2011年10月 

 
Popular ALBUM Review

「スーパーへヴィ」(ユニバーサルミュージック/UICA-1060)
 ストーンズ結成以来、初の別バンドを結成したミッ ク・ジャガーが、元ユーリズミックスのディヴ・スチュワートと共同プ ロデュース。UKソウルのジョス・ストーン、ボブ・マーリー7男のダミアン・マーリーとインド映画音楽界の若き巨匠のA.R.ラフマーンという異色キャスティングのユニークなバンドになった。ジャマイカのディヴ・ステュワ—トの家で 「音の理想郷」についてミックと語り合って「世界一複雑なレコーディングだった」と云わしめた熱の入ったセッションだった様だ。全17曲のアルバムの日本盤ボーナス・トラック入り。一言で云えば、ストーンズ・ロックがエスニック・ロックに変身したと言える。ミックのヴォーカルは、まるで多彩なパンチを繰り出すごとく、ストーンズを吹っ切って楽しげに骨太にロックしている。そのサウンドは、ダミアンのレゲエをベースに、ラフマーンのインド風の味付けで、ミックとジョスのヴォーカルが噛み合って、ディヴのギターがサポートして、新しいロック・クオーリティを創りだしている。(池野 徹)

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「プレイ・ザ・ブルース/ウィントン・マリサリス&エリック・クラプトン」(ワーナーミュージック・ジャパン/WPZR-30420~1)
 今年4月上旬、ジャズ・アット・リンカーン・センターのローズ・シアターで収録されたライヴ作品。JALCの芸術監督を務めるウィントン・マルサリスがクレオール・ジャズ・バンドを意識して組織したものだというミュージシャンたちに加えて、クラプトン側からクリス・ステイントンも参加。オープニングアクトを務めただけでなく終盤の2曲にゲスト参加したタジ・マハールを含めると総勢11人でつくり上げた、豊かで味わい深い、そしてルーツへの深い造詣を感じさせる音がたっぷりと詰まっている。取り上げられているのは、W.C.ハンディが作曲や採譜に関わった曲、ルイ・アームストロング、ハウリン・ウルフ、ビッグ・メイシオ、メンフィス・ミニーなど。ニューオリンズ・ジャズを主題にした選曲はクラプトンが担当していて、マルサリスはその博識ぶりにあらためて脱帽したという。その流れのなかではどうしても異質な感じを与えてしまう「レイラ」はメンバーたちの強い希望で取り上げることなったもの。クラプトンは消極的だったそうだが、ニューオリンズ風葬送曲のアレンジが意外なほどいい高価をあげている。今は後悔していないはずだ。二人の交流は03年にアポロ・シアターで行なわれたJALCのためのチャリティ公演がきっかけではじまり、10年秋発表の『クラプトン』にもマルサリスは参加していた。その完成直後に収録された公式インタビューでクラプトンは「次は、ルイ・アームストロングと並んでギターを弾くようなアルバムをつくってみたい」と語っていたのだが、早くもそのアイディアを現実のものとしてしまったわけだ。(大友 博)


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「デュエッツII/トニー・ベネット」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル/SICP-3256〜57
 トニー・ベネットは高齢になってからいよいよ素晴らしさを発揮しているが、これは生誕85年記念で、グラミー3部門受賞の『DUETS:アメリカン・クラシック』につづく第2弾。実力派が大集合で実に見事なアルバムになっている。レディ・ガガの活きのいい「レディ・イズ・ア・トランプ」で颯爽たる幕開け。ダイナ・ワシントンばりのエイミー・ワインハウストの「ボディ・アンド・ソウル」はじめ、アレサ・フランクリンも見事。美声で滑らかなジョッシュ・グローバンとの対比と協調もよく、いずれもトニーのジャズ感覚あふれるうまさと絡みは素晴らしく、ゲストは才能を全開させている。日本版ボーナスの天才少女ジャッキー・エヴァンコも美しい。全19曲。これにDVDが付くが、メイキングのドキュメント。トニーの若手へのアドヴァイスや曲作りなどが、心温まる情景で見られる。(鈴木 道子)


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「ホワット・マターズ・モスト〜バーブラ・ストライサンド・シングス・アラン&マリリン・バーグマン/バーブラ・ストライサンド」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル/SICP3280〜81)
 これぞ大人の作品だ。名作詞家として名高いバーグマン夫妻とバーブラの付き合いは丁度50年。日頃から敬愛している彼らの作品を歌う計画は2年前からのものだったが、過去に51曲をレコーディングしていて、今回の2枚組は、1枚が新録音10曲、もう1枚が既発表10曲からなっている。ルグランの「風のささやき」はアカペラで1節を歌う渋い作りで、主人公の心の葛藤を浮き彫りにする。気持ちよく乗って歌う「ナイス・アンド・イージー」「ザット・フェイス」。全体に華麗さを抑えて詩の内容を汲みあげる作りで、2枚目も「追憶」はじめ佳曲ぞろい。バラードのうまいバーブラならではの醍醐味が溢れている。自らの曲目解説や関係者のエッセイなど豪華なパンフレットも楽しめる。(鈴木 道子)

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「ルーツ・ジョニー・ウィンター」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル/SICP-3259)
 今年4月、67歳にして「奇跡の初来日」をはたし、健在ぶりを示したジョニー・ウィンターの最新作。来日にも同行していた長身のギタリスト、ポール・ネルソン(バークリー出身らしい)がプロデュースを担当し、「ファーザー・オン・アップ・ザ・ロード」や「ダン・サムバディ・ロング」、「ガット・マイ・モジョ・ワーキング」、「ダスト・マイ・ブルーム」などを収めたブルース名曲集に仕上げている。07年クロスロード・ギター・フェスでの共演が強く印象に残っているデレク・トラックスのほか、サニー・ランドレス、ヴィンス・ギル、スーザン・テデスキー、ウォーレン・ヘインズなどがゲスト参加。いずれも特徴的なプレイを提供していて、どうしてもそちらに耳が傾いてしまうが、本人のヴォーカルとギターも驚くほど元気で充実している。(大友 博)

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「ステディ・ラブ/マリア・マルダー」(BSMF REECORDS/BSMF-2240)
 ひゃ〜もう68歳ですか!しかしこの新譜の強力さはどうよ〜。もう圧倒されて目方の軽い私なんぞふっ飛ばされてしまいそうなほど♪ニューオーリンズ録音で現地のキーボード奏者デヴィッド・トーカノウスキーが音楽的な要となってゴキゲンなバンド・サウンドと共にブルース&ソウルなナンバーを堪能させてくれます。マリアの愛娘ジェニー・マルダーやスライド・ギターの名手で後期フリートウッド・マックの一員としても活動(1987-1992)したリック・ヴィトも参加。それにしてもタイトル曲の1960年代後期あたりのサザン・ソウル風の甘さにはのっけからコロリ〜ン♪それにまたこのジャケット(タイトル文字やデザインも含めて)が何ともかいらしい(可愛い)のですよ〜♪(上柴 とおる)

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「メンフィス・モジョ/ルイジアナ・レッド」(BSMF REECORDS/BSMF-2244)
 来年80に手が届くルイジアナ・レッドは、今だに現役で活躍するほんのわずかのデルタ出身のブルースマンだ。 この新作は、ノルウェーのブルースマン、リトル・ヴィクターとの2枚目の共作アルバムで、ノース・ミシシッピーからメンフィス、さらにシカゴへといろんな場所に連れて行ってくれる。この世代のブルースマンにしか出せないプリミティヴなフィーリングと音を持ちながらも、モダンでフレキシブルな表現ができるのもレッドの強み。1980年代初期からドイツに住むレッドとはノルウェーで会ったが、自国のアメリカ以上にヨーロッパで評価されているのはなんとも皮肉な事だ。世界的にもっともっと評価されるべきブルースマンだと思う。(菊田 俊介)

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「グッド・サング/ザ・ソウル・オブ・ジョン・ブラック」(BSMF REECORDS/BSMF-2245 )
 
21世紀のソウルマン、ジョン・ビッガム率いるソウル・オブ・ブラックの2011年発売の最新作。メンフィス・ソウルの殿堂スタックスのサウンドを基盤にしながらも、フィラデルフィア系のスウィート・ソウルがあったり、ロバート・クレイ風のウエストコースト・ブルージン・ソウルがあったり、レゲエ風の曲があったりとアプローチは様々だ。個人的にはアコースティックでスライド・ギターを弾いているのには驚いた。ある意味で20世紀のブラック・ミュージックをひとつの鍋にブチ込んで調理し直したらこうなるのではないか、という印象を受けた。クドすぎずにサラっと聴けるビッガムの声がこういう“ごった煮ソウル”を可能にしているのだろう。ブラック・ミュージックのファンにはお勧めの作品。誰にでも、「あ、この曲好き」って言うのがあるのではないかと思う。(菊田 俊介)

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「夢の貴婦人/レディ・アンテベラム」(EMIミュージック・ジャパン/TOCP-71119)
 2010年発表の第2作(世界デビュー作)「ニード・ユー・ナウ〜いま君を愛してる」が全米初登場第1位、全世界で450万枚を超えるセールスを記録。今年2月発表の第53回グラミー賞では主要2部門含む最多の5部門受賞と、今やカントリーの枠に留まらない人気者となったレディ・A。日米ほぼ同時発売となるこの最新作では、リード・シングルの「ジャスト・ア・キス〜幸せの予感」をはじめ、今まで以上に充実した楽曲が目白押し。もちろん、全米そして世界中の人々を虜にした、彼らの最大の魅力である誰にでも共感できる歌詞、美しいメロディとツイン・ヴォーカル、ハーモニーは健在だ。今作からは果たして何曲のヒットが生まれるか、そして来日の実現は・・・今から楽しみでならない。(森井 嘉浩)

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「レスキュー/クラレンス・クレモンズ」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル/SICP-20300)
「ヒーロー/クラレンス・クレモンズ」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル/SICP-20301)
「ア・ナイト・ウィズ・ミスターC/クラレンス・クレモンズ」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル/SICP-20302)

 今年6月に69歳でこの世を去ったザ・ビッグ・マン、クラレンス・クレモンズ。ブルース・スプリングスティーン/Eストリート・バンドのサックス奏者として知られた。Cの愛称でも親しまれ、ブルースが心より信頼していたミュージシャンだった。そんな彼の追悼企画として1980年代に発表された3枚のアルバムが改めてファンの前に登場した。『レスキュー』は83年作品、そのジャケット・ショットからも伝わってくるかのようなCのソウルフルなサックスが強烈にフィーチャーされ、一部ブルースもサポートした。日本盤ボートラ「サマー・オブ・シグナル・ヒル」はブルース作品。『ヒーロー』はその2年後のアルバム、ブルースのボーン・イン・ザ・USツアー中にファンの前へ・・・。オープニング・ソング「フレンド・オブ・マイン」はジャクソン・ブラウンとのデュオでシングル・カットもされビルボードHOT100で18位を記録した。ナラダ・マイケル・ウォルディン、ブッカ—・T.ジョーンズ他が参加している。『ア・ナイト・ウィズ・ミスターC』は89年リリース。前作に続いてナラダ・マイケル・ウォルディンが参加し、プロデューサーとしてナラダに加えヤン・ハマ—エミリオ・エステファンほかがクレジット。ブルースがライヴで披露していたゲーリー・US・ボンズの「クォーター・トゥ・スリー」、ジュニア・ウォーカー&ザ・オールスターズの「ショット・ガン」、サム・クックの「ツィスティン・ザ・ナイト・アウェイ」といったカヴァー・ソングスも収録されている。(三塚 博)

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「山羊の頭のスープ/ザ・ローリング・ストーンズ」(ユニバーサルミュージック/UIGY-9076)
「エモーショナル・レスキュー/ザ・ローリング・ストーンズ」(ユニバーサルミュージック/UIGY-9077)

 暫しのインターヴァルを経て、ローリング・ストーンズの「SA-CD SHM仕様」が帰ってきた。今回登場したのは73年リリースの『山羊の頭のスープ』と80年リリースの『エモーショナル・レスキュー』の2枚だ。
 仏ネルコートでの共同生活が生み出した傑作『メイン・ストリートのならず者』を経てストーンズが向かったのはジャマイカだった。『山羊の〜』ではある意味前作以上の混沌としたサウンドが捉えられているが、「SA-CD SHM仕様」ではどんよりとした空気感を保ちつつも、何重ものヴェールを剥いだようなリアルさが迫ってくる。ここにはこんな音が、と聴き込んでいればいるほど驚きの連続だ。パンクとディスコという相反する背景を包括した78年の意欲作『サム・ガールズ』を経てストーンズが向かった“四つ打ちロック”の追求、『エモーショナル〜』ではビル・ワイマンの粘っこいベース、チャーリー・ワッツのシャープなハイハットなどリズム隊の際立ったサウンドの強烈体験ができる。実験作とも評されるも、ハイレゾで聴く本作に曲毎のぶれは殆ど感じられないのも興味深い。マスターの持つポテンシャルをありのままに取り込んだ“フラット・トランスファー”によるこの2作、ファンには一生モノだろう。(犬伏 功)

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「恋におちる11の呪文/ス—シ・フルゴール」(ミューザック/MZCE 1237)
 ス—シ・フルゴールは、デンマークのコンテンポラリー・ミュージックのアーティスト。過去に4枚の作品を発表しているが自作の曲を独自のスタイルで歌うものが多く一般受けするようなものではなかった。しかし、最新作は、珍しくオリジナルではなく、スタンダードを中心にヴァン・モリソンの「Moondance」やマンゴ・ジェリーの「In the Summertime」も含めて11曲の恋の歌を歌っている。ピアノ、キーボード、アコーデオン、エレクトロニクスを操り、曲によりトロンボーン2本や、ビッグ・バンドまで参加、ドラマ—のアルド・ロマーノがヴォーカルで参加したりもする。彼女も声の色に変化を持たせたり文字通り、音を楽しんでいる感じの斬新な音作りで聞くほどに面白さが増すという様な作品だ。(高田 敬三)

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「アム・アイ・ブルー/メリッサ・ペース」(AGATE/AGP3506)
 
父親が駐屯したトルコで生まれたメリッサ・ペースは、アメリカで人気のTV映画『Touched By Angel』等に出演した映画女優で、モデル、歌手としても幅広く活躍をしている。これは、彼女の日本初登場となる2003年録音の彼女の初リーダー・アルバム。ファッツ・ワラーの「The Joint Is Jumpin'」から始まり、ナンシー・ウイルソンも歌ったウエス・モンゴメリーの「West Coast Blues」等と意欲的な歌も交えてスタンダード曲を中心に、曲により編成を変えて管楽器もはいる伴奏で歌う。女優なので歌詞の表現が素晴らしい。彼女は、50年代の歌手の雰囲気を感じさせる魅力的な歌手だ。(高田 敬三)

Popular Blu-ray/DVD Review

「ハイド・パーク・コンサート/ザ・ローリング・ストーンズ BDリマスター版」(WOWOW/COXY-1031)
 1969年7月5日、ロック・ファンであれば記憶に残るフリー・コンサートが、50万人の観客を集めて、ロンドン、ハイド・パークで開催された。言わずと知れたストーンズの創始者ブライアン・ジョーンズの死から2日後のことである。その為、急遽故ブライアンの追悼コンサートとなった。この『ハイド・パーク・コンサート』は、その模様を収録した作品だ。確かに、ストーンズの名曲「ストリート・ファイティング・マン」、「サティスファクション」、「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」、「ホンキー・トンク・ウィメン」等を聴くことが出来る上に、加入直後のミック・テイラーを始め、若かりし頃のストーンズの演奏を見ることも出来るが、当時のミックの考えが表現されているインタビューを中心に、ライヴ映像と言うよりも、ドキュメンタリー映画として考えるべき作品なのだろう。ストーンズと言うフィルターを通して、当時の若者の文化や時代そのものを感じ取って欲しい。以前発売されたDVD/特典映像のピッチが間違っていたのだが、このBDの凄い所は、詳細な部分も含め、全て正常にリマスターされている点にある。(上田 和秀)

Popular Blu-ray/DVD Review


「ザ・ローリング・ストーンズ レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー」(メダリオンメディア/ COXY-1032)
 この『レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー』は、1981年9月に始まったストーンズの3年振りとなる全米ツアーの模様を、世界初のブルーレイ化により、大迫力の映像と音声で完全復活させた歴史的ライヴ・フィルムだ。名匠ハル・アシュビー監督の巧みなカメラ・ワークが捉えた、ハイテンションのストーンズと狂わんばかりに熱狂するオーディエンスは、その興奮を時空を超えてリアルに伝えてくれる。勿論、「ダイスをころがせ」、「スタート・ミー・アップ」、「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」、「サティスファクション」等ヒット曲満載のベストなセットリストだ。世界最強のライヴ・バンドとして脂の乗り切ったストーンズのパフォーマンスを全身で体感して欲しい。(上田 和秀)

Popular Blu-ray/DVD Review

「ビート・クラブ Vol.3 1970-1972」(WHDエンタテインメ/IEBP-10081~89)
 ロックが大きく変革していった時代、1965年から72年にかけてドイツで放送された「BEAT CLUB」は映像がしっかり残され、現代では若いロック・フリークのバイブルであり、また往年のファンにとっては大切なメモリーになっている。本作は70年〜72年作品。ELP、イエス、ディープ・パープル、ストーンズ、T-レックス、、キング・クリムゾンはじめ、アメリカからのサンタナ、バーズ、マウンテン、キャンド・ヒート、ブルースのマディ・ウォーターズ・・・、そして本国からはアモン・デュ—ルII。もうたまらなくロックな時代のシーンが次々に登場するDVD。これからリリースされる『Vol.2』『Vol.1』も楽しみだ。(Mike M. Koshitani)

Popular BOOK Review

「マイルス・オン・マイルス/ポール・メイハー&マイケル・ドーア編 中山康樹・監修 中山啓子・訳」(宝島社)
 マイルス・デイヴィス関連書籍は数多く出ているが、彼自身の発言がフィーチャーされた本を読むのは、また格別だ。本著は1957年から亡くなる直前までに行なわれたインタビュー28本をまとめた、これまでありそうでなかった1冊。常に音楽性を変化させ続けたマイルスが、こと音楽に対してはまったくブレなかった男であるということが、数々の発言から浮かび上がってくるのが気持ちいい。ジャズ評論家レナード・フェザーが行なったインタビュー等、ジャズ・ファンには知られた記事もいくつか掲載されているが、大半は初めての邦訳ではないだろうか。1970年9月、ジミ・ヘンドリックスの葬儀に列席したマイルスを追った、アル・アロノヴィッツのルポルタージュ的な記事が、ことさら興味深い。(原田 和典)

Popular BOOK Review

「GSパニック 〜グループサウンズ最終楽章〜 」(シンコー・ミュージック・エンタテイメント)
 タイトルこそ「GSパニック」となっているが、誌面の半分以上がザ・タイガースに関する記事で占められており、実質的には「タイガース本」と言っても良さそう。しかも、現在行なわれている沢田研二のコンサート・ツアー≪沢田研二LIVE 2011-2012≫の初日(9月8日)に発売日を合わせるという徹底ぶり。ツアーにも参加している瞳みのると森本太郎への独占インタビューも収録。文章からは両者の飾らない人柄が伝わってくる。タイガースが発表したシングル盤のジャケットや、今となっては貴重なグッズ、雑誌の表紙などがカラーで多数掲載されているのは圧巻。資料的な価値も高い。ただ後半のGS総論的な部分では、記述に明らかなミスも見受けられる。(町井 ハジメ)

Popular BOOK Review

「オルタモントのローリング・ストーンズ/イ—サン・A・ラッセル著 写真 中江正彦・訳」(K&Bパブリッシャーズ)
 ビートルズやザ・フー、そしてストーンズほか多くのミュージシャンを撮影したフォトグラファーのイ—サン・A・ラッセルは1970年前後、ストーンズを追いかけていた。本作は、そんな彼の69年のストーンズ、ハイド・パークからオルタモントまでのライヴ・ショット、バック・ステージほか未発表も含む150点以上の写真が掲載、といっても写真集ではない。彼自身がメンバーやスタッフのコメントを加えながら書き下ろした一作。ストーンズがロック・バンドとして大きく変革していく重要な時期の証言&記録が纏め上げられている力作だ。288頁中テキストも半分以上・・・。世界最強ロックンロール・バンドのリアルな世界をダイレクトに感じさせる読み応え、見応えのある一作。多くの音楽ファンに味わって欲しい。(Mike M. Koshitani)
http://www.ethanrussell.com/

Popular CONCERT Review

「第二回 てなもんや浪漫バラエティ」 7月16日 浅草木馬亭
 演芸会にこのひとありといわれる名匠・澤田隆治が監修を務める貴重なライヴ・セッションが開催された。出演は順番にタイヘイ夢路(浪曲漫談)、春野恵子(浪曲。昔テレビ番組「電波少年」に出ていた「ケイコ先生」)、浪曲河内音頭 初音会(初音家秀若、初音家石若、初音家歌月)、そして江州音頭の初代 桜川唯丸。タイヘイ夢路は、浪曲と漫才をミックスした「浪漫ショウ」の先駆的グループ“タイヘイトリオ”出身。そのヴォーカル・スタイルは初期の都はるみにも影響を与えたとのことだが、80歳を経ての歌声は深みとコクに溢れ、ぼくは真っ先にカーメン・マクレイを思い出した。初音会は駄洒落の雨嵐の間に歌が入るステージ構成。ギブソン・バードランドを弾きこなす秀若の凛々しさにもしびれたし、石若の「ゴルフわからない節」(笑福亭鶴光「オール・ザット・おもろない」と同じメロディ)が聴けたのもうれしかった。初代唯丸は病み上がりという感じ、恵子は口先でガナっているように聴こえた。(原田 和典)


Popular CONCERT Review

「山口真文」 8月23日 お茶の水・NARU
 13年ぶりの新作『イヴニング』を発表したばかりの山口真文だが、彼ほど長年に渡ってコンスタントな活躍を続けているジャズ・サックス奏者も珍しい。これほどの名手が寡作に甘んじる状況は日本のジャズ界にとって恥ずかしいことだと思う。この日のステージは、山口が最も気に入っているドラマーであるという小松伸之以外、アルバムとメンバーが異なり、西直樹(ピアノ)、川村竜(ベース)が参加。特にベテラン・西の音色の力強さ、イマジネーションの広がりは圧巻で、明らかに山口のサックス・プレイに刺激を与えていた。僕はかねがね彼こそ、日本で最高のテナー・サックス奏者なのではないかと思っているのだが、この日も美しすぎるトーン、モード曲に憎らしいほどピッタリと乗る粋なフレーズの数々で唸らせてくれた。とくにセカンド・セットにおけるオリジナル曲ノンストップ4連発は圧巻。ただ残念だったのは当夜演奏された10数曲のうち、ひとつを除いて皆、アドリブが判で押したようにサックス→ピアノ→ベースの順番だったこと。川村はいい奏者だが、ベース・ソロが少なければ少ないほどジャズは引き締まる。(原田 和典)


Popular CONCERT Review

「ミシェル・カミロ」 8月24日 Billboard Live TOKYO
 ドミニカ共和国出身の世界的なジャズ・ピアニストがミシェル・カミロ。昨年は未発表だったビッグ・バンド音源が作品化され、10月には東京でのクラブ公演も実現し、カミロ本人にとっては音楽家としてのモチベーションが上がっている中での来日となった。来日が恒例化しているカミロは、今回トリオでのブッキングだったが、途中でベーシストの交代がアナウンス。しかし本番のカミロは何の問題もないとばかり、グイグイと演奏を進める。有名曲「テキーラ」ではリピーターと思える観客と、和やかなやり取りを交わして場が盛り上がる。ピアノ独奏で始まった「キャラヴァン」では高速にまで達し、終盤にはテンポを落としてジャジーにアレンジ。1曲ごとに観客へのお辞儀をしながらステージを進めるカミロのマナーに、親日家ぶりがうかがえて好感を抱いた。(杉田 宏樹)
写真:acane

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「TOKYO IDOL FESTIVAL 2011 Eco&Smile」 8月27日 お台場・青梅特設会場
 今年で第2回を迎える「TOKYO IDOL FESTIVAL」の初日に行ってきた。なんでも二日間で57組396人が出演したそうだ。AKB関連、モーニング娘。関連等はラインナップに入っていないので、それを足して考えるなら現在の日本の女性アイドルの総数は軽く700-800人ぐらいには達するということになるのだろうか。野外広場や室内、屋上などいろんな場所で同時にライヴが行なわれるので、すべて体験するのは不可能だが、Dorothy Little Happy、YGA、さくら学院(バトン部も)、私立恵比寿中学、東京女子流などは見ることができた。とくに女子流は野外広場、冷房の利いた室内ホール、ビル屋上と、各出演場所を大いに意識した選曲を行ない、夕焼けが広がる時間に「ゆうやけハナビ」をぶつけてくるあたり、他のアイドルとは「見せる、聴かせる」心構えが違う印象を受けた。トイレや売店の遠さ・少なさには驚いたし(天気が曇っていたからいいものの、カンカン照りだったら死者が出ていたかも)、飲食物をあんな価格設定にした神経も疑うが、日本のガール・ポップス・ファンならどこかで必ず琴線に触れる瞬間があるに違いない。長時間の立ち見に耐える体力が必要だが・・・。(原田 和典)


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「アル・ジャロウ」 9月5日 Billboard Live TOKYO
 東京JAZZ 2011の流れを汲んで、アル・ジャロウがスーパー・バンドでクラブ・ショウを行った。トム・スコット(sax)、ヒューバート・ロウズ(fl)、クラレンス・マクドナルド(p)はじめそうそうたるミュージシャンと並んで、デヴィッド・T.ウォーカーの代役として西藤ヒロノブ(g)が起用された。バンド演奏の「モーニング」に始まり、殆ど全曲がスタンダード・ナンバーだったが、さすがに余裕ある一流のプレイ。アルはレインジの広い独特の個性にファンタスティックな味を漂わせた「マイ・フェヴォリット・シングズ」、ひょうひょうとした乗りの「おいしい水」など。その間にトムやヒューバートのソロに交じって西藤も充分聴かせ、「ヒロノブ サイトー、ワンダフル」とアルも褒める好演だった。アンコールはロックの「CCライダー」。全員の熱演で楽しいステージを終えた。(鈴木 道子)
写真:acane


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「沢田研二 LIVE 2011〜2012」 9月8日 東京国際ホーラムA
 秋から来年早々にかけての沢田研二のジャパン・ツアーになんと瞳みのる、森本太郎、岸部一徳がゲストで参加(というより最初から最後までずっとジョイント)、ザ・タイガースなのだ!「ミスター・ムーンライト」「ドゥ・ユー・ラヴ・ミー」「タイム・イズ・オン・マイ・サイド」でのオープンング、あの時代にタイムスリップ。ザ・タイガースのデビュー曲「僕のマリ—」、そして「モナリザの微笑み」「銀河のロマンス」・・・次々にGS時代に親しんだ名曲が飛び出してくる。ジュリー、ピー、タロー、サリーが一生懸命にステージしている元気なステージング、何年ぶりに味わうのだろう。ジュリーのヴォーカルがとても煌びやか、タローのギターも冴え渡る、サリーのベース・ラインが見事。そして、ピーは40年ぶりとは思えないパワフルなドラミング!リード・ヴォーカルも披露してくれたのだ。こんなにも凄いステージは久しぶり、そして彼らが心から楽しんで演奏しているのがとっても印象深い。ジュリーがリード・ヴォーカルの「花の首飾り」、ここでも大きな感動・・・。1971年1月24日にザ・タイガース解散コンサートを行った日本武道館、ここでの2012年1月24日のステージが本ツアーの最終日となる。(Mike M. Koshitani)
写真:noko


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「ベンチャーズ ジャパン・ツアー2011」9月10日 中野サンプラザホール
 今年のベンチャーズ全国ツアーも各地で盛り上がり、僕ら音楽ファンに大きなパワーを伝授してくれた。ドン・ウィルソン、ジェリー・マギー、リオン・テイラー、ボブ・スポルディングの4人披露してくれたテケテケ・サウンドはまさに芸術!「ウォーク・ドント・ラン」「10番街の殺人」「ハワイ・ファイヴ・オー」「ダイアモンド・ヘッド」「二人の銀座」「雨の御堂筋」「京都慕情」「北国の青い空」といった定番に加え、「ストップ・アクション」「逃亡者」「ドラムス・ア・ゴー・ゴー」「サンタ・クルーズ」といったナンバーも加わり、いつも以上にぐっとマニアックな選曲でファンをよりエキサイトさせてくれたのだ。ジェリーの「ホワッド・アイ・セイ」、ドンの「シ—・クルーズ」ヴォーカル・ナンバーにも大きな拍手だった。2012年は来日50周年・・・。(Mike M. Koshitani) 
写真:吉浜 弘之


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「幻の竪笛 オークラウロ&尺八でJazz Night」 9月10日 大倉集古館
 小湊昭尚(尺八、オークラウロ)、保坂修平(ジャズ・ピアノ、アレンジ)による本イベントは、日本音楽史の一時期に登場したオークラウロの響きをJazzで聴く、という趣旨のものであった。日本音楽史の一時期に登場し、バロン"大倉喜七郎"の死とともに、なかなか聴くことのできなくなったオークラウロの、実際に鳴り響く音を聞くことのできる貴重なものである。小湊は民謡尺八の出身の、ポピュラー・シーンでも多く活躍する尺八奏者で、卓越した技術をもち、Jazzを自在に吹きこなすが、オークラウロの演奏は依頼されて半年。まだ尺八ほどには弾きこなせない部分もあるなかで、尺八とオークラウロの楽器の特性の違いをよくわかるように提示した、非常に秀逸なライヴだった。会場の都合で、多くの観客が演奏者を横から見るステージングだったが、今回はそれが功をそうしていた。楽曲は、聴きなじみのある小品を中心に、オークラウロの音色の特性を生かして演奏できる楽曲を演奏する2名でよく吟味しながら選択したとのことで、保坂のアレンジによる曲、作曲作品もならんだ。オークラウロと尺八のそれぞれのよさが、ひときわ際立つ、そうした選曲だったといえるだろう。なおオークラウロは、尺八の技法をよりいかせるよう、歌口の部分を作り変えて差し替えており、オリジナルのものではなかった。 (伏木 香織)


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「カントリーゴールド2011
 熊本在住のカントリー・シンガー、チャーリー永谷氏が主宰する国際音楽フェスティヴァル。第23回目となる今回は米国より3組(ビリー・イェイツ/写真、レイ・スコット、アンバー・ヘイズ)、国内より3組(チャーリー永谷&キャノンボール、ジャンクション87、オリーヴ&フレンズ)が出演。また今回特別ゲストとして、米国よりアリソン・ブラウン・クォーテットが参加することとなった。(YM)
*10月16日 熊本県野外劇場≪アスペクタ≫
http://www.countrygold.net/


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「ブルース・ギター頂上決戦 菊田俊介 vs ichiro !!
 2010年にデビュー20周年を迎えた菊田俊介と、今年デビュー20年周年を迎えたichiro。これからの日本ブルース界を背負って立つ同世代のふたりのギタリストによる初の全面ブルース・ギター・バトルがついに実現。日本のロック&ブルース・シーンの中心で活躍して来た篠原信彦、鮫島秀樹、ファンキー末吉という鉄壁のサポート・メンバーを迎えてのワンナイト・オンリー・ライヴ。スペシャル・ゲストは?!(HM)
*10月18日(火) 原宿ミュージック・レストラン La Donna 
お問い合わせ:(03)5775-6775
http://www.la-donna.jp/


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「レッツ・スワンプ・ツアー
 カントリーからベンチャーズまで、日本を代表するギタリストの徳武弘文ことDr.Kの還暦記念スワンプ・ツアー!アメリカ南部の音楽として1970年代初頭に注目を集めたそのダウン・トゥ・アースなスワンプ・ミュージックは、ロックの基本をも感じさせる。トニー・ジョー・ホワイト、デラニー&ボニー、レオン・ラッセルらとともにそのスワンプな世界にいたあのマーク・ベノとジェリー・マギー(現ベンチャーズ、エルヴィスのレコーディングにも参加した)がDr.K Bandにスペシャル・ゲストとして参加する。まさに夢の共演だ!(YK)
*10月23日 横浜 サムズアップ
*10月27日 大阪 ジャニス
*10月28日 名古屋 ボトムライン
*10月30日 東京 Mt.Rainier Hall
http://www.toms-cabin.com/DrK2011/


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「ベン・E.キング
 震災復興楽曲として若い世代からも注目を集めている「上を向いて歩こう」(坂本九)は、「SUKIYAKI」としてアメリカでの大ヒットしたことがある。そんな同曲を「スタンド・バイ・ミー」で知られるR&B界の伝説の歌手、ベン・E.キングが日本語レコーディング、11月リリースのニュー・アルバムの『Dear Japan 上を向いて歩こう』でタイトル・ソングとして披露される。そんなベン・E.キングが来日する。50年以上歌い続ける彼のソウルフルな歌声は世代を超えて多くの音楽ファンから注目され続けているのだ・・・。ライド・オン!(MK)
*11月19日 Billboard Live TOKYO 2回公演
お問い合わせ:(03)3405-1133
http://www.billboard-live.com/
*11月21日 Billboard Live OSAKA 2回公演
お問い合わせ:(06)6342-7722
http://www.billboard-live.com/


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「クリス・ボッティ JAPAN TOUR 2011
 まさに音楽はひとつの世界、フィールドを超えたアーティストを迎えてのドラマティックなコンサート・パフォーマンスを今年も実現してくれる。ジャズ・トランペット奏者、クリス・ボッティだ!その華麗なる演奏は多くのファンに愛されている。リサ・フィッシャー(ゲスト・ヴォーカル)、キャロライン・キャンベル(ヴァイオリン)、ビリー・キルソン(ドラム)、ジェフリー・キーザー(ピアノ)、マーク・ホイットフィールド(ギター)、アンディー・エズリン(キーボード)、カリートス・デル・プエルト(ベース)らとのジャパン・ツアー、楽しみだ。(MK)
*11月20日 東京オペラシティ コンサートホール  2公演 (昼 夜)
*11月23日 広島市文化交流会館(旧厚生年金会館)
*11月25日 大阪 ザ・シンフォニーホール
*11月27日 愛知県芸術劇場 大ホール
*11月24日 アクロス福岡シンフォニーホール
http://www.samonpromotion.com/jp/live/cb/


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