2011年12月 

 
Popular ALBUM Review

「JPN/Perfume」(徳間ジャパンコミュニケーションズ/TKCA-73735)
 待ちに待った2年4ヶ月ぶりの新作である。単独コンサートも昨年11月3日の東京ドーム公演以来、一度も行なわれていないので、本当に本当に久しぶりの便りという気がする。2010年以降に発売されたシングル曲やカップリング(いくつかはアルバム用に再編集されている)と、新曲がほぼ6対4の割合で収められている。新曲はいずれも新鮮にして充実のひとこと。ここまでメンバーの声がアコースティックにミキシングされたトラックは、メジャー・デビュー以降、初めてなのではないだろうか。童謡調のメロディを3人がかわりがわり歌う「時の針」、80年代初頭のアイドル・ポップスへのオマージュすら感じさせる「心のスポーツ」等を、ライヴで体験するのが待ちきれない。CDを全曲聴き終えた感想はずばり、「やっぱりPerfumeは最高だ」。これに尽きるのだが、もう2年数ヶ月もアルバム・リリースを待たせることはしないでほしい。そして、各メンバーの姿が肉眼で見える規模の会場で数多くの単独ライヴをしてほしい。(原田 和典)

Popular ALBUM Review



「クリスマス/マイケル・ブーブレ」(ワーナー・ミュージック・ジャパン/WPCR-14279)
 「あっ、クリスマス・アルバム」という音から始まる。変に凝ったりせず、軽やかで明るいオーケストラ・サウンドの中から、すっと暖かなバリトンのマイケル・ブーブレの歌声が入ってくる。700万枚以上を売った『クレイジー・ラヴ』に続くこの新作は、彼が究極のクリスマス・アルバムを作りたいという願に叶っている。楽しくさり気ないのがいい。プロデュースはデヴィッド・フォスター、ボブ・ロック、ウンベルト・ガティカ。殆どスタンダード・ナンバーばかりだが、すんなりと新鮮に聴け、ザ・プッピーニ・シスターズをフィーチャーした「ジングル・ベル」が爽やか。自作の「コールド・ディッセンバー・ナイト」も佳作。シャナイア・トウェインとの「ホワイト・クリスマス」だけは手が込んでいる。(鈴木 道子)


Popular ALBUM Review

「ピアノ・マン レガシー・エディション/ビリー・ジョエル」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル/SICP-3144-3145)
 ソロ・デビュー40周年となったビリー・ジョエル。極く初期の名作『ピアノ・マン』が、幻とも呼ばれてファンが長らく待望していた72年のライヴ・ラジオ・コンサートとともに2枚組『レガシー・エディション』として再登場した。当時はイーグルスを初めカントリー・ロックがトレンドだったこともあって、ビリーもカントリー・タッチが多々うかがえる。それと当時の彼の置かれた状況を反映して放浪の歌が多い。いずれも描写力に優れた魅力的な曲がいっぱいだ。
 DISC2のライヴは、フィラデルフィアのFM局WMMRの公開録音を収録している。司会もこなしながら達者なエンターテイナーぶりで、実に若々しい。この中の「キャプテン・ジャック」は自慰とドラッグが出てくる曲で、放送禁止となった局もあったが、キャッチーで軽快な曲として、このライヴ・ヴァージョンは同局からローカル・ヒットし、出世のきっかけとなった。ピアノも存分に弾きまくり、まだ芽の出ぬ頃のビリーながら才能の輝きを見せて、初々しくも颯爽たる姿が楽しめる。(鈴木 道子)


Popular ALBUM Review


「白鷺/深草アキ」(オーマガトキ/OMCA-1146)
 奥行きのある空間を震わせて流れる秦琴の音。秦琴は中国の楽器ではあるが、深草アキのそれは本来の奏法とは全く違う独自のもので、今回は特に古代からの日本人の心に宿る映像を音にした観がある。『白鷺』は再発ではあるが、かつて玉三郎が「鷺娘」を踊る舞台とドッキングして行われた「白鷺四季」を中心にしたライヴ・レコーディングの名盤。白鷺は古来から霊鳥といわれ、神秘化されてきた鳥の姿に寄り添うように描かれた響きは、まず吹きすさぶ極寒に飛翔する「冬」に始まる。「桜の夢」「海を越えて 変奏」の2曲は、深草の歌が入るが、これも渋く深い味わいがある。最後の「千鳥」だけがスタジオ録音。全体に魂の響きあいが感じられて聴きごたえがある。(鈴木 道子)

Popular ALBUM Review


「リッスン・トゥ・ミー:バディ・ホリー/ヴァリアス」(ビクター:VICP-75032)
 生誕75周年♪大御所プロデューサー、ピーター・アッシャー(元ピーター&ゴードン)の声がけに応えてリンゴ・スター、ブライアン・ウィルソン、ジャクソン・ブラウンにジェフ・リン、スティーヴィー・ニックス、クリス・アイザック、ライル・ラヴェット、ナタリー・マーチャントにイメルダ・メイ。。。といった顔ぶれがズラリ勢ぞろい。日本盤は2曲のボーナス付きで全18曲。うちリンダ・ロンシュタット1976年の「ザットル・ビー・ザ・デイ」だけが過去音源(これは当時ピーターが制作!)各自が大先輩である伝説のロックン・ローラーに畏敬の念を込めてそれぞれの持ち味を発揮、ピーターの手腕でアルバム全体が統一感のある仕上がりに♪(上柴 とおる)

Popular ALBUM Review


「ロックパンゴ/ロス・ロンリー・ボーイズ」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル/SICP-3372)
 2012年2月7日「渋谷クアトロ」で開催が決まった日本初公演を前に彼らの新作がようやく日本でもリリースの運びに♪(2012.1/11)。今作もまたすさまじくカッコ良い音を存分に聴かせてくれるロック3兄弟だが時にふっと7曲目「スマイル」のようなメロウなバラードを披露するのが憎いところ。日本盤のボーナス5曲がこれまた興味深い!「イヴィル・ウェイズ」(サンタナ)「ウェル・オール・ライト」(バディ・ホリー、ブラインド・フェイス、サンタナ)「シー・ケイム・イン・スルー・ザ・バスルーム・ウィンドウ」(ビートルズ)「ポーク・サラダ・アニー」(トニー・ジョー・ホワイト、プレスリー)に「ロードハウス・ブルース」(ドアーズ)とツボを押さえまくられてはもうたまらない♪(上柴 とおる)

Popular ALBUM Review


「キャビン・イン・ザ・スカイ/カーリン・クロッグ&ベンクト・ハルべルグ」(スパイス・オブ・ライフ/SOL GZ 0006)
 ノルウェイを代表するジャズ・シンガー、カーリン・クロッグとスウェーデンの伝説的ピアニスト、ベンクト・ハルベルクの1977年録音の「A Song For You」、1982年録音の「Two Of A Kind」に次ぐ三度目の共演。妻の病気の爲に10年近く引退していたベンクトのカムバックを記念する大物二人のデュオ作品。カーリンが「ベンクト程素晴らしい歌伴の出来るピアニストは知らない」と言っているが、バド・パウエルからジェームス・P・ジョンソンまで色々なスタイルのピアノを吸収したヴァーサティリティは、カーリン自身の多才さにも通ずるものが有って渋いスタンダードに彼女の自作曲も2曲加えて12曲でのコラボレーションは、見事と云う他ない。コールマン・ホーキンスの有名なソロのフレーズをスキャットで取り入れた「Just You Just Me」にはニヤリとさせられる。(高田 敬三)

Popular ALBUM Review


「昨日のわたし/ダイアナ・パントン」(MUZAK/MZCF-1241)
 「ムーンライト・セレナーデ」そして最新作のボサ・ノヴァ・アルバム「フェリシダージ〜私が愛したブラジル」で最近内外のヴォーカル・ファンの注目を集めているダイアナ・パントンは、カナダのトロント出身。前記2作の好評で今回出た本CDは、彼女の2004年のデビュー作。レグ・シュワガー(g)とドン・トンプソン(p,b)の伴奏でグレート・アメリカン・ソングブックから彼女が好きだという歌15曲を知的でセンシティヴな解釈で歌う。大変趣味の良い選曲で其々の歌を充分に研究して自分のものにしていることが分かる。これからの活躍を注目して行きたいシンガーだ。(高田 敬三)

Popular ALBUM Review


「I'm a woman, Now -MIKI-/山岡未樹」(IMPEX RECORD JAPAN/IMPJ-2113)
 ジャズ・シンガー山岡未樹のデビュー30周年を記念した最新作は、初録音の際に共演した前田憲男とウインドブレイカーズとの再会セッション。タイトルもデビュー作「I'm a woman」(1981年)から本作「I'm a woman, Now」へ。 “Now”の一言に彼女のこの作品に対する思いが込められているのではなかろうか。内外のトップ・プレイヤーとの共演を通じて成長し続けてきた彼女が30周年という節目に、あらためて自ら前田憲男にレコーディングを依頼したという。本作品ではウインドブレイカーズ、トリオ、カルテットとバックの編成を変えながら彼女の魅力を引き出していく。オープニングの「Just in Time」で聴く者を気持ちよくスイングさせたかと思うと、「My Foolish Heart」あたりからは魔法のようにMIKI Worldへと引き込んでいく。今年の日本ジャズ・ヴォーカル界にとっては大収穫の作品であることは間違いない。5年後10年後、彼女の更なる進化を楽しみにしたい。(三塚 博)

Popular BOOK Review


「伝説のロック・ライヴ名盤50/中山康樹」(講談社文庫)
 ライヴ盤の持つ臨場感、白熱ぶりには言葉にできない魅力がある。「実際に客席で聴いていたときは余り冴えなかったライヴがアルバムとして発売されたら、あら不思議、素晴らしい熱演だったことに気づいて驚いた」という経験のある音楽ファンも多いのではなかろうか。本著はロックおよびその周辺のライヴ盤を50種とりあげ、詳細な紹介を加えた1冊。ライヴ盤で綴るロック史という見方も可能だ。リンゴ・スター加入直後のビートルズを捉えた『ライヴ・アット・スター・クラブ1962』から始まり、ポール・マッカートニーの2009年シェイ・スタジアム公演『グッド・イヴニング・ニューヨーク・シティ』で締めくくられる構成にも、著者の並々ならぬこだわりが感じられる。ニール・ダイアモンドの近作『ホット・オーガスト・ナイトNYC』等、日本では評価の壇上にすら登っていない作品も紹介、読み応えのある論評を加えている。(原田 和典)

Popular CONCERT Review

「拡大と縮小 ライブラリ×三角みづ紀」 11月5日 青山外苑前Z.imagine
 ベーシスト、作曲家の蛯子健太郎が2005年9月に結成した4人組がライブラリだ。“図書館系ジャズ・ユニット”を標榜する通り、「文学をテーマにした作品を演奏する」コンセプトを貫いている。この日は中原中也賞を獲得した詩人・三角みづ紀とのコラボレーションを展開。第1部は三角+井谷享志(パーカッション)とのデュオ、第2部は蛯子、井谷、橋爪亮督(サックス)、飯尾登志(ピアノ)からなるライブラリ全員+三角の即興、そして第3部は蛯子のコンポジション(三角の詩にインスパイアされた「悪事と12人の死人」、「あ いま めまい」を含む)に三角の朗読が絡んだ。CD『ドリーム/ストーリー』のリリースから1年余り、ライブラリのサウンドはさらに幅と奥行きを広げている。ごきげんな4ビートや、いつか聴いたようなメロディとかアドリブなど、どこからも出てこないが、その新鮮さとスリルがジャズなのだ、と僕は断言したい。(原田 和典)


Popular CONCERT Review

「第23回カントリーゴールド」 10月16日 熊本県野外劇場≪ASPECTA≫
 熊本在住のカントリー・シンガー:チャーリー永谷氏が主宰する国際音楽フェスティバル。今年も天気は良かったが、冷たい風がやや強く、衣服の調整が難しい一日だった。今回もホスト・バンド:チャーリー永谷&キャノンボールに加え日本人がリーダーのアーティストが2組(岡山を拠点に活動する女性シンガー:オリーブ、米国アリゾナ州在住のビリー市田率いるジャンクション87)出演。そしてここで特別ゲストとしてアリソン・ブラウン・クォーテットが登場。91年にアリソン・クラウス&ユニオン・ステイションの一員として第3回カントリーゴールドに出演したブラウンは、今年9年ぶりの日本ツアーに際し、ぜひともカントリーゴールドに、という強い希望で急遽友情出演が決定。ブルーグラスにジャズ/フュージョンの要素を融合させた独自の世界は、今回のカントリーゴールドで一種の清涼剤ともなった。来日組はまずジョニー・キャッシュに通じる独特の語り口が印象的なレイ・スコット。続いてはコンウェイ・トゥイッティの生涯を描いたミュージカル"It's Only Make Believe"で娘のキャシー役を演じる等、若き実力派といえるアンバー・ヘイズ。そしてヘッドライナーは、97年にデビュー、ジョージ・ジョーンズはじめ多くのアーティストに提供した好漢ビリー・イェイツ。今年は全体的に渋めで、正調カントリーの良さを伝えてくれるライヴだった。来年も期待したい。(森井 嘉浩)


Popular CONCERT Review

「イヴォンヌ・エリマン」 11月18日 COTTON CLUB
 映画「ジーザス・クライスト・スーパースター」でゴールデングローブ賞主演女優賞にノミネートされ、大ヒット曲「アイ・キャント・ハヴ・ユー」でグラミー賞を受賞した実力派シンガー・ソングライターのイヴォンヌ・エリマンによるソロとして36年振りとなる来日公演は、「ハロー・ストレンジャー」から始まり彼女の代表曲を中心に演奏され、バンドの緩めなセッティングも含め、ハワイ出身の彼女らしい大変リラックスした大人向けの懐かしいものだった。エリック・クラプトン・バンドでの活躍は、彼女の長いキャリアの中で、非常に重要な位置を占めているのだろう。軽いデュエットの「アイ・ショット・ザ・シェリフ」や、「レイダウン・サリー」をアンコールに選曲する所からも窺えた。歌を心から愛してやまないイヴォンヌのライヴを若き女性シンガーには、是非参考にして欲しい。(上田 和秀)

 映画「サタデー・ナイト・フィーヴァー」の挿入歌「イフ・アイ・キャント・ハヴ・ユー」の全米ナンバー・ワン・ヒット('78)で知られるイヴォンヌ、何と30年以上を経ての再来日で、しかも日本でのソロ公演は始めて。勿論、この間もマイ・ペースで活動はしていたようだが、ステージに登場した彼女は空白を全く感じさせない豊かな声量で伸びやかに歌い上げていく。曲目も自分のヒット曲に加え、エリック・クラプトン・ナンバー、「イパネマの娘」等、大半がお馴染みの曲だったが、ギターを弾きながら歌った自作ナンバーも親しみやすい佳曲でいい雰囲気を醸し出していた。そして自らも話し好きと語っていたが、まるで目の前の友達に話しかけるように、1曲終わる毎に子供のことや母親の日本名、飼い猫の話等、実に楽しそうに話しをする。ハワイ出身らしいレイド・バック感のある演奏も一役買っていたが、打ち解けた雰囲気の中、終始くつろいだ気分で楽しめたのは、何よりもそんな彼女の気さくな人柄があってこそだったように思う。(滝上 よう子)

写真提供/COTTON CLUB
撮影/加納亜紀子

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