2009年12月 

 
Popular ALBUM Review


「クリスマス・イン・ザ・ハート/ボブ・ディラン」
(ソニー・ミュージック ジャパン インターナショナル/SICP-2477)
 ボブ・ディランがサンタクロースのようにプレゼントを抱えてやって来た。そんなアルバムだ。≪ニュー・レコーディング≫≪クリスマス・アルバム≫≪チャリティー≫と三つの要素を持つこのアルバムは、ディランが世界中の人々に送ってくれたすてきなクリスマス・プレゼント。ディランはこのアルバムから受け取る印税のすべてを、飢えに苦しむ子供たちのためにチャリティーとして寄付するという。素晴らしい!ディランは、クリスマスを代表するよく知られた歌を歌っている。自作のオリジナル・クリスマス・ソングは1曲もない。古くから歌い継がれてきた敬虔なキャロルや、1950年代に作られたクリスマス・ソングから15曲が選ばれている。家族や友人と過ごす楽しい歌、故郷から遠くはなれてひとりで過ごす悲しい歌、キリストの生誕を祝い喜びを歌う歌など、心の中のさまざまなクリスマスの歌を選び、想いを込めて歌っている。見事な歌唱力だ。かつてクリスマス・アルバムの代表作といえば、ビング・クロスビー、エルヴィス・プレスリー、アンディ・ウィリアムスといったアーティストの作品だったが、ディランはこのアルバムで彼らの仲間入りを果たした。ディラン・ファンだけでなく、世代を超えた多くの人が楽しめる。今年のクリスマスは、この1枚で決まりだ。(菅野 ヘッケル)

 あの鈴の音に彩られた「サンタクロースがやってくる」で幕を開け、なんとも印象的な「アーメン」で幕を閉じる本格的な、正真正銘のクリスマス・アルバムがボブ・ディランから届けられた。取り上げられているのは聖歌や讃歌、スタンダードなど、そのほとんどが、この国でのあまりの馬鹿騒ぎのせいで「クリスマス」という言葉を耳にしただけで拒否反応を起こしてしまう僕でも知っている曲だ。68歳のディランは、綿密に練り上げられたと思われるそのクリスマス・セレクションを、あくまでも原曲のイメージや味わいを大切にし、美しくして優しい女声コーラスを生かしながら、そのうえで、いつものあの声で歌っていく。背景や意図の詮索など無意味。ただ耳を傾ければ、あるいはこの豊かな音に身を委ねればいい。ちなみに僕は、なぜか「レット・イット・ビー・ミー」を思い出したりした。ローリング・ストーン誌のアルバム500選で『追憶のハイウェイ61』を自身のベストとしてあげていたジャクソン・ブラウンのスタジオで録音されていること、収益は永久に食糧支援関連の団体に寄付されることも付け加えておこう。(大友 博)

Popular ALBUM Review

「クリスマス・アレサ/アレサ・フランクリン」
(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-13720)
 長いキャリアを誇るソウルの女王アレサ・フランクリンだが、これが初のクリスマス・アルバムだ。本格的に取り組んでいて、聴き応えがありながら、親しみもある作り。古今の名曲中の名曲を選び、存分にシャウトし、ゴスペル&ジャジーに好唱している。アレサ自身のピアノを基調にした「サイレント・ナイト」の彼女らしい堂々たる歌唱のスピリチュアルな深さは、続くグノーの「アヴェ・マリア」にも引き継がれる。「ワン・ナイト・ウィズ・ザ・キング」も熱傷。またダニー・ハサウェイの「ディス・クリスマス」は家庭的なセリフ入りでジャジーに親しみ易く、ポップなソウル曲や平和を願う曲、クリスマスのお話なども聴かれて楽しい。(鈴木 道子)


Popular ALBUM Review


「ラヴ・イズ・ジ・アンサー/バーブラ・ストライサンド」
(ソニー・ミュージック ジャパン インターナショナル/SICP2442〜3)
 早くから噂になっていたバーブラ とジャズのダイアナ・クラールの共演が、遂に形となった。この新作は、静かで豊な人生を送っているバーブラの心境がよく現れた2枚組だ。しっとりと深く美しい。曲目の紹介もしている。Disc1 はジョニー・マンデル編曲によるオーケストラ・ヴァージョン、Disc2はダイアナ・クラール・カルテットとのアンプラグド・ヴァージョン。ダイアナはプロデューサーに徹し、一緒に歌ったりピアノを終始弾いたりはしない。2枚とも曲目ガ同じなのもいい。共通しているのは静けさとデリカシー。オーケルトラ・バックの方は抑えた表現の中に細やかな表情が伺え、バーブラ節ものぞいて優美。従来のファン向き。カルイテットとはシンプルでインティメイトな親しみ易さが新しい。ボンファのボサノヴァ「ジェントル・レイン」はダイアナのピアノも加わりしっとりと美しく、ブレルの「行かないで」は余韻が残る好唱。D2の方は更に抑えた表現でモノローグ風のドラマに心打たれる。(鈴木 道子)

Popular ALBUM Review

「静かな夜に/エリン・ボーディー」(オーマガトキ/OMCZ-1033)
 様々なクリスマス・アルバムがリリースされる季節になったが、これはクリスマスを含む≪冬≫をテーマに届けられたシーズン・グリーティング・アルバム。但し、お馴染みの曲は「清しこの夜」ぐらいで、あとはスタンダードをあえて避け、彼女のオリジナルや個人的に想い出深い曲をピック・アップ。アコースティック編成によるシンプルなサウンドをバックに透明感溢れる歌声を披露している。バック・ヴォーカルに彼女の母親が参加したり、全体を通して感じられる手作り感からも、これは彼女の思い入れが詰まったパーソナルな作品とも言えるが、歌声に込められた思いや優しさは万人の心に響くもの。凍えた心をも溶かしてくれる美しさに満ちた1枚だ。(滝上 よう子)

Popular ALBUM Review

「夢やぶれて/スーザン・ボイル」
(ソニー・ミュージック ジャパン インターナショナル/SICP-2485)
 
ポール・ポッツに続いて≪ブリテンズ・ゴット・タレント≫の健闘でスポットを浴び、動画サイトから日本の地上波のテレビまで世界的なメディア・ジャックで話題になっていた48歳の歌姫堂々のデビュー・アルバム。番組で歌っていた「レ・ミゼラブル」の「夢やぶれて」やインターネットで話題になった「クライ・ミー・ア・リヴァー」の路線をイメージしていた人も多いと思うが、オープニングに収録されたローリング・ストーンズの「ワイルド・ホース」やパティ・グリフィン作のスピリチュアル・ソング、さらにゴスペルやモンキーズのカバーなど多彩な選曲が成功しており、彼女の表現力も見事だ。日本盤には「翼をください〜Wings To Fly」をボーナス・トラックで収録。(村岡 裕司)

Popular ALBUM Review

限定盤

通常盤
「ザ・サークル/ボン・ジョヴィ」
(ユニバーサルミュージック/UICL-9080=限定盤 UICL-1092=通常盤)

 デビュー25周年を迎えたボン・ジョヴィというバンドは、絶対的なフロントマンであるヴォーカルのジョン・ボン・ジョヴィとサウンドの要であるギターのリッチー・サンボラのバランスに成り立っていると言っても過言ではない。リッチー・サンボラというギタリストは、決して派手さはないが、堅実なプレーで演奏を締め、ここ一発のキメ・フレーズは最高の物を持つ、バンドのギタリストとしては一級品のギタリストである。個人的には、もっと評価されても良いギタリストだと思う。この『ザ・サークル』でも、随所に彼のプレーが光る。ジョン・ボン・ジョヴィもじっくり聴かせてくれる大人のヴォーカルを披露し、バンドの演奏も疲れずに全12曲一気に聴かせてくれるクオリティに仕上がっている。既にファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル・クリスタルベアラーのCMソングに使用されている「ウィー・ワーント・ボーン・トゥ・フォロー」を始め、現在の世界情勢を背景にメッセージ性の高い、大人になったボン・ジョヴィを垣間見ることの出来るアルバムである。ストレッチを受けるジョン・ボン・ジョヴィのシーンから始まる初回限定盤のDVDには、長期間に及んだロスト・ハイウェイ・ツアーにそしてバンド活動そのものに疲れたメンバーのステージ上では決して見せることのない素の姿が詰め込まれている。だからこそ、メンバーが音楽やバンドに真面目に取り組んでいる姿は、多くのファンの共感を呼ぶだろう。一身に注目を浴び、バンドを仕切るジョン・ボン・ジョヴィに、ミック・ジャガーが重なって見える。(上田 和秀)

Popular ALBUM Review

「MR.VOCALIST X'MAS /エリック・マーティン 」
(ソニー・ミュージックジャパン インターナショナル/ SICP-2422)

 12月の来日公演が決定しているMR.BIGのヴォーカリスト/エリック・マーティンのカバー・アルバム・シリーズ最新作は、日本の曲を中心としたクリスマス・ソング集だ。日本フリークのエリック・マーティンらしく、山下達郎の「クリスマス・イブ」から始まり、今まで誰もカバーしなかったB'zの「いつかのメリークリスマス」、桑田佳祐の「白い恋人達」といった日本におけるクリスマス・ソングの定番から、ジョン・レノンの「ハッピー・クリスマス(War Is Over)」、ワムの「ラスト・クリスマス」、そして勿論「ホワイト・クリスマス」といった世界の定番まで、これ1枚あればクリスマスはOKという感じだ。それに加え、非常に音質が良いのも嬉しいプレゼントとなった。(上田 和秀)

Popular ALBUM Review

「カラー・ミー・フリー/ジョス・ストーン」
(EMIミュージック・ジャパン/TOCP-66924

 ソウルフルで情感豊な歌い声は1960&70年代のアメリカ南部の実力派黒人女性シンガー達を彷彿させる。しかし、ジョスは現在まだ22歳。ベティ・ライト、スモーキー・ロビンソンなどのベテラン達が彼女に惹かれたのは、とてもうなずける。2年半振りの新アルバムである本作にもジェフ・ベック、シーラEのベテラン・ゲストが参加。さらにラファエル・サディーク、Naz、ディヴィッド・サンボーンなどの豪華ゲストの名も。近年、シャネルのテレビCMでナット・キング・コールの「L.O.V.E.」をカバー、注目を集め新たなるファンが急増中のジョス。UK出身の若き実力派女性シンガーが放った本作は、とても奔放で楽しめる。発展途上の様々な試みに今後の期待が膨らむ。(松本 みつぐ)

Popular ALBUM Review

「ヴィデオ・スターの悲劇/ロビー・ウィリアムス」
(EMIミュージック・ジャパン/TOCP-66915)

 ロビー・ウィリアムスの3年振りのアルバム。DJ視点の最大の注目は本作のプロデュースに迎えられたトレヴァー・ホーン。フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド、イエスの「ロンリー・ハート」、t.A.T.u.などの前衛的なヒット曲でダンスフロアを沸かしたホーンと全世界で5500万枚のセールスを樹立したロビーとのコラボは実に興味深い。そういえばロビーもテイク・ザット時代にタバレスの70sディスコ・ヒット曲「It Only Takes A Minute」をカバー・ヒット。35歳になったロビーの新アルバムのタイトルは「ヴィデオ・スターの悲劇(Reality Killed The Video Star)」。ホーンのバグルス時代の70sヒット曲「ラジオ・スターの悲劇(Video Killed Radio Star)」を由来する点もR35世代の心を揺さぶる。(松本 みつぐ)

Popular ALBUM Review

「ダス・ポップ/ダス・ポップ」(EMIミュージック・ジャパン/TOCP-66926)
 一本調子の単なるギター・ポップ・バンドじゃない。ベルギー出身のDAS POPが繰り出すサウンドの何と自由闊達?なこと。60Sや80sポップの感性をも合わせ持ち、ビート・ナンバーもパンキッシュな曲もキャッチーなフックを効かせたツボを心得た作りでリスナーの耳を瞬時に捉える。ストリングスを配して時にはドリーミーでソフト・ロックでアコースティックで。。。12曲目「セプテンバー」は10 .C.C.の「アイム・ノット・イン・ラヴ」を思い浮かべてしまった。ポップ・ミュージックというものを自在に操っているかのようなこの4人組はこれがいわゆるデビュー・アルバムだが結成からのキャリアはすでに10年余とか。(上柴 とおる)

Popular ALBUM Review


「チック・コリア・ソングブック/マンハッタン・トランスファー」
(キングレコード/KICJ569)
 マンハッタン・トランスファー結成40周年の話題の新作はチック・コリアの作品集だ。カッコよく聴き応えガある傑作に仕上げている。両者の関係は1975年に遡る。マントラのメンバーたちがチックの家を訪ねた時に、いつか一緒に仕事をしようと語り合ったという。有名曲だけでなく新曲や知られざる曲もあり、選曲に時間をかけ、歌詞を新たに書いてもいる。新曲「フリー・サンバ」はチックも参加し、切れのいい躍動感が気持ちよい。「プレリュード」は「アランフェス」からで、アル・ジャロウの歌詞を使っている。「スペイン」は彼らの定番になるだろう。トランペッターだったチックの父親に捧げたサルサ風「アルマンドス・ルンバ」も聴き応えがある。チックのようなインストによく挑戦して完成させたものだ。彼らの代表作になるに違いない。(鈴木 道子)

 4人の卓越した歌唱技術に裏打ちされた響きはジャズ・コーラスの長い歴史の中でも他のグループの追随を許すものではないだろう。スリリングで実に微妙なハーモニーの中に、軽妙でポップなフレイバー埋め込んで聞かせる洗練された技巧は、1979年の『バードランド』で花開き、多くの人に衝撃を与えた。いまも耳にくっきりと焼き付いているというリスナーも少なくないだろう。それから30年、彼らのチャレンジ精神はチック・コリアの楽曲に歌詞をつけて≪ハモる≫という大胆な発想へと展開した。チックの作品は複雑な構成の器楽曲がほとんどだ。これらをグループの鋳型に押し込んでしまうのではなく、自由闊達に発展させて聴かせてくれる。選曲に苦労したことがメンバーたちのメッセージからも読み取れるが、いずれにしてもこれらを肉声で表現してしまうのだから「ジャズ・コーラス、ここに極まれり」なのである。(三塚 博)

Popular ALBUM Review

「ジャイルス・ピーターソン・プレゼンツ・ハバナ・カルチュラ・ニュー・キューバ・サウンド」(BEAT RECORDS/BRC-247)
 英国クラブ・シーンを牽引するジャイルス・ピーターソンが、キューバの新世代ミュージシャンたちを紹介する形式で、現地ハバナでプロデュースした作品。「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」がライ・クーダーの手によってあまり知られることのなかったキューバの老ミュージシャンたちにスポットを当てて世界的な注目を集めたことは記憶に新しい。一方こちらはハバナの今のグルーヴ、アフロ・キューバン・ジャズからヒップホップ、レゲトン、R&Bにいたるまでニュー・ジェネレーションにフォーカスした2枚組コンピレーション作品。1枚目はラテン・ジャズの若き天才と評されるロベルト・フォンセカとのコラボによる新録音作品。2枚目はジャイルスがハバナで注目される新進気鋭のアーティストをコンパイルしたもの。いずれもジャイルスならではの選択眼が見事に反映されている。(三塚 博)

Popular ALBUM Review

「ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト!(40周年記念デラックス・エディション)/ザ・ローリング・ストーンズ」(ユニバーサルミュージック/UICY-1455)
 2008年出版の『MYSTERY TRAIN』第5版を読み終えたところ。本文の2倍近くに拡大した追記/ディスコグフィのなかでグリール・マーカスは「ロバート・ジョンソンとロックンロール」という項を設けて、ロック・アーティストによる優れたカバー10曲を紹介し、ストーンズの「ラヴ・イン・ヴェイン」を5位にあげている(1位はやはり彼らの「ストップ・ブレイキング・ダウン」)。ただし彼が選んだ「ラヴ・イン・ヴェイン」は『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』収録のもの。「スタジオ版は堅苦しい。ライヴ版ではジャガーを見過ごしたものを、テイラーのギターとワッツのドラムスが表現している」と注釈を加えてもいる。前置きが長くなったが、その読了直後という絶妙のタイミングで『ゲット』40周年記念デラックス・エディションを入手し、あの時代を思い返しながら、懐かしく堪能した。オリジナル版と同内容のディスク(1)「サティスフォクション」など5曲の未収録曲を収めたディスク(2)、共演したB.B.キングとアイク&ティナのライヴを収めたディスク(3)、そしてディスク(2)と同じ曲のライヴ映像にドキュメンタリー要素を加えたDVDで構成された4枚組。貴重な写真もたっぷりと紹介されたブックレットとあわせて、69年晩秋のマジソン・スクエア・ガーデンへと聴く者を誘ってくれる。そして、40年前のあの一時期がロックという文化にとってどれほど大切なものだったかをあらためて認識させてくれる。(大友 博)

Popular ALBUM Review

「ドゥ・ホワット・ユー・ウォント、ビー・ホワット・ユー・アー/ダリル・ホール&ジョン・オーツ」(ソニー・ミュージック ジャパン インターナショナル/BVCP-40150〜40153)
 ファンにとっては嬉しい限りの待望4枚組BOX♪ベスト盤の類はそれこそ何種類も世に出されてはいるがレーベルの枠を超えて無名時代の1960年代後期〜2000年代の近作までを網羅したこのセットはまさに決定盤!未発表の楽曲&ライヴ音源も16曲収録。ダリル参加の4人組テンプトーンズがArcticから出したシングル音源2曲(海外では編集盤でCDアルバムも出ている)もこれでようやく日本でも普通に聴けるようになるのだが、個人的には同じ頃にジョン参加のマスターズがCrimsonから出したシングル曲まで入っているのがありがたい(オークションで入手した原盤シングルが傷ありで。。。)。久しぶりにまたH&Oのライヴを見たくなって来た♪(上柴 とおる)

Popular ALBUM Review

















「アベタイト・フォー・ディストラクション/ガンズ・アンド・ローゼズ 」
(ユニバーサルミュージック/ UICY-94334)

「GN'R ライズ/ガンズ・アンド・ローゼズ 」
(ユニバーサルミュージック/ UICY-94335)

「ユーズ・ユア・イリュージョン?/ガンズ・アンド・ローゼズ 」
(ユニバーサルミュージック/ UICY-94336)

「ユーズ・ユア・イリュージョン?/ガンズ・アンド・ローゼズ 」
(ユニバーサルミュージック/ UICY-94337)

「スパゲッティ・インシデント?/ガンズ・アンド・ローゼズ 」
(ユニバーサルミュージック/ UICY-94338)

「ライヴ・エラ '87〜'93/ガンズ・アンド・ローゼズ 」
(ユニバーサルミュージック/ UICY-94339/40)

 12月の来日公演が決定しているアメリカンHR/HMの王者ガンズ・アンド・ローゼズ(GN'R)のアルバム6タイトルが、紙ジャケ/SHM-CDコレクションとして発表された。

『アベタイト・フォー・ディストラクション』は、全米No.1シングル「スウィート・オブ・マインド」、名曲「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」、「パラダイス・シティ」等を含む世界中に衝撃を与えた1987年の記念すべきデビュー・アルバムである。ファンには嬉しい幻の米初回盤LPを再現したボーナス紙ジャケ等おまけ満載のサービス盤だ。

『GN'R ライズ』は、『Live?!*@Like a Suicide』に名バラード「ペシエンス」やアコースティック4曲を加え、音楽性の広さを全世界に証明した問題のセカンド・アルバムである。『ユーズ・ユア・イリュージョン?』、『ユーズ・ユア・イリュージョン?』は、あえて2枚組アルバムとせずに、2枚のアルバムに分け同時リリースし、全米のみならず世界中のチャート1位、2位を独占したGN'Rのピークを詰め込んだバラードの名曲「ノーヴェンバー・レイン」、映画『ターミネーター2』主題歌「ユー・クッド・ビー・マイン」を含む、サード・アルバム2枚(?)である。

『スパゲッティ・インシデント?』は、セックス・ピストルズ、T・レックスと言った自分たちバンドの音楽性に影響を受け、ミュージシャンとしてリスペクトし続けているアーティスト達のカバー曲を並べた、どちらかと言うとヴォーカルのダフ・マッケイガンがメインとなったバンドのルーツを探るアルバムである。

『ライヴ・エラ '87〜'93』は、正に当時≪最強のライヴ・バンド≫だったGN'R全盛期のライヴ・パフォーマンスを凝縮したベスト・ライヴ・テイク2枚組アルバム。ロックに熱くなりたい時、大音量でGN'Rを体感するならこのアルバムがお薦め。ライヴが待ち遠しいGN'Rファンは、どのアルバムも必聴である。(上田 和秀)

Popular ALBUM Review


「THIS PRECIOUS TIME/THE WORLD'S LAST PRIVATE CITIZEN/BARRY McGUIRE」
(Collectors' Choice MUSIC/CCM-2053)*輸入盤

 1965年の全米No.1ヒットで≪反戦ソング≫としてポップ史に刻まれている「明日なき世界」で知られるバリー・マクガイア(元ニュー・クリスティ・ミンストレルズ♪)。同曲を収めたダンヒルからの1stアルバムは日本でも既CD化だが、一般的にはほとんど知られていない?以降の2ndと3rdが今回1枚のCDにまとめられた。それぞれからは72位と62位のヒット曲しか出ずセールス的には全く振るわなかったものの特に2ndではブレイクする前のママス&パパスが7曲でバック・コーラスを付けており、バリーが歌った「夢のカリフォルニア」はその後、リード・ヴォーカルと間奏の楽器を差し替えてママ・パパの大ヒット・ヴァージョンになるなど興味深くママ・パパのファンは必聴♪(上柴 とおる)


Popular ALBUM Review




「RE:ROCK 〜Legend Of Super Rock〜 Vol.1/VA」
(OCTET RECORDS/YZOC-2012)

「RE:ROCK 〜Legend Of Super Rock〜 Vol.2 SIBGLE COLLECTION/VA」
(OCTET RECORDS/YZOC-201)

 ≪New Adult Music≫を標榜するOCTEC RECORDSより、1970年代前半のJAPAN ROCKのコンピレーション2枚が登場。11月25日に発売になったVol.1は、冒頭の内田裕也&1815 Super Rock'n Roll Bandによる「恋の大穴」「コミック雑誌なんかいらない」で、のっけからボルテージは最高潮。他にはジョー山中、桑名正博(ファニー・カンパニー)ら、現在でも活躍中のミュージシャンの初期作品に加えて、今では容易に聴く事が出来ないToo Muchや羅生門の貴重な音源も含まれている。12月16日にリリースされるVol.2は、当時シングルとして発表された作品からのセレクトで、こちらでもファーラウトなどの珍しい音源が聴ける。萩原健一フィーチャリング水谷豊の「兄貴のブギ」も登場。最後に収められたFLOWER TRAVELLIN' BANDの熱演は、やはり圧巻。まだまだ埋もれている名曲は多いので続編に期待!(町井 ハジメ)


Popular ALBUM Review




「WHITE BOX -INVITATION YEARS- /シーナ&ロケッツ」
(ビクターエンタテインメント/VIZL-361)

「BLACK BOX -SPEEDSTAR YEARS-/シーナ&ロケッツ」
(ビクターエンタテインメント/VIZL-36)

 ≪アルバムBOX≫2タイトル同時発売!1978年、エルボン・レコードよりデビューしたシーナ&ロケッツは、その後アルファ・レコードを経て、1984年ビクターへ移籍。この「2BOX」は、それ以降現在に至るまで彼らの軌跡を克明に再現したものである。
「ホワイトBOX」(1984年〜1989年)は ビクター「インヴィテーション」在籍時代の8作品を収録。シナロケの代表作である「レモンティー」の初CD化他、全タイトル豪華紙ジャケットで復刻。当時のプロモーション・ビデオを収録したDVDを含む超豪華セット。
「ブラックBOX」(1990年〜2008年)はビクター「スピードスター」在籍時代におけるオリジナル6作品+ボーナス・トラック3曲を追加。全タイトル紙ジャケット復刻仕様。プロモーション・ビデオを収録したDVDを含むスーパー豪華セット。
 なお、時期を同じくして、わたくしめがプロデュースしたシーナ初の自叙伝「YOU MAY DREAM」(じゃこめてぃ出版)が発売されます。(伊丹 由宇)


Popular ALBUM Review

初回盤限定
通常盤

「Velvet Velvet/カーネーション」(ブルース・インターアクションズ/PECF-9001=初回盤限定DVD付2枚組  PECF-3003=通常盤)
 昨年(08年)、結成25周年を迎えたことも記憶に新しいカーネーション。デビュー当時からのオリジナル・メンバーは直枝政広(Vo、G)ただ一人となってしまったものの、日本のロック・シーンにあって時流におもねることなく、しかし確実に後進ミュージシャンにとって一つの指針となってきたばかりか、今なお新しいファン層を獲得し続けている。そんな彼らの3年ぶりとなる待望のニュー・アルバムは、ポップなメロディーと情感溢れる詞に重きを置きつつ、独特のグルーヴ感に彩られた極上のロック・ナンバーで満載だ(初回限定盤はDVD付き)。なお、同時に前身バンド、耳鼻咽喉科の80年代初期の音源からなるBOXが登場するほか、コロムビアからも94年の大ヒット作『EDO RIVER』をはじめとする諸作品のデラックス・エディションが再発される。これを機に彼らの四半世紀を今一度じっくり振り返ってみよう。(小松崎 健郎)


Popular ALBUM Review


「ベスト・オブ・アストル・ピアソラ/アストル・ピアソラ」
(ソニー・ミュージック ジャパン インターナショナル/BVCP40130)

 もう30年も前のことだがタンゴ歌手の阿保郁夫さんがピアソラを薦めてくれたことをふと思い出した。「映画音楽を聴いているような気分になることもある」と語ってくれた。タンゴのもつ一般的なイメージからは逸脱した演奏は、時にアグレッシヴであり時に映像的でまさに変幻自在、「タンゴの革命児」の名にふさわしいインパクトを感じさせた。その後の人気ぶりはTVコマーシャルにまで彼の楽曲が登場するほどになったことでもお分かりのとおりだ。本作品は日本のタンゴ界をリードする小松亮太氏が選曲を手がけている。1961年から82年までのピアソラの軌跡を追って構成しているが、そのことよりも同じバンドネオン奏者としてのこだわりや演奏家としてのたしかな耳が凝縮されているところに価値がある。「アディオス・ノニーノ」や「ブエノスアイレスの四季」など17曲を収録したベスト・テイクだ。(三塚 博)


Popular ALBUM Review


「いつか王子様が/アレクシス・コール」(ヴィーナス・レコード/VHCD-1035)
 太くて低いジャズ向きのいい声をしているし、ソウルフルで、フィーリングも抜群だ。このところ新進の女性歌手が次々に登場しているが、中でももっとも際立ったひとりといえる。白人だが、ちょっと黒っぽさもあり、メロディーを大切にして歌い上げているところも好感がもてる。アルバム・タイトルが示すように、ディズニー映画からの曲を集めて歌っているのだが、それらをジャジーに歌い上げていて、才能を感じさせる。タイトル曲の「いつか王子様が」のほか「星に願いを」「ワンス・アポンナ・ドリーム」「イフ・アイ・ネバー・ニュー・ユー」など佳曲ぞろいで12曲歌っている。共演はフレッド・ハーシュのピアノ・トリオを中心にハーモニカやドン・ブレイデンのss、ts、flも配している。(岩浪 洋三)


Popular ALBUM Review


「Sweet Soul Days/安富祖貴子」(ポニー・キャニオン/MYCJ 30559)
 個性的なジャズ・シンガー、安富祖貴子の2006年の華々しいアルバム・デビユー以来早くも4作目になる新作は、なかなかの聴きものだ。プリンス、スティング、マイケル・ジャックソンからジョニー・ナッシュ、ロバータ・フラックなどのロック、ソウル畑のヒット・ナンバー11曲を、素晴らしい声の持ち主の彼女だが、ここではギター、パーカッションを上手く使ったコンテンポラリーな感覚の編曲で、抑え気味に柔らかく優しく歌っている。次作は、どんなものかと期待をさせるような進化を続ける彼女の歌だ。(高田 敬三)


Popular ALBUM Review


「シング・ワンス・モア〜ディア・カーペンターズ/平賀マリカ」
(Birds Records /DDCB-13014)

 目下絶好調のジャズ歌手、平賀マリカがポップ・グループ、カーペンターズのヒット曲を集めて歌い、新生面を開拓している。「イエスタデイ・ワンス・モア」「トップ・オブ・ザ・ワールド」「クロース・トゥ・ユー」「ジャンバラヤ」などをジャズ・タッチでさわやかに歌っており、いきいきとした魅力的なヴォーカル・アルバムとなっている。笹路正徳(p)のフュージョン・タッチのアレンジもよく、レゲエ調の編曲をはじめ、R&B、ポップ、ロックなどを導入した多彩なサウンドを聴かせてくれる。井上陽介(b)、井上信平(fl)、浜田均(vib)、小池修(sax)らの名手によるサウンドもリッチだ。ともあれ、平賀マリカの表現力の多彩さが光る。(岩浪 洋三)


Popular DVD Review


「ギミー・シェルター/ザ・ローリング・ストーンズ」≪デジタル・リマスター版≫
(ワーナー・ホーム・ビデオ/DLV-75597)

 ローリング・ストーンズのライヴ映像の最高峰とも謳われる名作『ギミー・シェルター』の再リリース! 今回は未公開映像も収録されていて、キース・リチャーズとミック・ジャガーがエンジニアのグリン・ジョンズらとライヴ音源のミックスにいそしむ映像などがとても微笑ましくておもしろい。ほかにもチャック・ベリーのカバー2曲や「放蕩むすこ」のライヴ映像もあるし、アイク&ティナ・ターナーと楽屋裏でじゃれ合うミックがとてもかわいいし、ブルース少年ぶりをぶりぶりに発揮してイケている。ライヴ本編については幻の『レディース&ジェントルマン』などと並んで現存するストーンズのライヴ映像では最高峰のもので、まだ若き日のバンドの妖艶な魅力と迫力が匂いたつような映像と音が実に素晴らしい。もちろん『シャイン・ア・ライト』の達観も素晴らしいが、この若気の至りと色気もまた、たまらないのだ。また観客のひとりが刺殺される「オルタモントの悲劇」の実録映像としても有名。(高見 展)


Popular DVD Review


「AT THE MAX/ザ・ローリング・ストーンズ」
(ユニバーサルミュージック/UIBY1060)

 ストーンズはライヴ・バンドだ、デビュー以前から数多くのステージをこなし、その姿勢は現在も変わっていない。2010年には再びツアーが、という水面下の情報も入ってきている・・・。そんなシーンのトップをころがり続ける世界最強ロックンロール・バンドの1990年の映像記録。同年夏のヨーロッパでのライヴをミック・ジャガーの発案でアイ・マックス収録。我が国でも公開された、のちにVHS/LDでリリースされたが今回DVD化。初の日本公演終了後のステージだけに、思わず90年2月の10回公演@東京ドームも彷彿とさせてしまう。(Mike Koshitani)


Popular DVD Review

限定盤
通常盤

「ライヴ・アット・ザ・マジソン・スクエア・ガーデン/ボン・ジョヴィ」
(ユニバーサルミュージック/UIBL-19026=限定盤 UIBL-1020=通常盤)

 本DVDは、2008年世界中を熱狂の渦に巻き込んだロスト・ハイウェイ・ワールド・ツアーの最終公演となったニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンで行われたライヴの模様を収録した、デビュー25周年を迎えたボン・ジョヴィのベスト・テイク・ライヴである。「ロスト・ハイウェイ」「イッツ・マイ・ライフ」「レイズ・ユア・ハンズ」等ノリノリの曲で会場全体を興奮状態にしたかと思えば、「リヴィング・イン・シン/愛のチャペル」、「ハレルヤ」でジョン・ボン・ジョヴィがじっくり歌を聴かせ、そしてリッチー・サンボラが歌う「ウィー・ガット・イット・ゴーイング・オン」など心憎い演出が多数あり、聴かせ所見せ所満載である。最近のライヴDVDは、音質・映像共に非常に優れていて各楽器のバランスも良く、カメラもバンドの邪魔をすることなく、ジョン・ボン・ジョヴィの表情、リッチー・サンボラの指の動き等を抜群のアングルでメンバーのアクション全てに迫る。カスタマーは、会場にいる以上の臨場感で、ライヴを堪能できる。(上田 和秀)


Popular BOOK Review

「マイケル・ジャクソン全記録1958-2009/エイドリアン・グラント著 吉岡正晴・訳 監修」(ユーメイド)
 今年6月25日、急逝したマイケル・ジャクソンについて、1958年8月29日の誕生から、2009年7月7日におけるステイプルズ・センターにおける追悼式の模様まで、近年には一日単位の細かさで、出来事をつづった500ページにも及ぶ労作。ファン雑誌「オフ・ザ・ウォール」の編集・発行人エイドリアン・グラントが著し、マイケル研究の第一人者・吉岡正晴氏が訳、監修を務めた。96年に出版され、現在絶版になっている「マイケル・ジャクソン観察日誌」を改訂、そして現在までの12年を加筆したもの。マイケルを追いつめたであろう状況が刻々と読み取れる壮絶な描写も多く、話題にことかかない資料本として、決定的な位置づけになるだろう。解雇されたマイケル家のボディガード達が「マイケルが不道徳な行為に至るのを目撃したことはなく、家で悲しげな子供を見たこともないと認めている」など、マイケルの人格を偲ぶ上で、重要な記載が多い。(サエキ けんぞう)


Popular CONCERT Review

「バーシア」 10月17日 Blue Note TOKYO
 Blue Noteに出演するのは初めてということだが、バーシアならではの洗練されたお洒落なサウンドはこういった会場にはぴったり。バックもピアノとギター、トランペットというドラムなしのシンプルなトリオ編成に抑え、美しい声が印象的だった二人姉妹のコーラスを従えてまとまりのあるステージを見せてくれた。曲目は最新アルバムからのナンバーの他、ジョビンの作品等、ブラジリアン・テイストも打ち出していたが、やはり盛り上がったのはヒット曲の数々。心地良いリズムに乗って、流れるようなメロディーをバーシアが持ち前の明るい声で歌い上げる度に会場からは熱い拍手が湧き起こっていた。(滝上 よう子)  
写真:佐藤 拓央


Popular CONCERT Review

「第21回カントリーゴールド」10月18日 ASPECTA(グリーンピア南阿蘇)
 熊本在住のカントリー・シンガー、チャーリー永谷氏が主宰する国際フェスティバルが今年も開催された。午前中は雲が多く強風が冷たかったが、やがて太陽が顔を出すといつもの爽やかな気候に包まれた。今回はこれまでと趣向を変え、ホスト・バンド:チャーリー永谷&キャノンボールに加え国内のアーティストが2組(稲葉和裕 withブルーグラス・ランブル、田村大介)出演。また昨年も好評だった、カントリーゴールド・アウォードの勝者となった2組のアマチュア・バンドが前座出演。そして来日組は3人の男性シンガー、トレント・ウィルモン、ジェフ・ベイツ、マーク・ウィルスが、同じバック・バンド:ホンキートンク・テイルゲイト・パーティの演奏で次々登場するという豪華な構成。異なる個性の実力派の歌を凝縮して聴くことができ、満足度の高い内容だった。また来年も期待したい。(森井 嘉浩)


Popular CONCERT Review

「エバ・ジェルバブエナ」 10月21日 Bunkamuraオーチャードホール
 ≪フラメンコ界のミューズ≫ことエバ・ジェルバブエナが3年ぶりに来日した。常に前を見てその都度その都度、新しい姿を見せてくれる彼女のステージは、毎回、見る価値があるといっても過言ではない。この日も広いホールは超満員、エバが舞うごとに客席から深いため息がもれる。しかも大半の女性客は双眼鏡持参だ。エバの一挙一動に自分の思いを重ね合わせているのか。20日は男性ダンサーとの「サント・イ・セーニャ」、21日はソロで踊る「ジェルバブエナ」というプログラムで、ぼくは後者に行ったが、エバとバンドとの息の合い具合、とことんまで統制の取れた音響や照明など、どこをとってもアートに対する愛が感じられた。(原田和)
写真:(c)Outumuro


Popular CONCERT Review

「リクライニング・コンサート・シリーズ〜リクライニング・ジャズ 木住野佳子」 10月23日 Hakuju Hall
 Hakuju Hallの人気シリーズ≪リクライニング・コンサート≫に、新たにジャズ編が加わった。「リクライニング・ジャズ」と題し、1カ月おきに4人のピアニストがソロ・パフォーマンスを披露するという豪華版だ。その第1回公演に登場したのは、ジャンルを超えた活動を続ける木住野佳子。敬愛するビル・エヴァンスの人気曲「ワルツ・フォー・デビー」、クラシック・ナンバー、自己のオリジナル等を織り交ぜたステージを堪能させてくれた。柔らかなピアノ・タッチ、耳当たりの良いメロディ・ラインは、クラシック・リスナーにとっての≪ジャズ入門≫としても有効に機能しただろう。ゲスト参加のオーボエ奏者tomocaも華を添えていた。12月にはケイ赤城、2月には深町純、4月には大西順子が同ホールの舞台を踏む。(原田 和典)


Popular CONCERT Review

「クラウン・シティ・ロッカーズ」 10月26日 Billboard Live TOKYO
 カリフォルニア州オークランドを拠点に活動するヒップ・ホップ・グループが5年ぶりの新作『ザ・デイ・アフター・フォーエヴァー』を携えて来日した。MCはラーシャン・アーマッド、ウッドストック(MP3も操作する)のふたり。ラップの応酬は無条件でかっこよかったが、僕が最も心を惹かれたのはドラマーのマックス・マクヴィーティー。決して出しゃばるようなことはしていないのに、プレーが鮮烈なのだ。とにかく音色の抜けがよく、ライミングの間を縫ってオカズ・フレーズが絶妙な感覚で入る。女性キーボード奏者のカット010がジャズの豊かなバックグラウンドを感じさせる和音やアドリブ・フレーズで空間を埋めてゆくのもよかった。このドラムスとキーボードがいる限り、ロッカーズ達はまだまだ転がり続けてくれるだろう。(原田 和典)
写真:Masanori Naruse


Popular CONCERT Review

「ギンザ・インターナショナル・ジャズ・フェスティバル2009」10月27日 東京/歌舞伎座 
 今年で5回目を迎えた秋の銀座を彩るジャズ風物詩。昨年までは土・日曜2日間同地区の複数の会場で開催され、銀座全体がジャズ一色に染まる効果ももたらした。今回はこれまでのスタイルを一新し、平日昼間2時間という設定のホール・コンサートである。取り壊しが決定している歌舞伎座を会場に選定。3組が2時間のステージを務めた。トップ・バッターの国立音大BBは、パット・メセニー「ミヌアノ」をWヴァイブで演奏するなど、大学生としては意欲的で進取な姿勢をアピールしたのが収穫。続いて登場したニッキは今年日本でアルバム・デビューした新人歌手で、まだ15歳の若さ。しかし歌唱力は誰もが驚くほどのレベルで、満点のステージ度胸を披露してくれた。ラストを飾った渡辺貞夫は、今秋リリースした新作の収録曲を中心に、変わらぬ音楽性と若々しさを表明。このような運営スタイルもありかな、と感じた夕刻の銀座であった。(杉田 宏樹)


Popular CONCERT Review

「Perfume Second Tour 2009  直角二等辺三角形TOUR」 10月30日 横浜アリーナ
 Perfume史上最大の全国ツアー(11都市19公演)も遂に最終日を迎えた。最新アルバム『(トライアングル)』から「The best thing」以外の全曲が披露されたうえに、「ポリリズム」、「チョコレイト・ディスコ」等の定番も惜しげもなく詰め込まれたステージは3時間に及んだが、それがほんの一瞬に感じられるほどの尋常ならざるスピード感と疾走感に僕は圧倒されっぱなしだった。非の打ち所のない完成度を誇りながら、その先に無限の発展を感じさせるパフォーマンスには更に磨きがかかり、メンバー3人の連携はまさに鉄壁。自分の目と耳が各2つしかないことを本当に残念に思った(それぞれ3つなければ、彼女たちの歌や動きを十全にキャッチすることはできまい)。このすごさをなんと表現すればいいのか。いや、無理に表現することはない。見て聴いて感じればいいのだ!(原田 和典)


Popular CONCERT Review

「ライ・クーダー&ニック・ロウ」 11月5日 JCBホール 
 ライ・クーダーとニック・ロウによる日本ツアーが実現した。彼らの共演は、短命に終わってしまった1992年のリトル・ヴィレッジ以来だ。ドラマーにはライの息子、ヨアキム・クーダーが参加している。
 豆絞りをバンダナのように頭に巻いたライ、ダンディで背筋の伸びたニック。彼らは本当に楽しそうに、それぞれの曲を交互に演奏した。そこに無駄なものは一切ない。にもかかわらず、豊潤で芳醇な音楽が次々と作り上げられていく。それはまるで魔法のようだった。2人の歌声、ニックのつぼを心得たベース、ヨアキムの知的なドラムもそうだが、ライのあまりにも素晴らしいスライド・ギターが、魔法を生み出す最も重要な要素だったことは言うまでもない。
 ライは、スライドの第一人者とはるか昔から言われてきた。だが彼は、そこに安住するつもりはなさそうだ。今回のライヴでは、ハーモニックス・スライド奏法とでも言うべき新たな技を何度も披露し、プレイヤーとしてまだまだ進化・向上を続けていることを見せつけてくれた。加えて、隣でニックが苦笑するほどにエネルギッシュなプレーぶりも。
 ライヴが終わった瞬間に、「良かったねえ」、そんなため息まじりの声が、どこからともなく聞こえてきた。音楽そのものが、聴く者の心に届き、そして残っていく。そんなライヴだった。(細川 真平)
Photo:(C)Kazumichi Kokei


Popular CONCERT Review

「片山健雄(シタール)ワンマン・ライヴ@江戸」 11月11日 Live Bar・大久保水族館   
 1960年代ロックの洗礼を受けてインド音楽に興味を持った人は多いと思う。大阪を活動拠点にする片山もそんな一人。ストーンズのブライアン・ジョーンズをこよなく愛するシタール奏者で、曲目も伝統的なラーガの演奏2曲に加えて、ビートルズ・ナンバーから「Within You Without You」と「Love You To」はシタールの弾き語り。特に「Love You To」は前後をインド音楽で挟んだ三部形式の「ラーガ・オペラ」(片山談)。ストーンズ・ナンバーの「黒くぬれ!」は会場からストーンズ・トリビュート・バンド、THE BEGGARSのミック・ジャガリコの飛び入り共演。オーソドックスなインド音楽ライヴとはひと味もふた味も違う、大いに盛り上がった一夜だった。次回はタブラの伴奏付で楽しみたいものだ。(井上 貴子)


Popular CONCERT Review



「頭脳警察」 11月14日 15日 初台The DOORS
 10月に18年ぶりのニュー・レコーディング・アルバム『俺たちに明日はない』をリリースした頭脳警察。その新作をひっさげてのジャパン・ツアー、東京での2デイズをたっぷりと堪能した。PANTAとTOSHIがZKを結成して今年で40周年、まさに明日なき戦いのごとくROCKし続けているエネルギーが全面に噴出したLIVE。そこからは発せられるリアルなサウンドは大きく炸裂する爆音のごとく観客をなぎ倒していく、そして力強いメッセージ。セットリストはもちろんレイテスト・アルバムから、そして懐かしのナンバーまで、しかし両者とも全く時代の流れは感じさせない。まさに今のZKサウンド、ZKの姿をダイレクトに感じさせた。特に2日目では3度のアンコール、全21曲、2時間以上にわたる凄みさえ覚えるステージ、大感動!(Mike M. Koshitani)


Popular CONCERT Review


「デューク・エリントン」 11月18日 COTTON CLUB
 デューク・エリントンの生誕110周年記念公演ファースト・ステージをコットン・クラブで聴く。孫のポール・エリントンの指揮だ。ピアノのトミー・ジェームスの合図で1曲目の演奏が始まってしばらくしてポールがあわててステージに現れる。時間を間違えたと謝り、指揮に入る曲が「ジョニー・ケーム・レートリー」何というタイミング。マーク・グロス(as)をフィーチャ_したバラード・メドレ_など6曲の演奏のあと、ゲスト・シンガー、ニコール・ヘンリーが登場、「イット・ドント・ミーン・ア・シィング」「アイ・ガット・イット・バッド」「サテン・ドール」をブラス陣に負けまいとシャゥト、熱唱、いつになく力の入った歌唱だ。その後、「Cジャム・ブルース」等エリントン・ナンバーを4曲、アンコールは、お決まりのAトレインだ。新味はないが、素晴らしい音を楽しめた。(高田 敬三)  
写真提供:COTTON CLUB


Popular CONCERT Review

「アシュフォード&シンプソン」 11月19日 Blue Note TOKYO
 久々にエンタテインメント感溢れるR&Bレビューを楽しんだ、まさにライド・オン、アシュフォード&シンプソン。初来日だ。モータウン・ナンバーをはじめ多くのヒット作を生み出したソングライターであり、素晴らしいデュオとしても1960年代からその名を知られていた。FENで毎日のように聴いていたレイ・チャールズ、66年ナンバー・ワン・ヒット(R&Bチャート)「Let's Go Get Stoned」はふたりがジョセフ・アームステッドと共作した楽曲。そんなニコラスAとヴァレリーSのライヴはまさにR&Bレビュー!艶やかさも醸し出し、大人のショー・タイム。シカゴやニューヨークのクラブを思い出させてくれた。30曲以上のR&Bチャート・イン・ナンバーから、そして「I'm Every Woman」「Let's Go〜」などのお馴染みのナンバーが次々に登場、観客を大いにわかせた。そして後半、大きく盛り上がる、ベリー・ゴーディー・ジュニアから電話がありモータウン・アーティストへの楽曲提供を依頼されたというストーリーをニコラスがインストにのりながらトーキング、そして登場「モータウン・メドレー:Ain't Nothing Like A Real Thing〜Your Precious Love〜Ain't No Mountain High Enough」。素晴らしい構成だ。もちろんアンコール前は84年の大ヒット、R&Bチャート1位/ポップス・チャート12位の「Solid」が登場したのだ。(Mike M. Koshitani)   
写真:Great The Kabukicho


Popular INFORMATION

「ホワイト・コットン・クリスマス・ナイト・ウィズ・ニコール・ヘンリー」
 ニコール・ヘンリーは、2004年のCD『ニアネス・オブ・ユー』で注目を集め、05年のエディ・ヒギンズ・トリオとの日本制作によるアルバム『今夜教えて』で多くの日本のファンの心をつかむ。最新作『ザ・ヴェリー・ソート・オブ・ユー』ではひとまわり大きくなった感じの素晴らしい歌を披露している。11月のデューク・エリントン楽団との共演では、見事なステージで聴衆を魅了した。その注目株、ニコール・ヘンリーのクリスマス公演、多いに期待したい!(KT)
*Cotton Club 12月22日〜25日 2回公演
お問い合わせ:(03)3215-1555 
http://www.cottonclubjapan.co.jp/jp/


Popular INFORMATION
「ベンチャーズ with ノーキー・エドワーズ」
 もうすっかりお馴染みになったベンチャーズの日本公演ウィンター・ヴァージョン。こちらでは1960年代中期のエレキ・ブームを爆発させた当時のベンチャーズのメンバーだったノーキー・エドワーズのギターをたっぷりと味わえるのだ。まさに、65年のリキ・スポーツ・パレスを彷彿とさせるようなライヴを期待したい。(MK)
*1月6日 Billboard Live TOKYO 2回公演
*1月7日 Billboard Live OSAKA 2回公演
*1月8日 Billboard Live OSAKA 2回公演
*1月9日 Billboard Live OSAKA 2回公演
*1月10日 名古屋ブルーノート 2回公演
*1月11日 名古屋ブルーノート 2回公演
*1月13日 東京/STB139 2回公演
*1月15日 札幌市民ホール
*1月16日 ZEPP SENDAI
*1月17日 東京/STB139 2回公演
お問い合わせ: M&Iカンパニー (03)5453-8899 
http://www.mandicompany.co.jp/

Popular INFORMATION
「マイケル・フランクス」
 メロウでエレガントな楽曲とヴォーカルで多くのファンを虜にしてきたマイケル・フランクスは、元祖AORとでも呼ぶべき存在である。そのマイケル・フランクスが、初期のヒット曲を中心にライヴを行う。名曲「アントニオの唄」等を聴きながら、心穏やかな時間を楽しみたい。1年そうそう、素晴らしいライヴに出会える・・・。(KU)
*1月10日 11日 Billboard Live TOKYO 2回公演
お問い合せ:(03)3405-1133  http://www.billboard-live.com/
*1月13日 Billboard Live OSAKA 2回公演
お問い合せ:(06)6342-7722 http://www.billboard-live.com/

Popular INFORMATION
「フランク・シナトラJr.」
 偉大なフランク・シナトラを父に持つシナトラJr.は、10代の頃からサム・ドナヒューのバンドの専属シンガーを皮切りにショウ・ビジネス界で活躍してきた。デュ_ク・エリントンにも可愛がられ音楽を教えられ、一緒に過ごした時期もある。テレビ映画の俳優、ショーのゲストとしても多くの番組に出演。1988年からは、フランク・シナトラのミュージカル・ディレクター、バンドの指揮者として父をサポートしてきた。彼自身、歌手として何枚ものアルバムを発表している。最近作の『ザット・フェイス』では自作曲も歌い、ソングライターとしての才能も披露している。今回の来日では、父シナトラ譲りの渋い魅力的な声で懐かしいシナトラ・ナンバーの数々を聞かせてくれるはずだ。(KT)
*2月2日〜6日 Blue Note TOKYO 2回公演
お問い合わせ:(03)5485-0088 
http://www.bluenote.co.jp/

Popular INFORMATION

「KISHIKO with MARIKO LIVE for St. Valentine Day」
 一時は甲状腺癌で声を失ったゴスペル・シンガー/ピアニスト、KISHIKOは2009年夏にアルバム『そのままの君』奇跡のカンバック。現在は精力的にライヴを続けている。そんなKISHIKOが、教会などでも歌っていて『そのままの君』にもジョイントした娘のMARIKOとのヴァレイタインデー・ライヴを行う。まさに≪愛のハーモーニー≫!楽しみ!!(MK)
*2月9日 渋谷JZ Brat
お問い合わせ:(03)5728-0168  http://www.kishiko.com/

Popular INFORMATION

「ミシェル・カミロ&チューチョ・ヴァルデス ≪ピアノ・マスターズ≫ 」
 超絶技巧のラテン・ジャズ・ピアニスト、ドミニカ出身のミシェル・カミロ、対するはこれまたおなじみ、ラテン・ピアノの最高峰、キューバ出身のチューチョ・ヴァルデス。ふたりの競演が実現する。2010年3月、桜の季節の東京はホットなラテン・ピアノ・バトルが炸裂しそうだ。メンバーはほかにマイラ・カリダ・ヴァルデス(vo)、ラザロ・リヴェーロ(b)、ホアン・カルロス・ロハス(ds)、ジャロルディ・アブレイユ(conga)。(HM)
*3月25日〜29日(月) Blue Note TOKYO 2回公演
お問い合わせ:(03)5485-0088 
http://www.bluenote.co.jp/

Popular INFORMATION

「キャロル・キング & ジェームス・テーラー」
 1971年アルバム『つづれおり』が全米No.1に輝いたキャロル・キングと、その『つづれおり』に参加し「君の友達」を大ヒットさせグラミー賞を受賞したジェームス・テーラーの来日公演が決定した。世界のトップ・シンガー/ソングライターのふたりは、2010年ワールド・ツアーを行うが、日本では2日間のみの開催となる。40年に渡り友情を育んできたキャロル&ジェームスとバックを務めるダニー・コーチマー(g)、ラス・カンケル(ds)、リー・スカラー(b)の心温まるライヴ、絶対に見逃せない想い出の一夜となるだろう。(KU)
*4月14日 16日 日本武道館 
お問い合せ:ウドー音楽事務所 (03)3402-5999
http://udo.jp/