2009年5月 

 
Popular ALBUM Review

「フォーク・イン・ザ・ロード/ニール・ヤング」
(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-13374)

 20歳の時、中古の霊柩車に乗ってカナダからロサンゼルスに出てきたニールはアメリカの車文化を深く愛するアーティストだ。車をテーマにした曲をいくつも残しているし、『グリーンデイル』の映画版には貴重なコレクションを何台も登場させていた。だが、彼はただ暢気に趣味の世界に浸ってきただけではない。59年型のリンカーン・コンチネンタルを自ら低燃費/クリーン・エネルギー化してLINCVOLTと名づけるなど、独自のスタンスで現状と向き合おうともしている。新作は、そういう観点から岐路にある現代社会を描いたもの。「歌だけで世界は変わらない。なにかをなし得た者にだけ、変化を歌うことができる」というメッセージを、80年代の方向性を思い出させる、パワフルで隙き間の多い音がくっきりと浮かび上がらせている。(大友 博)

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「ライヴ:ホープ・アット・ザ・ハイドアウト/メイヴィス・ステイプルズ」
(ソニー・ミュージック ジャパンインターナショナル/EICP-1170)
 我が国のソウル・ミュージック・ファンの間でもお馴染みのステイプル・シンガーズのメイヴィス・ステイプルズの08年6月のシカゴ・ライヴ作品集。愛と平和を訴える彼女のメッセージがダイレクトに伝えられる。マーティン・ルーサー・キングJr.牧師の教えをこのアルバムでも訴えかける。「ダウン・イン・ミシシッピ」はじめ、「ウェイド・イン・ザ・ウォーター」「フリーダム・ハイウェイ」「ウィル・ザ・サークル・ビー・アンブロークン」などで観客を強烈に圧倒。アンコールはもちろん「アイル・テイク・ユー・ゼア」だ。5年前の日比谷野外音楽堂のステージを想い出す・・・。(Mike M. Koshitani)


Popular ALBUM Review

「ポテト・ホール/ブッカーT.」
(ソニー・ミュージック ジャパン インターナショナル/EICP-1169)
 ブッカー・Tがひさびさのソロ・アルバムを出すと聞いて、まあ、もちろんあれだけキャリアの長いベテランであるわけだから、「スタンダード風か、あるいはジミー・スミスみたいな線」などと勝手に想像してしまったのだが、とんでなかった。ジョージア州アセンズをベースに活躍するトリプル・ギター編成のオルタナティヴ系ジャム・バンド、ドライヴ・バイ・トラッカーズをバックに、そして、ディラン30周年コンサート以来関係を深めてきたニール・ヤングをゲストに迎え(自ら時にはギターも弾き)、驚くほどオーガニックで物語性豊かなインストゥルメンタルの世界をつくり上げている。大半はオリジナルの新曲だが、カヴァーとしてはトム・ウェイツやアウトキャストなどを取り上げるその選曲の視線も鋭い。(大友 博)

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「ロール・オン/J.J.ケイル」(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-13375)
 昨年の暮れに古希を迎えたケイルから届けられた新作には「まだまだ変わらずにやっていくよ」といったメッセージが込められているような気がした。古くから彼の音楽を聴きつづけてきた者にはとっては嬉しくなってしまうほど安心できる音、とでもいったらいいだろうか。老いや余生を意識した歌詞が増えているような気がしないでもないが、音づくりへのアプローチやそこから聞こえてくる音は、まったくもって変わっていない。クラプトンとジム・ケルトナーが参加した曲でさえブレはない。すごい人だ。ライヴが観たい。(大友 博)

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「ア・ストレンジャー・ヒア/ランブリン・ジャック・エリオット」
(ソニー・ミュージック ジャパンインターナショナル/EICP-1171)

 オープニング・ナンバーの「Rising High Water Blues」が流 れ始めた時、ケースの中に間違ってランディ・ニューマンのディスクが入っていたのかと一瞬思ってしまったが、聴き進めるうち、これは紛れもなくランブリン・ジャック・エリオットのアルバムだと得心。納得どころか、プロデューサーのジョー・ヘンリーは、その頭脳と手腕とで、ジャックの新しい面を鮮やかに引き出していて、恐らくはジャックが60年以上にも及ぶ音楽人生(何しろ御年77歳!!)で発表したアルバムの中でも、最高傑作のひとつ、最も異色の作品となっていて、聴き返すほどに興奮させられる。ジャックに大恐慌時代のブルースを歌わせるというジョーのアイディアは、ジャックに新しいことをさせたというのではない。新たなアレンジや、新しいミュージシャンと出会うことによって、ジャックは自分が昔からやり続けていたことに、新たな光をあて、今の時代の中に甦らせている。まさにジョーが言うとおり、「ジャックは古い言葉を使ってはいるが、常に現在形で話をしている」ことがよくわかる。(中川 五郎)

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「ザ・プライド・ミシシピー/アラン・トゥーサン」
(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-13336)

 5月のBillboard Live OSAKA & TOKYOでのライヴが楽しみなニューオーリンズ音楽ファン注目のアラン・トゥーサンの3年ぶりのニュー・アルバム。1950年代からニューオーリンズのR&Bシーンでピアニスト/歌手として活動、60年代からはソングライター、アレンジャーとしても注目された。そんな大ベテランの今作はジョー・ヘンリーのプロデュースで、ルイ・アームストロングやジョージ・ルイスで知られるスタンダード作品を選曲。ピアニストしてのみごとな演奏を披露している。ブラッド・メルドーやジョシュア・レッドマンがゲスト参加。
尚、来月のアラン・トゥーサン来日時にトーク&サイン会も行われる。ファンの方はぜひ参加してほしい!(Mike M. Koshitani)

≪アラン・トゥーサン トーク&サイン会≫
*日時:2009年5月30日(土) 14時〜
*場所:タワーレコード 渋谷店 5F
*観覧自由

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「シカゴ・ブルース・フェスティヴァル2001/オーティス・ラッシュ」
(P-VINE RECORDS/PCD-24222)

 2001年6月に行われたシカゴ・ブルース・フェスティヴァルでの、オーティス・ラッシュのライヴ音源だ。50年代のヒット作「All Your Love」やインスト曲「I Wonder Why」、ディープなスローブルース「So Many Roads」、マディ・ウォーターズの名曲「Got My Mojo Workin'」など、密度の濃いシカゴ・ブルース・スタンダードの9曲で構成されている。グラミー賞を獲得した2年後、まさに円熟味が極まったオーティスのブルース世界がある。2004年を最後に、ライヴ活動から遠ざかっているだけに、貴重かつ必聴の一枚だ。(菊田 俊介)

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「ギミー・シェルター/メリー・クレイトン」
(ビデオアーツ・ミュージック/VACM-1388)
「メリー・クレイトン/メリー・クレイトン」
(ビデオアーツ・ミュージック/VACM-1389)
「キープ・ユア・アイ・オン・スパロウ/メリー・クレイトン」
(ビデオアーツ・ミュージック/VACM-1390

  ローリング・ストーンズの「ギミー・シェルター」でミック・ジャガーとコラボした素晴らしい女性ソウル・シンガー、メリー・クレイトンの1970年代に発表したオード・レコード時代の作品集3枚が、ついに世界初CD化された、日本発だ。彼女自身にとってもファースト・アルバムにあたる「ギミー・シェルター」は70年作品、ミックとのタイトル・ソングを改めて自分のナンバーとしてしっかりと歌い上げている。ストーンズ・ファンからもそのCD化が長く待たれていた。ヴァン・モリソン、サイモン&ガーファンクル、ジョン・デンヴァーらのカヴァーほか、ゴスペル作品でも彼女の魅力が噴出している。71年のアルバム「メリー・クレイトン」ではキャロル・キング作品を多く取り上げているほか、ニール・ヤング、レオン・ラッセル、ビリー・プレストン、フレンズ・オブ・ディスティンクションらのナンバーも登場。70年代前半の音楽シーンを垣間見ることの出来る選曲になっている。それまでの彼女の作品はLA録音だったが、「キープ・ユア・アイ・オン・スパロウ」はNY録音が中心で、バックをボブ・ジェームス、デヴィッド・スピノザ、スティーヴ・ガッド、ラルフ・マクドナルドほかがつとめている。前2作のルー・アドラーから、プロデュースはジーン・マクダニエルズに変わった。タイトル・ソングはテレビ・ドラマ『刑事バレッタ』の主題歌。ぐっとジャージーな作品も収録、メリー・クレイトンがより幅広いファからも注目されたのを思い出す。現在も地道な活動を続けていると聞く、このアルバム3枚のCD化を機会に、ぜひとも日本公演を実現してほしいものだ。(高見 展)

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「クスト・タイム・アラウンド-ベスト・オブ・MR.BIG/MR.BIG」
(ワーナーミュージック・ジャパン/WPZR-13461)

 デビュー20周年と奇跡のオリジナル・メンバー再結成JAPANツアー2009を記念して発表された、アメリカン・ハード・ロックのスーパー・バンド、MR.BIG究極のベスト・アルバムが届いた。全米No.1ヒット「トゥ・ビー・ウィズ・ユー」をはじめ、MR.BIGリユニオン・ツアー2009のテーマ曲「ネクスト・タイム・アラウンド」等、名曲、代表曲が鏤められた1枚に仕上がった。勿論、全曲最新デジタル・リマスター。何と言ってもワーナーミュージック・ジャパンのHPに寄せられたファンからのリクエストとメンバーのアイディアで構成されたベスト・アルバムなだけに、日本のファンは買わないわけにはいかない。DVD付きデラックス・エディションも同時発売、WPZR-30342〜3。(上田 和秀)

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「ウォー・チャイルド〜戦禍のヒーロー/VA」
(EMIミュージック・ジャパン/TOCP-66882)
 大人たちによる史上最悪の蛮行=戦争における一番の被害者は何の罪もない子供たち。巻き込まれて命を落とし、あるいは障害を負わされたり家族を失い路頭に迷う。。。そんな戦争被災地の子供たちを支援するチャリティー団体「ウォー・チャイルド」(本拠地はイギリス)の活動をサポートしようとポール・マッカートニーとデヴィッド・ボウイが提唱してベネフィットなカヴァー・アルバムが作られた。大物アーティストたちがお気入りの自曲を選び、それを当代の若手人気者が取り上げるという企画でポールの「リヴ・アンド・レット・ダイ」をダフィーが、ブロンディーの「コール・ミー」をフランツ・フェルディナンドが、といった具合でマニアックなファンの関心をも呼ぶ内容になっている。(上柴 とおる)

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「BEAUTIFUL SUN/THE PEPPERMINT TROLLEY COMPANY」
(Now Sounds/crnow-10)*輸入盤
 CDの裏ジャケにも書かれているようにレフト・バンクやアソシエイション等にも通じるソフト・サイケな味わいで後年再評価されるに至ったカリフォルニアの4人組唯一のアルバム(当時本邦未発売)が英Cherry Red Records系列からついに初CD化♪1968年のヒット「Baby You Come Rollin' Across My Mind」(米No.59)が収録されている。筆者は中古の輸入盤LPを学生時代に某放送局の廃棄処分市で入手していたが久々にプチのないキレイなCD音源で聴きその楽曲の充実度を再認識♪こんなに良かったとは!それ以前のバンドでのレア音源やMONOヴァージョンなど16曲追加で全27曲と充足感もたっぷり。ちなみにこのグループを母体とするのが1979年に「ステイ・ザ・ナイト」(米No.50)を放ったファラガー・ブラザーズ。(上柴 とおる)

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「THIS IS MY STORY/THE BAWDIES」(GETTING BETTER/VICL-63294)
 ジャケット写真に映る4人のシュッとしたイケメン風ルックスからはとてもこんなオトが飛び出して来るとは思えない!ゴリッとした男臭さの漂うR&Bを意識したヴォーカルに1960年代のロックン・ロール・バンドのようなワクワクする刺激的な疾走感。ん?これを聴いている今はたしかに2009年なのに!しかも全11曲すべてが英語歌唱なだけに今どきの英米の新鋭バンドに交じっても圧倒的な存在感を見せつけてしまうだろう。インディーズでの2枚を経てついにメジャー契約(販売:ビクター)、全国各地のFMラジオ局でも大量オン・エアの実績を誇るこの4人組(ザ・ボゥディーズ)を聴いてもピンと来ないロック・ファンはもう引退した方がよろしい。(上柴 とおる)


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「魅せられし心/ヒラリー・コール」(ビクターエンタテインメント/VICJ-61594)
 最近の女性新人歌手の中では抜群にうまい。しかもかつて '50年代に活躍した歌手がもっていた可憐さがあり、古いスタンダードを好んで歌うので、ぼくなどノスタルジーを感じて惚れ込んでしまう。しかもほのかなお色気もあり、感覚的には新しさもちゃんと持っている。ジョン・ピザレリ(g)を含むピアノ・カルテットの伴奏もシンプルでいい。「イッツ・ラブ」「スモール・ホテル」「ディード・アイ・ドゥ」など軽やかにスイングしてみせる曲も多くて大いに楽しめる。(岩浪 洋三)


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「ウイズ・ア・ソング・イン・マイ・ハート/カート・ライケンバック」
(SSJ/XQAM1511)

 カート・ライケンバックは、ロスで活躍する男性シンガー、5月にはNYへ進出して、ポリー・バーゲンらと≪ザ・メトロポリタン・ルーム≫に出演予定の期待される歌手だ。彼の第2作目は、2007年8月のハリウッドでのライヴ。ジェリー・シュレイダー(p)のトリオに、曲によって兄のビル・ライケンバック・ジュニアのベース/トランペットとジュリー・サスマン・ペレスのアルトが参加。スタンダード曲中心に割合最近の歌も交えて15曲を普段着の自然体といった大変親しみ易い歌で聞かせる。1曲、友人のピンキー・ウインターズが客演して相変わらず味のある歌を披露。ただ、1曲では物足りない・・・。(高田 敬三)


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「メモリーズ・オブ・ユー/キャロル・ウェルスマン」(ミューザック/MZCF 1191)
 祖父がトロント・シンフォニーの創設者という血筋のカナダのキャロル・ウェルスマンは、ピアノ弾き語りシンガー。作編曲も素晴らしい。彼女の作品は、セリーヌ・ディオンらも録音している。日本企画による本アルバムは、今年、生誕百年を迎えるベニー・グッッドマンと彼のバンドで歌ったペギー・リーに捧げるアルバム。今様グッドマンこと、ケン・ペプロウスキーを迎えて、サンバ調で歌う「ドント・ビー・ザット・ウエイ」など全編、彼女の編曲で歌っている。歌唱も素晴らしく、めりはりがあって何度も聞きたくなる素晴らしい作品。8枚目の作品だが、間違いなく彼女の代表作と言えるだろう。(高田 敬三)


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「ミス・バランソ/クララ・モレーノ」(T.A.C.S Records/TACM-0005)
 デビューから10年、クララ・モレーノの通算6作目は、母であり、ボサノヴァ第2世代のミューズとも呼ばれるジョイスが全面プロデュースした作品。クララ自身「この作品は私のターニング・ポイントとなるものだ」と述べているように、アコースティックなサウンドに軸足を置いた録音は、60年代を彷彿とさせる一方、ブラジリアン・ミュージックの今をこれまで以上に感じさせてくれる。全編にギターで参加したジョイス、そしてブラジル屈指のミュージシャンたちのサポートが、力強さと優しさを兼ね備えたクララの歌唱を際立たせている。ジョルジ・ベン、ジョアン・ドナートなどの作品が新鮮によみがえってくる。ボサノヴァ生誕から50年、新たな味を加えながら2世がMPBシーンを支えているのは大いに楽しみだ。(三塚 博)


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「arrasando/Juan Formell Y Los Van Van」
(Planet Records/8124901072) *輸入盤

 キューバで国民的人気を誇るティンバ/サルサ・バンド、ロス・バン・バンの新作。1969年の結成から今年で40年を迎える記念のアルバムで、前作「Chapeando」から2年半ぶりのスタジオ録音作品。1曲目からたちまち彼らの世界に引き込まれるのはいつもどおり。ボーナス・トラック3曲を加えた全13曲を収録、グループの音楽監督Juan FormellやRoberto Carlos、Ruben Bladesらが楽曲を提供している。旬のゲスト・ミュージシャンAlexander Abreu(tp) がハイノートを吹けばElmer Ferrer(g)がブルージーなフレーズをさりげなく聴かせたりと、かくし味もよく利いている。(三塚 博)


Popular ALBUM Review

「夢のような家で、君と/ジョー・バルビエリ」(オーマガトキ/OMCX-1223)
 イタリア=カンツォーネではない。ジョー・バルビエリはあくまで甘美でソフトな歌声で、35歳の円熟した大人の歌を聞かせる。現地の新聞で≪もしカエターノ・ヴェローゾがイタリアに生まれていたら・・・≫と評されるシンガー/ソングライター。1993年にレコード・デビューし、2007年の前作がドイツの音楽誌でアルバム・オヴ・ジ・イヤーに選ばれ、ヨーロッパ各国で好評を得て国際的な存在に。シンプルなコンボにストリングズを加え、ボサノヴァ、ジャズ色が融合した作り。嘆息交じりの色気が匂い立つ「いつものように」。「マレグリーア」ではブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブのオマーラをゲストにファド調で好唱。アンリ・サルヴァドールのカヴァーや、イタリアン・ボサの魅力が楽しる。 (鈴木 道子)

 この数年、各国でその真価が認知されるようになったナポリ出身の男性シンガー/ソングライター、ジョー・バルビエリの本邦デビューCD。今年35歳、本国で16年のキャリアを持つベテラン・アーティストの一人だ。ソフトな歌唱がアルバム全体にしっとりとしたエレガントなムードを漂わせ、演奏スタイルはボサノヴァやスムース・ジャズを色濃く反映している。ハーモニカやポルトガル・ギター、アコーデオンやクラリネット、そしてストリングスを配した穏やかだが厚みのあるサウンドは時にイタリア映画音楽を思わせる。収録曲11曲中9曲が自身の作詞作曲。ファド・タイプの「マレグリーア」ではオマーラ・ポルトゥオンドとの共演も聴ける。(三塚 博)


Popular ALBUM Review

「ラッシュ・ライフ/小島のり子」(What's New RECORDS/WNCJ-2196)
 小島のり子はすでに中堅の女性フルート奏者で、ライヴ・ハウスでも幅広く活躍している。本作は4枚目のCDだが、日本酒好きで知られる彼女が日本酒の銘柄にちなんだオリジナルを7曲も演奏しているのが注目される。「フォー・ベター・デイズ」(開運 特別純米)、「セブン・ウェイ・トゥ・ア・キス」(七田 純米無濾過)など曲目も楽しいが、曲も親しみやすくて快適だ。アルバム・タイトルの「ラッシュ・ライフ」はビリー・ストレイホーンの名曲で、“酔っ払い人生”という意味である。そして、大口純一郎、二村希一(p)、山口友生(g)、渋谷盛良(b)、小山彰太(ds)ら実力者が共演している。また解説書には取り上げた曲名の酒のラベルが掲載されているのもうれしい。彼女はこれまで居酒屋や酒倉でのライヴもこなしてきたが、このアルバムの発売を記念し、ぼくのアイディアと企画で、7月15日に吉祥寺の≪MEG≫で“小島のり子、日本酒持ち込み飲み切りライヴ”を行うことになった。ぜひ日本酒のファンは参集されたし。(岩浪 洋三)


Popular ALBUM Review

「三上クニ2&3(デュオ&トリオ)」(グ・ルーブ/WNCJ2197)
 ピアノとヴィブラフォンの絡みあう旋律にハッとさせられたり、深淵な響きの中に描写的な色合いを感じさせてくれたりする。これは三上クニ(p)が有明のぶこ(vib、marimba)、小松誠司(perc)を迎えて、デュオとトリオの編成でなじみのナンバーに取り組んだ新作。収録曲10曲中7曲が三上=有明のコラボレーション。対話しているかのように流れる演奏には大いに好感がもてるし何より聞いていて楽しい。3曲に小松のパーカッションが加わって全体の選曲構成に彩を添える。三上のヴァーサタイルなピアノ奏法が「茶色の小瓶」や「ワンノート・サンバ」などの有名曲に、新たな魅力を加えているのもうれしい。(三塚 博)


Popular DVD Review

「ライヴ・アット・ザ・トルバドール/ダリル・ホール&ジョン・オーツ」
(ビクターエンタテインメント/VIBP-103)

 トルバドールはロサンゼルスのクラブ。ホール&オーツは、'73年に前座としてここに出演している。デビューして間もないころで、もちろんブレイク前だ。本作は、昨年5月、彼らが35年ぶりにこのトルバドールで行ったライヴを収録したもの。ステージは狭く、演出らしい演出もなし。だからこそ、彼らの歌とアコースティック・スタイルでの演奏に、じっくりと向き合うことができる。ライヴで初めて演奏される曲も、「マンイーター」「アウト・オブ・タッチ」「プライヴェート・アイズ」などのメガ・ヒット・ナンバーも、ここでは並列の扱い。だからこそ本作は、まるで珠玉の短編集のようだ。(細川 真平)


Popular CONCERT Review

「レベッカ・マーティン」 2月26日COTTON CLUB
 パット・メセニーやブラッド・メルドーとの共演で知られるベース奏者、ラリー・グレナディアの妻。夫と共に少なくないジャズ系のアルバムに参加しているので、ジャズ・ヴォーカリストとしても認知されているようだが、ニューヨーク派のフォーキー系シンガー・ソングライターと説明するのが一番まとまりがいいように思う。このステージは夫のラリー、カート・ローゼンウィンケル(ギター)、ダン・リーザー(ドラムス)との4人編成でおこなわれた。レベッカの作風は、歌声も節回しも、メロディ・ラインもクリアーで伸びやか、妙な癖がない。自作曲の間に「ノー・ムーン・アット・オール」などスタンダード・ナンバーも混ぜていたが、これもまた実に爽やか。グリニッチ・ヴィレッジのコーヒー・ハウスにいるような気分を味わった。(原田 和典)


Popular CONCERT Review

「エリン・ボーディー」 3月27日  COTTON CLUB
 ミネソタ出身の女性シンガー・ソングライター、初の日本公演だが、彼女は優しい笑顔を浮かべながらリラックスした面持ちで登場、さり気なく歌い始める。CDで聞く以上に、よどみのない澄んだ明るい歌声だ。オリジナルの他、ポール・サイモンやボブ・ディランのナンバー、スタンダード等も彼女流に消化。その明瞭な言葉が私達に確かな思いを届けてくれる。共作者でもあるキーボード奏者のアダム・マネス、夫でもあるベーシストのシドニー・ロドウェイ等、最新作と同じバックの顔ぶれもそれぞれが洗練された達者な演奏を繰り広げ、エリンとの息もぴったりで見事なサポートぶりを披露。暖かな会場の雰囲気とも相まって、どこまでも爽やかで心地よいステージだった。(滝上 よう子)
写真提供:COTTON CLUB


Popular CONCERT Review

「スティーヴン・ビショップ」3月27日 Billboard Live TOKYO
 昨年に引き続き、“ミスターAOR”が来日した。最新作のブラジル・プロジェクト『ロマンス・イン・リオ』で、このジャンルを代表するベテランの魅力を改めて印象付けたビッシュ。当夜はキーボード&ヴォーカルのジム・ウィルソンとの2人だけのステージで、これまでのキャリアをシンプルなセッティングで凝縮する形になった。50代後半になっても、70年代にファンを魅了したスウィート・ヴォイスは変わらず。映画『トッツィー』のために書いた「オール・オブ・マイ・ライフ」や、オスカー・ノミネート曲「セパレート・ライヴス」等を披露。新曲「ヴェイカント」を含め、聴き進めるにしたがって、ビッシュには哀しい曲が多いのだなと、今さらのように実感した。でも本人は陽気なキャラターで、ビリー・ホリデイの歌真似は思わぬ収穫。ラストは「オン・アンド・オン」「雨の日の恋」の2大ヒット曲で締め、長年のファンも大満足であった。(杉田 宏樹) 
写真:acane


Popular CONCERT Review

「死ね死ね団」 3月28日 新宿LOFTドーム
 正式名称は“大日本帝国初代新所沢愚連隊死ね死ね団”。僕が初めて彼らにショックを受けたのは80年代後半、『グレイテスト・バカ・ヒッツ』というEP盤を聴いたとき。さまざまなバンドが解散や再結成を繰り返す中、しぶとく活動を続け、ついに結成25周年を迎えた。現在の幹部は中卒(ヴォーカル)、ケムール星人(ギター)、星プーマ(ベース)の3人。そこにサポート・ドラマーが加わり、「渡る世間は俺ばかり」、「LOVE IS FEELING」など近年の代表曲を立て続けに披露した。ヴォイス・オブ・死ね死ね団というべき中卒の歌声は25年の年輪を良くも悪くも感じさせない。いつまでも心は悪ガキのままなのだろう。ほぼ月1でLOFTドーム出演を続けている死ね死ね団。大日本帝国ロックの底力に触れる思いだ。(原田 和典)


Popular CONCERT Review

「クリストファー・クロス」 4月3日 Billboard Live TOKYO
 1979年「南から来た男」で彗星の如くデビューし、瞬く間にスーパースターとなったアメリカン・ポップ史上最も美しい歌声を持つ男クリストファー・クロスが、バンド・メンバーとラフなスタイルで現れると、会場は30年前に舞い戻る。「Never Be The Same」から始まったヒット・パレードは、「Sailing」で1回目の波を迎える。懐かしいなどというレベルではなく、身も心も震えるような想いが沸き上がる。「Arthur's Theme」「Ride Like The Wind」では、若き日々の想い出が蘇る。アンコールの「All Right」には、涙を流しながら手を振っている自分がいた。クリストファー・クロスと言うと、どうしてもヴォーカリストとして評価されがちだが、ギターの腕もなかなかの物だ。バンドとのバランスも良く取れた爽やかなライヴだった。美しい歌声・メロディ・音色、音楽を心から満喫した桜の夜であった。(上田 和秀)
写真:acane)


Popular CONCERT Review
「ドン・マツオ from ズボンズ ソロ・ツアー2009 "TOUR KING KONG"」 4月5日 下北沢ベースメント・バー
 新作『NEW STONE AGE/ドン・マツオ from ズボンズ』(DONUTS WORM/DOWA-10901)をフィーチャーしての全国ツアーのファイナル・ライヴ、ロックでパンクでファンクでブルージーな、まさにドン・マツオの音楽性が全面に噴出、21世紀ロックだ。「ストーンズから受け継いだものを次世代へと繋いでいきたい!」と語るドンの意気込みがダイレクトに伝わってくる。オリジナルほか、ストーンズ・カヴァー、RSがカヴァーしているブルースやチャック・ベリー作品、そしてジェームス・ブラウン魂作品。そのステージがアメリカやカナダでも注目されているのがよく判る。こんなにもピュアで本物のROCK、もっともっと若い世代に注目してほしい。(Mike M. Koshitani) 
写真:有賀 幹夫


Popular CONCERT Review
「デープ・パープル/イングヴェイ・マルムスティーン」 4月15日 東京フォーラム ホールA
 ハード・ロックの雄/デープ・パープルと音速のギタリスト/イングヴェイ・マルムスティーンとの夢の競演、ジョイント・ライヴが実現した。2部構成の1部がイングヴェイ・マルムスティーンのステージ。1曲目「Death Dealer」からイングヴェイのギターが火を噴いた。オーディエンスもヴォーカル/ベース/キーボード/ドラム、どれも必要ないと言わんばかりに、イングヴェイのギターに熱くなる。ギター・ソロ・パートもあるが全曲ギター・ソロのようで、イングヴェイは曲が進む毎にヒート・アップする。ラストの「Rising Force」でのギター破壊は、久しぶりに見る光景だった。
 2部のデープ・パープルでは、2度の奇跡が起きた。お約束の「Highway Star」から始まり、バンドもオーディエンスもエンジン全開だ。さすがにパープルは、バンドとしてのバランスが良く取れている。そして「Perfect Stranger」のキーボード・ソロの後、最初の奇跡は起きた。パープル結成時からサウンドのまとめ役でキーボード奏者のジョン・ロードが現れ「Space Truckin'」へ続くと会場は興奮の坩堝と化し、「Space Truckin'」の大合唱が始まる。その間クルーの不穏な動きが気になって見ていると、先程までイングヴェイが使っていたギター・アンプが出てきたではないか。そう2度目の奇跡は、名曲「Smoke On The Water」でのデープ・パープルとイングヴェイの正に夢の競演だ、これにジョン・ロードも加わっている。こうなると会場は、異常な程に興奮し、全員で「Smoke On The Water」を叫び続ける。そしてアンコールの「Hush」「Black Night」で、興奮の余韻を引きずったまま、エンディングを迎えた。この日東京は、世界で最も熱いロック・シティとなった!!!(上田 和秀) 写真:William Hames

Popular CONCERT Review

「ミック・テイラー」 4月20日 21日 Billboard Live TOKYO
 元ローリング・ストーンズのミック・テイラーが10年ぶりのジャパン・ツアー、全6公演のうち20&21日の東京4ステージを堪能した。なかなか見ごたえのあったライヴだった。バックはマックス・ミドルトン(ピアノ)、デニー・ニューマン(ギター ヴォーカル)、クマ・ハラダ(ベース)、ジェフ・アレン(ドラムス)。もうだいぶ時間が経つがレイテスト・アルバムからのナンバーや得意のブルース、ボブ・ディラン作品、そしてストーンズ楽曲などを鏤め、みごとなギター・ワークとヴォーカルを披露。そのブルージーなギター・ワークには定評があるが、その演奏ぶりはますます磨きがかかった。そして、ヴォーカリストとしてもファンを十分に納得させる実力を発揮していたのが印象的だった。バックステージなどで何度か話したが、どうやらそろそろニュー・アルバムの準備に取り掛かっているようだ。(Mike M. Koshitani) 
写真:Gousuke Kitayama

Popular BOOK Review

「ジャンゴ・ラインハルトの伝説−音楽に愛されたジプシー・ギタリスト/マイケル・ドレーニ著 小山景子・訳(シンコーミュージック・エンタテインメント)
 来年、生誕100周年を迎えるジプシー・ジャズ・ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトの本格的伝記である。ベルギー生まれで、フランス・ホット・クラブ5重奏団で世界的に名をなした。この伝説で知らなかったことを沢山教えてもらった。フランス・ジャズ界での活動もよくわかったし、実は '53年のJATP初来日(11月)のメンバーに加わるはずが、5月に急死して来日が幻に終ったことも知った。とてもケチだったが、収入は全部使い果すのが好きだったし、賭けビリヤード好きだったというエピソードも面白い。またハリウッド映画に出演するのが夢だったらしい。デューク・エリントンに呼ばれてアメリカ公演は実現したが、ハリウッド映画出演はかなわなかった。女優のドロシー・ラムーアがジャンゴのギター好きだというのを知って、ほのかな望みをかけていたらしい。440頁の本だが面白くて一気に読んだ。(岩浪 洋三)

Popular BOOK Review

「マイルス・デイヴィス・リーダー/フランク・アルカイヤー編 上西園誠・訳」(シンコーミュージック・エンタテインメント)
 日本人が書いたマイルス絶賛本には食傷気味だったところにあらわれた米「ダウンビート誌」のマイルス全記録を集めた本は、さまざまな聴き方、見方があり、ハーモニックで興味ぶかい。マイルスへのインタビュー、マイルスのコメントも鏤められている。ブラインド・フォールド・テスト(目隠し試聴)で、デューク・エリントンを絶賛、5つ星どころか「ありったけの星をあげてくれ」といい、有名なセリフ「ミュージシャンは全員集ってひざまずき、デュークに感謝する日を設けたほうがいい」を吐いている。また、チャーリー・パーカーやガレスピーをほめている。日本ではマイルスとセロニアス・モンクが共演した「バグス・グルーヴ」をケンカ・セッションなどとバカなことを云った人もいるが、ソニー・ロリンズとセロニアス・モンクが共演した「今宵の君は」(prestige)を聴き、「なぜ、こんなレコードを録るんだ。モンクのプレイはわかっているはずなのに。リズム・セッションらしいことは何もしない、俺のレコーディングのときはアンサンブルになるまで弾かせなかった。プレイは聴きたいんだが」、この感想を聞けばマイルスがソロのバックでモンクがピアノを弾くのを嫌った意味がわかる。モンクには伴奏とか協力の意識がないからだ。だからといって、マイルス、モンクという天才同士がケンカしたわけではない。翌年ニューポート・ジャズ祭で仲よく共演している。この本の第3章はレコード評集。ビル・マシューが「スケッチ・オブ・スペイン」を絶賛して「今世紀が生んだ、音楽の勝利を宣言するもっとも重要な一枚である」と書いている。ぼくもそう思う。もしマイルスのベスト1と問われたらこれを挙げる。しかし、日本のマイルス・フリークたちがこれをベストに挙げないのは気が知れない。別にD.B誌の評をそんなに信頼しているわけではないが、「ライヴ・イーグル」、「オーラ」に2つ星半、「オン・ザ・コーナー」と「ユア・アンダー・アレスト」、「デインゴ」に2つ星しかつけていない勇気は評価できる。もっとも「オン・ザ・コーナー」はのちに別の評者が5つ星をつけているので納得した。とにかくマイルスに関心を持つ人には一読をすすめたい。(岩浪 洋三)

Popular BOOK Review

「日本ジャズの誕生 / 瀬川昌久+大谷能生」(青土社)
 戦前のジャズ、ダンス・ミュージックと終戦直後のジャズの一部について、大谷氏が聞き手になって、瀬川氏が語るという形の対談集。大谷氏が「鏡の国のデューク・エリントン楽団」という小説を書いたという以外はどういう人かの説明がないのは、ちょっと不親切。よく研究している人だけにプロフィールを知りたいものだ。瀬川氏は戦前のジャズについては、いまや貴重な体験者の一人なので、氏が語る内容は大変参考になるし、興味ぶかい。服部良一は戦前から戦後にかけて、ジャズ・ソングやジャズ・タッチを取り入れた作曲家として重要な存在だったことが、この本でもよくわかる。かつて氏にインタビューしたとき、戦前大阪時代高い月謝を払って在日のアメリカ・ジャズメンにジャズを習いに行った話を聞いた。氏が笠置シズ子のために書いた「東京ブギウギ」や「買い物ブギ」は本物のブギではないが、そのユーモアのセンスは貴重だ。美空ひばりも最初彼女の真似あたりから始ったが、笠置シズ子はひばりを嫌っていたとのジャズメンの証言を聞いたことがある。彼女はひばりが自分をおびやかす存在になることを見抜いていたのだろう。たしかにひばりや江利チエミの出現で笠置シズ子の影は薄くなったが、最近彼女の歌と存在は若い人たちの間で再評価、再発見されつつあるようだ。酒井俊などは上記の彼女の歌を好んで歌っていた。
 戦前編については知らなかったことも沢山知ることのできる貴重な証言に満ちているが、「分裂の戦後」編には異論がないわけではない。戦後の三人娘、美空ひばり、江利チエミ、雪村いづみはみんなジャズ好きだったが、江利チエミはとくにそうで、ひばりも多分にチエミの影響を受けてジャズを歌ったところがあり、チエミがシャープス&フラッツの伴奏で歌っているのを聴いて、ひばりのお母さんが原信夫に直訴して、ひばりの伴奏もしてくれと頼んだという。ひばりは歌が抜群にうまかったので、戦後の流行歌、演歌の確立に関して重要な役を演じた。この本では戦後の流行歌が戦前のようにジャズやスイングと、ダンス音楽と結びついたのではなくなり、古い日本調になったのを嘆いているが、ぼくは戦後の流行歌がジャズから離れることによって、日本の流行歌として独立したものになったことを、むしろ高く評価したい。日本的歌い方の真の演歌は戦後確立されたのだ。美空ひばり、都はるみ、ちあきなおみ、青江三奈、森進一らによってである。ジャズと離れたからこそすばらしいのだ。また面白いのは、これらの歌手のうち都はるみはジャズとポップスが大好きだし、ちあきなおみは ビリー・ホリデイを演じたことがあり、青江三奈は元ジャズ歌手、森進一はチャーリー石黒と東京パンチョスの専属歌手と、みんなジャズとつながっている点だ。そのへんを分析すると長くなるので次回にゆずる。(岩浪 洋三)

Popular BOOK Review

「証言!日本のロック70's/難波弘之 井上貴子・編」(アルテスパブリッシング)
 『評論家にはまかせておけない!』と、1970年代に日本のロックシーンを切り開いたミュージシャンたちが当時を回想し熱く語った証言集。本書の元になったトーク・ショーの呼びかけ人で編者もつとめているのが、現在は大学で教鞭をとる難波弘之(金子マリ&バックスバニーほか)、井上貴子(東京おとぼけCatsに一時在籍)。二人の呼びかけに応えてホスト役に加わったのが、PANTA(頭脳警察ほか)、ダディ竹千代(東京おとぼけCats)。テーマごとのゲストスピーカーとして迎えられているのが、土屋昌巳(一風堂)、山本恭司(BOWWOW)、岡井大二(四人囃子)。こうした個性あふれるメンバーが繰り広げるトーク・ショーがどこまで深層にせまれるのだろうかとの思いもあったが、テーマがぶれることなくかなり密度の濃い話が展開されていることに驚かされた。それぞれはきわめて主観的な見解を述べているのだが、各回の参加者の話を総合すると、そこからは鮮やかに時代の姿が浮かび上がってくる。あの頃には確かに存在した日本のロック像を豊かなものとして記録していく上で、こうした試みが今後も続けられることを期待したい。(広田 寛治)


Popular BOOK Review

「ピーター・バラカンのわが青春のサウンドトラック/構成 文・若月眞人」(ミュージックマガジン社)
 レコード・コレクターズ誌に好評連載の、氏の60年代の英国におけるロック漬けの青春の日々を綴ったコラムがまとまった。「日本」のロック・ファンとしては、絶妙のタイミングといえるだろう。例えば、日本では、どんなに耳の早い人でも、1965〜7年という年代においては、輸入レコードで、ザ・ビートルズに続くムーブメントを検証するしかなかっただろう。しかし、2000年代に至るまでのロックを作り出す基礎は、まさにこの時期の英国のストリート・シーンで作られていたのだ。特にピーター氏の過ごした日常は、その中枢にいたといっていい。その日々は、我々にはけして手に届かない、珠玉の≪玉手箱≫である。その述懐の出版が何故今、絶妙のタイミングか?近年進んだ、60年代CDリイシューと、その解説や研究の成果により、こうした当時の日常のエッセンスを享受できる準備が、やっと2000年代後半に整ったといえるからだ。音楽は、極めて短い期間に作られるが、それが醸し出されていた環境の分析は、数十年の期間を経て行われるのだろう。(サエキけんぞう)


Popular BOOK Review

「猫ジャケ2 もっと素晴らしき“ネコード”の世界」(ミュージックマガジン社)
 昨年夏に発売された「猫ジャケ」の大好評に応えて第2集が登場・・・・ということになるのだろうが、前作が単なるイントロダクションに過ぎなかったのか、と思えるほど、この「猫ジャケ2」の内容は濃い。クラシックからシューゲイザーまで、まさしくジャンル不問の傑作猫ジャケがズラリと並び、町田康、山下洋輔、清水ミチコ、小西康陽などが猫への愛を語ったり記したりしている。表紙には、人気猫“まこ”が登場(撮影は動物写真の第一人者、関由香)。猫ジャケ・レコードの上に乗って実にいい表情をしている。不肖わたくしも前書きや全アルバム・コメントを担当させていただいた。猫と音楽をこよなく愛する方にぜひお薦めしたい。いや、そうでない方も、これを読めば自然と猫好きになってしまうかも!(原田 和典)


Popular INFORMATION

「サイモン&ガーファンクル」日本公演
 「サウンド・オブ・サイレンス」「ミセス・ロビンソン」「明日に架ける橋」等、数々の珠玉のメロディーを生み出してきたポール・サイモン。透き通るような美声の持ち主のアート・ガーファンクル。1960年代にデュオとして一世を風靡したサイモン&ガーファンクルの来日が決定した。'70年代以降はソロとして活躍している二人だが、その間にも折に触れて一緒のステージに立っていて、'03〜'04年には全米、全欧ツアーを敢行。今年になってオーストラリア、アジア・ツアーが組まれ、16年ぶり、3度目の来日公演が実現したというわけだ。心を揺する二人のハーモニー、その魅力をぜひ生で味わって欲しい。(T)
*7月8日 ナゴヤドーム 19時
*7月10日 東京ドーム 19時
*7月11日 東京ドーム 17時
*7月13日 京セラドーム大阪 19時
*7月18日 札幌ドーム 17時
お問い合せ:ウドー音楽事務所 03(3402)5999 http://udo.jp/


Classic ALBUM Review

「ベートーヴェン:交響曲全集Vol.4 交響曲第6番《田園》、第2番/パーヴォ・ヤルヴィ指揮、ドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン」(RCA・BMG JAPAN/BVCC-34178)
 過去に名盤の多い有名作品の再録音は、新たな視点やさらなる魅力がなければ資源やエネルギーの浪費に終わりかねないものだが、このコンビによる新盤は周到な研究と大胆な表現に支えられ、斬新な魅力と新機軸に満ちている。優れた録音がSACDマルチチャンネルによって活き、各声部の動きが明瞭になり、ベートーヴェンの労作の意味と革新性を再認識させられる。ベーレンライターの新しい原典版が使用されているが、パーヴォ・ヤルヴィとドイツ・カンマーフィルはきめ細かな工夫のもとに生気あふれる緻密な演奏を展開している。穏和な美感を基調に曲の特質に寄り添った第6番と、劇的な衝撃性を捉えた第2番のカップリングも巧妙だ。(青澤 唯夫)

Classic ALBUM Review

「美しく青きドナウ〜ウィンナ・ワルツ名曲集/〈美しく青きドナウ〉、〈春の声〉、〈ヨーゼフ・シュトラウス:オーストリアの村つばめ〉、〈皇帝円舞曲〉、〈南国のばら〉、〈フランツ・レハール:金と銀〉、〈ヨーゼフ・シュトラウス:天体の音楽〉、〈酒、女、歌〉、〈ウィーンの森の物語〉(作曲者名のない曲はヨハン・シュトラウス2世作曲)/ウィリー・ボスコフスキー指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」(デッカ・ユニバーサル ミュージック/UCCD-4091)
 ウィリー・ボスコフスキー生誕100年記念特集の1枚。ボスコフスキーはニューイヤー・コンサートの初代指揮者クレメンス・クラウスの後継指揮者として1955年〜79年の25年間も振り続けることになり、まさにニューイヤー・コンサートばかりか、ウィーン・フィルの顔として君臨することとなったのである。このCDでは1959〜76年までのニューイヤー・コンサートの中から9曲のワルツが演奏年代の古い順に収められているが、どの曲も生粋のウィーン子ボスコフスキーの面目躍如、このところのいろいろな指揮者が毎年のように入れ替わるよりも、はるかに楽しめる演奏であったことは否めない。最後の「ウィーンの森の物語」では映画「第三の男」でツィターを弾いたアントン・カラスがウィーン子の真髄を披露している。またこのCDの時代のニューイヤー・コンサートはシュトラウス一家が実際に使っていたゾフィエンザールで行われており、現在のウィーン・フィルの本拠地ムジークフェラインザールではない。(廣兼 正明)

Classic ALBUM Review

「ブリテンとラテン/ブリテン:シンプル・シンフォニー、ヒナステラ:弦楽のための協奏曲、エルガー:弦楽セレナード、ヴィラ・ロボス:ブラジル風バッハ第9番/長岡京室内アンサンブル」(fine NF・エヌ アンド エフ/NF-20105=CD 60105=SACD)
 5年前に「スーク&ドヴォルザーク 弦楽セレナード」で「ミュージック・ペンクラブ音楽賞」を獲得した長岡京室内アンサンブルのエヌ アンド エフからの第2弾。
収録されている4曲はイギリスと南米の2曲ずつに分けられる。イギリスの二人の曲は弦楽アンサンブルの好きな人ならば既にお馴染みである。そして南米組はブラジルとアルゼンチン、このうちアルゼンチンの作曲家ヒナステラが書いた「弦楽のための協奏曲」が今回このアンサンブルの目玉曲と言える。現在日本には世界に出ても十分通用するであろう弦楽アンサンブルが誕生し始めている。長岡京室内アンサンブルはその中でもトップクラスのアンサンブルと言えるだろう。しかしこのヒナステラの曲は大変な難曲である。アンサンブル全員の技術面と精神面がうまくかみ合わないと満足できる演奏は難しい。
 そしてこのCDを聴いたとき、聴く前までの不安は完全に払拭されていた。(廣兼 正明)

Classic ALBUM Review

「バルトーク:弦楽四重奏曲第1番、第2番/カルミナ四重奏団」(DENON・コロムビアミュージックエンタテインメント/COGQ-37)
 アマデウスSQ、ラサールSQ、それにハンガリーの巨匠ヴェーグの薫陶を受け、高い評価を得てきたカルミナQが創設25周年を期してバルトークの録音に取り組んだのは、私たちリスナーにとっても幸運であった。美しい演奏だが、4人の奏者の表現の均質性やその外面的な美しさだけでなく、作品の語法を誠実に捉え、その内実をリアリティに富んだリズムと強靱な意志をもって、鮮やかに聴かせる。ラサールSQに学んだ故か、知性的なアプローチやラヴェルの四重奏曲のような感覚の洗練性、音色の多彩さも際立っている。カルミナQの成熟した演奏が、バルトーク一流の精緻な表現を見事に伝えることに成功した。全曲録音が期待される。高音質のハイブリッド盤で、SACDマルティチャンネル(5.0)も楽しめる。(青澤 唯夫)

Classic ALBUM Review

「バッハ:ゴルトベルク変奏曲/曽根麻矢子(チェンバロ)」(AVEX・エイベックスエンタテインメント/AVCL25441)
 曽根麻矢子は「平均律クラヴィーア曲集(第1巻)」で第20回ミュージック・ペンクラブ音楽賞を受賞し、贈呈式後の懇親会でも率直で歯切れのよい意見交換が好評であった。
 新盤の「ゴルトベルク変奏曲」は「平均律」と同じデイヴィッド・レイのチェンバロが使われていると思われるが、響きはかなり異なっている。オフマイク録音のせいか空気感や余韻の広がりが活きて、この作品に相応しく仕上がっている。音色も実に美しい。曽根は10年ほど前にもこの曲を録音しているが、大胆さ、音色の使い分け、アーティキュレーションの明快さは相変わらずながら、弾き込むにつれて彼女の創意が曲全体のなかにうまく収まり、音楽の運びも流麗になってきている。ドキッとさせられるところもあるけれど。 SACDハイブリッド盤で、B&Wの802D 2チャンネルとKEFの203/2マルチチャンネルで聴き較べたが、マルチチャンネルの方が演奏が生きる。今後ともマルチチャンネル盤を継続してほしいものだ。(青澤 唯夫)

Classic ALBUM Review

「バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ(Vol.1)/ドミトリー・マフチン」(Lontano・ワーナーミュージック・ジャパン/WPCS-12149)
 1975年サンクトペテルブルク生まれの俊英ヴァイオリニスト、ドミトリー・マフチンはプレミオ・パガニーニ、ティボール・ヴァルガ、モントリオール、シベリウスほか数多くの国際コンクールで優勝や上位入賞を果たし、国際的な評価を得ている。世界各地でのリサイタルや、各国の著名指揮者、一流オーケストラとの共演も数多く、また、室内楽ではピアノのベレゾフスキーやチェロのクニャーゼフらと度々共演している。 マフチンがバッの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」の録音を開始。マフチン初のソロCDとなる当盤はその第1弾で、ソナタの第1、2番とパルティータの第1番が収められている。安定した技巧と瑞々しい感性にあふれた、スケールの大きなバッハである。(横堀 朱美)

Classic DVD Review

「ベートーヴェン:交響曲全集/カリータ・マッティラ(Sop.)、ヴィオレータ・ウルマーナ(Alto)、トーマス・モザー(Ten.)、アイケ・ヴィルム・シュルテ(Bass)、スウェーデン放送合唱団、エリック・エリクソン室内合唱団、クラウディオ・アバド指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団」(EUROARTS/2057378) *4DVD
 2001年2月8,9,11,12,14,15日に行われたローマの聖チェチーリア音楽院に於けるアバドとベルリン・フィルによるベートーヴェン連続演奏会のライヴの中から交響曲第1〜8番、そして理由は不明だが、第9だけは前年5月のベルリン・フィルハーモニーでのライヴをDVD化したものである。
 演奏は緊張感と躍動感に満ちており、アバドは緩徐楽章をも結構速めのテンポでぐいぐいと引っ張って行ってしまう。確か彼は前年に癌を患って回復したと記憶しているが、この演奏は病気など何処かに吹き飛ばしてしまうかのような力強さを感じる。特にベルリンでの「第9」に於ける迫力は素晴らしいもので、最終楽章のコーダは演奏者の限界に挑んだものと言っても過言ではない。アバドはこのDVDの中で「ベートーヴェンのシンフォニーはすべてが傑作である」と言っているのだが、これがまことに真実味に溢れて聞こえてくる。なお、このDVDは第3,5,6,7番に限って、別のカメラがいろいろな角度でオーケストラから指揮者を見られるような音入りの画像がボーナス・トラックとして入っているのも面白いアイディアである。(廣兼 正明)

Classic CONCERT Review

「ラファウ・ブレハッチ・ピアノ・リサイタル」2月22日ザ・シンフォニーホール
 音楽評でよく使われる「細心にして、かつ大胆」という常套句は、ブレハッチにも例外ではないようだ。「英雄ポロネーズ」「4つのマズルカ」など得意のショパン作品を弾くときは、随所に思い切りのよさをみせて、見事な造形美を築く。「ピアノの詩人」とは巨匠に捧げられたオマージュだが、若いピアニストもよく心得て、詩情豊かにうたいあげる。モーツァルト「ピアノ・ソナタ第16番」のもつ軽やかさと翳り、ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第2番」に託された屈託のない明朗さも、自在に鍵盤から流れてくる。作品の解釈についても押し付けがましさがなく、さらりとして好感がもてた。舞台を歩き、ピアノの前に座り、演奏する姿には、一段と落ち着きが出てきた。頼もしい限りである。(椨 泰幸)
(写真提供:ザ・シンフォニーホール)

Classic CONCERT Review

「ケルンWDR交響楽団」3月2日 ザ・シンフォニーホール
 かつてケルン放送交響楽団と呼ばれたころからこのオーケストラを10年余にわたり率いるセミヨン・ビシュコフの指揮は、知的でありながら温かみを失わず、音楽の核心に直に迫ってくる。それをはっきりと感じさせたのが、ドヴォルザーク「交響曲第8番」で、形の整った楽曲の中から、民族色豊かな旋律が次々にあふれ出て、ボヘミアの異国的な風土を心ゆくまで描写した。このロシア出身の指揮者のもつ心情と、作曲者の心情が、見事に呼応していたと思う。ブラームス「ハイドンの主題による変奏曲」は敬虔な祈りの空間を浮かび上がらせた。田村響はモーツァルト「ピアノ協奏曲第23番」を弾き、フィナーレの輝かしいロンドに新進らしい生気あふれる個性がよく表現されていた。明暗のフレーズが点滅する第2楽章では、翳りのある部分をもっと淡彩に仕上げたらよかったと思う。(椨 泰幸)
〈Photo:WDR Mischa Salevic〉

Classic CONCERT Review

「トン・コープマン指揮アムステルダム・バロック管弦楽団」 3月7日 ザ・シンフォニーホール
 古典派やロマン派の華々しい音楽が盛行する中で、バロックの悠揚とした響きに接すると、心が洗われたような気がする。ピリオド奏法の先達となったこのオランダ生まれの名指揮者の存在は貴重なものであり、今も爽やかな清風を送り続けている。バッハといえば宗教曲のしぶい音と結び付けがちであるが、この日合奏された巨匠の管弦楽組曲全曲(4曲)から、早春を思わせるような一条の陽光が差し込んでくる。バッハは世俗曲でも超一流であることを、コープマンの生気あふれるアンサンブルによって、如実に示した。中でも「G線上のアリア」への編曲で知られる「第3番」の演奏は、快活な中にも節度が保たれて、新時代(古典派)の開幕を予告しているようだ。(椨 泰幸)
(写真提供:ザ・シンフォニーホール)

Classic CONCERT Review

「古典音楽協会第140回 定期演奏会 ハンブルクで活躍した二人のフィリップ、テレマンとエマヌエル・バッハ」4月3日 東京文化会館小ホール
 上野の桜が満開の宵に140回を迎えた古典の演奏会があった。14人から成る弦楽アンサンブルである。テレマンは1681年生まれだが、大バッハの次男エマヌエル・バッハは1714年生まれである。彼はテレマンに名ずけてもらったから、二人ともに「フィリップ」を付けられていた。音楽的には全く対象的に明るいテレマンに対し、暗く重いエマヌエル・バッハであった。曲はテレマンの「組曲ドンキホーテ」、「リコーダーとフルートの協奏曲」独奏Rec片岡正美Fl大澤明子、」、「ヴァイオリン協奏曲」独奏中嶋斉子であった。中嶋は宮廷を彷彿させるかの優雅な響きであった。エマヌエル・バッハは「オーボエ協奏曲」独奏石橋雅一、「チェンバロ協奏曲」独奏佐藤征子であった。佐藤はCemのタッチも軽妙であった。コンサートマスターの角道徹はソロも冴えアンサンブルを引き締めていた。(斎藤 好司)

Classic CONCERT Review

「《シュトイデ弦楽四重奏団と日本の仲間たち》ハイドン:弦楽四重奏曲 第78番 変ロ長調『日の出』Op.76-4、シューマン:ピアノ五重奏曲 変ホ長調 Op.44、モーツァルト:弦楽四重奏曲 第14番 ト長調 K.387、/シュトイデ弦楽四重奏団、三輪郁(Pf)」 4月19日(日) 14:30 東京オペラシティコンサートホール
 丁度5年前の4月、代々木のオリンピック村で聴いたのがシュトイデ・クァルテットとの出会いだった。ウィーン・フィルのメンバーによるクァルテットの共通点は、歌い方は流麗だが決して派手ではなく、そして実に親しみの持てる演奏と言うことになる。これはまさに最小単位のウィーン・フィルであり、昔からよく言う「古き佳き時代のウィーン」という言葉が合う演奏スタイルだ。LP初期のカンパーのウィーン・コンツェルトハウス、モノラル後期のバリリ、その後しばらく経ってからデビューしたヒンクのウィーン弦楽四重奏団、そして今回のシュトイデ、すべてがウィーン・フィルのDNAを受け継いだクァルテットである。前置きが長くなったが、今回聴かせてくれたシュトイデ率いる若いクァルテットは速い楽章を現代的なテンポとリズムで表現し、緩徐楽章は聴く者を美しい音色で至福の世界に導いてくれた。またシューマンでは、ウィーンを主に演奏活動を続けた三輪郁のピアノが、彼らに良く溶け込んだ見事なアンサンブルで十分に全体の核の役割を担った。(廣兼 正明)
〈Photo:Wilfried K.Hedenborg〉

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ケンウッド・トワイライトイベント MPCJスペシャル Vol.1
ミュージック・ペンクラブ音楽賞受賞記念
≪神谷郁代とすごすシューベルト・ナイト!≫
日時:2009年6月11日(木) 午後7時〜
会場: ケンウッド スクエア・丸の内(丸の内3-4-1新国際ビル1F)
入場:無料
 神谷郁代が出演して、受賞作「神谷郁代プレイズ・シューベルト」を彼女自身が熱く語りながらのCDコンサート。貴重なレコーディング秘話などを初公開、その他、今話題のガラスCDと通常CDとの比較試聴、そして神谷のサイン会も行う充実した90分のひととき。
主催:ミュージック・ペンクラブ・ジャパン
協賛:ケンウッド スクエア・丸の内、
後援:エヌ・アンド・エフ
*入場ご希望の方は前日までにケンウッド スクエア・丸の内(03-3213-8775)へ。(H)

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タカーチ弦楽四重奏団」6月26日 午後7時いずみホール
 ブダペストで1975年に設立され、ポーツマス(現ロンドン)国際弦楽四重奏コンクールで優勝するなど数々の受賞歴を誇り、録音も多い。ハイドン没後200年を記念して第82番「雲がゆくまで待とう」の他バルトーク第2番、モーツァルト第21番を演奏する。
お問い合わせはいずみホール(06−6944−1188)へ。(T)


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「第4回 Hakujuギター・フェスタ2009」 8月7日〜9日Hakuju Hall
 毎年8月、東京のHakuju Hallで行われている「ギター・フェスタ」は、日本を代表するギター界の重鎮、荘村清志と福田進一のプロデュースによるメ夏の風物詩モ。ギター音楽の魅力と可能性をより多くの人々に知ってもらうことを目的としてスタートし、今年で4回目を迎える。今回のテーマは「イタリア」。7日は、福田進一のソロでジュリアーニやベリオの代表作ほかを演奏、続いて錦織健の歌唱を加えてイタリア歌曲やカンツォーネ。8日は、旬のギタリスト・朴葵姫のリサイタルのほか、荘村清志によるフレスコバルディやカステルヌオーヴォ=テデスコ作品などのソロに続き、福田進一、鈴木大介を加えた3人でイタリア映画音楽集。9日は、福田進一とバリトンの中村靖(朗読)による《プラテーロと私》、後半は荘村清志と福田進一の共演でファジル・サイの委嘱新曲世界初演ほかを披露。充実の内容と極上の音楽が楽しめる3日間は、ギターファンならずとも必聴。
お問い合わせはHakuju Hallチケットセンター(03-5478-8700)へ。(AY)
<Photo:三好英輔>