2017年5月 

  

Audio Blu-ray Disc Review

「男と女 製作50周年記念 デジタル・リマスター版」(DOMA、ハピネットBIXF-0245)
 昨年初公開から五十周年を迎えた。本作でアンヌの亡き夫を演じサンバの名唱を聞かせたピエール・バルー(故人)の興した独立レーベル、サラヴァ・レーベルも同時に事業五十周年の節目を迎え、2016年度(第29回)ミュージック・ペンクラブ音楽賞イベント企画賞を受賞した。
 「製作50周年デジタル・リマスター版」と銘打たれているが、映像に関して近年発売の他の名作映画、例えばヴィスコンティや黒澤、溝口の諸作程徹底したレストレーションではない。例えば、ジャンが息子とマスタングで浜辺を走る場面、ジャンとアンヌが初デートしそれぞれの子供と船に乗る場面の二つの海辺のシーンでは、カメラのレンズに付着して写り込んだごみがそのままになっている。2K FHD化で解像度と色域は向上したので購入して失望はない。
 本作は感情の移ろいや高まりを音楽、あるいは音響(ラジオから流れるシャンソンや軽音楽、アナウンス、さらにレーシングカーの爆音)が映像を受け継ぐように表現する映画だ。それによって説明的映像になることを避け映像(撮影の視点)の自由度が広がる。逆説的だが、音響の重視に「映像主義者」クロード・ルルーシュの真骨頂がある。
 今回発売のBDの音声はオリジナルのフランス語モノラル(リニアPCM 2.0CHモノラル)一種でセリフからバルーの歌声まで歪みが抑えられまずまず良好。ダイレクト再生で不満はないが、対応機能のアンプをお持ちならモノラルのままマルチチャンネルステレオにしサラウンド化した方が「音楽映画」である本作の不滅の美にいっそう心委ねることができる。(大橋伸太郎)