2007年4月 

Popular ALBUM Review

「魅惑の宵/アート・ガーファンクル」
(ワーナーミュージック・ジャパン/WPCR-12600)

 アートはインタビュー嫌いで知られているが、話す機会があった。彼は現代には数少ないクルーナーの流れを汲む歌手だと以前から思っていたのできいてみたが、ずっとロックを歌ってきたと否定されてしまった。が、こうしてスタンダード名曲集を聴いてみると、彼のクルーナーぶりが一段と浮き立ってくる。プロデューサーはベスト・セラー『愛への旅立ち』を手がけたリチャード・ペリー。まずアクースティック・ギターのバックに始まり、自身のデュオを挟んだり、S&G時代のイメージを考慮した作りも数曲。キラー・ディラー・スタイルを配した懐メロ・ムードもたっぷり。アートはすでに往年の美声は失われているがスムーズな歌い方で、「魅惑の宵」はじめ高音も聴かせ、懐かしい思い出をかきたてるような1枚にしている。(鈴木 道子)


Popular ALBUM Review

「インディアン・サマー/アメリカ」(ソニー・ミュージック/MHCP-1322〜3)
 9年ぶりのオリジナル・アルバム+最新のライヴ音源(2005年10月収録)の2枚組仕様という意欲的な新作♪何といっても新作の出来があまりに素晴らしく、変わらぬ持ち味で聞かせる1970年代の著名曲が中心の嬉しいライヴ盤でさえ単なるオマケとしか思えなくなって来るほど。4年半前のクリスマス企画盤「ホリデイ・ハーモニー」で受けた感銘が何倍にもなって甦って来るような、そんな気分。大ヒット「名前のない馬」でシーンに颯爽と登場して今年でデビュー35周年になる彼らだがメロディーもハモリも、そしてサウンドも新鮮な空気をたっぷり吸い込んだかのように生気に満ちあふれている。ちなみにアルバムの原題は「Here & Now」。(上柴 とおる)

 
Popular ALBUM Review

「ジェニアァーの愛の11カ条〜コモ・アーマ・ムナ・ムヘール/ジェニファー・ロペス」
(ソニー・ミュージック/EICP-756)

 歌手デビュー以来大きなテーマだったスペイン語による初のフル・アルバム。インターナショナル用の英語のレコーディングに対して、ここでは歌手であり夫でもあるマーク・アンソニーと彼のブレインに全てを委ねて、歌に徹している。その結果、R&B/ヒップ・ホップ的なスタンスの作品より、映画女優としての表現力が発揮されている。愛の喜びや悲しみというラテン特有のテーマを主体にしながら、ポジティヴな女性像をしっかり描いているのが彼女らしい。サルサとかサンバのようなドロドロとした感触のラテン・ミュージックというより、もっと普遍的な人々にアピールするホピュラー・ソング的なコンセプト。ロンドン・フィルのオーケストレーションや控え目なヴォーカルを聴かせるアンソニーとの共演が、ヒューマンなコンセプトをより強調していると思う。(村岡 裕司)

Popular ALBUM Review

「ザ・ボトム・ライン・ライヴ/ジャニス・イアン」
(ビクターエンタテインメント/VICP-63743)

 50年のキャリアをもつジャニスの、これが唯一のライヴとは。今は無いN.Y.の名ライヴ・ハウス、ボトム・ラインでの1980年のステージが収められている。シンガー・ソングライターとしての名声を確立して数年たった頃で、歌も自信を持って充実している。何よりいいのはスタジオの制約を離れて、ジャズもこなすバンドと自由に曲を展開していること。原曲よりずっと面白い。「冬の部屋」のドラマティックな熱唱も手応えがあるし、帰ってきてほしいと切々と歌う「我が心のジェシー」はやはり圧巻。ジャジーな「踊りたいのに」はじめ原曲とは違った表現が楽しめる。曲目も揃っているし、彼女の代表作に上げていい秀作。(鈴木 道子)

Popular ALBUM Review

「ザ・バード&ザ・ビー/ザ・バード&ザ・ビー」(東芝EMI/TOCP-70192)
 ‘新人’では今、一番気になるアメリカの男女デュオのデビュー盤。1960年代のポップ感覚を軸足に独特の浮遊感のあるウィスパリング風ヴォーカルがエレクトロ・ポップ・サイケ・ラウンジ・バカラック(!?)...なサウンドに乗って春風のように舞う。シャレっ気があって歌詞やメロディー作り、音作りにも類まれな才覚を感じさせてくれる彼らはL.A.を拠点に活動する30代前半のイナラ・ジョージ(リトル・フィートの故ローウェル・ジョージの娘)と30代後半のグレッグ・カースティン(プロデューサーとしても実績あり)。それぞれにキャリアを積んだ二人の融合は耳の肥えたファンも虜にしてしまう不思議な魅力を生み出した。(上柴 とおる)

Popular ALBUM Review

「イマージュ ソングブック〜レノン&マッカートニー〜」
(ソニー・ミュージック/SICP-1373)

 癒しをテーマにしたイマージュ・シリーズにレノン&マッカートニーの名曲カバー集が登場。ジャネット・ケイの「ラヴ」からフィオナ・アップルの「アクロス・ザ・ユニバース」まで、ジェイク・シマブクロのウクレレによるメドレーも含め全15曲を収録。この手のアルバムには癒しの強要を感じて興ざめすることも多いが、これは選曲もラインナップも、そしてジャケットも秀逸。宮原敏、小沼ようすけといった日本人ギタリストの演奏もみごとにはまっている。ちょっと年配のリスナーは、ニッキー・ホプキンスの「イエスタデイ」やブラザース・フォアの「ガール」などに、癒し以上の郷愁を感じるかもしれない。(広田 寛治)

Popular ALBUM Review

「アンディスカヴァード/ブルック・ホーガン」(ポニーキャニオン/PCCY01825)
 人気レスラー、ハルク・ホーガンの娘で、父の番組「Hogan Knows Best」のレギュラーとしても親しまれているブルックのデビュー作。バックグラウンドやジャケットのイメージから、ステレオ・タイプの先入観(メタル系か、とか)もあるが、内容はブリトニー以降のトレンドになっているR&Bポップスで、現在のトレンドに乗せた自然なヴォーカルを聴かせる。80年代ポップス的なスタイルも巧みに取り入れたセンスもよし。ビヨンセやジャスティン・ティンバーレイクなどの売れっ子スコット・ストーチが設立したプロダクションの第一号アーティストなので、スコットが全面的にバックアップしているのも話題だ。既にインディ系の全米チャートで1位をゲットしているのも納得出来る。(村岡 裕司)

Popular ALBUM Review

「アンカバード/トニー・ジョー・ホワイト」(トムスキャビン・レコード/WHCY-1)
 26年ぶりの来日を来月に控えたアメリカ南部のロック魂をダイレクトに伝えるスワンプ・ロッカー、トニー・ジョー・ホワイトのレイテスト・アルバム。自らの代表作でブルック・ベントンでも馴染み深い「雨のジョージア」などを気骨溢れた雰囲気の中で聴かせる。レコーディングにはエリック・クラプトン、J.J.ケール、ウエイロン・ジェニングス、マイケル・マクドナルド、マーク・ノップラーらも参加。ライヴ・イン・ジャパンがとても楽しみ、そのステージでは必ずエルヴィスでも知られる「ポーク・サラダ・アニー」を熱演してくれることだろう。(Mike M. Koshitani

Popular ALBUM Review


限定盤

通常盤

「アウト・オブ・ザ・ブルー/エレクトリック・ライト・オーケストラ」
(ソニー・ミュージック/MHCP-1157〜8)

 昨年9月に発売され好評だったE.L.O.の紙ジャケット・シリーズ。その第2弾は77年以降のオリジナル5作品で、うち今回最新リマスターされたのは86年の「バランス・オブ・パワー」(MHCP-1163)、そして77年の「アウト・オブ・ザ・ブルー」(他は01年リマスター)。ビートルズの影響が色濃いブリット・ポップにクラシックを融合させた独自のサウンドで世界的な人気を集めたが、その絶頂期に発売されたこの作品は、E.L.O.最高傑作との呼び声も高い。ボーナス・トラック3曲収録。日本盤は紙ジャケと共に、LP当時と同じ2枚組にするこだわりようにも敬服。ファンはもちろん、「電車男」で彼らを知った世代にも、他の作品と共にぜひ聞いてみてほしい。(森井 嘉浩)


Popular ALBUM Review

「パートナー・イン・ミュージック/ペトゥラ・クラーク」
(セピア・レコード/SEPIA 1088) *輸入盤

 若きペトゥラ・クラークは1946年、BBCのデモ映画で歌った「マイザー・マイザー」が、1年以上に亘って毎朝放映され、以後、スター街道まっしぐら。ピアノのジョー・ヘンダーソンは伴奏者として、作曲家として、いつも彼女の良きパートナーだった。1959年には「ペットとミスター・ピアノ」の題で、BBCラジオのシリーズが出来た。その頃の音源を集めたのが、このCD。1942年の「バラのように」に始まり、「マイザー・マイザー」「マイ・ハッピネス」「枯葉」等ペトゥラの歌20トラック、ペトゥラが作曲し、ここではジョーが演奏する「ゴールデン・ギニア」等、珍しい8曲を加えた楽しい1枚。 (川上 博)

Popular ALBUM Review

「ブランド・ニュー・セイム・オールド・オブセッションズ/ジャスティン・トンプソン」(ヴィヴィド・サウンド・コーポレーション/ NACD3239)
  ロックな感性で、いまアメリカ・ジャズ・シーンを席巻する新人、ジャスティン・トンプソン。代表作が嬉しいことに、邦盤化された。トンプソンは、ステファン・グラッペリ&ジャンゴ・ラインハルトのジプシー・スウィングや、ジャズ・ギター名手、ウェス・モンゴメリーに大きな影響を受け、新しいアコースティック・スウィングの寵児とすでにウェブ上で若いファンに支持されている。ロックの雄、スティングやトム・ウェイツなどに触発されたスモーキー・ヴォーカルは、新しいジャズ・ヴォーカルの夜明けを物語っている。ギターの腕前も超一流で、紡ぎだされる高速スウィング・ギターが、レイジーなヴォーカルと相乗効果を発揮して独特なグルーヴを醸し出す。ずばり新しい「アコースティック・スウィング名盤」の誕生といってよい。ジョン・ピザレリ・ジュニア以来の逸材だ。聴き所は「The First Love Song」、スティングのヴォーカルを彷彿させるロック・フィールがいっぱいのカッコいい作品。ロックのカリスマ、ニルヴァーナの大ヒット曲カヴァー「SMELLS LIKE TEEN SPIRIT」のジャズ・アレンジは、限りない才能を如実に示している。今回同時に発売されるデビュー盤『テイスティ・プディン』では、ブリトニー・スピアーズのヒット曲「Hit Me Baby/Baby One More Tim」のカヴァーも登場、こちらも新しいジャズ作品として要チェックだろう。(鈴木 カツ)

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「恋に過ごせし宵/エディ・ヒギンス・トリオ」(ヴィーナス・レコード/TKCV-35386)
  昨年エディ・ヒギンスはこれまで録音していない50曲のスタンダード・ナンバーを連続録音し、順次発売しているが、本作はその第2弾である。ジェイ・レオンハート(b)、マーク・テイラー(ds)を従えての演奏だが、ドラマーが新しくなり、演奏も若返った感がある。エディのピアノはスタンダード曲のメロディーを生かしてプレイするので、聴く者の心をくつろがせてくれるので快適だ。「アイ・クッド・ライト・ア・ブック」「カム・レイン・オア・カム・シャイン」など曲もおなじみのものばかりだ。(岩浪 洋三)

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「ジャズ&アウト/ マリーンmeets本田雅人 B.B.Station」
(BMG JAPAN/BVCJ-34032)

  マリーンの新作がメジャー・レーベルから発売されるのは16年ぶりである。しかも共演がいまもっとも注目されている若手アルト・サックス奏者/本田雅人がひきいるビッグ・バンド、B.B.Station との共演なので、マリーンの張りのある美声の熱唱で、いやが上にも盛り上がる。ビッグ・バンドを向こうに廻して堂々と歌えるマリーンの歌唱力は大したものだ。「シング・シング」はスイングの名曲だし、「イッツ・マジック」はマリーンのかつてのヒット曲。「テネシー・ワルツ」から「レフト・アローン」と選曲も魅力的だし、B.B.Stationの若々しく、迫力に富むビッグ・バンド・サウンドも聴きものだ。(岩浪 洋三)

Popular ALBUM Review

「ブラック・アイズ/藤田ゆかり」(エムアンドアイカンパニー/MYCJ-30412)
  藤田ゆかりの待望の2作目。元々作曲にも才があるゆかりはとっても良い曲を書くが、ハーヴィー・メイソンとアーニー・ワッツが特別に参加したことにより、彼女の楽曲の良さ(魅力)が、十分に表現された素晴らしい作品に仕上がった。標題曲「ブラック・アイズ」では、ハーヴィーの抜群のリズムに乗って、ワッツのソプラノとゆかりのピアノが情感のこもった熱演を繰り広げる。なるほど、この曲は、こんなふうに華やいだ香りや深みを得て、味に広がりが出るものかと感心させられる。オリジナル以外では、ショパンの「バラード第4番」で、ゆかりはピアニストとしての表現者としての実力を発揮している。透き通った静謐な音色で作る感情表現は見事だ。(高木 信哉)

Popular ALBUM Review

「A Night In Claremont/The December 2nd Quartet」
(ヴェガ・レコーズ/ART1040)

 ピアノの弾き語り歌手、デナ・デローズとレイ・ドラモンド(b)アキラ・タナ(ds)そしてデイヴ・エリス(ts)による即席のカルテットによる新作。デナの歌が5曲、ピアノ・トリオで1曲、エリスのテナーが入って6曲という構成。彼女は、明確なディションで、器楽奏者らしいフレージィングを交えて落ち着いた語り口で歌っている。お得意のピアノとユニゾンで歌うスキャットも出てくる。もともとピアニストだった彼女のグルーヴィーなピアノも素晴らしい。ロリンズばりに良く歌うエリスのテナーも心地よい聞きもの。(高田 敬三)

Popular ALBUM Review

「幸福の王子/鈴木綜馬」(ジェー・ピー・ミュージック/JP-COC0702)
 『エリザベート』『レ・ミゼラブル』『タイタニック』等で活躍する、日本ミュージカル界のスター、鈴木綜馬の最新盤。彼がナレーターを務めるテレビ番組BS-iの『地球見聞録』新エンディング・テーマ曲として、オスカー・ワイルドの『ハッピー・プリンス』をモチーフに、彼自身が作詞・作曲した魅惑的な曲「幸福の王子」、『サウンド・オブ・ミュージック』中の「EDELWEISS」、やはり自作の「Winter Child」(歌詞は栃木ゆかと共作)の3曲を鈴木綜馬が歌い、「幸福の王子」のインストルメンタル・ヴァージョンを加えた4曲収録のCD。写真集のような16ページのブックレット付。(川上 博)

Popular ALBUM Review

「ドリームガールズ」カラオケ版 (2枚組)
(Stage Stars RPT 511/PSCD 6068-2) *輸入盤

 ダイアナ・ロスとザ・シュプリームスをモデルにした『ドリームガールズ』は、1981年にブロードウェイでオープン。4年間1522回続演し、トニー賞13部門でノミネートされ、6部門で受賞した、ブロードウェイのヒット・ミュージカル。初演から4半世紀を経て映画化され、日本でも話題作になっている。このカラオケCDは、ヘンリー・クレイガー作曲、トム・アイエン作詞、劇中のミュージカル・ナンバー「ムーヴ」「キャデラック・カー」「ドリームガールズ」「ワン・ナイト・オンリー」等21曲、全42トラックを収録。Disc 1はガイド・ヴォーカル入、Disc 2はカラオケ。グラフィックスには対応していない。(川上 博)

Popular ALBUM Review

「ヘイル!ヘイル!ロックンロール/チャック・ベリー」
(ワーナーミュージック・ジャパン/WPBR-90631〜2)

 1986年10月16日にミズーリー州セントルイス/フォックス・シアターで行われたロックンロール誕生に大きく貢献したチャック・ベリーの≪祝還暦ライヴ≫の模様がついにDVDとして登場。監督はテイラー・ハックフォード、音楽プロデュースはキース・リチャーズ。キースが中心になり、御大チャックの凄さを伝えてくれる。エタ・ジェームス、エリック・クラプトン、ロバート・クレイ、リンダ・ロンシュタット、ジュリアン・レノンほか多くのミュージシャンが参加。50年代にチャックのバンドの在籍していたピアノ奏者、ジョニー・ジョンソンの演奏にも注目だ。まさにロックンロールの教科書ともいえる貴重な内容である。(Mike M. Koshitani)

Popular BOOK Review

「ジョン・レノンに恋して/シンシア・レノン著 吉野由樹 訳」(河出書房新社)
 時の流れは無情にも弱者の声を消してしまうことがある。著者のシンシア・レノンは、ジョン・レノンがミュージシャンとして自立し、ビートルズとして成功するまでを支え続けた恋人であり妻であった。だが、わざわざそう書かなければならないほど、彼女の存在は歴史の彼方に忘却されてきたように思う。本書はそんなシンシアの真摯な回想録であり、心からの叫びでもある。彼女の知っているジョンは、やさしく才能にあふれ冒険家である一方、いじわるで自分勝手でときに自暴自棄になりいつも愛情に飢えていたという。そんな矛盾に満ちたジョンにいつしか心惹かれてしまったことへのとまどいや、ビートルズの栄光の裏でひとり子育てに明け暮れることの苦しみなどもシンシアは正直に告白している。それにしても、ここで描かれているジョンは、近年オノ・ヨーコが力説している≪ラヴ&ピース≫を掲げて共に闘い、ハウスハズバンドとして新しい時代をリードしたヒーロー像とはまったく異なる人物である。どちらも真実なのかもしれないが、シンシアの描くジョンの人間的な魅力こそが間違いなく彼の作品の原点にある。(広田 寛治)

Popular CONCERT Review
「MUSICARESパーソン・オブ・ザ・イヤーの授賞パーティー・スペシャル・ライヴ」
2月9日 ロサンゼルス/コンベンション・センター

 ザ・ポリスがリユニオン・ライヴを披露したことでも話題を集めた第49回グラミー賞授賞式の2日前ということになる2月9日、MUSICARESパーソン・オブ・ザ・イヤーの授賞パーティーに出席し、スペシャル・ライヴを観ることができた。このMUSICARESはグラミー賞の運営母体、NARASの関連組織で、音楽関係者のための福利厚生団体のようなもの。音楽を通じて社会に貢献する活動を積極的に推進してきた組織でもある。ほぼ20年前からMUSICARESはそういった活動を象徴する社会派アーティストを毎年一人顕彰してきたのだが、今年はそのパーソン・オブ・ザ・イヤーにドン・ヘンリーが選ばれたのだった。ケブ・モの「呪われた夜」、マイケル・マクドナルドの「ハート・オブ・ザ・マター」など原則非公開のライヴはどれも素晴らしいものばかりだったが、ドンが「イーグルスは現在レコーディングを進めていて、完成後、ツアーにも出る」と語っていたにもかかわらず、その場にはティモシーしかいなかったことがなんとなく釈然としなかった。以下は全曲のリスト。
JOHN MAYER/DIRTY LAUNDRY、TIMOTHY B. SCHMIT/I CAN’T TELL YOU WHY、SAM MOORE with TIMOTHY/LONG RUN、KEB MO/ONE OF THESE NIGHTS、TRISHA YEARWOOD/TAKE IT TO THE LIMIT、MICHAEL MCDONALD/THE HEART OF THE MATTER、SHAWN COLVIN/THE END OF THE INNOCENCE、SEAL/BEST OF MY LOVE、DIXIE CHICKS/DESPERADO、DON HENLEY BAND/BOYS OF SUMMER、DON HENLEY BAND/WASTED TIME、DON HENLEY BAND/LIFE IN THE FAST LANE、DON HENLEY BAND/HOTEL CALIFORNIA(大友 博)

Popular CONCERT Review
「安富祖貴子スペシャル・ライヴ」3月2日 大泉学園ゆめりあホール
 デビュー・アルバム「魂/Kon」でその日本人ばなれしたずば抜けた歌唱力でジャズ界の話題をさらい、早くも二作目の「マブイのうた」を発表、そのプロモーションで全国ツアーを敢行中の安富祖貴子を聞く。CDを聞いた時から、生で聞いてみたいと思っていた歌手だ。期待に違わず素晴らしいコンサートだった。太く柔らかく伸びのある声で新作の中のナンバーを中心に魂を込めた歌を聞かせた。中ではホイットニー・ヒューストンで知られる「すべてをあなたに」とニーナ・シモンの名唱のある「フィーリング・グッド」のグルーヴィーでソウルフルな歌が特に印象深かった。意外な選曲の「マイ・ウェイ」も、一時のサラ・ヴォーンを思い出させるような見事な歌唱だった。この歌手は、ライヴ・ハウスよりコンサート・ホールの方が向いているかもしれない。前途洋々としたスケールの大きな歌手だ。伴奏の安井さち子(p)、井上陽介(b)小山太郎(ds)のトリオも彼女と一体になって好演。(高田 敬三)
 いまいちばん注目されている沖縄出身の新進ジャズ歌手、安富祖貴子のライヴが練馬は大泉学園のゆめりあホールで行われた。年2回くらい行われている新進アーティストによるジャズ・ライヴは練馬在住のぼくが司会を務めている。今回のライヴはとくに安井さち子(P)トリオとの共演という豪華な顔ぶれでもあり、ホールは満席となった。井上陽介(b)、小山太郎(ds)という好メンバーにバックアップされ、安富祖貴子も思い切り個性を発揮し、沖縄のソウルを感じさせる力強い歌を聴かせてくれた。まず、安井さち子トリオによる「キャンディ」で始まり、安富祖は「ワーク・ソング」「マイ・ウェイ」「マック・ザ・ナイフ」「モーニン」「ベサメ・ムーチョ」など得意な歌を次々に歌ったが、「マーシー・マーシー・マーシー」などファンキーな歌にも彼女らしい深いソウルが感じられ、圧倒された。アンコールの「テネシー・ワルツ」はしみじみとした歌い方で、強く心を動かされた。(岩浪 洋三)
 すでにアルバム2枚を発表し、ぜひともライヴを味わいたいと思っていた安富祖貴子のステージをついに堪能できた。とてもファンキーでソウルフル、ジャズというフィールドに位置しながらもR&Bも実に完璧に歌い上げる。そんな彼女の魅力が生の「ワーク・ソング」「マーシー・マーシー・マーシー」といったナンバーでしっかりと伝わってきた。一方で、「マイ・ウェイ」「ベサメ・ムーチョ」「マック・ザ・ナイフ」「モーニン」といったスタンダードな作品で歌の上手さを表現していた。大きな将来性を感じさせるこれからが実に楽しみなアーティスト。ジャンルにとらわれることなく“良い歌”をどんどんと歌っていって欲しい。(Mike M. Koshitani)

Popular CONCERT Review
「原田依幸」2月4日 西荻窪/アケタの店
 原田依幸は70年代後半から80年代初頭にかけて、伝説の“生活向上委員会大管弦楽団”を牽引したピアニスト。ここ10数年は極めて限られた機会でしか演奏していないのだが、時岡秀雄(サックス)、望月英明(ベース)、小山彰太(ドラムス)とのカルテットは鉄壁のコンビネーションを誇る。原田カルテットのライヴは短い。各セット25分から30分ぐらいの演奏を、休憩を挟んで2度やるだけ。だがこの密度が尋常ではなく濃い。これだ、という音をズバッと放出し、サッとプレイを切り上げる。汗で濡れた原田の表情に、男の潔さが光る。1セット目はメンバー全員がフルに疾走、2セット目は原田のソロ・ピアノから徐々にメンバーが参加し、大団円に。すさまじいウネリを味わった。 (原田 和典)

Popular CONCERT Review
「ゲイリー・バーツ&ステフォン・ハリス」2月6日 COTTON CLUB
 バーツは60年代にアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズやマックス・ローチのグループで活躍し、70年代初頭にはマイルス・デイヴィス・バンドにも在籍したアルト・サックス奏者。自己のグループ"NTU TROOP"を通じて数多くジャズ・ファンクの名曲を送り出しているが、この日は若手ヴァイブ奏者ステフォン・ハリスを迎え、60年代に戻ったかのようなストレート・ジャズを展開。「ブルース・マイナー」と「トランジション」のメドレー、「26-2」などジョン・コルトレーンの曲も目立った。ラストでは、ニューオーリンズ復興への願いをこめた新曲をプレイ。拳を握り締めながら“ブッシュやチェイニーも、このカーニバルは止められない”とシャウトするバーツが実に勇ましかった。(原田 和典)
写真提供:コットンクラブ 撮影:土居政則

Popular CONCERT Review
「ケニー・ギャレット」2月7日 BLUE NOTE TOKYO
 ギャレットもゲイリー・バーツ同様、マイルス・デイヴィス・バンドに在籍し、ジョン・コルトレーンの影響を強く受けたアルト・サックス奏者である。このふたりがほとんど時を同じくして日本にいたのは考えれば考えるほどすごいことだ。親日家であり、サービス精神旺盛なギャレットは「翼をください」などを吹いたり、シンセサイザーを操ったり、エフェクターをかけたサックスも吹いた。観客とのコミュニケーションを重視することは、それはそれで立派なのかもしれないが、やはり僕は、ただひたすらアルト・サックスをブロウするギャレットが好きだ。その点ではオープニング・ナンバーで延々繰り広げられた、ドラムスとのバトルが圧巻。この十数分で僕はすっかり満足してしまった。 (原田 和典)
写真:Yuka Yamaji

Classic ALBUM Review

「ベートーヴェン:交響曲第5番《運命》、第7番/グスターボ・ドゥダメル指揮、シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ」(ユニバーサル ミュージック/UCCG-1345)
 グスターボ・ドゥダメルは2004年4、5月にバンベルクで行われた第1回グスタフ・マーラー国際指揮者コンクールに優勝し話題となったベネズエラ出身、現在26歳の若手である。これまではクラシック音楽不毛のベネズエラから、突如陽の当たる世界に躍り出たドゥダメルは、その後フィルハーモニア管、フランス放送管、フランクフルト放送響、ボストン響、スカラ座等、世界の一流オケ、オペラでも八面六臂の活躍ぶりである。彼のメジャー・デヴューを飾ったドイツ・グラモフォンに於ける今回発売のベートーヴェン第5、第7だが、全体に緊張感が漲った迫力十分な演奏であり、独特の風格さえ感じさせる。人口が日本の約五分の一しかない貧困層の多いベネズエラには現在130を超すユース・オーケストラがあること自体驚きだが、これらを国家自体が管理運営していることもドゥダメルのような才能が育つ土台になっているのだろう。CDを聴いてもオケ自体決して良い楽器を使っていないようだが、今後何年か先にこの国は一流音楽国の仲間入りすることになるであろう。(廣兼 正明)

Classic ALBUM Review

「モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲変ホ長調K.364、ヴァイオリン協奏曲第4番ニ長調K.218、同第2番ニ長調K.211/マキシム・ヴェンゲーロフ(Vn&指揮)、ローレンス・パワー(Vla)、UBSヴェルビエ・フェスティヴァル室内管弦楽団」(EMI/TOCE-55915)
 洗練された、美しいモーツァルト演奏だ。極上の美音と適格な様式感によって、〈現代に生きる〉モーツァルトのヴァイオリン協奏曲の魅力が堪能できる。抑制の利いたヴィブラートや過剰でない節度ある表現は歴史奏法から示唆を得たのだろうが、彼のオペラ書法から学んだものも多いにちがいない。ヴェンゲーロフ自作のカデンツァも見事。協奏交響曲もまたL・パワーの情感豊かなヴィオラと相まって実に聴きごたえがある。(青澤 唯夫)

Classic ALBUM Review

「ルイサダ・プレイズ・ベートーヴェン」(BMG JAPAN/BVCC-34145)
 ロマン派とフランス近代音楽を得意とするジャン=マルク・ルイサダの初めてのベートーヴェンである。収録されているのは「ピアノ協奏曲第4番」、「悲愴」と第30番のソナタで、3曲すべてが「ルイサダ、ベートーヴェンをショパンの詩情で奏でる」と言える演奏であろうか。ショパンの愛好家の中にはベートーヴェンもこういう弾き方をしてくれたら取っ付きやすいのに、と思う人もいるような気がしないでもない。しかしベートーヴェンをかたくなに愛している人には、はっきり言ってお勧めは出来ない。でもルイサダは確かに今までにないルイサダだからこそのベートーヴェンを聴かせてくれる。これはベートーヴェンにもこれだけの詩情があったのかを十分に納得させてくれた嫌みのない良い意味の希有な例である。(廣兼 正明)

Classic DVD Review


「モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ集/アンネ=ゾフィー・ムター(ヴァイオリン)、ランバート・オーキス(ピアノ)」 (ユニバーサル ミュージック/UCBG-1178〜9)
 昨年6月に発売されたCDと同じ演奏のDVDである。モーツァルト生誕250年とムター自身のコンサート・デビュー30周年を記念したコンサート・ライヴ。有名な第24番ハ長調K.296を最初としてソナタとしては未完の4曲を除いた後期の16曲が収録されている。DVDの場合CDの聴覚のみでなく、視覚が入ってくるためCDの時とは若干異なった印象になることは否めない。CDで聴いた時は出だしのノン・ヴィブラートがあまり感心しなかったホ短調のK.304は 視覚と共に聴いた場合、ムターの意向に少し接近することが出来たのが収穫の一つとも言える。そしてもう一つはピアノのオーキスとの相性が如何に素晴らしいものであるかを再認識したことである。二人の音楽的な完璧なアンサンブルはさすが長年コンビを組んできた結果であることが視覚を通しても納得出来る。(廣兼 正明)

Classic CONCERT Review
「ウィーン放送交響楽団」 2月10日 ザ・シンフォニーホール
 音楽の都に本拠を置き、名門オーケストラのひしめく中でもまれてきた、このオーケストラは鍛え抜かれている。特集を組んだベートーヴェンでは、母国の生んだ楽聖への尊崇の念が篤く、演奏だけは他に負けないとう熱気にあふれていた。曲目の中では、最後に演奏した「英雄」が圧巻である。この曲をナポレオンに献呈しようとしたところ、皇帝の座について専制化してために、中止したという逸話が伝えられている。また、第2楽章の「葬送行進曲」は英雄の死を悼むもの悲しい旋律で、取り分けよく知られている。そのせいか、曲自体は暗いヴェールに包まれたような印象をもたれている。ところが、指揮者のベルトラン・ドゥ・ビリーは底辺を流れる崇高な性格や堂々とした内容に着目して、オーケストラを明るくそして力強くうたわせ、高揚感をもたらした。サンクトペテルブルク出身の若手ピアニスト、ピヨートル・オフチャロフは、「ピアノ協奏曲第5番《皇帝》」をパワー全開で乗り切った。(椨 泰幸)
〈写真提供:ザ・シンフォニーホール〉

Classic CONCERT Review
「ヴェッセリーナ・カサロヴァ・オペラ・アリア」 2月17日 ザ・シンフォニーホール
 カサロヴァの持つ低音から中音へかけての輝きとしなやかさは、この人に右に出るものはないと、思わせるほどである。ブルガリア生まれのメゾ・ソプラノは、今、大輪の花を咲かせた感がある。挙措に悠々迫らざる落ち着きがあり、数々の大舞台を踏んで成功をおさめた自信にあふれている。名歌手から大歌手への階段をのぼりはじめている。
得意とするロッシーニ「タンクレディ」で歌われる“こんなに胸騒ぎが”などの3曲は、声に膨らみと潤いがあり、恋に揺れ動く心情を巧みに表した。トマ「ミニョン」の“君よ知るや南の国”やビゼー「カルメン」のハバネラ“恋は野の鳥”、ロッシーニ「セビリャの理髪師」の“今の歌声は”など、メゾのうたう名曲では、メゾの魅力を遺憾なく発揮して、会場を楽しませた。(椨 泰幸)
〈写真提供:ザ・シンフォニーホール〉

Classic CONCERT Review
「バズ・ファイブ金管5重奏アンサンブル演奏会」2月18日 東京文化会館小ホール
 この新春バズ・ファイブの第10回コンサート(プロ・アルト・ムジケ提供)があった。息の合った素晴らしい演奏だった。金管アンサンブルの歴史は新しい。そもそも楽器が今日のように完成したのが19世紀のこと。20世紀の後半になって発展した。1974年イギリスのP.ジョーンズの初来日で驚いたが、1977年に全日本吹連のアンサンブル・コンテストが始まってから、30年しかたっていない。1997年にこの楽団が東京芸大の同期生により結成されてより10周年目だ。「フィーチャリング・バズ」では奏者の個性がでていた。1Tpの上田仁はリーダーらしく先行する指導者タイプ、2Tpの小川聡は真面目な理論家、Hrの友田雅美は仲間を盛り立てる柔和な精神、Tbの加藤直明は正義感溢れる熱血漢、Tuの石丸薫恵は紅一点音程もリズムも正しい安定した恋女房型。この5人が絡み会った合奏だった。2時間のステージを飽きることなく楽しませてくれた。ますますの発展を期待したい。(斎藤 好司)
〈写真:林喜代種〉

Classic CONCERT Review
「関西フィルハーモニー管弦楽団演奏会」2月21日 すみだトリフォニーホール
 すみだトリフォニーホールで毎年行われている地方都市オーケストラ・フェスティバルも今年で10年目を迎える。その先陣を飾った関西フィルハーモニー管弦楽団のショスタコヴィチの第5交響曲はまれに見る熱気にあふれた素晴らしい演奏で東京のファンを堪能させた。この曲を振った飯守泰次郎のアクション豊かな棒のもと、それに呼応するオーケストラの迫力は聴衆の度肝を抜くに十分だった。ここ何年か聴いている地方オーケストラの白眉とも言えるこの日の演奏に細かい注文を付ける気はない。前半藤岡幸夫とのシベリウスの第5も決して悪い演奏ではなかったが、ショスタコヴィチに完全に蹴飛ばされてしまった。(廣兼 正明)
〈写真:三浦興一〉

Classic CONCERT Review
「パレルモ、マッシモ劇場公演《椿姫》」3月3日 マッシモ歌劇場
 この6月に初来日を果たすシチリアはパレルモのマッシモ歌劇場。劇場の国イタリアでも、指折りの水準を誇る歌劇場だ。このたび現地で、2月から3月にかけて行われた「椿姫」の公演を聴いた。クリスティーナ・コメンチーニの演出した、フィレンツェ五月音楽祭のプロダクションによる上演である。
筆者の聴いた日(3月3日)はダブルキャストのBキャストだったが、主役のヴィオレッタを歌ったチンツィア・フォルテに圧倒された。フォルテはコロラトゥーラ・ソプラノとして知られた歌手だが、この日は中音域も強くむらがなく、ドラマティックな表現も十全で、「プリマ・ドンナ・オペラ」の主役を見事に歌いきった(写真はAキャストのアンドレア・ロスト)。
指揮のステファノ・ランザーニは、音楽の求心力をとらえ、噴出させる力に長けており、「椿姫」の音楽にあるドラマ性を存分に出しながら、歌手への配慮も失わない理想的なコントロールで、会場を魅了した。イタリア・オペラの指揮者として世界的に活躍しているが、大成が期待される。来日公演では「シチリアの夕べの祈り」を振る予定で、大いに楽しみである。(加藤 浩子)
〈写真提供:パレルモ・マッシモ劇場〉

Classic CONCERT Review
「陸・海・空音楽隊合同演奏会」3月11日 サントリーホール
 第10回、陸・海・空自衛隊合同コンサートが開催された。素晴らしい熱演だった。自衛隊の音楽隊は、陸が22・海が6 空が5の合計33団体あり、そのうち本日演奏した陸上中央(指揮/武田晃)・海上東京(指揮/渡仲郁夫)・航空中央(指揮/佐藤義政)の3団体がセントラルバンドとして活躍している。それが年に一度一堂に会しての合同演奏(指揮/菅原茂)だから、熱気に溢れていた。第1部にそれぞれが単独に演奏し、その個性が出ていた。陸は「軽騎兵」を演奏し洗練された音楽を、海は「カルメン」を演奏しモダンな響を、空は「交響組曲」を演奏し暖かい人間的な響を楽しませた。自衛隊の演奏技術は年々向上しており、今日欠員を1人補充するにも音楽大学の卒業生や専門家が数十名列を成す有様だという。(斎藤 好司)

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「藤原歌劇団公演《リゴレット》」5月25、26、27日 東京文化会館
 ヴェルディの最大傑作のひとつであり、イタリア・オペラの金字塔のひとつともいえる「リゴレット」。生まれつき不自由な体であるため、道化師というまっとうではない職業についているリゴレットの内面の葛藤が引き起こす悲劇を、美しい旋律と劇的な表現で描ききった傑作だ。その「リゴレット」が、イタリア・オペラには定評のある藤原歌劇団によって上演される。人気と実力を兼ね備えたキャストは、さすが藤原歌劇団というべきか。ヴェルディ・バリトンとして世界的に活躍しているアルベルト・ガザーレと堀内康雄が主役を歌うのをはじめ、娘役のジルダには高橋薫子、佐藤美枝子という日本を代表するプリマを起用。加えて、若手のイタリア・オペラ指揮者として世界中から熱い視線を浴びているリッカルド・フリッツァが、初めて藤原歌劇団の公演に登場する。息もつかせぬ抜群の推進力で、初めの一音から「リゴレット」の世界へ引き込んでくれることだろう。ニコラ・ジョエルの手になる美しい舞台も楽しみ。(K)

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「ラ ヴォーチェ公演・ピエロ・ファッジョーニ演出作品/マスネ作曲《ドン・キショット》」 7月15、18、21日 新国立劇場中劇場
 フランス・オペラの巨匠、ジュール・マスネ。繊細優美でコケットリーにあふれた音楽は、独特の魅力を湛えている。日本では未だに上演の機会が少ないのが残念だが、2000年に新国立劇場で上演され、絶賛を博した「ドン・キショット」が、このたびラ ヴォーチェの主催により再演されることになった。1982年にヴェネツィアの名門フェニーチェ歌劇場で初演された、ピエロ・ファッジョーニの演出による幻想的で美しい舞台に再び出逢えることは、大きな歓びである。加えて、イタリアの名バス歌手、ロベルト・スカンディウッツィが主役を歌うのにも注目したい。40代の円熟期を迎えたスカンディウッツィは、確かな技術、温かな声と劇的な表現力で、ヴェルディのバスの諸役をはじめ、世界的に活躍しているバス歌手である。彼の歌うドン・キショット(=ドン・キホーテ)は、さてどんな貌を見せてくれるだろうか。問い合わせ:ラ ヴォーチェ チケットセンター 03-3519-5005(K)

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「イム・ドンミン・ピアノ・リサイタル」 5月24日 午後7時 いずみホール
 2005年ショパン・ピアノ国際コンクールで、弟とともに3位に入賞した韓国ソウル出身の新星イム・ドンミンが、いずみホール(06−6944−1188)に出演する。曲目はショパン「スケルツォ第1番、第2番、第3番、第4番」の他、リストの「愛の夢第3番」「パガニーニの主題による超絶技巧練習曲第3番(ラ・カンパネラ)」など。同ホールの企画するリスト・シリーズの一環として開かれ、5月31日の小池優、6月21日のケマル・ゲキチのピアノ・リサイタルでも同じラ・カンパネラが演奏されて、聴き比べを楽しむことができる。料金は4000円。(T)

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「アンドレ・ワッツピアノ・リサイタル」6月9日 午後2時 ザ・シンフォニーホール
 ワッツは1946年、ドイツ・ニュルンベルク生まれ。9歳でフィラデルフィア管弦楽団と協演して、天才振りを発揮した。指揮者のバーンスタインに抜擢され、グレン・グールドの代役として、16歳でニューヨーク・フィルと協演し、大成功を収めた‘シンデレラ・ボーイ’でもある。感性豊かな演奏には定評があり、円熟期を迎えてどのような冴えをみせるか。曲目はシューベルト「ピアノ・ソナタ第18番幻想」、リスト「エステ荘の噴水」「悪魔のロベールの回想」などの他にバッハ作品を予定している。料金は3,000〜6,000円。お問い合わせはザ・シンフォニーホール(06−6453−6000)へ。(T)