2012年2月 


Audio Blu-ray Review

「マイケル・ジャクソン:ライフ・オブ・アイコン 想い出をあつめて コレクターズ・エディション [Blu-ray]」(ジェネオン・ユニバーサル GNXF-1420)
 死去のニュースから始まり、有名音楽家たちの彼の果たした功績を称える声で終わる二時間半のドキュメンタリー。筆者はジャクソン5の頃の天才児マイケルが好きで、前半の成功まっしぐらの兄弟の希望と活力に溢れた姿に感慨を覚える。ソロになりジャクソン5を上回る巨大な成功を手にするが彼の本質は舞台人であり、レコードの音楽的論功は正直、プロデューサーと半々である。
 頂上に立った後次第に心の張りをなくし停滞が忍び寄る。スキャンダルに足を掬われるのもこの時期。善良で世間知らずの黒人青年が世間の食い物にされたといわんばかりだが、このビデオの製作者(自称親友)とてそれは同じではないか。ファンである程きっと見て辛い作品なのではないか。記録映像とインタビューによる構成なので映像はFHDでなくてもよいレベル。音声はDVDと共通のドルビーデジタル5.1ch。(大橋伸太郎)

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「ゲット・ラウド ジ・エッジ、ジミー・ペイジ、ジャック・ホワイト×ライフ×ギター[Blu-ray]」(ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル SIXW-4)
 世代を異にした三人の名ギタリストの音楽観とバックボーンを記録映像を交え構成したドキュメント。筆者はレッド・ツェッペリンの来日公演(1972年)を体験した世代である。映像の中の丸っこい童顔のまま白髪になったジミー・ペイジの姿に名状しがたい違和感を覚えた。
 彼はツェッペリンの十年間で巨大な成功を手にしたが、結局ソロでは大家になれなかった人である。彼のギタリズムはバンドのコンセプトそのものだった。彼のギターは人生を映す<声>でもなかった。かつて三大ギタリストとして比較されたE.C.やベックの履歴書のように歳月を刻んだ顔を思い浮かべると一抹の寂しさを感じる。映像は別にFHDでなくてもよいレベル。音声はDTS-HDマスターサウンド5.1chとリニアPCMステレオの二種。HDオーディオのサウンドにBDの価値を認めたい。(大橋伸太郎)

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「フンパーディンク:歌劇《ヘンゼルとグレーテル》英国ロイヤル・オペラ2008」(日本コロムビアCOXO-1034 )
 2008年の英ロイヤル・オペラの舞台記録。ヘンゼルを長身のアンゲリカ・キルヒシュラ−ガーが、グレーテルを昨年MET引越し公演で予定通り来日し「ランメルモールのルチア」を歌い切ったディアナ・ダムラウが演じる。他に父親役を数々のモーツァルトオペラの主役で日本でも馴染み深いトーマス・アレンが演じる豪華な配役である。
 現代欧州の格差社会に置き去りにされた一家という現代演出で、森に住む魔女はだらしなく胸をはだけ淪落した子供を狙う中年女のシリアルキラーという設定。犠牲になった子供達が吊るされた情景は『ラブリー・ボーン』を思わせる迫力。オケ指揮は巨匠コリン・デイヴィス。音楽が充実しているのであざとい演出が苦にならない。日本語字幕入り。映像コーデックはMPEG-4 AVC。音声はリニアPCM5.1chと同ステレオの二種。サラウンドはLRが主力だがセンターに歌声を、サラウンドにオケをこぼしている。(大橋伸太郎)

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「マイ・フェア・レディ」(パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパンPBH118882)
 ほぼ全編がスタジオセット撮影。スクリーンミュージカルの代表作の一つとして語られることが多いが、1960年代にハリウッドが到達した美術、照明、撮影、編集といった映画技術の完成度を示す大作である。LDやDVDでも華麗さは味わえたが、ビデオグラムとしては色域の広いハイビジョンディスクで初めて全容が現れた感がある。
 70mmの本作の音声は元々6チャンネルだが、DTS-HDマスターオーディオ7.1chエンコードに際し単なる広がり感、立体感の拡張でなく、ミュージカルシーンでサラウンドバックにバイオリンセクションや金管などオーケストラの高い音域(女声の声域と一致)を受け持たせるなど、ドラマのロマンティックなふくらみと心理的なときめき感を強調するリミックスが試みられている。画質・サラウンドの両面でミュージカルファン、オーディオビジュアルファン必備のソフトといえるだろう。(大橋伸太郎)

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「ウエスト・サイド物語 製作50周年記念版ブルーレイ・コレクターズBOX [Blu-ray]」(20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパンMGXE-15930)
 ブロードウェイ&スクリーンミュージカルのターニングポイントになった金字塔的作品。レナード・バーンスタイン作曲の連結曲形式の序曲が流れ、N.Y.の空撮から映画は始まる。ロマンティックな物語を題材にしてきたミュージカルがストリートに飛び出しアクチュアルな社会的題材に舵を切ったのである。
 フレッド・アステア、ダニー・ケイと受け継がれてきたミュージカルの華、タップダンス中心の<個人芸>を止め、モダンバレエの群舞中心で構成したという点で古くからのミュージカルファンからは不評の作品だが、フラメンコのスタイルで歌い踊る「アイ・フィール・プリティ」はある意味タップの変形である。映像のカラフルな美しさは眩いほど。
 本作も70mmで6チャンネル音声で公開された作品だが、DTS-HDマスターサウンド7.1ch サラウンドのリミックスは『マイ・フェア・レディ』と対照的。サラウンドチャンネルの情報をほとんどそのままサラウンドバックに拡張しほぼ同じ音圧で出る。サラウンドを使うシーンなら地味なシ−ンでも常時サラウンドバックが鳴っている。後方全チャンネルがつながりスケール豊かに鳴ることで音場に現実の広がり感を与え、音場全体が鳴る躍動感が群舞シーンに象徴される若者のエネルギーを表現しているわけだ。(大橋伸太郎)