2011年7月 

 
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「Man In Motion/Warren Haynes」(Stax/STX-32912-02) *輸入盤
 ディーキー・ベッツのギター・パートナーとしてオールマンズに参加し、バンドの復活に大きく貢献してからすでに20年以上。ガウァメント・ミュールを率いての活動でも高い評価を獲得し、今やジャム・バンド系アーティストのリーダー的存在となっているウォーレンの新作(スタジオ録音のソロ作としては18年ぶりの通算2作目となる)。トレードマークのギターはやや抑え、彼のパワフルなヴォーカルを核に、意外なほどソウルフルな作品に仕上げている。21世紀版サザン・ソウルと呼んでもいいような内容だ。5年前に息を吹き返したスタックスからのリリースというのも嬉しいポイント。(大友 博)

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「ベンチャーズ・イン・ジャパン・ライブ2010/ベンチャーズ」(ポニーキャニオン/MYCV-30588)
 毎年のようにベンチャーズのライヴ・イン・ジャパンを楽しんでいる、1965年以来もう100回は・・・、もちろん昨年9月11日@中野サンプラザホールもしっかり楽しんだ。2011年のジャパン・サマー・ツアーの直前にリリースされた本作はその中野での完全LIVE盤、2枚組だ。ベンチャーズ名作の最新ライヴ・ヴァージョンがきっちり記録されたことはファンには嬉しい。全28曲(メドレーを含めると34楽曲)、素晴らしいテケテケ・サウンドが堪能できるのだ。今年のコンサート観戦前にこのアルバムでしっかり予習をするのだ。(Mike M. Koshitani)


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「ペーパー・エアプレーン/アリソン・クラウス&ユニオン・ステーション」(ユニバーサルミュージック/UCCO-6004)
 1985年にわずか14歳でデビュー、90年代後半からはブルーグラスというジャンルを超越し、全米を代表する人気者にまで成長したアリソン。2007年秋発表のロバート・プラントとの共演作『レイジング・サンド』がグラミー賞最優秀アルバム賞を受賞したことで、日本でも遅ればせながら彼女への注目が集まり始めた。09年に日本盤発売予定とされながらお蔵入りとなった旧作5作も早期に発売していただきたいところだが、それはさておき今作はユニオン・ステーション名義での約7年ぶりの新譜。彼女自身を含めて、名手たちが奏でる旋律をバックに、時にはダン・ティミンスキにヴォーカルを譲りながら、アリソンの声が優しく響き渡る。日本盤はボーナス・トラック1曲追加の全12曲で、SHM-CD仕様。ぜひその高音質のCDで、グラミー賞通算26冠に輝いた、彼女の天使の歌声に癒されていただきたい。(森井 嘉浩)


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「バッド・ガール/デミトリア・テイラー」(Pヴァイン/PCD-93422)
 シカゴ・ブルース・レジェンドのエディー・テイラーを父に持ち、ココ・テイラーの遠縁にあたる、生まれながらにしてのブルース・シンガー、デミトリア・テイラーのデビュー・アルバム。全12曲中10曲で自分もギターで参加させていただいた。「I'm Your Hoochie Coochie Man (Woman)」「All Your Love」「Wang Dang Doodle」など全曲がブルースの王道を行くスタンダードでしめられていて、無駄な装飾のない、素材を生に近い形で出すデルマーク・レーベルらしい作品集に仕上がった。R&Bやソウル、ゴスペルといった黒人女性シンガー達が必ず背負っているバックグラウンドを持たず、混じりけのないストレートなブルースというデミトリアのスタイルが、却って新鮮に感じるのは自分だけではないはずだ。歌のうまいシンガーはたくさんいるけれど、真にブルースに生き、表現しているシンガーは実は限りなく少ない。ココ亡き後、デミトリアとの出会いに感謝しながら、今後さらに彼女が磨かれて輝きを増していくことを期待して見守っていきたいと思う。7月には我らがシャイ・タウン・ハスラ—ズとともに来日公演!(菊田 俊介)

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「ボブ・ディラン・イン・コンサート:ブランダイス・ユニヴァーシティ1963」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル/SICP3157)
 1963年5月10日、マサチューセッツ州ウォルサムにある名門ブランダイス大学で開催されたフォーク・フェスティバルでのライヴ・レコーディングが45年ぶりに発見された。2枚目のアルバム『フリーホイーリン・ボブ・ディラン」が発売される2週間前なので、スターになる直前のディランの貴重なライヴということになる。このCDにはアコースティック・ギターを弾きながら歌った全7曲が収録されているが、「戦争の親玉」などディランのパワーあふれる説得力に観客が圧倒される様子が伝わってくる。『ブートレッグ・シリーズ』によって多くの未発表音源が発売されているディランだが、これほど貴重な音源が存在していたとは奇跡だ。(菅野 ヘッケル)

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デラックス・パッケージ

通常盤

「ノーツ・フロム・サンフランシスコ/ロリー・ギャラガ—」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル/SICP3163〜4=デラックス・パッケージ SICP3165〜6=通常盤)
 1970年代のブルース・ロックを思い出す中で、さかんにターン・テーブルの上にLPをおいたアーティストのひとりがロリー・ギャラガ—。もちろん74年の初来日公演はじっくりと楽しんだ。実にブルースでロックだった!しかし残念なことに95年、45歳という若さでこの世を去った。本作はロリーの未発表のスタジオ・レコーディング&ライヴの音源、ソロ・デビュー40周年を記念してリリース。〈D1〉は、77年12月〜79年1月のサンフランシスコ・レコーディング。お得意のブルージーでパワフルなサウンドをフィーチャーしているが、しっとりと聴かせるバラード「ホイールズ・ウィズイン・ホイールズ」にも大きな感度を覚える。〈D2〉は79年12月のサンシスコ・ライヴ記録。スタジオ以上によりエキサイティングにぐいぐいとおしまくるそのサウンド展開、臨場感あふれるプレイに改めてロリー・ギャラガ—の偉大さを認識させられる・・・。(Mike M. Koshitani)

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UCCO-9988〜9

UCCO-9987


UCCO-9991〜2

UCCO-9990

「ポール・マッカートニー」(ユニバーサルミュージック/UCCO-9988〜9=デラックス・エディション UCCO-9987=スーパー・デラックス・エディション)

「マッカートニーII/ポール・マッカートニ—」(UCCO-9991〜2=デラックス・エディション UCCO-9990=スーパー・デラックス・エディション)

 コンコードの最新リマスターによる≪ポール・マッカートニー・アーカイブコレクション・シリーズ≫として、1970年発表の『McCartney』(邦題『ポール・マッカートニー』)と1980年発表の『McCartne II』(『マッカートニII)が発売された。いずれも通常仕様(1CD)、デラックス・エディション(2CD/3CD)以下DEと略記)、スーパー・デラックス・エディション(2CD+DVD 以下SDEと略)の3つの仕様があり、国内盤として後の2種が限定発売。DEとSDEのプラス2枚のCDの内容は、CD1が原盤通りの曲目のリマスター、CD2/3(“McCartneyII”は収録曲のロング・ヴァージョンが元々存在するため3CD構成となる)がアウトテイク/未発表音源集で、日本盤はSHM-CD仕様になる。SDEにのみ付くDVDにはビデオ・クリップや収録曲のステージ演奏が収められている。「松」に相当するこのSDEはジャケットが大型のハード・カヴァー本形式(全128ページ)で巻末にディスクが収められる他、それぞれのレコーディング時期にリンダ・マッカートニーが撮影したポールの写真集が収録。『McCartney』の場合、LPの見開きジャケットの内側に散りばめられていた写真とほぼ同じなのだが、『レット・イット・ビー』のボックスセットを連想させてなかなか楽しい。また、SDE購入者の特典に高音質楽曲データをダウンロードする鍵(IDナンバー)を刻印したカードがジャケットに収められている。最大の興味はリマスターによる音質の変化だろう。2009年に始まったザ・ビートルズの公式音源(レギュラー・レコーディングアルバム12点+『マジカル・ミステリー・ツアー』)のリマスターでは、モノ/ステレオというバージョン違いが存在することから2009年時点でCDとして初出のものがあり、ステレオ・イメージの修正を初め、大胆な音質向上の処置が見られた。今回もビートルズのリマスター盤同様にアビイ・ロード・スタジオで作業が行われたが、結論を先にいうと、今回の音質変化は一転して慎重かつ緻密である。例えば、『McCartney』に関してアナログLP(国内盤/英国盤)、旧盤CD(CCP7 466112)と連続して聴いたが、ポールがスコットランドの自宅でベーシックトラックを録った「ジャンク」や「シンガロング・ジャンク」「テディ・ボーイ」では旧盤で耳についたアナログテープのヒスノイズを今回もそのまま除去せずに残している。ノイズレベル量もさほど変わっていない。というと、旧盤からあまり変わり映えしないようだが、「元祖・宅録」の歴史的演奏を目前にするような生々しさという点で大きな進境がある。『McCartney』の場合、第一にまず低域の歪みが減って突っ張った硬さがなくなりベースの響きが自然に豊かに伸びていくため、ポールのよく歌うベースの特徴が出ている。「バレンタイン・デイ」や「ママ・ミス・アメリカ」のようなインスト曲でこれは顕著だが、多重で入れたギターの音色から曇りが消えテレキャスターやエピフォン・カジノといったポール愛用楽器の音色の地肌が現れ、彼が制作時に狙った(であろう)演奏と音色のバランスが伝わる。今回のリマスターではピークリミッターの使用も最小限に止められている。こうしたリマスターの特徴は24bit/96kHzでサンプリングしたダウンロード・ヴァージョンをあせてチェックするとより鮮明に聴こえてくるだろう。ダウンロード音質については次号で報告したい。(大橋 伸太郎)

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「ホワッツ・ゴーイン・オン 40周年記念スーパー・デラックス・エディション/マーヴィン・ゲイ」(ユニバーサルミュージック/ UICY-75043)
 
伝説のソウル・シンガー、マーヴィン・ゲイはUS/R&Bチャートに60以上の楽曲を送り込んでいる。13がナンバー・ワン。そんなナンバー・ワン・ソングが1971年の「ホワッツ・ゴーイン・オン」、5週同チャートで1位獲得、ポップス・チャートでも2位を記録した。その代表作をフィーチャーしてのアルバムの40周年記念盤。2 SHM-CD + 1LP(アナログLPとしては初出のデトロイト・ミックス)という豪華パッケージ(ダブル・ゲートフォールド、30cmジャケット)。未発表のヴァージョンや音源も登場、ソウル・マニア必聴作品だ。79年11月のMG日本武道館公演での「ホワッツ・ゴーイン・オン」を想い出す・・・。(Mike M. Koshitani)

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「Clarke Hicks & Nash Years: the Complete Hollies」 (EMI 5099909624221) *輸入盤(UK)
 1960年代後期、日本でも「バス・ストップ」をヒットさせ、68年4月には来日も果たしているThe Hollies。本作は彼らのデビューから、グラハム・ナッシュが脱退するまでの間(63/4〜68/10)に発表された全作品をレコーディング順に6枚のCDに収めたもので、5月に英EMIよりリリースされた。音源のリマスタリング時期がバラバラで音質にムラがある、という点に目をつぶれば、内容的には文句のつけようがない。貴重な未発表ライヴ音源も8曲含まれている。6枚組というヴォリュームの割には格安の値段で出回っており、初心者でも手が出しやすい。わが国でも人気のグループなだけに、ここは国内盤の発売を望みたいところ。(町井 ハジメ)

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「5-10-15-20-25-30 Years of Love/Presidents」(FUEL:302-061-883-2) *輸入盤
 ようやくのCD化。ワシントン出身のR&BトリオがSussexレーベルから放った表題の大ヒット(1970:No.11)は、当時日本発売されずFM番組からエア・チェックした音源を何べんも聴き倒したもの♪(後に輸入盤LPを購入)。デルフォニックス寄りのスウィートな味わいが堪らず萌え萌え♪翌年になって日本盤LPがキングから発売されたが(独自のジャケット:ライナーは八木誠さん♪)、彼らはその後一線からは消えてしまった。この唯一のアルバムを制作した敏腕ヴァン・マッコイの洗練されたポップ・センスが生かされて全曲親しみやすくキャッチーそのもの。フィリー、モータウン、シカゴといったソウルのスタイルを巧みに取り入れながらファルセット・ヴォイスを交えたコーラスで魅せる。R&B部門のみでヒットしたLP未収録曲をボーナス追加♪(上柴 とおる)

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「Color Him Father/The Winstons」(FUEL:302-061-879-2) *輸入盤
 
ようやくのCD化。バックを務めていたインプレッションズに見出されたワシントン出身の6人組がMetromediaレーベルから放ちグラミー賞の最優秀R&B楽曲に輝いた表題曲(1969:No.7)はヴォーカリストのリチャード・スペンサーの自作で、ストリングスを配したミディアム・テンポのポップ・ソウルが心地好く1970年代に入って輸入盤LPを購入するも急ごしらえなのかカヴァー曲も多く、ちょっとクラブ・バンドみたいなあれで値打ちが。。。な気分だったものの今改めて聴くと漂わせる当時の匂いが愛おしくなって来た♪LP未収録のシングル2枚分の4曲をボーナス追加♪第2弾ヒット「Love of The Common People」(No.54)もカヴァーで1967年にウェイロン・ジェニングスやエヴァリー・ブラザースが先行発売し、のち1983年にはポール・ヤングで全英No.1に。(上柴 とおる)

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「トミー/VA」(エアー・メイル・レコーディングス/AIRAC-1621〜2)
 1972年にルー・ライズナーのオード・レコーズよりLP2枚組でリリースされた本作はザ・フーの傑作アルバム『トミー』のオーケストラ版であり、ザ・フーのメンバー全員も加わった関連作品としても非常に重要な1枚。ロッド・スチュワートをはじめとする豪華ゲスト・ヴォーカリストも話題になり全英21位、全米5位の大ヒットを記録している。今回が初CD化というわけではないが、当時グラミー賞アルバム・パッケージ賞を受賞したという素晴らしい装丁が再現されたのはこれが初めて。ロンドン交響楽団と室内合唱団による荘厳かつ気品溢れる素晴らしいサウンドを再現するため、ソニーが開発した高品質で定評のある“Blu-spec CD”が採用されているのも今回の大きなウリだ。その後のあらゆる『トミー』に影響を与えたといって過言ではない初のシンフォニック作である本作、ザ・フーのファンならずとも是非手に取っていただきたい。(犬伏 功)

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「街道筋の着地しないブルース/中川敬(ソウル・フラワー・ユニオン)」(SOUL FLOWER RECORDS/BM tunes/XBCD-6004)
 制作が始まったのは2月、数曲のラフなヴァージョンが出来上がった時に大震災が起きた。中川は1995年の阪神淡路大震災の直後から被災地域でアコースティック・ライヴを何度も行っている。その際に生み出されたのが「満月の夕」だ。3月の大震災後、You Tubeにアップされていた「満月の夕」を見た岩手の人が「この曲を聴いて、地震が来て初めて泣きました〜」とコメントを付けた。それを発見した中川は涙が止まらなかったという。震災直後からの「がんばれ、日本」も悪くないが、まず泣く、という行為から次がある。「満月の夕」はもちろん、書き下ろし曲、セルフ・カヴァー、アイリッシュ・トラッドの「風来恋歌」は秀逸、浅川マキ、チューリップのカヴァーなども収録。これからの復興と原発との「長期戦」には、このアルバムを携えていきたい。(今 拓海)

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「コンプリート・シングルコレクション/キャンディーズ」(ソニー・ミュージック・ダイレクト/MHCL1912)
 4月に亡くなられたスーちゃんこと、田中好子さん追悼のため急遽発売が決定したアルバム。キャンディーズのシングルA面になった18曲が収められている。長年のファンにはジャケットの別ヴァージョン写真が使われているのが嬉しい。「年下の男の子」や「春一番」といった大ヒット曲を懐かしく思う人にもお手軽でお勧めだ。それにしても70年代の歌謡ポップスは素晴らしい。後にスペクトラムとなるMMPの演奏力の高さ、それに劣らずのキャンディーズ3人のコーラス。ソウルフルな「危ない土曜日」「その気にさせないで」は出色もの。これが売れて過去のアルバムが再発になってくれればもっと嬉しいんだけどなぁ。(今 拓海)

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「私のボサノヴァ/カルメン・クエスタ」(ヤマハミュージック&ビジュアルス YMCJ-10010)
 ボサノヴァは必ずしも心地よいもの、というわけではない。ムードだけで歌っているのが結構多く、うまくないのはつっかかってしまう。スペイン出身、NYで活躍中のカルメン・クエスタのボサノヴァ集は、入念に練られただけによく出来ている。彼女はゲッツのギタリストだったチャック・ローブ夫人。2008年にボサノヴァ誕生50周年記念のショウをやった時から、このアルバムをふたりで企画してきたという。大半がジョビンの有名曲。それだけに歌う人も多い中で、真摯な姿勢で気持ちよく歌っているのが印象的だ。「黒いオルフェ」は哀しみより甘美な表現。彼女のオリジナル「ジョビン」も本質を浮き彫りにした佳作だ。今月末に来日する予定。(鈴木 道子)

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「韓琉 愛と哀しみの旋律/ユナン 」(ポニーキャニオン/PCCR-00519)
 韓琉と言うとどうしても熱烈な大ファンが見るドラマや映画というイメージだが、バークレー映画音楽科を卒業し、ピアニスト・コンポーザー兼プロデューサーといった多彩な才能を持つユナンに掛ると多くの方が見ていたドラマの主題歌が、崇高なピアノ・ソロに変貌し、正に午後のティー・タイムに相応しい1枚に仕上がった。ユナンの奏でるピアノは、恐ろしい程に美しく、柔らかいタッチから力強い演奏まで充分に堪能出来、韓流ファンの方もそうでない方も、気持ち良く聴いて頂けるアレンジと演奏はさすがと言える。心が疲れていて、音楽に癒されたい方には、とっておきの作品である。(上田 和秀)

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「サムワン・トゥ・ウォッチ・オーヴァー・ミー/リー・コニッツ&ウォルター・ラング・トリオ」(ポニーキャニオン/MYCJ-30587)
 最後の巨匠とも呼べるリー・コニッツの表現する世界は、実に懐が深く、フリーとも呼べそうな表現から、伝統を踏まえたオーソドキシーなもの、そしてブラジリアン・ミュージックに象徴される楽園音楽まで、千変万化で広範にして深い。そしてなにより80才の大台を超えてからも、数多くの意欲的な作品を次々に発表し続けている辺りも凄い。そんな彼が、今欧州で注目のウォルター・ラング・トリオと、今年の1月に共演したコンサートのライヴ収録盤。彼のアルトは、”クールだが決してコールドでは無い”と言われるが、幾分浮遊気味な独特のエモーションを際立たせる、唯一無比なそのアルトの音色。その魅力はオープニングの、ガーシュインの名曲「サムワン・トゥ・ウォッチ・オーヴァー・ミー」で、直にファンのハートを捉え、曲の終了と同時に自ずと歓声も巻き上がる。(小西 啓一)

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「Don't Disturb This Groove/ Monday Michiru」(キング・コブラ/XOKF-1003)
 MONDAY満ちるは、ジャズの巨匠秋吉敏子の一人娘とことわるまでもなく、日本のクラブ・ジャズのパイオニア的存在のチャーミングな歌手/女優/ソングライター/フルート奏者として熱心なファンに囲まれている。早くも今年ソロ歌手デビー20周年となるが、その区切りという意味合いもあって、このNYC録音の最新盤は珍しくカヴァー集だ。今迄に影響を受けたり愛唱してきた作品を集め、ジャズ、ボサノヴァ、ソウル、レゲエ、ポップなど様々なジャンルを悠々と越えてMONDAY色に染めている。滑らかなボサ調の「Ooo La La La」から大人の雰囲気で始まり、スティーヴィー・ワンダーの「I Can't Help It」では夫アレックス・シピアギンのクールなトランペットもいいアクセント。「As」は力が入っているが、全体に特に山場を設けず、むしろスムーズに聴けて踊れるグルーヴ感が瑞々しい。(鈴木 道子)

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「アイ・ソート・アバウト・ユー/飯田さつき」(IMPEX RECORDS/IMP-3311)
 デビュー4年目になるジャズ・シンガー、飯田さつきの初CD。バックはプロデュースも担当するアトランタで活躍中のピアニスト、宮本貴奈率いるトリオでベースがザック・プライド、ドラムスがマーロン・パットンという顔ぶれで、録音もアトランタで行われた。飯田は1985年生まれの26歳。両親とも音楽関係の仕事に従事する家庭で成長し、14歳のときに後藤芳子に師事。家庭環境、教育環境共に恵まれていたといえるだろう。若いとはいえ修練を積んできたシンガーである。それを実証するのが本作収録の「アイ・ソート・アバウト・ユー」「ブレイム・イット・オン・マイ・ユース」「スカイラーク」「ボディ・アンド・ソウル」などで、若手とは思えない堂々たる選曲だ。こうした曲は半端な歌唱力では手におえない難物だが、彼女はこれを正攻法でせめて聴くものに確かな感動を与える。まず歌詞がよく聴こえてくるのが素晴らしい。一語一語を粗末にしない訓練をしっかり受けたはずである。次に声ができている。小柄だが音域声量ともにジャズ歌唱に十分なものがあり、よくのびる声がスタンダード名曲の物語る内容をのせて心に届けられる。三つ目は妙なクセがないことがあげられるだろう。声が出来ていないと喉に負荷がかかり、ひねくれた発声になるものだが、彼女にはこの弊害がない。幾多の名唱を生んだ名曲群を安心して聴くことができる。あとは表現者としての自身を磨いて歌のスケールを広げていくことだろう。美しい音色とナチュラルなスウィング感に魅力がある宮本貴奈のアトランタ・トリオによるサポートも素晴らしい。(小針 俊郎)

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「デイブレイク/纐纈歩美」(ポニーキャニオン/MYCJ30585)
 ジャズ界は女性アーティスト陣の台頭が衰え知らずだ。激しい競争の嵐の中をあらたな才能がまた一人船出して順風に乗って航行しはじめたようだ。22歳のアルトサックス奏者、纐纈(こうけつ)歩美。昨年7月のデビュー・アルバム『ストラッティン』で大いに注目を集めたが、それから1年も経たずに2作目となる本作『デイブレイク』を発表した。確かな演奏テクニックに裏打ちされ、乾いたような響きから、つややかでのびやかな音色まで、もう何十年も吹いています・・・と言わんばかりの熟達した安定感のあるプレイには思わず脱帽する。「オレオ」「サブコンシャス・リー」など11曲、ハードバピッシュに、そしてクールに55分の演奏タイムは一瞬にして過ぎていくかのようだ。(三塚 博) 

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「UNITY/市原ひかりグループ」(ポニーキャニオン/PCCY30187)
 ジャズ・トランペット奏者市原ひかりの6枚目のアルバム。グループ名義では前作「Move On」に続く2作目。王道を行く彼女の演奏スタイルにいささかの迷いも感じられない。5人編成のグループから醸し出されるドライブ感は新たにジャズを聴き始めたものにとっては「キャッチーでグルーヴ感溢れる」ということになるのだろうし、長年ジャズに親しんできたリスナーにとってはどこか懐かしくもあり安心感もある。収録曲9曲はすべてメンバーのオリジナル曲、うち6曲をリーダーの市原ひかりが提供している。それぞれの楽曲を、決して気負うことなくユニットならではのコンビネーションで丁寧に表現している。(三塚 博)

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「ホワット・イズ?/中村照夫 ライジング・サン」(ポニーキャニオン/PCCY30189)
 ニューヨーク屈指のベーシスト、中村照夫は1960年代半ばに現地で活動を始めた。70年代から80年代にかけてひときわ輝かしい足跡を残し、90年代になるとイギリス・レア・グルーブ・シーンでも注目を集めた。一方でプロデューサーとしての手腕も高く、ミュージシャン仲間からは強い信頼を得ている。これだけの長いキャリアにありながら初のベストというのは意外な気もするのだが、1976年から今日までに発表された自身のアルバムから、自らの手で選んだ10曲に、今年(2011年)録音した新曲「Less is More」を加えた計11曲で構成されている。各トラックのミュージシャンの顔ぶれも豪勢で、中村の強靭なベースプレイに支えられた各メンバーの確かな演奏が絡み合い、高度なアンサンブルとなって響く。しかも聴きやすくて楽しい。ジャズ・ファンならずとも持っておきたい1枚だ。(三塚 博)

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「ベスト・レパトワ/ヨーロピアン・ジャズ・トリオ 」(ポニーキャニオン/MYCJ30589)
 EJTはいままでにも数タイトルのベスト盤を発表してきているが、本作はコンサート・ホールやジャズ・クラブで日本のファンに好評だったナンバーを、自分たちの手で選曲・監修した、いままでとは一味違ったベスト・アルバムだ。クラシック、映画音楽、ポップス、日本のメロディーと、これぞEJTといえるおなじみの26曲を収録した2枚組。ヨーロッパの文化伝統に根ざした彼ら一人ひとりの音楽性から来る響きは、アメリカン・ジャズとは一線を画していることを再確認させてくれる。ジャンルの垣根を越えたレパートリーを軽妙に奏でる姿が、トリオの存在意義を一層際立たせてくれる。(三塚 博)

Popular ALBUM Review

「Perennial/Nancy King」(Kilamanjaro Disques/KD10016) *輸入盤
 ナンシー・キングは、玄人受けする歌手だが、一般的な人気という面ではあまりぱっとしない。本アルバムは、彼女が1978年以来コンビを組んで最近も一緒に活躍しているピアノのスティ—ブ・クリストファーソンと1993年に作ったアルバムだ。ルロイ・ヴィネガー(b)、デイヴ・フリシュバーグ(p)、ラルフ・タウナー(g)、バロック・ヴァイオリンのセルジウ・ルカ等の多彩なゲストを迎え、其々のアーティストと共演する聞きごたえのある内容。ジャズ・ヴォーカル・ファンには、是非、聞いてもらいたい作品。(高田 敬三)

Popular DVD Review

「フェアウェル・ライヴ/ザ・ドゥービー・ブラザーズ」(ヤマハミュージック&ビジュアルス/YMBA-10263)
 1970年代前半、ロック・グループとして注目を集め且つそのファンキーなサウンドでも人気を博したザ・ドゥービー・ブラザーズ。代表作は「リッスン・トゥ・ザ・ミュージック」、そんな同曲で始まるこのDVDは82年のフェアエル・ツアーからカリフォルニア州バークレー/グリーク・シアターでのライヴを完全収録。ディスコでもブレイクした「ロング・トレイン・ランニング」からマイケル・マクドナルド時代のヒット作までが次々に登場。エンディングではトム・ジョンストンもパフォーマンス。マニアはボートラ5曲もチェックなのだ。ライヴ完全収録のCDも同時リリース。(Mike M. Koshitani)

Popular DVD Review

「THE ROOSTERZ / THE CROSS ROAD MEETING at SHINJUKU LOFT」(ルーフトップ LOFT/LIVE-CRUX RTLC-007)
 日本が誇る孤高のロック・バンド、ザ・ルースターズ。その最終形ともいうべき、1988年の解散時のラインナップ、花田裕之(Vo,G)、下山淳(G,Vo)、穴井仁吉(B)、三原重夫(Ds)の4人が、22年ぶりに集結したのは2010年7月7日のことだった。その日、新宿ロフトで行われた花田裕之の生誕祭イベント2日目、彼らに朝本浩文(Key)がサポート・メンバーとして加わる形で、まさに白熱の蒼きロックンロール・パフォーマンスを披露、つめかけたファンを歓喜の渦に巻き込んだのである。本作は、その時のライヴ本編をノーカットで収録したほか、柞山一彦(B)、灘友正幸(D)、さらにサポート・メンバーとして木原龍太郎(Key)が加わった中期メンバーによる当日のライヴ映像もボーナスとして追加。「OH! MY GOD」「PASSENGER」「再現出来ないジグソウ・パズル」などの人気曲が、最高の画像でドキュメントされた様はまさに圧巻の一言に尽きる。なお、初回プレスのみ、特典として88年7月のファイナル・ツアーのパンフレットのレプリカ復刻版つき。(小松崎 健郎)
*当面はLOFT PROJECTの通販ページ( http://loft.shop-pro.jp/ ) およびロックンロール・ジプシーズのライヴ会場のみでの販売。

Popular BOOK Review

「ラテン音楽 名曲名演 ベスト111/竹村淳・著」(アステルパブリッシング)
 30cm盤が全盛だったころLPジャケットには歌詞・解説カードが入っていた。それぞれの曲に原詞・訳詞・曲解説が付され、洋題とともに邦題が併記されていたものだ。それゆえ外国語の歌であっても何を歌っているかぐらいのことは分かったし、曲の解説はその背景を手短に教えてくれるという楽しみがあった。本著は中南米・カリブ海諸国で生まれた111曲を、筆者だけが知っているエピソードや、歌詞の名訳を織り込みながら解説している。「ラテン音楽名曲名演名唱ベスト100」(1999年刊)に、新たに選曲加筆した新版という形をとってはいるのだが、25曲を収録した付録CDがあらたな価値、魅力を付加している。入手の難しい名演・名唱で綴られているのがなんとも嬉しい。解説書が主役でありレコードは脇役、いや準主役といったところか。中南米に関心のある人は音楽ファンといわずとも持っておきたい一冊。(三塚 博)

Popular CONCERT Review



「割礼vs遠藤ミチロウ」 5月8日 吉祥寺・planet K
 なんとも興味深いダブルビルではないか。遠藤ミチロウはギター弾き語りのソロ。ボブ・ディランの曲に泣ける歌詞をつけた「天国の扉」、80年代からのレパートリーである「お母さんいい加減あなたの顔は忘れてしまいました」などの定番のほか、故郷・福島への思いや原発人災への怒りを、ブルース・コードに乗せて歌った。続いて割礼の4人が登場。1983年結成の老舗グループだ。現メンバーは創設者の宍戸幸司のほか、山際英樹、鎌田ひろゆき、松橋道伸。歌のテンポがとにかく遅く、ワン・コーラスが終わるのに相当な時間がかかる。しかしドラムスやギターは歌と同じテンポになったり倍で刻んだりと伸縮自在なので、楽器に耳を傾けていると「トロさ」はそれほど感じられない。むしろ、心地よい酩酊感をもたらしてくれる。しかしあの歌のトロ味には、納豆もオクラもかなわないだろう。松橋のMCも最高だった。(原田 和典)


Popular CONCERT Review

「PYRAMID」 5月11日 Billboard Live TOKYO
 5年ぶりに再始動した邦人フュージョン・ユニット、最新第3弾の発売記念ライヴだ。鳥山雄司(g)+和泉宏隆(key)+神保彰(ds)の3人はバンド仲間だった高校時代からの付き合い。プロの音楽家としてそれぞれの世界で成功を収め、現在は50代初めのベテラン。そんな彼らが≪70年代ジャズ・クロスオーヴァーへのオマージュ≫をテーマに掲げた新作の収録曲を主体としたステージは、多感な10代に吸収した音楽に対して真摯に敬意を表した演奏となった。多くのリスナーがブラジリアン・フュージョンの魅力を知ったアジムス曲、本田雅人(as)の参加でヴァージョン・アップしたデオダート・アレンジ曲と、リアルタイムで1970年代を聴いていたファンには堪らない内容。アンコールでは先頃他界したコーネル・デュプリーへの追悼曲「フーツ」で、ファンの共感を倍増した。(杉田 宏樹)

Popular CONCERT Review

「B→C バッハからコンテンポラリーへ [132] 大矢素子:オンド・マルトノ」 5月17日 東京オペラシティ リサイタル・ホール
 オンド・マルトノを至近距離で見ることができる。まず、これが嬉しかった。この楽器は1920年代に考案されたもので、いくつものアンプを使って鳴らす。電子キーボードの先駆的な存在といっていいだろう。あるときはオーボエ、またあるときはチェロ、そしてまたあるときはテルミンのような、だけど非常に独特の音色を出す。大矢素子はこの楽器の気鋭で、2008年には東京藝術大学メシアン生誕100年記念コンサートで演奏。パリでも活動を続けている。この日はピアノとのデュオ、フランス語の朗読を加えたナンバー、そして師匠、原田節とのオンド・マルトノ・デュオを披露。和音を出せないというオンド・マルトノの特性に逆らうように、トゥッシュ(音色をコントロールする場所)を駆使しながら不可思議なハーモニー(のようなもの)を生み出すトリスタン・ミュライユ作「2台のオンド・マルトノのための《マッハ2,5》」に、とくに引きこまれた。(原田 和典)

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「シェリル・ベンティーン」 5月26日 COTTON CLUB
 本当に素晴らしいパフォーマンスであった。まずはバックを務めるピアノ・トリオ(ピアニストは御主人)のみの演奏から始まったのだけれど、これが最高にスムースで美しい。これだけを2時間聴いていてもティケット代を払う価値はあるだろう。2曲目から登場したシェリルは、緩急の付け方、声のトーンの使い分け、そしてその表現力が半端じゃない。MCまで音楽の一部にしてしまうかのようなその構成はまるで1本のミュージカルでも観ているようだった。そしてどこまでも楽しく明るい気持ちにさせてくれる。折しもその日に友人の訃報が届き、落ち込んでいたのだけれど、良い音楽は人に元気を与えてくれる事を再確認できたLIVEでもあった。Thanx Cheryl !!(山本 恭司)
写真提供:COTTON CLUB 写真:米田泰久

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「ハビエル・コリーナ=アントニオ・セラーノ・プロジェクト」 5月27日 セルバンテス文化センター東京
 スペイン・ジャズのトップ・グループがアジア・ツアーを東京で締めくくった。メンバーはハビエル・コリーナ(ベース)、アントニオ・セラーノ(ハーモニカ)、マルク・ミラルタ(ドラムス)、マリアノ・ディア(ピアノ)。ラテン風にアレンジされた「ソフトリー・アズ・イン・ア・モーニング・サンライズ」、組曲風に盛り上がるショパンの「エチュード」、べネスェーラのリズム・パターンを取り入れたというハビエルのオリジナル等、素材はバラエティに富んでいたが、内容はとにかく熱く、ハードボイルドだった。吹き、吸い、舌を打ちつけ、からだをくねらせながら猛烈なシーツ・オブ・サウンド(音のシーツ)を繰り広げるアントニオ・セラーノを聴くと、「ジャズに適さない楽器はないのだ」ということを改めて思い知らされる。とくにモード系のナンバーにおける渦を巻くような即興は絶品だった。(原田 和典)

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「太陽と月のメロディー:玲里『KISS AND FLY』レコ発ライヴ」 5月30日 
吉祥寺STAR PINE'S CAFE

 5月11日にデビューを果たした玲里のアルバム発売記念ライヴ。これまで弾き語りやデュオ、またはトリオでのライヴが多かったようだが、今回は吉良知彦(g)、難波弘之(key)、松本慎二(b)、楠均(ds)らを従えたバンドでの演奏である。例えプロなれどシチュエーションからして普通ならば力みが入りそうなものだが、スタートから最後までフラットでいながらグイグイと観客を魅了する音を奏でていく。余分な力が入ったり、慌てることもなく、ケルティックからヘヴィ・ロックまでのさまざまなスタイルの楽曲を想いのままに聴かせてみせるその姿に、アルバム以上に音楽家としての力量を感じさせられたのは僕だけではないだろう。ギターとピアノを操りながら、途中にアコースティック・コーナーを混ぜるなどステージングも堂に入ったもので、心地よい時間があっと言う間に過ぎていった。ラストの「HAPPY ORDINARY DAY」には演劇集団キャラメルボックスのサントラにも収録された「THE DOOR INTO SUMMER」も挿入しつつ、この日はデビュー作に収められた14曲すべてを披露。ワンマンでなかったため時間的にいささかの詰め込み感があったが、だからこそさらに大きなスペースで、じっくりとライヴを楽しみたいと思わせる“次”を期待させる内容だった。(山田 順一)
写真:金丸 雅代

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「ベン・フォールズ/ LONELY AVENUE JAPAN TOUR」   6月1日  渋谷C.C.Lemonホール
 ポップ・シーンを代表するピアノマン/ベン・フォールズが選んだこの日のメニューは、前半「ヒロシマ」等代表曲を演奏する通常のライヴを行い、後半はファンからの紙飛行機によるオール・リクエストのペーパー・プレイン・ナイトだ。何でも書かれた曲は、演奏し歌うと言う離れ業を聴かせてくれた。まぁ、そこはファンも心得たもので、やはり「アーミー」等ヒット曲が中心になるのだが、中には映画『明日に向かって撃て』の主題歌「雨に濡れても」なんて懐かしい様な嬉しい様なリクエストもあり、多くのファンを楽しませてくれた。それにしても、ベン・フォールズ本人は良いとしても、バックのメンバーにとってこの企画は大変そうだ。(上田 和秀)
写真: Michael Wilson

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「女性シンガー/ソングライターLIVE〜月が輝くように VOL.2」 6月6日 初台THE DOORS
 橋本美香、玲里、香蓮、小川さやかという4人が揃い、まるで月明かりのように、うっすらと、だが、とても美しい一夜だった。4人ともそれぞれに個性が輝いていたが、今回は玲里と香蓮については残念ながら割愛させていただく。筆者が気に入ったのは、まずは最初に出てきた小川さやか。ピアノを弾きながら声量のある美しい歌声を披露。セクシーな雰囲気を持つ歌詞が響き渡る。特に「濡れた沈黙」という曲はかなり官能的な言葉が続き、妖艶なヴォーカルの魅力をかなり押し上げていた。また、あの筒見京平氏から「これで絶筆だ」と、曲を貰い受けた「アイズ」「Be Strong」にも小川本人による詞を付け、見事に完成させていた。まだ正式なレコーディング作品は作っていないが、近い将来を楽しみにさせてくれる内容だった。
 トリをとった橋本美香はサポートに頭脳警察のギタリスト・菊池琢己を配し、ギターを立ち姿で演奏。4月にリリースしたアルバム『グレートフル・デッドを聴きながら』からの曲を中心に唄った。震災後に急遽書き下ろした「えらい人」では「原発はいらない!」と、強くメッセージ性を込めたかと思えば、アルバムからの「沈丁花の詩」では、伸びのいい声で高い叙情性を発揮、スタジオ・ヴァージョンよりも曲の輪郭が際立っており、ライヴ・レコーディングされるのが待ち遠しい。橋本は、再評価され、人気が高まってきている制服向上委員会の時代から何度も見てきたが、その成長ぶりは素晴らしい。ステージで醸し出す雰囲気から、このまま伸びていけば、ジョニ・ミッチェル並みのシンガー/ソングライターに育つと思うのは筆者だけではないだろう。
 最後は出演者全員そろっての「歌わずにはいられない」。この女性シンガー/ソングライターLIVEは不定期開催だというが、いい企画だ。もう、次回が楽しみでしかたがない。(今 拓海) *写真も筆者

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「メリサ・マンチェスター」  6月7日  Billboard Live TOKYO
 リリースされた当時、毎日のように聞いていた愛聴盤がメリサの『幸せの日々』。そこからの「ハッピー・エンディング」で今回のライヴはスタートした。昔と変わらない豊かな声量と確かな歌唱力。ピアノを弾きながら軽快に歌うその姿にノスタルジーも加わって思わずジンとなる。バックは曲によってキーボードやギター等を担当するひとりのみで、それに時々女性バック・ヴォーカルが加わるだけの最少単位の編成だったが、音の薄さを全く感じさせなかったのもメリサの力量の成せる技だろう。「ミッドナイト・ブルー」「気になるふたり」といったヒット曲から、ソングライターとしてのヒット作、好アレンジで聴かせたカヴァーまで、シンガー、そしてソングライターとしての彼女の持ち味を余すところなく伝えてくれたステージに聴衆も熱い拍手で応えていた。(滝上 よう子)
写真:acane

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「ナイト・レンジャー JAPAN TOUR 2011」  6月14日  渋谷C.C.Lemonホール
 アメリカン・ハード・ロックの雄ナイト・レンジャーのライヴは、ハード・ロック・バンドの王道を行く、スピード感溢れる力強いものだった。新メンバーにジョエル・ホークストラを迎え、彼らのトレードマークであるツイン・リード・ギター&ツイン・リード・ヴォーカルも健在だ。特に、ブラッド・ギルスのアームを多用したリード・ギターは、独特のイマジネーションを感じさせてくれ、ジョエル・ホークストラも8フィンガー等タッピングで見せ場を作っていた。アンコールに演奏したヒット曲「シスター・クリスチャン」「ロック・イン・アメリカ」では、会場全体が異常なほどの盛り上がりを見せた。この流れでヨーロッパを回り、再度日本に戻ってくると話していたが、このメンバーでの今後の活躍に期待したい。(上田 和秀)
写真:Yuki Kuroyanagi

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「MONDAY満ちる」 6月18日  Billboard Live TOKYO
 NYC在住の満ちる、同行の夫のほか日本人ミュージシャンとのステージ。大きな牡丹色の花飾りをつけて、すんなりしなやかなステージングが美しい。チャカ・カーンの「I Know You, I Live You」がオープニング。ソウル色をしのばせた好スタートで、アジムスの「Um Amigo」も躍動感あるブラジリアンとなる。満ちるはフルートも披露したり、夫アレックス・シピアギンのトランペットは力のこもったソロを随所に聴かせて、鈴木禎久のギターも力演。濃やかに抑えたアルバムとは違い、どの曲も気の入った歌と演奏がよくかみ合っていた。東日本大震災の応援という意味合いも考え、曲目はオリジナルや「Dream of Tomorrow」他、前向きな曲を選んだという。アンコールは母・秋吉の「ホープ」を熱唱した。人生の厚みやキャリアを感じさせ、精気のこもったいいステージだった。(鈴木 道子)

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「アキコ・グレース Akiko Grace Trio Collective
 来年でデビュー10年目をむかえるエキゾチックな中にも実に気骨あふれるプレイをみせるジャズ・ピアニスト、アキコ・グレース。現在、メモリアルとなるニュー・アルバム完成に向けを着々と準備を進めている。そんな中、≪Akiko Grace Trio Collective≫と銘打ってのライヴを行う。果たして、新作からのナンバーを披露してくるだろうか、大きな期待に胸ふくらむ。アキコをサポートするのは木村将之(b)と岩瀬立飛(ds)。名古屋でのステージにはゲストで林正子(sop)がジョイントする。(MK)
*7月1日  Motion Blue YOKOHAMA  2回公演
お問い合わせ:(045)226-1919
http://www.motionblue.co.jp/
*7月31日  NAGOYA Blue Note  2回公演
お問い合わせ:(052)961-6311
http://www.nagoya-bluenote.com/


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「フェイセズ
 昨年夏にローリング・ストーンズのロニー・ウッドを中心に、マックことイアン・マクレガン、それにケニー・ジョーンズという元フェイセズのメンバーに加えグレン・マトロック、ミック・ハックネルというライン・アップでの“フェイセズ”が欧州でライヴを行ったが、この夏わが国でもその公演が実現する。7月29日、30日、31日に開催されるフジロックフェスティバル2011!30日ヘッドライナーとしてフェイセズがパフォーマンス!ストーンズ・フリーク、ブリティッシュ・ロック・ファンはじめジェネレーションを超えて多くの聴衆を魅了することだろう。(MK)
http://www.fujirockfestival.com/


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「プリシラ・アーン
 デビューしてまだ3年、でもその実力はわが国でも多くのファンから認められている。シンガー/ソングライター、プリシラ・アーン。つい先ごろ、素晴らしい出来映えのセカンド・アルバム『幸せのみつけ方』を発表している。大の親日家(ハネムーンは京都だった、プロモーションも含めると5回目の来日))のプリシラ、新作を発表したことによってどれだけ大きくなったか、期待に胸躍るライヴ・イン・ジャパンは8月・・・。
*8月17日 18日 Billboard Live TOKYO 2回公演
お問い合わせ:(03)3405-1133
http://www.billboard-live.com/
*8月19日 Billboard Live OSAKA 2回公演
お問い合わせ:(06)6342-7722
http://www.billboard-live.com/


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「PROGRESSIVE ROCK FES 2011プログレッシヴ・ロックの祭典〜美しき旋律の饗宴〜再びめくるめく音世界へ!!〜
 昨年に続き、今年の夏もプログレッシヴ・ロックの祭典が開催!ライン・アップは、1970年代から活躍し「すべては風の中に」のヒットで知られるプログレでハードなカンサス出身のカンサス。 イギリスからは60年代末にスターを切ったウィッシュボーン・アッシュ、我が国ではより幅広いロック・ファンに親しみがある。 そしてイタリアからはプレミアータ・フォルネリア・マルコーニ、P.F.M.だ。ピート・シンフィールドのマンティコア・レコードから73年デビュー。確実に活動を続けそのテクニックは高く評価されている。この3バンドによる、まさに美しき旋律の饗宴だ。(MK)
*8月28日  日比谷野外大音楽堂(OPEN 15:00 / START 16:00)
【単独公演】
*カンサス 8月26日 CLUB CITTA'
*ウィッシュボーン・アッシュ 8月27日 CLUB CITTA'
お問い合わせ:(03)5453-8899
http://www.mandicompany.co.jp/


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「エル・デバージ featuring チコ・デバ−ジ
 1980年代初頭、第二のジャクソンズとしてモータウンが売りだしたデバ—ジ。多くのヒットを放ち、その中でエル・デバ—ジは80年代中期からソロとしてもこれまた次々にヒットを量産。弟のチコ・デバ—ジも80年代後半以降、話題を呼んだ。そんなR&Bの申し子たちが復活。80&90年代ソウル・フリーク達の間では早くも話題沸騰。
*8月26日 27日 Billboard Live TOKYO 2回公演
お問い合わせ:(03)3405-1133
http://www.billboard-live.com/


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「ブッカ—・T.ジョーンズ
 ブッカー・T.ジョーンズ率いるブッカー・T.&MG'sがあの名作「グリーン・オニオン」を大ヒットさせたのは1962年、USポップス・チャート3位、R&Bチャート1位(4週連続!)を記録したのだ。60年代のメンフィス・ソウルを語る上で忘れられない伝説のブッカ—・T.、つい先ごろ素晴らしきアルバム「ザ・ロード・フロム・メンフィス」を発表したばかり。この秋の来日が決定、往年の名作楽曲に加え、新作からもどんなナンバーを披露してくれるか楽しみだ。(MK)
*9月9日 COTTON CLUB 2回公演
お問い合わせ:(03)3215-1555
http://www.cottonclubjapan.co.jp/
*9月10日 11日 12日 13日 Blue Note TOKYO  2回公演
お問い合わせ:(03)5485-0088
http://www.bluenote.co.jp


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「ケルティック・ウーマン
 「ユー・レイズ・ミー・アップ」の大ヒットでお馴染みフロム・アイルランド、クロエ(ヴォーカル)、リサ・ケリー(ヴォーカル)、マレード(フィドル)、リサ・ラム(ヴォーカル。ニュー・メンバー)のケルティック・ウーマン。4年ぶり、5回目の日本公演が決定した。日本との関連は深い、荒川静香エピソードはよく知られるが、5月末に公開された映画『プリンセス トヨトミ』の主題歌「永遠の絆」もケルティック・ウーマンだ。同曲をフィーチャーした最新アルバム『ビリーヴ』も大好評。そんな中で日本公演決定のニュースはファンから大拍手なのだ!(MK)
*10月20日   名古屋市公会堂
*10月21日  大阪・梅田芸術劇場
*10月24日 25日 26日   東京ドームシティホール
お問い合わせ:H.I.P.(03)3475−9999
http://www.hipjpn.co.jp/


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「黒澤楽器店 MARTIN GUITAR Presents エリック・クラプトン&スティーヴ・ウィンウッド JAPAN TOUR 2011
 ついにエリック・クラプトン&スティーヴ・ウィンウッドのLIVEがわが国でも敢行される。エリック・クラプトン(Vo G) スティーヴ・ウィンウッド(Vo Key G)、クリス・ステイントン(Key) ウィリー・ウィークス(B) スティーヴ・ガッド(Ds)。あのスーパーグループ、ブラインド・フェイスを彷彿とさせる、夢の共演だ。(MK)
*11月17日 札幌 北海道立総合体育センター きたえーる 
*11月19日 横浜アリーナ 
*11月21日 22日 大阪城ホール
*11月24日 マリンメッセ福岡 
*11月26日 広島グリーンアリーナ 
*11月28日 金沢 いしかわ総合スポーツセンター メインアリーナ 
*11月30日 名古屋 日本ガイシホール 
*12月2日 3日 6日 7日 東京 日本武道館 
お問い合わせ:ウドー音楽事務所 (03)3402-5999
http://udo.jp/


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