2010年5月 

 
Popular ALBUM Review

初回限定



2CD

通常版
「メイン・ストリートのならず者<スーパー・デラックス・エディション>/ザ・ローリング・ストーンズ」(ユニバーサルミュージック/UICY-91557) 2CD+2LP+DVD 初回限定 5000セット
「メイン・ストリートのならず者<デラックス・エディション>」(UICY-1478〜9) 2CD
「メイン・ストリートのならず者」(UICY-1480)
 ストーンズの1972年作品が装いも新たにファンの前に登場。中でも注目はスーパー・デラックス・エディション&デラックス・エディションのボーナス・トラックCD。? パス・ザ・ワイン(ソフィア・ローレン)?プランダード・マイ・ソウル?アイム・ノット・シグニファイイング?フォローイング・ザ・リヴァー?ダンシング・イン・ザ・ライト?ソー・ディヴァイン(アラジン・ストーリー)?ラヴィング・カップ(オルタネイト・テイク)?ソウル・サヴァイヴァー(オルタネイト・テイク)?グッド・タイム・ウィメン(「ダイスをころがせ」オルタネイト・テイク)?タイトル5?オール・ダウン・ザ・ライン(オルタネイト・テイク/日本盤のみのボーナス・トラック)。未発表曲/未発表テイク、まさに新曲なのだ!?いかにも70年代らしい楽曲。ミックお気に入りのファンキー・ソング。?7インチ・シングル・レコードとして先行リリース。?ブルージー作品。ミック・テイラーのギター&ミック・ジャガーのハープがたまらない。?ミックが切々と歌うゴスペル・タッチ作品。このミックのヴォーカル・パートは今回ニュー・レコーディング。ドン・ウォズがプロデュース。コーラスをリサ・フィッシャーとシンディ・マイゼル。?カントリー・フレイヴァー作品。?イントロが「黒くぬれ!」。?キース・リード・ヴォーカル・ヴァージョン。?キース・リチャーズ/チャーリー・ワッツ/ビル・ワイマンのインスト・セッション。2010年、最高のニュー・アルバムなのだ!(Mike M. Koshitani)

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「スラッシュ/スラッシュ」(ユニバーサルミュージック/UICE-9079)
 元ガンズ・アンド・ローゼズ、現ヴェルヴェット・リヴォルヴァーのギタリスト、スラッシュの初ソロ・アルバム。これまで客演の多かった彼だが、本作は逆に、全曲に異なるゲストを迎えるという趣向のもと作り上げられた。オジー・オズボーン、クリス・コーネル、レミー、キッド・ロック、イギー・ポップなど、そうそうたる名前が並ぶ中、日本からはB'zの稲葉浩志も参加。それぞれのゲストの持ち味を活かした楽曲群も粒が揃っているが、聴きものはやはりスラッシュのギター・プレイだ。柔軟なアプローチと、彼の持つロック・ギタリストとしての普遍性の両面を楽しむことができる。(細川 真平)


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「オメガ/エイジア」(キングレコード/KICP-1470)
 前作『フェニックス』から2年ぶりとなるエイジア・オリジナル・メンバーによる最新アルバム。1982年に発表された名作ファースト・アルバム『詠時感〜時へのロマン』から30年近く過ぎ、原点回帰とも言うべき作風は、重厚なプログレッシヴ・ロックの中にも軽いポップを感じさせてくれる。パワーみなぎる「フィンガー・オン・ザ・トリガー」から始まる楽曲は全てエネルギッシュな演奏で、メンバーの年齢を感じさせないものであるが、音が前面に出過ぎているところが少し気になる。プログレッシヴ・ハード・ロックから得意のバラードまで、飽きのこない構成。ただ、ボーナス・トラックの「ドロップ・ア・ストーン」をラストではなく、途中にもってきたのは如何なものか、アルバムとしてのバランスを崩すことになっている。しかし、プログレ・ファンにとっては待望の1枚であり、5月のライヴが本当に楽しみ。(上田 和秀)


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「ビューティフル・タンゴ/インディ・ザーラ」(EMIミュージック・ジャパン/TOCP-70844)
 フランス・ブルーノートから登場したインディ・ザーラは、不思議な魅力を持ったシンガー/ソングライターだ。全身に漂う恋の女のムード。どこかけだるいノスタルジーがそよぐ。彼女はモロッコ生まれ。母や親族には音楽の血が流れている。アラブの民族音楽をいろいろ聴きながら育った。父の住むパリに移り住み、仏英米のソウル、ロック、ジャズに接するようになる。自分でも詩や曲を作り、英語の歌で注目を浴びる。このデビュー・アルバムも英語が中心だが、ベルベル語の歌もある。アメリカン・フォークとアラビックなエキゾティズムが漂う。中では「ビューティフル・タンゴ」が抜群の佳曲。ダンスを踊る二人「ミュージック」も魅力的。注目すべき新人だ。(鈴木 道子)

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「ブロークン・ベルズ/ブロークン・ベルズ 」(ソニー・ミュージック ジャパン インターナショナル/SICP-1328)
 デンジャー・マウスこと天才マルチ・プロデューサー、ブライアン・バートンとインディー・ロック界の第一人者であるザ・シンズのジェームス・マーサーがタッグを組んで制作したデビュー・アルバムは、ロック・ヒップポップ・テクノ・トラッド・フォークetcあらゆるジャンルを吸収し、21世紀のプログレッシブ・ロックとでも呼びたくなる作品が出来上がった。このアルバムは、若い人にとっては新しい世界に感じられるだろう、しかし、長年ロックを聴いてきた者にはどこか懐かしさが漂う。ふたりの才人により作成された楽曲は20曲を超え、その中から厳選された10曲はどれも聴きごたえのある佳曲であり、注目すべきニュー・フェイスの登場を感じさせる。(上田 和秀)

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「セイ・アス/ゼウス」(インペリアル/TECI-21612)
 
これ、すごく聴きやすい!まさにポップ・ミュージックの真髄♪60年代や70年代のポップ〜ロックを好むファンだけではなく、みんなに「わくわくするよ〜♪」とふれ回りたい心境にかられてしまうほど。ジェイソン・コレットなどのバック・ミュージシャン等で経験を積んだマイク・オブライエンとカーリン・ニコルソンを軸として組まれた4人組ゼウスのデビュー・アルバムは、まず楽曲が整っていてキャッチーだし醸し出されるニュアンスもまたビートルズがキンクスに変身したような味わいだったりもして「これはおもろ過ぎる♪」な状態。日本盤ボーナス(計3曲)で聴けるジェネシス「ザッツ・オール」(1983年)の‘意欲的’なカヴァーも聴きもの♪(上柴 とおる)

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「ザ・ケーオー・コーラル/ヌーンデイ・アンダーグラウンド」(バウンディ/STUBBIE RECORDS/XQIV 1001)
 ポール・ウェラーの側近として、その作品の多くで共作やプロデュースを行うことで、近年ここ日本でもその存在が大きくクローズ・アップされるようになったサイモン・ダイン。全英No.1に輝いた2008年のアルバム『22 Dreams』に続くウェラーの新作『ウェイク・アップ・ザ・ネイション』でも全面的に楽曲の共作とプロデュー
スを手がけている。そんなサイモンのソロ・プロジェクトであるヌーンデイ・アンダーグラウンドから4年ぶりの新作が届けられた。男女の合唱を前面にフィーチュアー、“恋人たち”をテーマにしたとのことだが、まさに”21世紀型スウィンギング・ロンドン”といった感覚で紡ぎだされるドリーミーかつレトロ、それでいてブランド・ニューな独特の世界は健在。あたかも甘美な映画を見せられているかの如き錯覚におちいってしまうほどだ。なお、海外ではダウンロード配信による販売、CDパッケージでの発売は日本のみである。(小松崎 健郎)

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「グッド・ガール/ケリーリー・エヴァンス」(オーマガトキ/OMCX-1239)
 カナダからの新作は、うるおいのある魅力的な仕上がりだ。ケリーリー・エヴァンスは多民族の文化が交錯するトロントの出身。彼女はジャマイカ系の血を引く。冒頭の「グッド・ガール」を聴いて、シャーデーを彷彿とさせる。艶のある声で抑えた表現は知的でありながら温かみとビターネスが混じっている。”あなたのいい娘なんかになりたくないわ”という内容にも、彼女の主張が感じられる。好メロディーの「ステイ・アウェイク」はベースを中心としたシンプルなサウンドもよく、メイキン・ラヴのめくるめく感覚をうまく歌っている。全曲が彼女のオリジナル。繰り返して聴きたい魅力が溢れた好盤だ。(鈴木 道子)

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「ストリクト・ジョイ/ザ・スウェル・シーズン」(ソニー・ミュージック ジャパン インターナショナル/EICP-1328)
 2007年公開のアイルランド映画『ONCE〜ダブリンの街角で』で主役を演じ、シングル曲「フォーリング・スローリィー」でアカデミー賞オリジナル歌曲賞を受賞したアイルランド出身のグレン・ハンサードとチェコ出身のマルケタ・イルグロヴァの二人が結成したデュオ・グループ、ザ・スウェル・シーズンの待望のセカンド・アルバム『ストリクト・ジョイ』が届いた。本作はファースト・シングル「ロウ・ライジング」をはじめ、力強くも哀愁を帯びたグレンのヴォーカルと優しく包み込む様なマルケタの歌声が上手く絡み合い、ボーダーレスなふたりによる無国籍ラヴ・ソング集となった。(上田 和秀)

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「PURE ALOHA!/マノアDNA」(ビクターエンタテインメント/VICP-64812)
 日本デビュー・アルバムだが、ハワイでは2005年から活躍していて、わが国にもファンが多い。父とふたりの息子が織りなすハーモニーは家族のサウンド。家族を大切にするハワイだからこそ生まれた極上のバンドだ。彼らにインタビューした際、「自分達の音楽はハワイアンではなく、ポップス、フォーク、ロックなどがクロスオーバーしたところにある」と語っていたが、今回のアルバムでは「Follow Me」「Discover Aloha With Me」「Dreams Come Alive」といったところにオリジナリティーが表れている。NHK「みんなのうた」4〜5月のうたとして流れている「Aloha You〜きずな〜」は、日本語ヴァージョン、日本人の血をひく彼らだから書けた曲と言える。70年代にハワイで活躍していたパラニ・ヴォンの曲「Ka‘a Ahi Kahului」やマイケル・ジャクソンの「The Way You Make Me Feel」も彼ららしく個性的にカヴァーしている。これからの季節にぴったりのアルバム、子供も交えた家族で聴くには最高だ。日本発売を意識して制作したと思われるが、次作では彼等のオリジナリティーをより強く打ち出したサウンドを期待する。(鈴木 修一)

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「オン・ステージ レガシー・エディション/エルヴィス・プレスリー」(ソニー・ミュージック ジャパン インターナショナル/SICP2665〜6)
 1970年前後のいわゆるラスベガス・イヤーズのザ・キング、エルヴィスのライヴは素晴らしかった。場所はハワイだったが、72年にそんな時代のエルヴィスのステージを何度か味わった。初めてのときは恥ずかしながら涙した・・・。そんなエルヴィスのラスベガス・ライヴ2枚組。ベガスのインターナショナル・ホテルでのオン・ステージだ。それぞれにボーナス・トラック、そしてD1にはリハーサル・ヴァージョンも収録されているなど、マニアの心もくすぐる。ともあれ、今回ここで紹介されている30数曲を改めて堪能していると、やはり時代を超えて最高のスパースターとしての貫禄を改めて感じてしまう。エルヴィス・フォーエヴァー!(Mike M. Koshitani)

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「ベンチャーズ 60's Hit Songs 〜青春のギターケース〜」(ポニーキャニオン/DMCY-40208)
 今年の夏もやってくる、ザ・ベンチャーズ!まさにそのエレキ・サウンドは永遠なのだ。そんな彼らの『ユアヒットパレード60’s』『ユアヒットパレード? スクリーンヒッツ』『ヒットパレード60’s V−Goldライブ』『60’sロッキンクリスマス』の4枚のアルバムが高音質のHQ盤仕様で登場。その4枚が特製ギターケース型ボックスの中に収納されるというスペシャル・ヴァージョン。まさにテケテケ・オヤジたちのへのビッグ・プレゼント。もちろんギター・ピックもついている。おなじみのベンチャーズ・ヒットからロックンロール・スタンダード、映画音楽作品、そしてクリスマス・ソングス。レパートリーの幅の広さには定評のある彼らの名演が69曲も収録されている。ドンさんも吃驚の豪華ボックス!(Mike M. Koshitani)
通販ルート限定商品:(0120)737-533   http://shop.ponycanyon.co.jp/

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「スウィート・ベイビー・ジェイムス/ジェイムス・テイラー」(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR−13819)

「マッド・スライド・スリム/ジェイムス・テイラー」(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-13820)

「ワン・マン・ドッグ/ジェイムス・テイラー」(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-13821)

「ウォーキング・マン/ジェイムス・テイラー」(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-13822)

「ゴリラ/ジェイムス・テイラー」(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-13823)

「イン・ザ・ポケット/ジェイムス・テイラー」(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-13824)

 来日にあわせてワーナー時代のアルバム6作が紙ジャケで発売された。CDはもう持っているファンも多いだろうが、紙ジャケ盤は、細部まで再現しつつ改変を加えた仕様がおもしろい(たとえば『スウィート・ベイビー・ジェイムス』では帯と背でタイトルのカタカナ表記がちがう)。こういう芸は日本の音楽産業の一種の文化遺産かも。
 さて、ジェイムス・テイラーのワーナー時代は、シンガー/ソングライター・ブームを牽引していた時期にあたり、磨き抜かれた彼のヴォーカルの輝きがまず素晴らしい。淡々としているから見落とされがちだが、すごく強靭なノドの持主だ。その歌声がセクションのメンバーをはじめとする演奏の切れ味や間合いのよさとあいまって時の流れの豊かさを感じさせる。
 成長期の可能性を秘めた起爆作『スウィート・ベイビー・ジェイムス』から、年を重ねるたびにアルバムのポップな洗練度が増して行く。基本的なスタイルを守りながら70年代のR&B/フュージョン的な感覚に対応していった過程もよくわかる。どの作品もアコースティックとエレクトリックなサウンドのバランスのとり方、なまなましい空気の震わせ方が見事。進んでいるはずの現在の録音技術でこのような響きがかえってとらえられなくなっているのが皮肉といえば皮肉だ。見落とされがちな『ワン・マン・ドッグ』や『イン・ザ・ポケット』の多様性などももっと評価されていいと思う。(北中 正和)

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「パスポート/エミ・マイヤー」(PLANKTON/XQGU-1003)
 京都生まれのシアトル育ちというバイリンガルのシンガー/ソングライターのセカンド・アルバム。母が日本人で父がアメリカ人で、1歳になる前にアメリカに移住しているので、日本語はたどたどしいが母からしっかりDNAは受け継いでいるようだ。一作目のアルバム『キュリアス・クリーチャー』では、日本語詞はボーナス・トラックの「君に伝えたい」の1曲だけだったが、今回は全作品が日本語詞。微妙に日本語らしくない独特な日本語の世界とハスキーなのに透明感もある不思議な魅力をもつヴォーカルが独自なピアノの弾き語りの世界をつくりあげている。「約束」「登り坂」などは、初めて聴いたときから、わけもなく郷愁を感じさせ、なんだか日本の故郷につれていってくれるような感覚が心地いい。ジャズ、ロック、レゲエ、ボサノヴァなどのテイストもちりばめられ、ライヴ感あふれる仕上がりも秀逸。5月から始まるツアーも楽しみだ。(広田 寛治)

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「世界のアロハ・ブラザース/アロハ・ブラザース」(NAYUTAWAVE RECORDS/UPCH-20190)
 アロハとはいうもののハワイアン・バンドにはあらず。「世界各地の音楽で現地の女の子を口説く」というコンセプト(!?)のもと、ハワイ〜ジャマイカ〜メキシコ〜ロシア〜インド〜パリ〜スコットランド〜カリフォルニア〜インドネシアと巡り回ってまさにアルバム1枚で「60分間世界一周」♪現地音楽の特徴的なニュアンスをわかりやすくキャッチーに生かし言葉遊び風な歌詞もテンポ良く遊び心もたっぷり。命名時にアロハ・シャツを着用していたことでこんな名前になったという杉真理と村田和人によるこのユニットの結成は何と1991年。ようやく世に出た1stアルバムはいかにもなご両人によるシャレのめしたユーモア感覚で聴かせる楽しい‘ワールド・ミュージック’♪(上柴 とおる)

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「Seasons/The DUO〜鬼怒無月 & 鈴木大介」(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCL-10775)
 鬼怒無月と鈴木大介によるアコースティック・ギター・デュオ、The DUOの3作目は、四季をテーマにしたトータル・アルバム。「四月の思い出」等、スタンダード・ナンバーを巧い演奏とアレンジで見事なまでに自分達のスタイルに仕上げ、オリジナル曲も聴き逃すことの出来ない内容とし、全体を上手くまとめ上げている。どんなヒーリング・ミュージックよりも心地よく、決して飽きがこず、且つ演奏の力強さが伝わってくるアルバムである。(上田 和秀)

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「ヤコブの梯子/三原康可」(オクテットレコード/YZOC-2011)
 ロックのジャンルは幅広い。ハード・ロックから、バラード・ロックまで、 勿論その感性によって、あるいは、時代の環境によって表現される。 ロック・ギタリストであり、俳優でもある、三原康可が、自己のイメージからの思い描いていた世界を、今この時代に、ロックでメッセージを送り、発信しているサウンドだ。それは、あくまでも優しい、喧騒の世へのアゲインストか、エコ・ロックになっている。スピリチュアルなアルバムである。三原康可は1959年生まれで、痩身187cmの長駆であるが、そのジェントルな風貌がサウンドにも伺える。1980年ロックバンド、シルバースターズのギタリストでデビュー。90年に自身のバンド、パリ・テキサスを結成。作詞作曲も担当。また、内田裕也のトルーマン・カポーティ・ロックンロール・バンドのギタリストとしても活躍している。(池野 徹)

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「ブラック・コーヒー/ニッキ・パロット」(ヴィーナスレコーズ/VHCD-1041)
 ベースの弾き歌いという珍しい女性歌手。一作毎にうまくなってきており、今やもっとも魅力的な女性シンガーの一人になっている。今回は有名なペギー・リーとジュリー・ロンドンに捧げられており、ペギーでおなじみの「ブラック・コーヒー」は色気もあり、本家をしのぐほどのすばらしさだし、「ベッドで煙草をすわないで」「オーライト・オーケー・ユー・ウィン」「フィーバー」などどれも心を惹かれる歌いっぷりだし、「ダーク・アイズ」のエキゾティックな歌も聴きものだ。妹リサ・パロットのバリトン・ザックスも迫力があるし、ニッキ自身のベースも豪快だ。ピアノはジョン・デイ・マルティーノでハリーアレン(ts)もゲスト参加している。(岩浪 洋三)

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「シング・シング・シング 2010 − ベニー・グッドマン・トリビュート/マンハッタン・ジャズ・オーケストラ」(Birds Records/XQDJ−1015)
 昨年が生誕100周年だったスイング王・ベニー・グッドマンに捧げたアルバム。2010年となっているとおり、作・編曲者のデビッド・マシューズがベニーのオリジナル演奏にこだわらず、独創的かつ斬新なアレンジで、モダン・ジャズ化しており、このオーケストラの演奏としても、これまででベストの新鮮な出来となっている。アルバム・タイトル曲「シング・シング・シング」がとくに聴きものだが、「ドント・ビー・ザット・ウェイ」「ワン・オクロック・ジャンプ」「キング・ポーター・ストンプ」のアレンジが素晴らしく、マシューズのオリジナル「フォー・ア・グッドマン」も佳曲だ。フレンチホーン、テューバを加えたオーケストラのリッチ・サウンドもエキサイティングだ。(岩浪 洋三)

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「アローン・アンド・トゥギャザー/北島直樹 」(ティートックレコーズ/XQDN-1023)
 日本を代表するジャズ・ピアニストのひとり北島直樹の12年ぶりとなる渾身のリーダー作が、本作『アローン・アンド・トゥギャザー』だ。先ず、その音質の良さに驚かされる。ピアノのタッチ、サックスの息使い、ギターのフィンガリング等目の前で演奏しているかのように迫ってくる。オリジナル・ナンバーとスタンダード・ナンバーにより、和と洋を織り交ぜた演奏と構成、そしてソロとデュオの編成で、聴く者に安らぎと緊張を与える。唯単に巧いだけでなく、素晴らしい楽曲を作れるミュージシャンの存在に音楽ファンは注目して欲しい。(上田 和秀)

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「ジャパニーズ・ロック・インタビュー集〜時代を築いた20人の言葉〜/監修:越谷政義(Mike M. Koshitani」(TOブックス)
 総勢20アーティストの最新インタビュー集。この手のインタビュー集として珍しい西哲也(エム、ファニーカンパニー)、鳴瀬善博(カルメン・マキ&OZ、カシオペア)、ジョニー大倉(キャロル)、鮫島秀樹(ツイスト、ハウンドドッグ)といった顔に、まず惹かれる。ジョニーのキャロル秘話がなんといっても、面白い。ミッキー・カーチスによる、16チャンネルによる録音、デモで録った「グッド・オールド・ロックンロール」など4曲の洋楽の選曲、その際の矢沢永吉のやりとりなど、現場の様子や、汗の香りまでもが生々しく蘇る。そう、今は考古学的アンソロジーの時代なのだが、いよいよかつてのスタジオの香りやそれぞれの人格が醸し出す体臭の臭いまでを嗅いでみたいという欲求が、ロックの聴衆にはある。データに添えて、匂いを嗅がせろということだ。それに答えるだけの人間臭さと、探求心を備えたインタビュー集。内田裕也はここでも面白い。フラワーズのウエスタン・カーニバル公演で、無声映画「忠臣蔵」を流し、内田が弁士をやったという下りなど、もう抱腹絶倒なこと請け合いなのである。(サエキ けんぞう)

 越谷政義さんの手による、その名もズバリ「ジャパニーズ・ロック・インタビュー集」が登場。総勢20アーティストへのインタビューが収録されており、ページ数も400P超というヴォリューム。しかもその全てがこの本の為に語りおろされた最新のものというのが凄い。登場ロッカーズも錚々たるラインアップ、ロック誕生以前より我が国のポピュラー・ミュージック・シーンを牽引してきたミッキー・カーチス氏、ムッシュかまやつ氏や、永遠の“ロッケンローラー”内田裕也氏をはじめ錚々たる面々が名を連ねている。個人的に興味を惹かれたのは、原宿のライヴハウス・クロコダイル店長の西哲也氏。いつもカウンターでニコニコしている西店長も、かつては伝説のバンド“エム”や“ファニーカンパニー”で名を馳せた、バリバリのロッカーだったのだ!(町井 ハジメ)

Popular BOOK Review

「ノーザン・ソングス 誰がビートルズのリンゴをかじったのか/ブライアン・サウソール、ルパート・ペリー著西園誠・訳」(シンコーミュージック・エンタテインメント)
 タイトルの『ノーザン・ソングス』は、ビートルズ・ナンバーの大半を占めるレノン=マッカートニー作品を管理するためにデビュー直後の1963年に設立された音楽出版社のこと。当の本人たちは音楽出版や著作権に関する知識も興味ももちあわせていなかったために、そこから生まれる利益の大半のみならず楽曲の権利をも失なってしまうことになる。こういったことは70年代に入るまでは日常茶飯事だったわけだが、ビートルズが世紀を超えて世界中の人々に聴き継がれ、その楽曲がいまなお莫大な利益を生み出し続けているが故に、その権利をめぐる争いは泥沼化し、いまも関心を集めている。本書は、これまで断片的にしか知られていなかったビートルズの楽曲の権利をめぐる事実経過をていねいに整理し、その愛憎劇に焦点をあてることで、ビートルズの裏面史をみごとに描き出している。ジョンが生きていれば権利を取り戻すこともできたような気もするが、結局はジョンとポールの信頼関係が崩れてしまった時点で、ふたりの楽曲の権利は神の手に戻されてしまったのだろう。ジョージ・ハリスンは、67年に「オンリー・ア・ノーザン・ソング」という皮肉な曲を書き、68年にはノーザン・ソングスとさっさと手を切り、自身の音楽出版社ハリソングスを設立して、この不毛の争いから逃れている。ビートルズに起きている異常な事態をジョンとポールのはざまにいて常に客観視していたのはジョージだったのかもしれない。(広田 寛治)

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「ラップのことば」(ブルース・インターアクションズ)
 故ジェームス・ブラウンが1970年に「BROTHER RAPP」を録音。70年代終盤、黒人達によってNYブロンクスを拠点に育まれたRAPは、HIP HOP文化のひとつとして広まり、80年代に著しく成長。日本ではRAPの影響を受けた≪日本語ラップ≫が独自に歩んで来た。本書は、そのラップ史に大きく関わった、いとうせいこう、PES(RIP SLYME)、SEAMOなど15人のインタビュー集。ラップをはじめた経緯、代表作のエピソードは勿論。作品を生む具体的な過程が15人15色、とても面白く、且つ興味深い。中でも、日本語ラップの今後の可能性を期待させる宇多丸(RHYMESTER)、童子-T、K DUB SHINEは印象的でした。ラップ・ファンは当然、ラッパーを目指す人にとって、かなり有難い参考書。(松本 みつぐ)

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「シャボン玉とんだ宇宙(そら)までとんだ」 2月6日 テアトル銀座
 音楽座ミュージカル「シャボン玉とんだ宇宙(そら)までとんだ」は、筒井広志の「アルファ・ケンタウリの客」を原作に、筒井広志・八幡茂の音楽で、1988年、横山良和の脚本・演出、土居裕子主演で上演され、評判を呼んだ。再演希望が多く、2009年、14年ぶりに再演が実現し、生きる勇気と希望を与えると、再び話題になり、今回の上演に繋がった。出演は、高野菜々、安中淳也、浜崎真美、新木啓介、秋本みな子、藤田将範、富永友紀、広田勇二、他。佐藤伸行、五十嵐進等ベテラン陣のコミカルな演技が楽しい。(本田 浩子)
写真提供: 音楽座ミュージカル


Popular CONCERT Review

「クランツ、カーロック、ルフェーヴル」 2月18日 COTTON CLUB 
 ウェイン・クランツ(ギター)、キース・カーロック(ドラムス)、ティム・ルフェーヴル(ベース)のトリオが遂に来日した。数年前まで彼らはグリニッチ・ヴィレッジの「55バー」というところで週1回、演奏していた。彼らが出る日は開店と同時にファンがなだれこみ、たちまち満員御礼、入れなかったリスナーはドアの外で「せめて音だけでも聴かせてくれ」といわんばかりに長蛇の列を作って「まさに今、その場で創造されている前人未踏のサウンド」に聴き入った。それほど注目され、愛され、楽しみにされてきたユニットなのだ。そういう意味では遅すぎる来日だったが、とにかく日本で彼らの演奏が聴けたのは快挙だ。演奏は99パーセント即興、クランツのほんのささいなパターン提示をきっかけに、音楽は未知の領域に進んでいく。なんとスリリングでハイレベルな交歓なのか。彼らの中にはもはやジャズもロックもファンクも存在せず、ただただ自分の表現があるだけなのだろう。(原田 和典) 
写真提供:COTTON CLUB 写真:米田泰久


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「シェリル・クロウ ジャクソン・ブラウン」 3月2日 11日=東京国際フォーラム 3月12日=新宿厚生年金会館
 シェリル・クロウとジャクソン・ブラウン。微妙に音楽性や方向性は異なるものの、互いに高く評価しあい、以前から具体的な交流も重ねているふたりの「競演」を観た。前半はジャクソン、後半はシェリルが、どちらも自身のバンドを率いて約1時間のライヴを聴かせるというのが、基本的な構成だ。最近作『時の征者』にポイントを置きながら、過去の名曲もバランスよく聞かせてくれたジャクソン。ベスト・オブ・ベスト的な選曲のシェリル。一昨年秋に相次いで来日した時点でのプログラムを凝縮させた内容といったらいいだろうか。注目の「共演」パートは、最後に合流しただけの初日は中途半端な印象を受けたのだが、11日と12日は、前半の最後で全員が合体して「テイク・イット・イージー」、後半の途中でジャクソンがステージに登場して「ラヴ・ハーツ」と「ピース・ラヴ&アンダースタンディング」を歌うという流れとなっていた。形の上ではメイン・アクトとなっているシェリルがしばしばジャクソンを「私たちの先生」と呼ぶ、その声や表情も印象に残っている。ちなみに、あまり意識していなかったのだが、最終日は、個人的にもいろいろと思い出がある新宿厚生年金会館の「洋楽最後の日」だったそうだ。(大友 博)
写真:YUKI KUROYANAGI


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「ジュールズ・ホランド・アンド・ヒズ・リズム&ブルース・オーケストラ」 3月22日 Blue Note TOKYO 
 ジュールズがステージに現れ、ブギ・ウギ・ピアノを引き始めた瞬間から会場はひとつとなり、誰もがそのリズムに酔いしれる。イギリスのロック・バンド、スクイーズの元メンバーでキーボード奏者の彼の音楽にはブルース、ロック、ジャズ、R&B等、様々な要素が絡み合っているが、言い換えればそれは日々の生活に根差した“私達の”音楽であり、理屈抜きに音楽の楽しさを教えてくれるものだ。ヴォーカルのルビー・ターナーをはじめ、サポート・メンバーもそれぞれが味のある達者な人達で、何よりも彼等自身が楽しんでいる様子が伝わってくる。「テネシー・ワルツ」等、長い間、人々に歌い継がれてきたナンバーを中心とした選曲も彼らしく、アメリカ南部の週末の夜、仕事を終えた人達が集まるクラブにも似た賑やかで楽しい雰囲気に満ち満ちたライヴだった。(滝上 よう子) 
写真:佐藤 拓央


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「ダイアン・リーヴス」 3月23日 Billboard Live TOKYO
 現代黒人女性ジャズ・ヴォーカリストのトップに位置するダイアン・リーヴス。30年のプロ・キャリアを誇るヴェテランが実力者4人からなるバンドを率いて、六本木のステージに登場した。今夜のリーヴスは意識的にそうしたのか、“静”の面を多く打ち出すプログラムを聴かせてくれた。最新作からのリラクゼーションに満ちた「ソーシャル・コール」、ピアノとアコースティック・ギターだけをバックにしたバラード「アイム・イン・ラヴ・アゲイン」。ウッド・ベースとのデュオで歌い始めた「ワン・フォー・マイ・ベイビー」では、自身も歌手役で出演した映画『グッドナイト・アンド・グッドラック』の世界を再現し、ストーリーテラーとしての奥深さを実感させられた。後半に進むとスケール感豊かでドラマティックな歌唱により、リーヴスらしさを発揮。アンコールの「ユー・トート・マイ・ハート・トゥ・シング」ではマイク無しのスキャットで退場する貫禄ぶりだった。(杉田 宏樹)
写真:acane


Popular CONCERT Review

「ミシェル・カミロ & チューチョ・ヴァルデス “ピアノ・マスターズ”」 3月29日 Blue Note TOKYO  
 Blue Note TOKYO最終日の1stセットを聴いた。11年前にハヴァナで誕生したプロジェクトで、これまで世界各地のジェズ・フェスティバルに出演してきている。日本ではこれが初公演というのにはちょっと意外な気もするが、それだけに日本のファンの期待も大きくて会場は満員盛況。「南京豆売り」をオープニングに「ベサメ・ムーチョ」「ブルー・モンク」と続く。ふたりの演奏は、ときに鍵盤の上を疾走するがごとく、ときに繊細な指運びで音をつぶだたせる、まさしく超絶技巧のぶつかり合いだ。それぞれのソロを挟んで、早まわしして聴いているのではないかと錯覚してしまうような「アイ・ガット・リズム」。聴くものをこれっぽっちも飽きさせないどころか、緩急自在、自由奔放な奏法で観客をどんどんと惹き込んでいく。デュオによる8曲が終わったところで、マイラ・ヴァルデスの歌、ラザロ・リヴェロ(b)、ホアン・カルロス・ロハス(ds)、ジャロルディ・アブレイユ(conga)を加えての「エイプリル・イン・パリ」ジャム・セッションと大納得のライヴだった。アンコールは再びピアノ・デュオ、「やさしき伴侶を」でしっとりと締めくくってくれた。(三塚 博)  
写真:Great the Kabukicho


Popular CONCERT Review

「ヒラリー・コール」 3月31日 COTTON CLUB
 昨年6月の初アルバム『魅せられし心』で話題になり、ジョン・ピザレリとの初来日公演、そして秋の単独公演ですっかり日本のファンの心をつかんだヒラリー・コールのディブ・ブルーベック、ハンク・ジョーンズ等14人の第一級のピアニスト達とのデュオによる新作『ユー・ア―・ゼア〜デュエッツ』を引っさげて3度目の公演は、彼女の美貌、親しみやすい歌と飾らない人柄に惹きつけられたのか、いつもより男性客が多かった。今回は、若手の伸び盛りのピアニスト、テイラー・エイギスティに、ジョン・ハート(g)ポール・ギル(b)カーメン・イントーレ(ds)のカルテットの伴奏で歌う。今回初めて歌うビートルズの「アンド・アイ・ラヴ・ヒム」、エリントンの「ラヴ・ユー・マッドリー」他、新旧のアルバムから計13曲を快調に歌った。感情の籠ったセクシーでさえある「アンド・アイ・ラヴ・ヒム」や「エヴリィタイム・ウィ・セイ・グッド・バイ」は、特に素晴らしかった。しかし、ストレイホーンの「ラッシュ・ライフ」やデイヴ・フリッシュバーグ・ジョニー・マンデルの「ユー・ア―・ゼア」は、もうひとつ歌に深みが欲しかった。いずれにしろ、彼女は今後の活動を多いに注目していきたいアーティストだ。(高田 敬三)
写真提供:COTTON CLUB 写真:米田泰久


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「ヘレン・メリル」 4月2日 Blue Note TOKYO 
 夫君の作編曲家ピアニストのトリー・ジトー急死で年初に予定されていた公演が中止になったヘレン・メリルの喪が明けて初めてのステージを聴く。何時もの彼女のトリオのテッド・ローゼンタール(p)スティーブ・ラスピノザ(b)テリー・クラーク(ds)のインスト演奏2曲の後、丈の短い黒いワンピースで登場したヘレンは、元気そうだ。「オール・オブ・ミー」「ボーン・トゥ・ビー・ブルー」から始め「オール・ブルース」と「セントルイス・ブルース」を繋げたブルースと歌い慣れたレパートリーを12曲歌う。声域がせまくなり苦しげなところもある。「ラヴ・ミー・テンダー」をピアノとベースだけでしっとり歌っている最中に声が出なくなり、ピアノの後へ引っ込んでしまう場面もあった。最愛のトリ―の事を考えて歌っていて感極まってしまった、ということだった。気持ちのおさまる間、ピアノ・トリオで「ピープル・ウイル・セイ・ウィー・ア―・イン・ラヴ」を聴かせる。最後は、お馴染みの「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」「スワンダフル」で盛り上げた。ジミー・スコットをふと想わせる≪今は、歌だけが生きがい≫といった気持ちの入った魂を感じさせるステージだった。(高田 敬三)
写真:山路ゆか


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「ジョシュア・ブレイクストーン」 4月6日 代々木・ルーツ音楽院 
 1980年代から活動を続けるジャズ・ギタリスト、ジョシュア・ブレイクストーンが来日した。サイドメンは沢田駿祐(ピアノ)、山下弘治(ベース)、藤井学(ドラムス)。ジョシュアは最初こそアンプの不調に悩まされていたが、別のアンプに取り替えてからはもう、弾きまくること弾きまくること。自作曲「ブルース・ヒアトゥフォア」でのアドリブときたら、いつ終わるのかと思ってしまうほどの長さ、だけど同時に永遠に続いていてほしいと思わずにはいられない充実ぶりだった。ウェス・モンゴメリーのカヴァー「ソー・ドゥ・イット!」も圧巻だった。大抵のギタリストはウェスの曲を演奏すると、彼の個性に“つられて”ウェスの真似事になってしまう。しかしジョシュアはあくまでも“俺の解釈でウェスをやる”という流儀を貫き、鮮やかにロング・ソロを弾ききった。尽きることのないイマジネーション、バップ・フレーズの嵐に改めてジョシュアの底力を思い知った。(原田 和典)


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「クリス・デュアーテ・グループ」 4月8日 O-NEST
 テキサス出身の豪腕ギタリスト、クリス・デュアーテ。大阪のブルース・ロック・バンド、ブルーストーン・カンパニーと組んでのツアーを毎年日米で行っているが、今回は自らのバンドを率いての来日。トリオ編成から来る自由度を活かし、徹頭徹尾弾きまくる、怒涛のギター・プレイを聴かせてくれた。伝統的なブルース・マナーを重視する向きからは、音数が多過ぎ、弾き過ぎ、やり過ぎとの批判もあるかもしれない。確かに、すべての面で“過剰”だ。だが、その“過剰”が、飽和状態を突き抜けるとエクスタシーに変貌する。それは、ギター・プレイによって蹂躙される快感と言ってもいい。クリスは引き続き、ブルーストーンと組んでの日本ツアーを敢行。こちらでも圧巻のプレイを見せてくれた。(細川 真平)
写真:YORIKO FUKUDA


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「オータサン/Ohta-san Concert Tour 2010 with Christian Fabian」4月11日 ヤクルトホール
 ≪ウクレレの神様≫と呼ばれ、日本で最も有名なウクレレ奏者オータサン。本名はハーブ・オオタだが、世界どこでもオータサンで知られている。今回はライオネル・ハンプトン・オーケストラのベーシストとして知られているクリスチャン・ファビアンとの共演。オープニングはオータサンがひとりで登場。椅子に座り、譜面台とハンドマイクそしてマーティンのウクレレ。いつものスタイルで登場。ウクレレが昨年、使っていたペイントされた黒のマーティンから、通常の塗装のマーティンに変わっていた。まずは一人で、8曲を演奏。「きみの友だち」「星に願いを」など、ジャズ、ポップスを軽妙なMCと共に淡々と弾いていくが、3曲目あたりからは完全な”オータサン・ワールド”。途中で譜面代が高すぎて、お客さんから演奏する手許が見えないことに気づき、低くしてくれるなど、心憎いサービス。その後、クリスチャン・ファビアンが登場。マンハッタン・ジャズ・フェスティバルで9年前に共演して以来とは思えない、息の合った演奏を披露。ウクレレとベースの掛け合いは絶妙でまさに大人の世界。ハワイアンを演奏せず、「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」「クロース・トゥ・ユー」「デイ・トリッパー」などスタンダードを中心に15曲。このステージは、ヤクルトではなく、おいしいお酒と美女がとなりにいる場所で聴きたかった。(鈴木 修一)
写真:Shu Suzuki


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「ジェフ・ベック」 4月13日 東京国際フォーラム
 7年ぶりのスタジオ新作『エモーション・アンド・コモーション』を引っ提げての、ジェフ・ベック日本ツアー、最終日。新バック・メンバーとして、『ワイアード』でドラムを叩いていたナラダ・マイケル・ウォルデンと、プリンスのバックで有名な女性ベーシスト、ロンダ・スミスが参加。『ワイアード』に収録の「レッド・ブーツ」を、ナラダのドラムで聴けるとは、なんとうれしいことか。それ以外の曲でも、彼の重心の低いパワフルなドラミングは常に聴きものだった。ロンダは、どっしりとバンドを支えつつ、テクニカルなプレイで華やかさもアピール。加えてヴォーカルまで披露し、ジェフ・のステージに新しい風を吹き込んでくれた。ジェフのギター・プレイは、もう比肩すべきものは何もない。アーミング、ハーモニクス、ブリッジ・ヴィブラート、ヴォリューム奏法、タッピング、スライドと、これまでどおりの高度なテクニックを駆使しながらも、それ以上に、ニュー・アルバムで感じさせた歌心で、聴く者を圧倒し尽くした。特に、オーケストラ・パートをジェイソン・リベロがシンセサイザーで見事に再現した「誰も寝てはならぬ」での大きな感動は、ジェフのライヴを数え切れないほど観てきた私にとっても格別であり、忘れられないものとなった。(細川 真平)
写真:MASAYUKI NODA


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「キャロル・キング&ジェイムス・テーラー」 4月16日 日本武道館
 この日は、通常のジョイント・ライヴの様にステージごとにメンバーが入れ変わるのではなく、最初から最後までひとつのバンドとしてライヴを行った。キャロルはバンドのヴォーカリストであり、ピアニストであり、ある時にはバック・コーラスの一員であった、ジェイムスもヴォーカリストであり、ギタリストであった。往年のパワーそのままに歌いまくるキャロルのハスキー・ヴォイスと優しい歌声と軽いタッチのギターが爽やかなジェームズが、40年来の友人と共に名曲の数々を奏でていく。この日演奏された28曲全てが珠玉の名曲であることは、観客全員が理解しているが、その中でも「ナチュラル・ウーマン」を歌った時のキャロルのシャウトは、全く年齢を感じさせない力強さがあり、二人で歌った「ユーヴ・ゴット・ア・フレンド」は、聴く者の涙を誘う感動があった。ラストの「ロコモーション」で、会場全体がひとつとなり大合唱で盛り上がり、ライヴの幕を閉じた。心から楽しめたライヴだった。(上田 和秀)
写真:YUKI KUROYANAGI


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「マルコス・ヴァーリ・ウィズ・ホベルト・メネスカル」
 「サマーサンバ」「バトゥカーダ」などのメロディ・メイカーとして早くから知られているマルコス・ヴァーリと「小舟」「二人と海」などこれまた美しい旋律の作品で知られるホベルト・メネスカル。ブラジル音楽界のベテランふたりがブルーノート東京で同じステージに立つ。永年のブラジル音楽ファンも、最近のグルーヴ系音楽ファンも肩を並べて楽しめそうだ。(HM)
*5月25日〜28日 Blue Note TOKYO 2回公演
お問い合わせ:(03)5485-0088 
http://www.bluenote.co.jp/


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「セシリオ&カポノ」
 1972年にハワイのノースショアでセシリオ・ロドリゲスとヘンリー・カポノは出逢い、デュオを結成した。それから38年経ったが、彼等の心地よく、爽やかなサウンドは何も変わっていない。ハワイでおこなわれたフランク・ザッパのライヴにオープニング・アクトとして出演、ザッパから高い評価を得たことがきっかけとなり、74年にファーストアルバム『セシリオ&カポノ』でデビュー。ハワイ発のAORサウンドは日本でも大ヒット。75年にはアルバム『エルア』、77年に3枚目の『ナイト・ミュージック』を発表し、サーフ・ミュージックと呼ばれる、ジャンルを確立した。ハワイではソロ活動が主で、ふたり揃っての演奏を観る機会はほとんどない。「ポパイ」を読み、ニュートラ、ハマトラで街を歩き、海に行っていた世代には忘れられない彼ら。演奏を聴くと一瞬で若かったあの頃にタイムスリップしてしまう。今年もセシリオ&カポノと共に夏がやってくる。(SS)
*6月8日 9日 Billboard Live TOKYO 2回公演
お問い合せ:(03)3405-1133
http://www.billboard-live.com/

*6月10日 11日 Billboard Live OSAKA 2回公演
お問い合せ:(06)6342-7722
http://www.billboard-live.com/

尚、2007年来日時のセシリオ&カポノ・インタビューが下記で楽しめる
http://8011web.com/yourstory/2007/10/post_2.php

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「PALENA'OLE with NICOLE FOX(パレナオレ・ウィズ・ニコール・フォックス)」
 ハワイの実力派ミュージシャンが結成した新しいバンドのライヴが行われる。パンダナス・クラブ、カワイロアのメンバーとして活躍し、ハワイ最高の音楽賞、ナ・ホク・ハノハノ賞を3度受賞しているアルデン・リーバイと日本で発売されているハワイアンのコンピレーション・アルバムに数多くクレジットされているクヒオ・イムのふたり。ハイスクール時代からの友人で20年以上のキャリアを持つ彼らは、ハワイではなく、日本での再会を機に新しいグループを結成し、ハワイアン・トラディショナルを中心に聴かせてくれるという。どんなハーモニーを聴かせてくれるのか楽しみだ。そして、今回は2008年ミス・ハワイのニコール・フォックスがフラで共演する。日本にも彼女のファンは多い。5歳からフラをはじめ、名門フラ・ハーラウ・カムエラのメンバーとして美しいフラを見せてくれる。新グループと美しきダンサーのコラボレーション、興味深いライヴだ(SS)

*6月8日 9日 COTTON CLUB 2回公演
お問い合わせ:(03)3215-1555 
http://www.cottonclubjapan.co.jp/

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「ロニー・ジョーダン」
 1991年にデビュー、UKクラブ・ミュージック・シーンを震撼させ、ジャズ・R&B・ヒップホップあらゆるジャンルの音楽を縦横無尽に飛び回るファンキー・ギター・ヒーローのロニー・ジョーダンが、コットン・クラブに登場する。今回のライヴは、オルガン・トリオにヴォーカルをフューチャーし、より一層ファンキーなグルーヴでファンを魅了することだろう。(KU)
*6月11日〜13日 COTTON CLUB  2回公演
お問い合わせ:(03)3215-1555
http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/index.html

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「セレブレイティング・ザ・ミュージック・オブ・グローヴァー・ワシントンJr./トゥ・グローヴァー・ウィズ・ラヴ」
 2001年にグラミー賞を受賞したキーボード奏者ジェイソン・マイルスを中心に、ジャズ・フュージョン界の伝説のサックス奏者グローヴァー・ワシントンJr.を愛して止まないミュージシャン達が東京に集結し、トリビュート・ライヴを行う。スペシャル・ゲストとしてパーカッションの巨匠ラルフ・マクドナルドも参加する。一流ミュージシャン達の演奏によるワシントンJr.の名曲が、多くのジャズ・ファンを陶酔境へと誘うことだろう。 (KU)
*6月11日〜14日 Blue Note TOKYO  2回公演
お問い合わせ:(03)5485-0088 
http://www.bluenote.co.jp/