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「チャイコフスキー:バレエ音楽《くるみ割り人形(全曲)》/サイモン・ラトル指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団」(EMIミュージック・ジャパン、EMI/TOCE-90150)
サイモン・ラトル自身大乗りのこの新録音、自らが惚れ込んだ「くるみ割り」全曲だけにさすがに素晴らしい出来映えを見せた。今まで「くるみ割り」全曲を世界的なバレエ団の公演で見たり聴いたり、そしてCDで聴いたりしたが、これ程細部に至るまでロマンティックで美しさに溢れた演奏は初めてである。筆者もチャイコフスキーの「白鳥の湖」と「くるみ割り人形」は組曲より全曲を聴きたいうちの一人である。なぜならば組曲に入っていない曲に実に美しい曲が多いからだ。特に「くるみ割り人形」においておやである。
さて最初の「序曲」9小節目アウフタクトからの8小節に亘るヴィオラの16分音符での音型の何とも爽やかなこと、これだけでこれから始まるこのバレエ音楽全体を連想させる。そして第一幕での「クリスマス・ツリー」から幻想的な「雪のワルツ」の群舞に至る各曲の絶妙な流れは、聴いているだけで主人公クララの楽しいクリスマスの夜を彷彿とさせてくれる。
第二幕でのディヴェルティスマンでは各国の有名な踊りの曲が続くが、その一つ一つが時には優しさに満ち、時には楽しさに溢れた十二分に吟味された音で表現される。そして「花のワルツ」後の導入部に於けるチェロの朗々とした歌にラトルは深い愛情を注ぎ込み、このバレエ最後「終幕のワルツとアポテオーズ」ではこのバレエの思い出を細心の音作りで聴く人にプレゼントをしたように感じる。まさに大団円である。ラトルと共にこの名盤誕生に寄与したベルリン・フィルの柔軟さに長けた畢生ともいえる名演も、ここにはっきりと明記しておきたい。なお、8月4日に世界に先駆けて発売される国内盤にはこの録音についてのラトルへのインタビューと第二幕の演奏映像を収録したボーナスDVDが特典として付いている。(廣兼 正明)
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