2011年3月 

 
Popular ALBUM Review



「ミス・オブ・ザ・ハート/サハラ・スミス」(ビクターエンタテインメント/VICP-64939)
 アメリカの音楽界ってすごいところですな、こんな21歳が出て来るとは。この彼女に惚れ込んで「ここ何年もの間で会った中でも最高」だの「世界は彼女のような若いアーティストを望んでいる」など飛び切りの賛辞を贈りスーパーバイザーを引き受けたのが大御所プロデューサーのT・ボーン・バーネット。彼の眼力もすごい。とはいえこの子が歌っているのを目の当たりにしたら私でも名刺を手に近寄って「もうどこかと契約してるの?」ってなりそうですが。しかもこのルックスだし♪例はあれですが'ロックなノラ・ジョーンズ'といった趣もあるような。さぁ聴いてもらいましょか、興味が湧いて来たでしょ?国内リリースは3月16日!(上柴 とおる)

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「Chicago Blues: A Living History - The (R)evolution Continues/V.A.」(BSMF RECORDS/BSMF2207)
 2010年にグラミー賞にノミネートされた名企画アルバムの続編。現在のシカゴ・ブルースを代表するアーティスト、カルロス・ジョンソン、ビリー・ブランチ、ルーリー・ベル、ジョン・プライマー、ビリー・ボーイ・アーノルドが集結し、マディ・ウォーターズ、ハウリン・ウルフ、エルモア・ジェイムスなど、偉大なる先人たちの名曲をカヴァー。また、バディ・ガイ、ジェイムス・コットン、マジック・スリム、ロニー・ベイカー・ブルックス、ゾラ・ヤングなどのゲスト陣も花を添えている。通には少し食い足りないかもしれないが、シカゴ・ブルースの“歴史”と“今”を体感できる内容だ。この作品をきっかけに、ブルースの深い世界へ足を踏み入れる人が少しでも増えてくれることを願う。(細川 真平)


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「ビタースウィート/ワークシャイ」(インペリアル/TECI-25638)
 前作『スマイル・アゲイン』から3年3か月ぶり(えっもうそんなになる!?)にリリースされた新作は表面的にはちょっと地味かな? 前作ではトッド・ラングレン作の著名なポップ曲「ハロー・イッツ・ミー」を取り上げてたけど今回はジャネット・ケイ、La La、そしてビョークの曲をカヴァー、とシブい印象も。タイトル通りビタースウィート(ほろ苦い)な味わいで全12曲(前作は10曲)。ちなみに5曲目には「ビター・オア・スウィート」という題名の曲もあるけどアルバムの題名とはまた意味が異なるという仕掛け?があるのも彼ららしいところかも。この新作を携えて4月8日〜9日(東京)&11日(大阪)、Billboard Liveで来日公演♪(上柴 とおる)


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「コラボレーションズ/ラヴィ・シャンカール&ジョージ・ハリスン」(ワーナーミュージック・ジャパン/WPZR-30383〜86)
 ジョージ・ハリスンがプロデュースしたラヴィ・シャンカール作品を集めた美しいボックス・セット。ジョージのシタールの師匠としてロック・ファンにも知られるラヴィはビートルズのアップル・レコーズに2作を残しているが、ここに収録されたのはその後ジョージが興したダーク・ホース・レコーズ時代のアルバム、『シャンカール・ファミリー&フレンズ』(74年)と、『ミュージック・フェスティヴァル・フロム・インディア』(76年)、そして97年にEMIのエンジェルからリリースされた『チャンツ・オブ・インディア』である。すごいのは、ダーク・ホース移籍を記念して74年9月24日にロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行われたコンサートの模様を収録した約1時間のDVD。こんな映像が残っていたのは驚きだが、ヴォーカル・ナンバーもまじえたシャンカール楽団の素晴らしい演奏が伝えるインド音楽の奥深さに、思わずため息が出る。(和久井 光司)

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「RARITIES/BOBBY VEE」(EMI-50999 9 07206 2 8) *輸入盤
 'Rare Unreleased Gems From The Capitol Vault 1959-2002'というマニアックな 内容の2枚組(全61曲!)がお手頃な価格で購入出来るのだから熱心なファンならずとも思わず身を乗り出してしまうかと(私がそうです。。。)。未発表曲、限定発売曲、初のステレオ版などなど'蔵出し'音源の大全集♪「いったいどんだけ録音させときながら。。。」と半ば呆れ?ながら聴いていたら「こんなええ曲を埋もれさせとったんか!」と当時のレーベルLiberty(Capitol系列)への不信感が頭をもたげて来るほどに内容がGood♪10ージに及ぶ詳細なデータも含む丁寧な解説書もお得感大。何とアルバムのEx-Producerが当のボビー・ヴィー本人!あかん、これがきっかけで熱心なファンになってしまいそう。。。(上柴 とおる)

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「7000万年の岩(The Rock)/MASAKI」(ドゥールー・レコーズ/DLCD-1004)
 オーストラリア育ちで現在日本で活躍しているヴァイオリニスト/作曲家MASAKIの第4作は、クラシカルな響きで始まるが、相変わらずいいメロディーで爽やかだ。彼の曲はどれも物語があり、独自の発想に細やかな観察が加わり、一曲一曲の解説を読むと更に味わいが増す。今回は「”今をどう生きるか”ということをテーマに考えて作った曲を集めた」という。心暖まる「最後のプレゼント」、跳ねるような愛らしい佳曲「ぼくと犬とねずみのポルカ」ほか、真面目で優しい人柄をにじませている。(鈴木 道子)

 今最も期待されるヴァイオリニスト兼コンポーザー/MASAKIの4作目となるアルバム『7000万年の岩(The Rock)』が届いた。「今をどう生きるか」をテーマに、人・自然・宇宙に対する思いを込めて作り上げた力作である。タイトルの「7000万年の岩」は、勿論オーストラリアにある世界で2番目に大きな一枚岩エアーズ・ロックであり、そのエアーズ・ロックの歴史と自分の人生を照らし合わせ音楽で表現したスケールの大きな曲である。この他にも、MASAKIの日常や人生観を表現したバラエティに富んだ楽曲が並ぶ。気の合った仲間との録音は、演奏もアレンジも音質も素晴らしい作品に仕上がり、常に前向きで真面目なMASAKIの姿勢に心打たれる。(上田 和秀)

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「グレイトフル・デッドを聴きながら/橋本美香」(アイドル・ジャパン・レコード/IJRM-0053)
 
橋本美香は1995年にユニークなアイドルグループ制服向上委員会のメンバーとして歌手デビューした。その後2000年にソロ、さらに女性二人組グループTHE DUETとしてもCDを発表している。そんな彼女が10年ぶりに2作目のソロ・アルバムを発表した。ここにはロック、フォーク、カントリー、ポップなどジャンルにこだわらない様々な15曲が収められている。可憐な少女から、力強くメッセージを歌う大人の歌手まで、不思議な魅力を感じる内容だ。日本語でカヴァーしたディランの2作品がボーナス・トラックとして隠されている。聴き逃さないように。(菅野 ヘッケル)

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「MAMBO LEGENDS ORCHESTRA/WATCH OUT ! TEN CUIDAO! 」(Mambo Legends)*輸入盤
 マンボ・レジェンズ・オーケストラの記念すべき1stアルバム。ジョン・ロドリゲス(perc)、ホセ・マデラ(perc)、ミッチ・フローマン(ts)をリーダーとするラテン・ビッグ・バンド。3人はいずれもティト・プエンテ楽団で長年重要な役割を担ってきたミュージシャンたちだ。ブラス・セクションの厚みといい、ぐいぐいと引き込んでいくヴォーカルのノリといい、黄金期を髣髴とさせてくれる。マンボにこだわったコンセプトがアルバム全体を引き締め、際立たせている。全16曲を収録した2枚組。「バードランド」をカヴァーしているが、これも一聴に値する。SOBを本拠地に活動しているようだが、NYラテン音楽シーンに一石を投じる新たなグループであることに間違いあるまい。(三塚 博)

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「ロン・カーター・グレイト・ビッグ・バンド/ロン・カーター」(EMIミュージック・ジャパン/TOCJ-68092)
 ベース奏者ロン・カーター初のビッグ・バンド・アルバムである。ぼくはコンボのロンはあまり好きではないのだが、ここビッグ・バンドは気に入った。彼のベースもビッグ・バンドのところどころにフィーチュアされるくらいで、ちょうどいいのである。選曲がまた気に入った。ジャズメンが書いたジャズ・オリジナルの名曲が選ばれているが、「キャラバン」「コン・アルマ」サイ・オリヴァーの「オーパス1」「セントルイス・ブルース」「フット・プリンツ」「ゴールデン・ストライカー」と新旧取りまぜているが、編曲は白人でユダヤ人のボブ・フリードマン。写真で見ると、相当年のようだが、編曲は若々しくて力強く、ソロと合奏のバランスもいい。ジェリー・ドジオン、スティーブ・ウィルソン、スコット・ロビンスン(sax)、ジェイソン・ジャクソン、スティーブ・デイビス(tb)、マルグルー・ミラー(p)、ルイス・ナッシュ(ds)ら名手が参加している。(岩浪 洋三)

 音がいい!レコーディング・エンジニアのジム・アンダーソンの録音/ミックス技術が素晴らしいものであるのも当然であるが、各ミュージシャンの技量の高さの空気感がひしひしと伝わってくる。ロン・カーターは今までソロ・プレイヤーとしての感が強かったが、本作では、徹底的にビック・バンド・アンサンブルの中で見事なベース・プレイを展開。かといって、要所要所でキラリと光るソロ・ベース・プレイは想像を絶するものだ。アレンジャー/音楽監督のボブ・フリードマンとロンとの見事な仕事ぶりがうかがえる。ライナーに書かれているように、『スモール・コンボのようなビック・バンド』を見事に実現させている。この最も難しいコンセプトを実現できるのは、まさしく21世紀最後の巨人、ロン・カーターしかいないのだろう。
モダン・ビック・バンドを更に発展させた“21世紀型モダン・ビック・バンド・ジャズ”の回答が、このアルバムではないだろうか。(各務 芳孝)

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「ライク・ア・ラバー/ニッキ・パロット&ケン・ペプロフスキー」(ヴィーナスレコード/VHCD-1050)
 
ベースの弾き歌いニッキ・パロットとテナー、クラリネット奏者ケン・ペプロフスキーとのデュオだが、ニッキはますます歌がうまくなってきた。またデュオなので、ベース・ソロもたっぷり聴かせてくれる。ケンはスケールの大きなテナーで、よく歌っているし、女性歌手にテナーはサウンド的にもよく合うのだ。また、彼のクラリネットはクリアーでちょっとクール。温かいトーンのテナーとのコントラストも聴きものだ。ニッキの選曲はいつも興味ぶかい。「ブルー・ムーン」「ヘイ・ゼア・」「スウェイ」「夢みる頃を過ぎても」、ビートルズの「ヒア・ゼア・アンド・エブリホウェア」など、どの歌も個性的なアプローチで新鮮な歌を聴かせてくれる。(岩浪 洋三)

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「セシル/セシル・マクロリン・サルヴァント」(AGATE/AGIP3504)
 セシル・マクロリン・サルヴァントは、2010年のセロニアス・モンク・インタ—ナショナル・ジャズ・ヴォーカリスト・コンペティションで優勝した新星。フランス人の母、ハイチ人の父を持つ21歳。このデビュー・アルバムでは、ピアノ・トリオにクラリネット、テナー、ギターの入る伴奏でスタンダードを中心に、ジジ・グライスの「Social Call」やベッシ—・スミスのブルース「Frosty Morning Blues」等も交えて12曲を歌っている。流石にコンテスト優勝者らしい素晴らしい歌手だ。落ち着きのある聴き手を包み込むような感じを与える歌は、すでに将来の大物の片鱗さえ見せる。注目したい歌手だ。(高田 敬三)

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「メゾフォルテ」1月15日 Billboard Live TOKYO
 アイスランドが生んだ世界的な老舗ジャズ/フュージョン・バンドのメゾフォルテを観た。今回が実に約四半世紀ぶりの再来日ということで、懐メロ的なステージを予想。しかし蓋を開けてみれば、それが失礼だったと再認識させられるパフォーマンスを堪能したのだった。昨年リリースの最新作『ヴォルカニック』を含むプログラムは、80年代にブリティッシュ・ジャズ・ファンクと同期する形で人気を博した空気感を、時代を超えて現役感そのままに展開してくれて、驚きと嬉しさに包まれた。ベーシストとドラマーの共同作業によるチョッパー・プレイや、暗闇で花火が舞うドラム・ソロのようなエンタメ性で、長年のファンを満足させたのも特筆もの。メンバーそれぞれの高い技術にも唸った。(杉田 宏樹)
写真:acane


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「アール・クルー」 1月26日 Blue Note TOKYO
 1979年にリリースされたジョージ・ベンソンとの競演作『ワン・オン・ワン』以来、ずっと気になるギタリストだったのだが、ライヴを聴く機会が無くこの日が初めて。フュージョンをガット・ギターで演奏するスタイルは30年以上変わっていない。1987年の『コラボレーション』からの「ブラジリアン・ストンプ」でスタート、最新作『スパイス・オブ・ライフ』の「オーシャン・ブルー」へと進んでいった。演奏された11曲はおなじみの曲から最新作までが網羅、オーディエンスを喜ばせた。今回はソロではなくグループとしての構成で、メンバーそれぞれのパートもたっぷり用意されていた。その中でもネルソン・ランジェールが吹いたハイ・トーンのピッコロと美しい音色の口笛に驚かされた。穏やかに、時には激しく響くガット・ギターの音色。想像していて以上に優しく、研ぎ澄まされていた。時代を超えた音楽がここにあった。(鈴木 修一)
写真:山路ゆか

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「ジャニス・イアン」 1月27日 Billboard LIVE TOKYO
 懐かしい思いに浸りたくて出かけていったが、想像を超えた素敵なライヴだった。
女性らしく花がいくつも飾られた、ステージに女性ギタリストと2人だけで登場。
ジャニスは前半ギターを、後半ピアノを演奏した。デビューから40年を超えるキャリアを持つが、そのすべてが彼女の今に凝縮しているように思えた。声量豊かで語りかけるような歌声。聴く者の琴線に触れてくる。そして達者なギター・プレイにも驚かされた。「恋は盲目」「ウイル・ユー・ダンス」「17歳の頃」、そして「我が心のジェシー」とヒット曲が次々に登場。隣の女性はハンカチを取り出し涙をぬぐった。客席では目を閉じ、彼女の歌声に合わせ身体を静かにゆらすオーディエンスが多くいた。音楽に癒されるとは、こんな感覚なのだと知らされた。本当に素晴らしいライヴであった。 ジャニスの作品がCMやドラマの主題歌などによく使われる理由が改めて理解出来た。(鈴木 修一) 

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「ビル・フリゼール」 1月27日 COTTON CLUB
 ビル・フリゼール、ロン・カーター、ポール・モチアンは一緒に、ここ10年近くニューヨーク・エリアのライヴ活動を繰り広げている(CDも1枚ある)。しかしモチアンは飛行機に乗れないので、この日本公演ではジョーイ・バロンがドラムスを叩いた。もっともビル〜ロン〜ジョーイの3人はジョーイのリーダー作で顔を合わせたこともあり、ジョーイは80年代後半から90年代初頭にかけてビルのバンドにいたから、この来日は一種のリユニオンといえなくもない。セロニアス・モンク作「ミステリオーソ」から始まり、途中ロンの「リトル・ワルツ」や、古いスタンダード・ナンバーの「ティー・フォー・トゥー」などを挟む構成。最年長にして日本で圧倒的に人気のあるロンに気を使ったのか、曲によってはフリゼールが完全に“従”の立場になっていた印象を受けたのは僕だけか。しかしそんな不満も一旦ビルのソロに入ると消し飛ぶ。ジョーイも的確なプレイで名脇役ぶりを発揮していた。(原田 和典)
写真提供:COTTON CLUB 写真:米田泰久

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「SOIL &“PIMP”SESSIONS」 1月30日 Billboard Live TOKYO
 元晴のサックスが炸裂しSOIL &“PIMP”SESSIONSによる、飛びっきりファンキーな仮想空間「Stoned Pirates Radio Show」の幕開けを告げる。ダブゾンビの力強いトランペットが響き渡り、丈吉のピアノと秋田ゴールドマンのウッド・ベースがたたみかける様に加わり、みどりんのドラムが強烈なビートを叩きこみ、「アイ・ビリーブ・イン・ミラクル」が始まる。ヒップ・ホップにアレンジされた「ゴッド・ファーザー 愛のテーマ」をバックに、アジテイターの社長が、「今日は2037年1月30日心の底から音楽を楽しもう!」と観客を鼓舞し、エジプトのデモのニュースを読みながら、幸せな未来を願う姿に、音楽の持つパワーを感じる。この日のハイライトは、二人のトロンボーン奏者をサポートに加え、パーフェクトに計算尽くされたアレンジで観客を圧倒したマイケル・ジャクソンの「ビート・イット」だ。唯単にノリが良い、演奏が上手いと言うだけでなく、本当に観客を楽しませる術を心得たバンドそれがSOIL &“PIMP”SESSIONSだ。(上田 和秀)

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「チャカ・カーン」 2月3日 Billboard LIVE TOKYO
 “パワフル”“ダイナマイト”などの形容詞で呼ばれ続けている≪R&Bの女王≫が迫力のライヴを展開。90分間、15曲は本当に濃密な時間だった。「ヘイ・ビッグ・スペンダー」を歌いながら登場すると客席は総立ち。「アイ・フィール・フォー・ユー」「恋のハプニング」等なじみのナンバーが続く。歌うようなMCから自然に歌へと繋がっていくスマートなステージング。圧倒的な声量と歌唱力に脱帽。途中何度も若いコーラスの女性に挑むようにシャウトする。コーラスも負けずに応じるが勝負にならない。パワーだけでなく、スローでの聴かせるテクニックも見事、1曲の中でも巧みに使い分けていく。アンコール前の15分間は、凄まじかった。これでもかとばかりに音を浴びせかけてくる。完全にKOされてしまった。アンコールはもちろん「アイム・エヴリィ・ウーマン」。(鈴木 修一)

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「ティファニー&フレンズ」 2月4日 COTTON CLUB
 ティファニーは日本をベースに活躍中のアメリカ人女性ジャズ・シンガー。今回の公演はジャズ・スタンダードとポップスの名曲をそれぞれに収めた2枚組の新作『Ruby & Sapphire』のリリースに因んだもので、曲目も殆どがそこからのものだ。元々実力派シンガーとして歌唱力には定評があるところだが、中でも「A列車で行こう」等、小気味良いテンポで歌うスウィンギーなジャズ・ナンバーは聴き応え十分。バラードでは多少ばらつきがあったものの、アンコールで歌った「ローズ」はしっとりと丁寧に歌い上げ、聴衆を魅了した。ベテラン・ドラマーのジミー・スミス、ピアノの野本晴美等、バックの演奏者達もさり気なく彼女を盛りたて、なごやかな一体感を醸し出す。これからのジャズ・ヴォーカル界を担う若手のひとりとして大きな期待をかけたくなる、そんなステージだった。(滝上 よう子)

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「谷中秀治グループ featuring ゼイン・マッセイ」 2月5日 新大久保サムデイ 
 谷中秀治はニューヨークで11年間活動したベーシスト。ゼイン・マッセイは、伝説の作曲家/トランペット奏者であるカル・マッセイの息子で、サン・ラ・アーケストラや、シャノン・ジャクソンの“デコーディング・ソサエティ”でも演奏したテナー・サックス奏者。彼らが東京で火花散るセッションを聴かせてくれた。他のメンバーは関西の重鎮ピアニストである藤井貞泰、新鋭アルト・サックス奏者の早川ゆいが、やはり新鋭ドラマーの柵木雄斗。ふたりはともに21歳だという。ステージでは谷中やカル・マッセイのオリジナル曲に加えて「ブルー・ボサ」、「ビリーズ・バウンス」等も演奏された。ゼインの堂々たるテナー・サックス、谷中のどっしりしたベースの響きには彼らがジャズ界で過ごしてきた年輪が反映されており、いっぽう早川は若さを炸裂させるようなブロウで逸材ぶりを印象づけた。日本のジャズ業界は昔からアルト・サックス奏者の人数に恵まれているが、ここまで熱いジャズを感じさせてくれるアルト吹きに出会うのは、個人的には久しぶりだ。(原田 和典)


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「Orquesta de La Luz/日本ラテン化計画2011」 2月6日 COTTON CLUB
 今年最初のライヴとなったCOTTON CLUBでのファースト・ステージを聴いた。立ち見の出る盛況ぶり。雨まじりの外の寒さとは隔絶したホットな雰囲気は、まさにサルサ・ワールド。メンバーの一人が体調不良のためステージに立てず、10人編成と相成ったが、ものともせずの演奏に観客も乗りのり。意外だったのがライヴは初めてという観客が多いこと。まだまだファンの裾野を広げていることを実感させる。「風になりたい」から新レパートリーの「EL Menu」まで選曲や曲のつなぎも見事で、長いキャリアを髣髴とさせる観客目線の、楽しいステージだった。(三塚 博)


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「ホーヴァール・ステューベ・カルテット」 2月6日 TOKYO TUC
 ホーヴァール・ステューベは1977年ノルウェー生まれのギタリスト。今回が初来日とのことである。共演メンバーはクヌート・リースネス(サックス)、トルビョルン・ゼッターバーグ(ベース)、ホーコン・ミョーセット・ヨハンセン(ドラムス)。2009年のアルバム『WAY UP(WAY DOWN)』から、さらに進化したバンド・サウンドを聴くことができた。ホーコンの楽器は初期のハワード・ロバーツ・モデルに似たもの。生音もガッチリ出るので、曲によってはアンプのボリュームを切って演奏していた。ほかの3人はマイクすら使わず、完全な生音でプレイ。メンバー全員が各人のサウンドを聴きあいながら、その場その場で見事なアンサンブルを奏でていく様は、もはやテレパシー級の交感というしかない。とくにゼッターバーグ(77年生まれ)には「十数年に一度の逸材」との感を深くさせられた。マイクやアンプなしで、あんなにコントラバスを、しかもスイングしながら鳴らすことのできる奏者が他にどのくらいいるというのか。指弾きにも弓弾きにもため息が出た。(原田 和典)


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「源川瑠々子」 2月10日 メゾン・ブランシュ
 夏目漱石の「心」を原作とした一人文芸ミュージカル「静」で活躍中の源川瑠々子は、和小物作家として二代目卯庵(うあん)としての顔を持ち、またWebラジオ、ブルーレディオドットコム「星空の歌」のパーソナリティとして、毎週木曜日に出演している。多才な顔を持つ源川のライヴ。たくさん花が飾られた洒落た会場に、着物姿の源川が登場して、作詞・作曲の神尾憲一氏のピアノ伴奏で「春の歌」続いて「こころ」が歌われ、盛り上がったところで、ベテラン・ジャズ・シンガーの三橋りえがWebラジオに出演した縁でゲスト出演、「On The Sunny Side Of The Street」「Mona Lisa」「My Funny Valentine」を披露、のびやかな歌声を響かせた。この後はパーソナリティらしい軽やかなトークと歌、ライトリンク・ミュージックのメンバーの友情出演も加わってのアットホームなステージを楽しんだ。(本田 浩子)


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「喜多村次郎 & 沖津久幸 LIVE」2月12日  原宿クロコダイル
 1960年代後半に人気を博したグループサウンズの中でも、指折りの人気グループ
だった“ザ・カーナビーツ”の喜多村次郎と“ザ・ジャガーズ”の沖津久幸のふたりよるジョイント・ライヴ。「好きさ好きさ好きさ」や「君に会いたい」などのヒット曲ももちろん演奏されたが、喜多村がグレン・フライ、ジョニー・リヴァースやR&Bのカヴァー、沖津はイーグルス、リンダ・ロンシュタットらのナンバーも
取り上げ、ナツメロGS一辺倒のステージ想定していたオーディエンスの期待を“いい意味”で裏切ってくれた。Mike Koshitani氏によるトーク・ショーも開催され、喜多村、沖津に加え、元スパイダースの加藤充氏もステージに上がり、元気な姿を見せた。(町井 ハジメ) 写真:大森眸


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「ラリー・カールトン
 今年のグラミー賞で最優秀ポップ・インストゥルメント・アルバムを松本孝弘との共作アルバム『TAKE YOUR PICK』受賞した、ラリー・カールトンが4年ぶりのソロ・アルバム『プレイズ・ザ・サウンド・オブ・フィラデルフィア』を携えてやってくる。60年代からギタリストとして頭角を現し、71年にはザ・クルセイダース、97年にはフォープレイに参加し活躍した。2010年にファープレイを離れ、再びソロプレイヤーとしての道を進み始めた。新しいアルバムではソウル・ミュージックの定番「誓い」「二人の絆」などに新しい解釈を加え演奏している。彼のギブソンES-335が名曲に新しい命を吹き込む瞬間を目撃したい。(SS)
*4月1日 NAGOYA Blue Note 2回公演
お問い合わせ:(052)961-6311 
http://www.nagoya-bluenote.com/
*4月8日 9日 10日 11日 12日
Blue Note TOKYO 2回公演_
お問い合わせ:(03)5485-0088 
http://www.bluenote.co.jp/


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「ハクエイ・キム“トライソニーク”
 確かなテクニックに培われた軽やかな指さばき。京都生まれのハクエイ・キムはいま注目の若手ジャズ・ピアニスト。伝統を踏まえながらも彼ならではの斬新さも持ち合わせたこだわりの実力派で、その才能と共に端正なルックスも多くの女性ファンを引き付けているようだ。2005年のデビュー以来、これまでにアルバムも4枚(ライヴを含む)出しているが、ソロ活動と並行して昨年、ベースの杉本智和、ドラムの大槻”KALTA”英宣と共にピアノ・トリオ・ユニットの“トライソニーク”を結成。同名のアルバムを1月にリリースしてメジャー・デビューを果たした。今回の公演はそのアルバム・リリースの記念ツアーの一環として行われるもので、BILLBOARD LIVEには初のお目見え。(YT)
*4月5日 Billboard Live OSAKA 2回公演
お問い合わせ:(06)6342-7722
http://www.billboard-live.com
*4月10日 Billboard Live TOKYO 2回公演
お問い合わせ:(03)3405-1133
http://www.billboard-live.com


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「ジョニー・ウィンター JOHNNY WINTER JAPAN TOUR 2011
 何度か来日の噂もあったが、ついにあの100万ドルのギタリスト、アメリカン・ロックの伝説のミュージシャン、わが国でも多くのファンが待ち望んでいたジョニー・ウィンターが初めて日本の土を踏む。あのギター・ワーク、ブルース・ロック、大きな期待が寄せられている。ストーンズ・ファンも大拍手!もちろん「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」を披露してくれることだろう。(MK)
*4月13日 14日 15日 Zepp Tokyo
お問い合せ:(03)5453-8899
http://www.mandicompany.co.jp/


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「杏里 〜 ANRI LIVE TOUR 2011 Heart to Heart
 私にとって杏里はユーミン、竹内まりや、石川セリと共に避けて通ることの出来ないジャパニーズ女性ミュージシャンだ。1978年に「オリビアを聴きながら」でセンセーショナルにデビュー、その後もヒット曲を多く出している。デビューから30年を経ても変わらぬ爽やかさがとてもうれしい。個人的にはハワイのアロハ・スタジアムでコンサートを観たことが懐かしい。オープニング・アクトはカラパナだった。今回はクラブ・ライヴならではの選曲をするという。楽しみにしたい。(SS)
*4月13日 15日 16日  Billboard Live OSAKA  2回公演_
 お問い合わせ:(06)6342-7722
http://www.billboard-live.com
*4月26日 27日 29日 30日 Billboard Live TOKYO 2回公演
_お問い合わせ:(03)3405-1133
http://www.billboard-live.com


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「レオン・ラッセル
 スワンプ・ロックの雄、ダウン・トゥ・アースなそのサウンド・クリエイトぶりはまさに40年以上に亘って直進し続けている。その音楽は伝説であり現代なのだ。昨年のアルバム『ザ・ユニオン』も素晴らしかった。そんなレオンが再びジャパン・ライヴ!ロックのメインストリームをダイレクトに味わいたい。(MK)
*4月17日 Billboard Live TOKYO 2回公演
お問い合わせ:(03)3405-1133
http://www.billboard-live.com
*4月19日 Billboard Live OSAKA 2回公演
お問い合わせ:(06)6342-7722
http://www.billboard-live.com


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「リチャード・トンプソン
 ブリティッシュ・ロックを代表するギタリストが久々に来日する。ローリング・ストーン誌が選ぶ“史上最高のロック・ギタリスト”の上位20名にも選ばれている。エレクトリック、アコースティックともに圧倒的なテクニックを披露する。1968年にフェアポート・コンヴェンションのギタリストとしてデビューし、1971年にはソロアルバム『ヘンリー・ザ・ヒューマン・フライ』を発表。昨年、3年ぶりのアルバム『ドリーム・アティック』をリリースしている。今回の来日ではアコースティック・ソロ・ライヴになるようだ。名匠/ジョ−ジ・ローデンが作るギターはリチャードの手によってどんなサウンドを聴かせてくれることだろう。楽しみ。(SS)
*4月20日 21日 Billboard Live TOKYO 2回公演
_お問い合わせ:(03)3405-1133
http://www.billboard-live.com/
*4月23日  Billboard Live OSAKA 2回公演
 お問い合わせ:(06)6342-7722
http://www.billboard-live.com/


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「日向由子 2011スプリングLIVE〜CANZONI D'AMORE PER TE〜
 オペラからカンツォーネ、ミュージカル、映画音楽まで幅広いレパートリーで活躍している歌手・日向由子。今年のスプリング・ライヴのタイトルは≪カンツォーニ・ダモーレ・ペール・テ≫。お得意のカンツォーネをたっぷりと披露する。
ゲストには「好きよキャプテン」で知られる女性デュオ、リリーズ。ふたりは大の日向ファン、ジョント・ライヴのほかトーク・ショーも・・・。おしゃれなランチ・タイム・ライヴ!(MK)
*4月24日(日)午前11時30分開場 12時30分開演 原宿La Donna
お問い合わせ:(03)5775-6775
http://www.la-donna.jp/


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「ロバート・ランドルフ & ファミリー・バンド
 ハワイ生まれのペダル・スティール・ギターに全く新しい命を吹き込んだロバート・ランドルフ。その超絶テクニックは、ペダル・スティールの概念を覆す演奏だ。ファンク・ロック、ゴスペル、ブルースを融合させたサウンドは官能的でエキサイティング。ノラ・ジョーンズ、バディ・ガイ、エリック・クラプトンなど大物達との共演で話題を呼び、進化し続けるロバート・ランドルフに注目しないわけにはいかない。ハワイでもあまり目立たなくなったペダル・スティールが甦る。(SS)
*4月26日 NAGOYA Blue Note 2回公演
お問い合わせ:(052)961-6311
http://www.nagoya-bluenote.com/
*4月28日 29日 30日 5月1日 2日
Blue Note TOKYO 2回公演_
お問い合わせ:(03)5485-0088 
http://www.bluenote.co.jp/


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「カーラ・ボノフ & J.D.サウザー
 AOR、ウエスト・コースト・サウンド好きには堪らない共演が実現。ともに70年代から80年代にかけてビッグ・ヒットを連発し、L.Aミュージック・シーンを代表するソングライターとなった。リンダ・ロンシュタットがふたりの作品をカヴァーしたことで注目された共通点もある。そしてカーラのファースト・アルバム『カーラ・ボノフ』にはJ.D.が参加している。イーグルス、ジャクソン・ブラウン、ジェームス・テイラーなどと交流がありウエスト・コースト・サウンド黄金期を支えたふたりが日本で同じステージに立つ。お互いのヒット曲をどの様に聴かせてくれるのか、ワクワクする。(SS)
*5月10日 11日  Billboard Live OSAKA 2回公演
 お問い合わせ:(06)6342-7722
http://www.billboard-live.com/
*5月13日 14日  Billboard Live TOKYO 2回公演
_お問い合わせ:(03)3405-1133
http://www.billboard-live.com/


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「サラ・バレリス /JAPAN TOUR 2011
 「こんなハズじゃなかったラヴ・ソング」の大ヒットで、一躍注目を浴びた実力派シンガー・ソング・ライター兼ピアニストのサラ・バレリス待望の初来日公演が決定した。本年度第53回グラミー賞「最優秀女性ポップ・ヴォーカル・パフォーマンス」は惜しくも逃したものの、現在軽快なポップ・ナンバー「キング・オブ・エニシング」が大ヒット中であり、新作『カレイドスコープ・ハート』もリリースされ、今最も旬なアーティストとしてライヴ・パフォーマンスの期待が高まる。(UK)
*5月16日 心斎橋JANUS
*5月 17日 Mt. RAINIER HALL
お問い合せ:ウドー音楽事務所 (03)3402-5999
http://udo.jp/


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「TAKE 6 JAPAN TOUR
 究極のアカペラ・コーラスを堪能させるTAKE 6、わが国でも多くのファンをもつ。そして何度も来日している。そんな6人組が久々のジャパン・ツアー。今回はコンサート・ホールでの≪ゴスペル&リズム・アンド・ブルース・ナイト≫≪ジャズ&クラシック・ナイト≫のふたつのプログラムが用意された。後者ではTAKE 6のバックを新日本フィルハーモニー交響楽団(指揮:竹本泰蔵)が務める。もちろん2夜連続でそのドラマティックなステージを楽しみたい。(MK)
*5月30日 ゴスペル&リズム・アンド・ブルース・ナイト すみだトリフォニーホール
*5月31日 ジャズ&クラシック・ナイト すみだトリフォニーホール
お問い合わせ:(03)5608-1212
http://www.triphony.com/index.php


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「ナイト・レンジャー /JAPAN TOUR 2011
 1982年にデビュー・アルバム『ドーン・パトロール』で、ツイン・リード・ギター&ツイン・ヴォーカルと言う特異なバンド編成で注目を浴び、その後「シスター・クリスチャン」「センチメンタル・ストリート」等のヒットで人気を博したナイト・レンジャーの3年振りとなる日本公演が決定した。斬新なタッピング/8フィンガーズ奏法でギター小僧達を魅了したジェフ・ワトソンがメンバーに名を連ねていないのは残念だが、変幻自在で華麗なアーム・プレイのギタリスト/ブラッド・ギルスは健在である。今も色褪せることのないキャッチーでストレートなアメリカン・ハード・ロック・ナンバーと得意なラヴ・バラードで大いにファンを喜ばせて欲しい。(UK)
*6月 9日 なんばHatch
*6月 10日 名古屋ボトムライン
*6月 13日 14日 渋谷C.C.Lemonホール
お問い合せ:ウドー音楽事務所 (03)3402-5999
http://udo.jp/


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