 2011年11月27日 吉祥寺ROCK JOINT GB
 外道と山口冨士夫(元・村八分)のダブルビル・ライヴとは、わくわくさせられる。外道と村八分のジョイント・・・・字面だけでもすごいじゃないか。オープニングは外道が担当。ブルースとリフに根付くサウンドが文句なしに気持ちいい。加入当時は「きめが細かすぎるんじゃないか」といわれていた、そうる透のドラムスも今ではすっかり外道サウンドの一部になっていた。続いて山口冨士夫のバンドが登場。ローリング・ストーンズ「ギミー・シェルター」から村八分、ティアドロップス時代の曲まで縦横無尽に演奏し、忌野清志郎の作詞による「イマジン」も披露された。そしてラストでは両バンド入り乱れたセッションを披露。外道の当たり曲「香り」を山口は一度一緒にセッションしてみたかったのだという。ラストは村八分「逃げろ」と外道「逃げるな」のメドレー。ヒリヒリした、超重量級のロックをとことん味わった。(原田 和典)


Popular CONCERT Review



「ジェフ・テイン・ワッツ」 1月12日 コットンクラブ
 80年代にウィントン・マルサリスのバンドでデビュー、当時は生硬でただ音量が大きいだけという印象を個人的には抱いていたが、近年のワッツは違う。音色のダイナミクス(大小)が格段に増し、ビートそのものがピチピチ跳ねているかのように躍動的なのだ。シンバルの音色の鋭さ、勢いよく響き渡るタム、ここぞというときに繰り出されるバスドラのひと踏み、そのどれもが彼の魅力だ。今回の公演はマーカス・ストリックランド(サックス)、デヴィッド・キコスキー(ピアノ)、ジェームス・ジナス(ベース)とのセッション。つまりロイ・ヘインズの往年のグループからヘインズが抜け、ワッツに入れ替わった形だが、演奏のイニシアティヴはワッツがすべて握る。冒頭でメンバーと曲目を紹介した後、ノンストップで80分近いパフォーマンスを披露。ソリストに挑み、食らいつくようにワッツはドラムスを叩きまくった。(原田 和典)

Popular CONCERT Review

「ももいろクローバーZ〜独占! ももクノ60分 vol.2」 1月7日 ベルサール秋葉原
 近年、最も躍進をとげたグループのひとつが“ももいろクローバーZ”だろう。2010年末に「日本青年館」でライヴを行なった彼女たちは、その1年後に、青年館のおよそ10倍もの収容人数を誇る「さいたまスーパーアリーナ」をソールド・アウトにしてしまった。しかし、ももクロはライヴができれば場所の大小は問わない。根っからのライヴ・ユニットなのだ。というわけで2012年冒頭のギグは秋葉原の収容600人ほどのイベント・スペースで行なわれた。1時間のステージを3回行なう入れ替え制で、僕が見たのはサード・セット。例によって激しく踊り狂いながら生歌で歌いまくる。音程のズレやブレスの乱れもすべて、ライヴならではの興奮に直結する。ファースト、セカンドではバラードも歌われたとのことだが、サード・セットは最小限のMC、アップ・テンポ・ナンバーの連続で疾走。ビ・バップやロカビリーに通じるスピード感に、年頭から酩酊させられた。(原田 和典)

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「ロジャー・ダルトリー PERFORMS THE WHO's TOMMY AND MORE」
 ロック史上最強のライヴ・バンドTHE WHOのフロントマンであるロジャー・ダルトリーの来日公演が決定した。今回の公演の凄い所は、あの歴史的名盤ロック・オペラ『トミー』を完全再現することだ。加えて「恋のマジック・アイ」、「フー・アー・ユー」、「ババ・オライリィ」等ヒット曲の演奏も楽しみだ。いくつになってもパワフルな歌声を聴かせてくれるロジャーに、バンド・メンバーとしてピート・タウンゼントの実弟サイモン・タウンゼント(g)が参加するとなると、ロック・ファン必聴のライヴである。(UK)

* 4月23日、24日 東京国際フォーラムホールA
* 4月27日 神奈川県民ホール
* 4月28日 アルカイックホール
* 4月30日 名古屋市公会堂

お問い合せ:ウドー音楽事務所 (03)3402-5999
http://udo.jp/

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「エクストリーム」
 スーパー・ギタリスト/ヌーノ・ベッテンコートを擁するファンキーなハードロック・バンド/エクストリームの来日公演が決定した。ヌーノ・ベッテンコート(g)、ゲイリー・シェローン(vo)、パット・バッジャー(ds)のオリジナル・メンバー3人とケヴィン・フィグェリド(ds)で、大ヒット曲「モア・ザン・ワーズ」を始め、「ゲット・ザ・ファンク」、「ホール・ハーテッド」を含む1990年の傑作アルバム『ポルノグラフィティ』を完全再現する。エクストリーム・ファンのみならず、ノリの良いロック・ファンは大いに盛り上がろう。(UK)

* 4月16日、17日 東京ドームシティホール
* 4月18日 なんばHatch

お問い合せ:ウドー音楽事務所 (03)3402-5999
http://udo.jp/

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